任意整理の全国統一基準について(東京弁護士三会)
任意整理はあくまでも自由契約の為、本来どのような形で交渉しても自由です。ただし全国規模で莫大な数の案件の依頼があるため、各弁護士会や司法書士会ではある程度、基準となる「全国統一基準」を作成して指針を定めています。
任意整理の件数は、年間で数百万人単位といわれています。裁判所の司法統計によると、平成25年の自己破産の案件数(新受数)が133,347件と13万件前後なのでその10倍以上の人数が任意整理を実施していることになります。
東京三会の任意整理の統一基準について
毎年これだけの件数の任意整理が行われているとなると、ある程度、弁護士や司法書士にも統一基準(つまり和解条件の目安)が必要になってきます。例えば、東京弁護士三会では、この任意整理についての統一基準が定められています。
東京弁護士三会とは、東京にある3つの弁護士会の総称をいいます(東京三会)。東京には、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、の3つの弁護士会があります。なぜ3つに分派されているのかは、任意整理に関係ないのでここでは記述しませんが、東京都内の弁護士はこのいずれかの弁護士会に所属しています。
この東京弁護士三会で定められている統一基準は、主には以下の3つです。各弁護士は、最低でもこれらの基準を満たせるよう金融業者と交渉することになります。また金融業者の方も任意交渉とはいえ、ある程度、弁護士会の定める統一基準に沿った和解案に応じることが社会的にも求められています。
- 初回からの全ての取引履歴の開示を請求する
- 利息制限法に基づく引き直し計算で債権額を確定する
- 和解案の提示の際に、遅延損害金や将来利息を付けない
いずれもここまでの任意整理の記事でも確認してきたポイントですが、弁護士は和解案を貸金業者に提示する際に、最低でもこれらの条件をクリアした上で交渉することが定められています。以下、1つずつ整理して確認してみましょう。
任意整理のカテゴリーで何度も解説している利息引き直し計算に関する話です。 任意整理では、利息制限法に違反する高すぎる利息を支払われているケースがあります。
2010年に改正貸金業法が完全施行される前は、利息制限法の上限利率20%を超える(違反する)高金利で貸付をおこなう貸金業者や信販会社がたくさんありました。これは当時は、出資法などの別の法律で高金利が認められていたからですが、2006年最高裁判決によりこの利息制限法に違反する利息は全て無効となりました。
過去に支払い過ぎた利息は、「過払い利息」として現在の借金残高と相殺することができますが、数年前まではこれを回避するために、取引履歴の開示請求に応じない貸金業者がたくさんありました。(今ではあまり考えられないですけどね)
また債務者本人が取引履歴の開示請求をしても、相手にされなかった時代が過去にはありました。そのため、弁護士の重要な仕事の1つとして、金融業者にキチンと全ての取引履歴を開示請求することが求められていたのです。
これも同じです。上記の取引履歴の開示請求により、全ての取引履歴をまず明らかにしたうえで、過払い利息が発生していないかどうかをチェックします。もし過払い利息が発生していたなら、必ずその金額分を現在の借金残高に充当した上で債権額を確定する必要があります。
貸金業法が改正されてからもう5年以上が経過しているため、徐々に過払い利息が発生しているケースというのは減ってきてはいますが、今でもまず全ての取引履歴を開示請求し、利息制限法に基づく引き直し計算を行う、というのは任意整理のお約束の手続きになります。
任意整理の和解案を交渉する段階で、借金返済の滞納時に生じていた過去の遅延損害金と、また現在の借金元本にかかる将来的な利息、この2つを免除するよう求めることが、統一基準の1つとして定められています。
消費者金融などの貸金業者は、出資法の改正後も平均して15~20%近くに非常に高い金利を取ってお金を貸しています。金利20%というと、当たり前ですが100万円の借金が1年間で120万円になるということです。支払い総額の5分の1は利息に充てられてしまうことになります。
こちらの記事で将来利息をカットした場合のシミュレーションを実際に行っていますが、このように将来利息を免除できることは、今では任意整理の大きなメリットの1つとなっています。
平成12年4月に改正された三会統一基準って?!
この任意整理に関する三会統一基準ですが、平成12年4月に一度改正がされており、3つの項目が追加されています。少し難しい話もあるので全部に細かくは触れませんが、少しポイントとなる部分だけ解説すると以下の2つになります。
- クレジットカード(ショッピング)の債権額にも利息制限法の利率を適用すること
- 保証会社からの求償債権にも利息制限法の利率を適用すること
はい、これだと何のことかわかりませんよね。
簡単にいうと、クレジットカードの立替代金や、保証会社による借金の代位弁済分の求償は、厳密には「借金」ではありませんので、利息制限法が適用されるかどうかが微妙なラインにあります。 でも任意整理の和解交渉の際には、利息制限法の上限利率20%を上限に考えるべき、という話です。
クレジットカード機能のうち、キャッシング枠ではなく、買い物(ショッピング枠)による借金は厳密には、借金ではなく立替金です。 そのため利息制限法の適用外となってしまうのですが、クレジットカードの手数料にも利息的な性質を持つものが含まれています。
そのため、クレジットカードのショッピングについても、貸付債権と同様に扱うよう三会統一基準で定められるようになりました。
利息制限法は厳密には、お金の貸主と借主の間とで成立する法律です。 利息制限法3条では、貸主から元本の返済以外で受け取るお金は、名目の如何を問わず全て「利息」であると定められています。これをみなし利息といいます。
利息制限法3条では、貸主が借主から受け取る金銭(元本返済以外)はすべて「利息」であると定めています。例えば、「礼金」「手数料」「調査料」など、いかなる名目をつけようと、それは全て利息とみなす、ということです。
いくら利息制限法で定める上限利率20%を守っていますよ、と言われても、その他に「保証料」やら「調査料」やら、様々な名目で手数料を巻き上げて、実質的には利息が30%だった、というのでは意味がありません。
これはそもそも闇金などで横行した手口ではありますが、こうした不正を防ぐためにも、利息制限法はどのような名目であれ、元本返済以外の金銭を受け取った場合、それは利息だ、と定めているのです。
しかしここで問題となるのが、保証会社の求償権です。借金の返済を保証会社が一旦肩代わりし、その分の代金を債務者本人に後から請求することを「求償」といいますが、この求償は貸付債権とは異なるため、利息制限法の適用対象となるか微妙です。
つまり、保証会社が保証料、手数料などの名目で請求をしてきたとしても、それが利息制限法3条の「みなし利息」に当たるのか?という話です。 これについて、改正東京三会基準では、「利息とみなす」と定めている、ということになります。
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