住宅ローン破綻後の競売のリスクとデメリット
これまでにも競売と任意売却の違いは、「任意売却とは?競売と任意売却の違い」や「任意売却のメリットとデメリット」でも解説してきましたが、この記事では競売のデメリットについてもう少し詳しく解説してみます。
競売のデメリットについて、もう一度詳しく教えてほしいなー!
競売にはデメリットがたくさんあります。これは当たり前で、競売はそもそも、民事執行法45条の「強制競売」(参考:法令データベース)を根拠とする強制執行の方法であり、債権者側の権利保護のための制度だからです。ローン債務者が自分の意思で住宅を売却する「任意売却」とは、スタート時点からまるで話が違うわけです。
競売のデメリットはこんなにたくさん?!デメリットまとめ
任意売却ではなく、競売により住宅を処分してしまうことのデメリットは、よく挙げられる代表的なものだけでも以下のものがあります。
- 相場価格よりも遥かに安い価格(5~7割)で処分される
- 残債についての交渉の余地がほとんどなく後のトラブルになりやすい
- 引越しや立ち退きの援助の費用などが一切出ない
- 競売での落札後、すぐに住宅の立ち退きを命じられる
- 新聞掲載やネット公示により、近所に競売のことがバレる
- 競売で儲けようとする怪しい人達が住宅の見物に来る
- 裁判所の執行官や不動産鑑定士が住宅を調べに来る
住宅ローン返済の滞納などが原因で、銀行などの債権者側が黙々と競売の手続きを進めてしまった場合、債権者と話し合いをしたり交渉するための時間や場面が一切設けられないため、住宅売却時の立ち退きや、売却後の残債の処理についての交渉・相談の余地がほとんどありません。
相場価格よりも遥かに安い価格で処分される
競売の場合は、そもそもなぜ相場よりも安い価格で処分されるのでしょうか? これは競売の買い手側の立場になってみればよくわかります。競売は実は買い手側からしても非常にリスクの高い取引なのです。
競売物件の買い手リスク | 理由 |
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物件の内覧ができない | 競売の手続きは強制執行の1つなので、住宅の占有者が自らの意志で希望しているわけではありません。そのため、執行官以外(一般の入札者)は住宅への立ち入りができず、なかに入って実際に住宅を確かめることができません |
金額の交渉等ができない | 競売では当然、売主と交渉して金額を決めたり、入居日を決めたり、といったことも出来ませんし、入札開始日から落札までの猶予は1-2カ月しかありません。じっくり選んで慎重に決める、ということが出来ないので競売はリスクの高い物件とされています |
保証などの買主保護がない | 競売は、裁判所から直接、購入する物件なので、仲介業者や売り主による瑕疵担保保証やその他、一切の保護保証がありません。競売で落札した後に、欠陥のある住宅だと気付いても誰も助けてくれません。 |
こうやって見てみると、競売物件がたしかに安い値段で売却されてしまうのも何となく納得できるのではないでしょうか? また裁判所の都合もあります。競売は一種の強制執行の手続きですから、一般の不動産売買と異なり、「高い値段が付かなければ売らない」という性質の取引ではありません。
日常のたくさんの競売の案件をある程度、スピーディーにこなしていかなければならないため、最低売却価格をあらかじめ低めに設定している、というのも1つの理由です。
引越しや立ち退きの援助がでない
競売物件の場合は、任意売却と違って立ち退き日についての交渉の余地や、引越し費用の援助なども原則、ありません。(引越し費用については、任意売却も絶対に出る、というわけではないですが、交渉により出して貰えるケースが多いです)
引越し費用や立ち退き料について交渉するとしたら、債権者(銀行)ではなく競売の落札者との交渉になりますが、落札者がその物件に住んでいる垢の他人の引越し費用をわざわざ負担してあげる理由がありませんから、おそらく拒否されるでしょう。
それどころか、裁判所の強制執行権を使って、即刻、立ち退きを要求する可能性が高いです。
競売で落札が終わり、住宅売却代金が納付されると、正式に住宅は落札者の所有物になります。つまり、その住宅に住み続けることは「不法侵入」「不法占拠」になってしまいます。
その後、住宅居住者が立ち退きに応じない場合には、裁判所に「引き渡し命令の申立て」がなされます。強制執行になった場合には、裁判所の執行官、鍵業者、運送業者、などが自宅にやってきて、荷物を運び出してしまうことになります。カギも換えられてしまうため、今後、入居することはできません。