競売で落札されなかった場合の特別売却って?!

以前、競売のスケジュールの記事で解説しましたが、競売の開始決定から大体、半年ほどで期間入札がおこなわれます。この期間中に入札があれば、物件は一番高い値段で入札した最高価買受人に落札されるます。しかしもし誰もその物件に入札しなかった場合には、特別売却という手続きがおこなわれることになります。

期間入札で落札されなかった場合の特別売却って何?
ねえねえ、先生ーっ!
もし物件を競売にかけても、裁判所が指定した期間内に誰にも入札されなかったら、どうなるのかなー? 売却の値段を下げて、もう1回、競売をやり直すのー?
その前に、まずは特別売却という方法で売却を試みることになるね。特別売却というのは、裁判所が提示した買受可能価額以上の金額であれば、誰でも先着順で落札できる、という売却方法なんだ。つまり早い者勝ちだね。
ほうほう・・・、つまり最低落札価格が1000万円だとして、、普通の競売の期間入札だとAさんが1000万円、Bさんが1200万円で入札したら、Bさんが落札者になるんだけど、これが特別売却だと、先にAさんが入札すればAさんが落札できる、ってこと?
その通り。ヤフオクの即決価格みたいなものだね(笑)競売をやり直してもどうせ値段は下がっちゃうから、それなら買受可能価額(最低入札額)ピッタリでもいいので早い者勝ちで売ってしまおう、ということだね。
ふーん。買受可能価額って、売却基準価額(裁判所が鑑定した評価額)よりも2割安い価額なんだよね・・・。たしかに確実に最低価格で買えるなら、「特別売却なら買おう」って人もいるかもしれないしね。特別売却の期間はどのくらいなの?
特別売却の期間は特に法律で定められていないから、裁判所や物件によってもマチマチだね。ちなみに東京地裁では、入札が1件もなかった場合、開札期日の翌日から特別売却が開始する。期間は1週間ってとこかな。
もし・・・、その特別売却をして1週間待っても、また誰も入札してくれなかったら、どうなるのー?
その時は価格を下げてもう一度、競売をやり直すことになるね。売却基準価額を3割くらい下げて期間入札⇒特別売却の流れをもう一度やる。それでダメなら、また値段を下げて繰り返す。3回、期間入札をしてダメなら競売は取消しになる。
  • 競売の期間入札で誰にも落札されなければ、その後、物件は特別売却になる
  • 特別売却とは買受可能価額(最低価格)で早い者勝ちで落札できる売却方法
  • もし複数の入札が同時にされた場合には、くじで落札者を決定する
  • 東京地裁では、開札期日の翌日から1週間程度が特別売却期間となる
  • 特別売却でも入札されなければ、3割程度、売却基準価額を下げて期間入札
  • 期間入札と特別売却の流れを3回繰り返して売れなければ、競売は取消し

期間入札で落札されなかった場合の特別売却について

競売での入札方法は、一般的には期間入札という方法でおこなわれます。これは一週間程度の期間を設けて、郵送などで入札書の提出を受け付け、その中で最高額を提示した人を落札者として認める、という仕組みです。

最低売却価格(買受可能価額)以上の値段で最高額で入札した人が落札できる。―説明図

ただしこの指定した期間内に、入札者が表れない場合があります。「権利関係や占有者の問題などで敬遠される」「農地などで買受人に資格制限がある」「物件に欠陥がある」「価格が割高で魅力がない」など、理由はいろいろ考えられますが、とにかく期間内に買受人が表れないケースというのは、珍しくないのです。

この場合、裁判所は不動産を再評価して最低入札額をもっと下げて、期間入札をもう一度やり直すこともできます。ただし、競売の物件数は膨大ですし、手続き上、一度入札されなかっただけで期間入札をいちいちやり直すのは非常に手間です。

そこで実務上は、期間入札で買受人がいなかった場合には、そのまま続けて特別売却という手続きに進むことになります。

期間入札で入札者がいなければ、そのまま特別売却になります―説明図

買受可能価額(最低価格)で早い者勝ちで落札できる

特別売却の期間中は、買受可能価額以上の価格であれば、早い者勝ちで入札すれば落札することができます。

一番入札が早かった人が先着順で落札者になる。同時だった場合はくじで決定―説明図

買受可能価額というのは裁判所が定めた最低入札価額のことで、「最低、これ以上の金額で入札してね」という金額のことですが、特別売却であれば、その最低価格で購入できる、ということです。ライバルの入札者と金額で競い合う必要はありません。

もしライバルと同時に入札があった場合には、金額ではなく、くじ引きで落札者を決定します。

また買受可能価額は、その前の期間入札と同じものが使われます。つまり、期間入札のときの買受可能価額が1000万円であれば、特別売却での買受け可能価額も1000万円です。





特別売却の開始日時と期間はどうやって調べる?

特別売却の開始時期は、法律で決まっているわけではありませんが、通常、開札期日の翌日からです。期間は1週間前後であることが多いですが、なかには1カ月くらいの期間が設定されることもあります。

この特別売却の日程や期間については、あらかじめインターネット等でも公表されています。例えば競売の専門情報サイトBIT(http://bit.sikkou.jp/)で実際に物件情報をご覧いただければわかりますが、入札期間、開札期日、とあわせて最初から特別売却期間も指定されています。

BITの説明図

また一応補足しておきますと、特別売却の法律上の根拠は以下の民事執行規則51条になります。ここでは期間は3カ月以内と記されていますので、理論上は、特別売却の期間は最大3カ月まで設定できることになります。

民事執行規則51条

裁判所書記官は、入札又は競り売りの方法により売却を実施させても適法な買受けの申出がなかつたとき(買受人が代金を納付しなかつたときを含む。)は、執行官に対し、やむを得ない事由がある場合を除き、三月以内の期間を定め、他の方法により不動産の売却を実施すべき旨を命ずることができる。この場合においては、売却の実施の方法その他の条件を付することができる。(民事執行規則51条

特別売却でも売れなかった場合はどうなるの?

このように特別売却は、「もう最低価格ギリギリでいいから、早い者勝ちで物件を放出するよ」というキャンペーンのようなものです。しかし、もしこの特別売却をしても入札者が表れない場合はどうなるでしょうか?

前述のように特別売却の期間は3カ月まで認められますので、一応、期間を再設定して、何度か特別売却を繰り返してみる場合もあります。
しかし、特別競売をしても入札者が表れないということは、基本的には買受可能価額(最低入札額)であっても割高である、ということです。そうすると、やはり値段を下げるしかありません。

競売の再評価―特別売却をしても売れなければ、裁判所は物件の価額を下げる。

売却基準価格を30%ほど下げてもう一度、期間入札する

期間入札と特別売却を経ても、買受人がいなかった場合には、裁判所は売却基準価格の見直しをおこないます。民事執行法60条2項では、執行裁判所は競売物件の売却基準価額を変更することが認められています。

売却基準価額の変更
執行裁判所は、必要があると認めるときは、売却基準価額を変更することができる。(民事執行法60条2項

見直しをするといっても、売れなかった競売物件の価格を上げるわけがありませんので、基本的には下げる方向に変更します。相場としては、2~3割、売却基準価額と買受可能価額を下げて、再度、期間入札をやり直すことになります。

2回目の期間入札でもダメなら、また特別売却する

このように競売物件の買受可能価額を2割下げて期間入札にし、また落札者が表れなかった場合には、また特別売却をすることになります。その後の手順は、前述と全く同じです。

2回目の特別売却でも、また入札者が表れなければ、また売却基準価額を2~3割下げて、また期間入札にします。そして、万が一、またダメであれば特別売却にします。この「期間入札 ⇒ 特別売却」の流れを、落札者が表れるまで繰り返すことになります。

売れなければ、最低価格を3割程度下げて、また期間入札に。

期間入札と特別売却を3回やってダメなら競売は取消し

このように期間入札と特別売却のセットを3回繰り返して、それでも入札者が1人も表れない場合には、さすがに「この物件は売れる見込みがない」と判断されます。

裁判所の立場からすると、売れる見込みのない競売物件をいつまでも永遠に抱え続けるわけにはいきません。そのため、3回、期間入札にかけても売れなかった場合には、裁判所の判断で競売を取消すことができます。

3回やってもダメなら裁判所は競売を停止することができる―説明図

売却の見込みがない場合の措置

執行裁判所は、裁判所書記官が入札又は競り売りの方法による売却を三回実施させても買受けの申出がなかつた場合において、不動産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に売却を実施させても売却の見込みがないと認めるときは、強制競売の手続を停止することができる。(民事執行法68条3項

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