競売すると近所にばれる?不動産業者の近隣への聞きこみ

住宅が競売になったことが近所にバレる理由

自己破産や住宅ローンの滞納により、自宅が競売にかけられてしまった場合、残念ながら、その事実がご近所や周囲にあっという間に広まってしまうことは珍しくありません。その一番の理由は、競売物件の現地調査のために、さまざまな不動産業者や個人の不動産投資家などが、近隣への聞きこみをおこなうからです。なぜ彼らは聞きこみ調査をするのでしょうか?

自宅が競売にかけられると、なぜ近所にもバレるの?
ねえねえ、先生ーっ!
住宅ローンが返済不能になった場合、競売になるとご近所にもバレて色々噂されちゃうから、できれば任意売却の方がいいって話をよく聞くんだけど、そもそもなぜ競売だと近所にバレるの?!
端的にいうと色々な関係者が近隣に聞きこみ調査を行うからだね。競売手続きが開始すると、まず裁判所から執行官と評価人がやってきて、物件に値段を付けるための測量をしたり、外観の写真を撮ったり、隣家に土地の境界線の争いがないか等を確認することがある。
そうなんだーっ!
つまり、裁判所からやってくる調査員さんの聞きこみとかで、ご近所さんにも競売することがバレてしまったり、噂になってしまう可能性があるってことなのー?
可能性としてはあるね。ただ執行官は裁判所職員だから、その辺りもある程度は配慮してくれる。もっと問題なのは、入札期日前になって競売物件がネットで一般公開された後だね。この段階になると、一般人や投資家、不動産業者なんかもたくさん調査にやって来る
げげーっ、でも裁判所からもちゃんと現況調査報告書とか、いろいろ物件資料が公開されるんじゃないのー? なんで、わざわざ自宅までやってきて、しかもご近所さんにまで色々聞いてまわったりするのかなー? 聞くなら本人に聞けばいいのに・・・?><
うん、まあ本人は不在のケースも多いし、居たとしても競売業者の訪問に丁寧に対応したりしないよね。だから近所にも聞きこみすることが多い。で、なんで聞き込みするのかというと、競売の場合は裁判所が瑕疵担保責任を一切負ってくれないから、なんだね。
瑕疵担保責任はたしかこの記事でも解説があったよねー。
そっかー、もし物件に欠陥やトラブルがあっても、裁判所は一切責任をとってくれないから、買受人も裁判所が公表する資料を鵜呑みにしないで、自分で現地に足を運んで調べるんだね。
なかでも怖いのは心理的瑕疵。つまり自殺物件や不審死など、いわゆる事故物件のケースで、裁判所の調査員がそこまで調べてない可能性があるからなんだ。もし代金納付後に自殺物件であることがわかっても、競売だと返品返金できない。全部、自己責任なんだ。
うーん、まあそう言われると、たしかに聞き込み調査は仕方ないのかなって気もするなー。でもさすがに訳あり物件で、かつ裁判所が現地調査で気付かないケースなんて、そんなに滅多にないんじゃないのー? 他にも理由はないのー?
まあ単純に「どんな人が住んでいるのか知りたい」というのはあるだろうね。というのも競売物件の場合は、自分で明渡し請求をして居住者を追い出さないといけない。だから、まだ住んでいるかどうか、常識のありそうな人かどうか、などは調査しておきたいんだね。
  • 自宅が競売にかけられると、近所や周囲にもバレてしまう可能性が高い
  • 理由は競売になると、投資家や不動産業者が近所に聞き込み調査をするから
  • 競売の場合は、物件の住所などがネットでも公開されるのでバレやすい
  • 競売だと裁判所が瑕疵担保責任を負わないので、みんな自己責任で調査する
  • 近所に聞き込みするのは、事故物件の回避や、居住者の人柄の調査が目的

競売になると色々な人が住宅や近所に聞き込みに来る?!

競売になるとよく言われるのが、近所に競売のことがバレて噂が広まってしまうということです。特に団地などではその傾向が強いですが、なぜ自宅が競売にかけられたことがご近所にバレてしまうのでしょうか?

住宅が競売手続きになると、近所周辺にバレたり噂になることも珍しくない。―説明イラスト

理由の1つは競売物件の情報がネットで公開されるからです。近年では競売物件の住所などは全て不動産競売物件情報サイトBIT(http://bit.sikkou.jp/)で公開されるようになりました。そのため調べようと思えば、誰でも近所の物件が競売に出ているかどうかを調べることができます。

そしてもう1つの理由が、聞き込み調査です。住宅が競売にかけられると、裁判所の執行官が自宅にやってきたり、その他、一般の不動産投資家や、不動産業者などさまざまな人が近隣・周辺住民に聞き込み調査をおこないます。そのため、競売にかけられた、という事実が噂として広まってしまうことが多いのです。





裁判所の執行官が、住宅の調査のために家にやってくる

これは競売のスケジュールの記事でも詳しく解説していますが、競売の手続き開始後、1~3カ月程度で裁判所から執行官(職員)が住宅の調査のためにやってきます。

競売での最低入札価額(買受可能価額)は裁判所が決定することになりますが、その値段を決めるために不動産の評価や測量をおこなうわけですね。

裁判所から調査のために執行官がやってくる。隣家の聞き込みがされる場合も-説明図

執行官は、建物の外観を写真に撮ったり、測量のために周辺をウロウロしたりします。また執行官の現況調査には、居住者(債務者)が立会わないケースもありますので、その場合、土地の境界線に争いがないかどうか等を、隣家の人に聞き込みにいく場合もあります。

土地の境界線

物件によっては、隣の家との土地の境界がどこなのか(どこまでが自分の土地で、どこからが隣家の土地なのか)が不明確な場合があります。競売では、境界線が曖昧なまま売りに出されることは珍しくありませんが、例えば、隣家の樹木が生い茂っていて境界線がよくわからない場合など、隣家に聞き込みがされるケースもあるようです。

土地の境界線の図

こういった裁判所の執行官や評価人の調査により、近所に競売にかけられたことを勘付かれる可能性はあります。もっとも、裁判所の職員はプライバシーなどにも配慮していますので、そこまで大々的に近所のあちこちに触れ回ったりはしません。

問題は、次の個人投資家や不動産業者による聞き込み調査です。

入札期間の2週間前ほどから、一般人が聞き込みにくる

上記の裁判所による現況調査が終わったら、さらに2~5カ月程度で期間入札の公示がおこなわれます。(参考:「入札期日の2週間前までに物件資料が一般公開される」)

これは裁判所が、「○月○日~○月○日にかけて、×××市×××町××× の物件が競売にかけられます。最低入札額は×××××円からです」という物件情報を一般に公開することを意味します。

一般に競売物件の値段や住所が公開される。―説明図

この競売物件の情報が公示されると、それを見た一般の個人投資家、不動産業者などが、現地調査のために次々と住宅を訪れます。 余り気分のいいものではないですが、外から物件を観察したり、ポストを見て住んでいる人の氏名を確認したり、外の電気メーターを覗いて住んでいるかどうかを確認したりします。

実際にインターホンを鳴らしてみて、居住者本人がいる場合には、本人から話を聞くこともあります。ただ競売物件の場合、夜逃げや引越しで既に空き家になっているケースも多く、また仮に在宅していたとしても、無視される場合も多いです。

本人から情報が得られなかった場合には、次に近所に住んでいる方への聞き込みがおこなわれます。

聞き込み調査などで色々な人が訪れる期間

競売物件に住んでいる本人は当事者なので仕方ないとしても、ご近所に住まれている方の立場からすれば、入れ替わり立ち替わり、色々な人が話を聞きにやってくるのは、煩わしいかもしれません。このような期間は、どの程度、続くのでしょうか?

通常は、競売物件の情報が一般に公示されてから、入札期間が終了するまでになります。

一般人や不動産業者など、見知らぬ人が次々やってくる期間は1カ月。―説明図

物件の一般公示~入札期間の開始日までがおよそ2~3週間、入札期間は裁判所にもよりますが概ね1週間前後であることを考えると、合計で3週間~1カ月くらいの期間でしょうか。この間は、居住者の方もご近所の方も、煩わしくても我慢するしかないですね。

なぜ競売物件では不特定多数が聞き込み調査するのか?

ではなぜ、競売物件では近所への聞き込み調査がおこなわれるのでしょうか? そもそも裁判所がわざわざ現況調査をして、物件明細書や現況調査報告書などを作成しているはずなのに、なぜ多くの業者や一般人が現地調査にやってくるのでしょうか?

これは少し語弊があるかもしれませんが、ザックリ言ってしまうと「裁判所の公開する物件資料は完全には信用できないから」です。

そもそも現況調査報告書などに記載の情報は”古い”

先ほどのスケジュールでも説明しましたが、裁判所から執行官がやってきて現況調査をおこなってから、実際に期間入札がおこなわれるまでには2~5カ月もの経過期間があります。

当然、現況調査報告書などは現況調査をもとに作成されるものです。そのため、半年近く前の古い情報が載っている可能性があるわけですね。

調査時の状況をもとに作成するので
内容が2~5カ月古くなってしまう―説明図

半年も経過すれば、何があるかわかりません。もう居住者は退去しているかもしれませんし、占有者が変わっているかもしれません。怪しい筋の人が占拠している可能性もありますし、極端なことをいえば、その後、債務者が死亡してしまったり、逮捕されている可能性もあります。

ただでさえ競売物件はいわくつきのものが多いため、必ず自分の目で最新の状況を確認するのが原則なんですね。





もし物件に問題があっても裁判所は責任を負ってくれない

もう1つ、競売物件には大きな特徴があります。それは裁判所が一切の瑕疵担保責任を負ってくれない、ということです。

競売物件では、現況有姿(げんきょうゆうし)での売買であるため、裁判所への瑕疵担保責任が適用されません。いわゆるノークレーム・ノーリターンを前提としているため、値段も通常の市場取引価額よりも3割くらい安い価格設定になっているんですね。

現況有姿

漢字のごとく「現在の状況の、有りのままの姿」のまま物件を売買する、という意味です。裁判所は、競売物件の売却にあたって、老朽化した建物の取り壊しやリフォームはおろか、清掃すらせずに、そのまま引き渡します。

競売物件サイトの資料を見ているとわかりますが、内覧写真でゴミ屋敷のようになっている物件、汚くてボロボロの物件も少なくありません。競売では「どんな物件であれ、そのままの状態で評価して売却する」ことが前提となっています。

現況有姿の説明図-競売では、住宅は有りのままの状態で売却される

瑕疵担保責任

一般の不動産売買では、売主に瑕疵担保責任が課されます。つまり建物に重要な瑕疵(欠陥)があり、それについて事前に何も説明がなかった場合には、買主は後で損害賠償請求をしたり、契約解除を求めることができます。しかし強制競売においては、裁判所はこの瑕疵担保責任が免責されています(民法570条

競売では代金納付後に、物件に瑕疵が見つかっても、
損害賠償請求も売買契約解除もできない―説明図

つまり、裁判所の公開する物件資料(現況調査報告書、評価書)の情報は最新のものではない、正確なものではない上に、もし間違っていたとしても、一切の瑕疵担保責任や返金には応じない、ということです。

となると、不動産業者や個人投資家としては、やはり自分で足を運んで、周辺近隣への聞き込み調査をおこなって、実態を把握せざるを得ないわけですね。

ちなみにここでいう瑕疵(欠陥)というのは、シロアリや雨漏りといった建物の欠陥だけでなく、「周囲の異臭や騒音が酷い」といった環境瑕疵や、「過去に殺人事件があった」「居住者がその部屋で自殺した」などの心理的な瑕疵も含まれます。

万が一、自殺や事故物件だと価値が大きく毀損してしまう

なかでも近所の人への聞き込みで、よく聞かれるのが「自殺物件とかではないですよね?」「何か事件があったわけではないですよね?」といった質問です。見知らぬ他人に何度もこのような質問を受けるのは、正直、少し気持ち悪いですよね。

もちろん裁判所の現況調査の段階で、事故物件であることがわかっていれば、その旨はちゃんと現況調査報告書にも記載されますし、競売での評価額にも反映されます。(事故物件として大幅に減価されます)。

しかし問題なのは、執行官が事故物件であることに気付かなかったケースです。

執行官が調査時に事故物件に気付かなかった場合―説明図

執行官の多くは、債務者が死亡していたとしても、死亡診断書を作成した医師と面会して事情聴取をしたり、近隣の住民に聞き込み調査をしたり、といったことまではしません。

近年では裁判所も、膨大な件数の競売を抱えており、それらを迅速に処理しなければならないため、特別に自殺や事件を匂わせるような事情がない限りは、そのままスル-してしまう可能性があるのです。

もし、うっかりこの手の物件を掴まされてしまうと大変です。一般の個人投資家や不動産業者は、このような物件を転売したり、賃貸するにあたっては、重要事項説明として「訳あり物件」であることを開示する義務があります。そのため、周辺の相場価格で落札してしまうと大損してしまいます。

そのため、業者や投資家は競売になった経緯について、慎重に聞き込みなどの独自調査をおこなうわけですね。

近所への聞き込みで、居住者がどんな人かを知りたい

もう1つはそこまで大袈裟な理由ではないのですが、単純に以下の理由で近所への聞きこみ調査がおこなわれるケースも多いです。

  • 今でもまだ居住者が住んでいるのかどうかを確認したい
  • 住んでいるなら、どんな人柄、性格の人なのか知りたい

 
競売の入札者の立場からすると、「今でも居住者が住んでいるのかどうか?」「どんな性格の人が住んでいるのか?」という情報は非常に重要です。なぜなら、競売の場合は、建物の立ち退き交渉も自分でしなければならないからです。

競売では建物の立ち退き交渉もしなければならない

競売物件は、所有者の意に反して住宅が売りに出されることが多いです。そうなると、当然、難航するのが居住者との立ち退き交渉です。

もちろん最終的には、裁判所に引渡命令を申立てることで、強制執行により無理やり追い出すこともできます。ただし、強制執行には最大で20~50万円の費用がかかりますので、買受人としては、できれば穏便な話し合いで出ていって欲しい、と考えます。

競売では自分で立ち退き交渉する必要
があるので、債務者の人柄が気になる―説明図

そこで「立ち退き交渉ができそうな人かどうか」「常識のありそうな人かどうか」を入札前に確認しておきたい、と考えるわけです。

「まともに話し合いが出来そうにない人」であれば、最悪、強制執行することまで考えて費用を見積もらなければいけないですし、逆に「既に1カ月前に引越しましたよ」という話であれば、立ち退き交渉をする必要がなくなるので非常にラッキーです。

もちろん人柄なんて本人に確認すればいいのですが、「なかなか本人が不在で接触できない」「周辺近隣の住民の意見も聞いておきたい」ということで、ご近所の方にも菓子折り持参で聞きこみに回る業者さんも多いのです。

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