マンションの管理組合の役割、管理会社との違いは?
分譲マンションのように、部屋ごとに所有者が異なる区分所有の建物には、必ず管理組合という団体があります。この管理組合は、区分所有法という法律で定められているもので、特別な設立の手続きなどがなくても法律上、自動的に生成されるものです。(区分所有のマンションで、管理組合が存在しない、ということはあり得ません)。今回は管理組合について解説します。
よく分譲マンションの話をするときに、「管理組合が・・・」「管理会社が・・・」とか、「理事会が・・」「役員が・・」とかって言うよねー。管理組合って誰が主催するどういう団体なのー?
じゃあ管理組合を設立するための申請手続きとか、組合員になるための手続きは必要ないのかなー?
- 分譲マンションでは複数人で1つの建物を所有するため、管理ルールが必要
- エレベーター等の共有設備などを全員で管理するための団体が管理組合
- 分譲マンションには必ず管理組合が存在し、所有者は自動的に組合員になる
- 管理組合を代表し業務を執行するために、集会で理事会や理事長が選任される
- 清掃や管理費の徴収、設備の保守点検などの日常業務は管理会社に委託する
- 管理組合の理事長は、1年交代の輪番制などで選任することが多い
1.管理組合はマンションの区分所有者全員で構成される
2.年に1回以上、集会(総会)を開かなければならない
3.実際に管理業務を執行するために理事長を選任する
4.実際の日々の管理業務は、全て管理会社に委託する
5.管理組合の役員(理事)の選出方法は?拒否はできる?
6.マンションの役員や理事長の報酬について
管理組合はマンションの区分所有者全員で構成される
分譲マンションでは、全くの他人がそれぞれ自分の部屋を購入して一部分のみを所有します。しかしマンションには部屋だけでなく、エントランスや階段、駐車場、エレベーターなど全員が共有で使用する設備もあります。
もし共有部分に誰も注意や関心を払わず、維持やメンテナンスもしなければ、マンションはたちまち荒廃してしまい、建物の価値も下落してしまいます。全員が「誰かが掃除してくれるだろう」「誰かが点検してくれるだろう」ではダメなんですね。
全員が所有者なわけですから、主体的に建物の維持管理について考えたり、必要な費用を負担しなければなりません。
そこで居住者から管理費を集めたり、共有部分の清掃やメンテナンスを業者に委託したり、古くなった設備を修繕したり、といった管理業務を全員でおこなうための団体が管理組合です。
分譲マンションには、特別な手続きや申請がなくても、当然に管理組合が存在します。これは区分所有法3条でそう定められているからです。
もし分譲マンションに管理組合が存在しない、となると非常に面倒なことになります。
例えば、「外部の自治体や町内会がそのマンションの代表者に連絡を取りたいとき、誰と渉外すればいいのか?」「エレベーターが老朽化してきたとき、誰が費用を負担して保守点検をすればいいのか?」「住民のゴミの出し方に問題があるとき、誰に連絡すればいいのか?」など、様々な問題が生じます。
そのため区分所有法では、「管理組合とは任意で設立するものではなく、法律上、当然に存在するものである」と定めているのです。また区分所有者は全員が、管理組合の組合員になります。「私は面倒くさいので、管理組合には関わりません」ということは、区分所有法上、出来ないわけなんですね。
ちなみに組合員になる資格があるのは、区分所有者だけです。その家族や同居人、または賃貸契約で貸している賃借人は、組合員にはなれません。
とはいえ、形だけ管理組合が存在しても、誰も自発的に何もしないようでは、実質的にはないのと同じです。それでは意味がありませんね。
そこで区分所有法では、「最低でも年1回以上は、組合員が全員で集まって話し合いをするように」ということで、以下の条文を規定しています。
この管理組合の集会のことは、総会とも呼ばれます。
原則として、この総会にはマンションの区分所有者(組合員)は全員、参加しなければなりません。ただし、「どうしても仕事が忙しくて参加できない」といった場合には、委任状を提出して同居人(奥さんなど)に代わりに出席して貰ったり、または議決権行使書を提出して、書面で議題について「賛成・反対」などを表明することもできます。
また、「欠席するけど代理人はいない、すべて理事長に任せる」という場合には、白紙委任状を提出します。欠席の際の扱いについては、詳しくは各マンションの管理規約に従ってください。
このようにマンションの維持管理など、大事なことを話し合うために、管理組合は総会を開くことができます。しかし日々の細かい業務について、いちいち組合員を全員招集して毎回、決議するのは非効率で面倒です。
そのため、総会では「理事会」や「理事長」を選任するだけにして、日々の実際の管理業務や意思決定は、理事会や理事長に任せるという運用が一般的です。
理事長は、管理組合の代表者となります。役割としては、共有部分の維持管理などの業務の方針、方向性などを決めることです。他にも、マンションの管理規約で定められた業務内容を遂行したり、総会を招集するのも理事長の仕事です。
副理事長の役割
マンションによっては、副理事長が選任されることもあります。副理事長の役割は、理事長に何か事情があって業務を遂行できなくなったときに、理事長の代理をすることです。
理事の役割
その他、総会によって数人の理事が選任されます。これら、理事、副理事長、理事長で構成された組織を「理事会」といいます。普段の維持管理、日常業務は、この少数精鋭である理事会メンバーが月1回程度で集まって話し合い、決議していくことになります。
監事の役割
監事の役割は、理事会がちゃんと業務を遂行しているかどうか、組合員から集めている管理費や修繕積立金が適切に使われているか、など、業務や会計を監査することです。簡単にいえば、監視係ですね。この監事は、理事と兼任することはできません。(区分所有法50条)
これら、理事長、副理事長、理事、監事などの役職のことを、まとめて役員といいます。
この総会で選任された役員たちが、実際のマンションの維持管理についての方針を話し合って決めていきます。よく分譲マンションを購入した人なんかが、「管理組合の役員に選ばれちゃってさぁ・・・」などと話しているのは、このマンションでの役職のことなんですね。
ちなみに、この役員の選任方法については後述します。
実際の日々の管理業務は、全て管理会社に委託する
さてマンションの維持管理の業務について、責任を持って話し合ったり方針を決めるのは理事会の仕事ですが、実際には彼らも自ら管理業務をするわけではありません。
というのも、理事長といっても多くの場合、普通の一般居住者です。特別な不動産の専門知識を持ち合わせているわけではありません。また普段、仕事をしている方であれば、毎日付きっきりで不動産の管理業務ばかりをしているわけにもいきません。
何より、ほとんどの管理組合では、理事長は無報酬(または数千円程度の少額報酬)で引き受けているわけですから、そこまで時間と熱意をかけることはできません。そのため約9割近くの分譲マンションでは、管理組合は実際の業務を管理会社に委託しているのが実情です。
管理組合から委託を受けて、実際の不動産の維持管理業務をおこないます。例えば、共有部分の日常清掃、エレベーター等の保守点検の立会い、居住者からの管理費の徴収、管理組合の会計や出納、エントランスの受付、外部との連絡窓口の設置、ゴミ捨て場の管理、理事会への報告など、マンションに纏わるほぼ全ての業務をおこないます。
このマンションの管理会社は、(悪質業者の排除のため)国土交通省への業者登録が必須になっています。そのため、ちゃんとした管理会社であれば以下の国土交通省のページから検索することができます。
また理事長や理事会は、管理会社からの報告やアドバイスをもとに様々な判断や意思決定をおこないます。
管理組合の役員(理事)の選出方法は? 拒否はできる?
さて、上記のようにマンションの維持管理をしていくためには、管理組合は理事(役員)を選任する必要があります。しかし正直に言って、自ら進んで理事や役員をやりたいという人はあまりいません。
多くの人は普段の仕事やプライベートで忙しいですし、理事長や役員をやっても報酬が貰えるわけでもありません。ほとんどボランティアなので、本音では「面倒くさい」「できれば拒否したい」と思っている方も少なくないようです。
とはいえ、誰も役員のなり手がなければ、それはそれで困ります。今後も気持ちよくマンションに住み続けるためには、「誰かが理事をやらなければならない」と居住者も内心では理解しているからです。
そのため、ほとんどの管理組合では輪番制(りんばんせい)、つまり順番で理事長や役員を引き受けることを決めています。
例えば1階から1人、2階から1人、3階から1人、など各階から1人ずつ理事を選任することを決めておいて、今年は101号室の××さん、来年は102号室の○○さん・・・というように、公平に全員が交代で理事を引き受けるような仕組みです。
よく「管理組合の理事が回ってきた」「今年は役員が回ってきた」というような表現をするのは、この輪番制が採用されているからなんですね。
ちなみにほとんどの管理組合では、理事の任期は1~2年にさだめられています。1年程度での交代であれば、多少しんどくても「1年だけなら我慢するか」「他の皆さんも忙しいなか引き受けてるんだから、自分も・・・」という気持ちになりやすいかと思います。
なお原則、役員や理事には区分所有者でないと就任できない場合が多いです。ただ、奥さんなど配偶者が代理することをマンション管理規約で認めているケースもあります。どの家もご主人が忙しい場合がありますからね。これも各マンションの管理規約を確認してください。
さて、管理組合の役員の選任に輪番制が採用されているとして、自分の番が回ってきたときにこれを拒否することはできるのでしょうか?
「どうしても役員を避けたいのですが・・・」「理事を断る方法はありますか?」といった質問や相談は多いですが、結論からいうと、どうしても嫌であれば拒否することは可能です。本人が拒んでいるのに、強制的に理事に就任させることはできません。
理事の選任を断る理由としては、やはり「仕事が忙しいので」「家庭の事情で(看護、介護など)」「もう高齢なので」といったものが多いようです。もちろん他の方も忙しいのは同じですから、自分だけ断ると、多少、白い目で見られるくらいのことはあるでしょう。
よく「マンションの理事や役員はボランティアだ」「なんで自分がやらなきゃいけないのか」という被害者意識の方がいたりますが、この主張は本来は間違っています。
なぜなら、区分所有者は一部とはいえ、マンションを所有しているわけですから、自分のマンションを自分で維持管理するのは当たり前ですね。「誰かがやってくれるから何もしない」というのは少し虫の良い話です。
ただそうは言っても、どうしてもマンション理事を引き受けることのできない事情がある場合は、仕方ないと思います。法的に強制されることはありませんので、輪番制であっても理事を拒否することは可能です。(もちろん管理費の支払いなどは拒否できません)。
最近では、理事に就任するインセンティブを付けるために、役員や理事長に報酬を支払っている管理組合も増えてきているようです。国土交通省がおこなった平成25年度の調査によると、全体のうち73.1%の役員は無報酬ですが、20.6%の管理組合は役員全員に報酬を支払っているようです。
また、役員報酬の平均は一律の場合で月額2600円、一律でない管理組合は、理事長の報酬が月9200円、理事が4400円、監事が4100円となっています。(平成25年度マンション総合調査結果について)