自己破産で免責不許可になる割合(確率)はどのくらい?
自己破産で免責不許可の決定が出る確率は、それほど高くはありません。最高裁判所の統計資料によると、平成21~平成23年までの免責不許可決定の割合は0.15%前後となっており、免責不許可決定が出る確率は全体の1%もないことがわかります。ただし中には裁判所から取り下げを指示される場合もあり、実質的な「免責許可が下りない割合」でいえば、2%程度と推測されます。
例えば、ギャンブルや浪費で借金を作った場合みたいに、自己破産の免責不許可事由(※)があるときでも、実際には裁判所の裁量で免責にして貰える場合が多いんだよねー?
一般的には、免責観察型(※)の管財事件になって、破産管財人の指導のもとで反省文を書いたり、数カ月間、節約しながら家計簿を付けたりすることで、裁量免責を貰える場合が多いね。
「ほとんどのケースで裁量免責になる」って話は、前にも聞いたことがあるけど、具体的な数字としては、実際どのくらいの割合で免責不許可になる可能性があるのかなー?
思ってたより少ないね。それってつまり、1000人が自己破産を申立てたとしたら、そのうち実際に免責不許可の決定が出るのは2人くらいしかいないってことだよね?
じゃあ、免責不許可決定や、申立ての却下、自主的な取下げとかも全部含めて、「免責許可決定が下りなかった割合」っていうのは、大体、どのくらいなのー?
- 免責不許可決定が実際に出る割合は0.2%未満。実は全体の1%もない
- 免責許可が下りる割合は、全体(免責申立てされた数)のうち97%前後
- 自主的な免責申立ての取下げの割合が2%前後あり、割合は年々増えている
- 裁判官によっては免責不許可決定をださず、申立ての取下げを勧めている
統計上の数字からみる免責不許可になる確率
最高裁判所の統計資料によると、平成23年の自己破産の既済件数10万7879件のうち、免責許可になった件数が10万5169件(97.4%)、免責不許可になった件数が174件(0.16%)、取下げや却下の件数が2536件(2.3%)となっています。
統計資料(平成23年)
項目 | 件数(割合) |
---|---|
免責許可 | 10万5169件(97.4%) |
免責不許可 | 174件(0.16%) |
取下げ/却下 | 2536件(2.3%) |
合計 | 10万7879件 |
参考資料:破産実務Q&A 頁399
1年間で10万件以上の自己破産の申立て(免責許可の申立て)があって、そのうち、免責不許可の決定が出るのが174件ですから、それほど多くないことがわかります。
免責不許可事由がある場合でも、よほど悪質でない限り、ほとんどは裁量免責となります。
また大阪地裁では、免責観察型 ※ の管財事件がありますので、全国平均よりもさらに免責不許可の割合は低くなっています。
日本弁護士連合会は3年に1度、およそ1000人程度の破産者を対象にした調査を公表しています。
その調査記録によると、近年の免責不許可の件数や割合は、
以下のようになっています。
項目 | 2014年調査 | 2011年調査 | 2008年調査 | 2005年調査 |
---|---|---|---|---|
免責許可 | 96.44% | 96.67% | 97.85% | 97.63% |
免責不許可 | 0.00% | 0.08% | 0.17% | 0.26% |
却下/棄却 | 0.24% | 0.24% | 0.08% | 0.26% |
取り下げ | 2.75% | 2.11% | 1.57% | 0.88% |
死亡終了 | 0.32% | 0.24% | 0.08% | 0.09% |
2014年調査 | |
---|---|
免責許可 | 96.44% |
免責不許可 | 0.00% |
却下/棄却 | 0.24% |
取り下げ | 2.75% |
死亡終了 | 0.32% |
2011年調査 | |
免責許可 | 96.67% |
免責不許可 | 0.08% |
却下/棄却 | 0.24% |
取り下げ | 2.11% |
死亡終了 | 0.24% |
2008年調査 | |
免責許可 | 97.85% |
免責不許可 | 0.17% |
却下/棄却 | 0.08% |
取り下げ | 1.57% |
死亡終了 | 0.08% |
2005年調査 | |
免責許可 | 97.63% |
免責不許可 | 0.26% |
却下/棄却 | 0.26% |
取り下げ | 0.88% |
死亡終了 | 0.09% |
参考資料:日弁連「2014年破産事件及び個人再生事件記録調査」参考リンク
2014年の調査結果では、対象者1240件(47都道府県50地裁)のうち、免責不許可になった件数はなんと0件だったようです。一方で、自主的な取り下げの割合は、2014年には2.75%となっており、その割合は昔よりも増加しています。
免責不許可事由があり、かつ裁量免責も望めないような事案では、裁判所が自主的に取り下げを勧めたり、個人再生に切り替えるように指示するケースも多く、自主的な取り下げの中にも、実質的には「免責不許可」に該当する人が一定数含まれていると推測されます。
閉じる