自己破産で退職金は自由財産になる?それとも没収される?
自己破産することで退職金はどうなるか、が気になる方は多いはずです。サラリーマンで長年に渡って勤めている方の場合であれば、退職金もそれなりの金額になっていると思います。
この退職金が自由財産として処分対象にならないのか、それとも破産財団として没収・処分の対象となるのか、はこれからの生活費や経済再建を考えていく上で非常に重要なポイントです。(参考:「自己破産で処分される破産財団と、処分されない自由財産」)この記事では自己破産と退職金について、詳しく解説したいと思います。
自己破産をするとやっぱり、退職金は資産として没収されてしまうのかなーっ?! 気になるーっ!
退職金債権は、現時点で仮に退職した場合に受け取れる金額が算出可能なことから、資産として処分対象になります。ただし退職金債権は、民事執行法152条で「退職手当に係る債権は、その給付の4分の3に相当する部分は差押えてはならない」という差押禁止債権に該当するため、没収されるのは見込額の4分の1までになります。
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破産法34条(破産財団の範囲)上では、「破産者が破産手続き開始前に生じた原因に基づいて行う将来の請求権」も破産財団(処分される対象の資産)として定められており、支給前の退職金債権はこれに含まれます。
ただし、同34条では同時に「ただし差押禁止財産は除くこと」と定めています。つまりポイントは、退職金債権が差押え禁止財産にあたるのかどうか、ということになりますが、結論からいうと退職金債権はその額のうち4分の3が差押え禁止とされています。逆にいうと、4分の1までは差押えが可能な債権になりますので給付前の退職金であっても見込額の4分の1は没収対象になります。
では給付前の退職金債権の額はどうやって計算するのでしょうか? これは、仮に現時点で職場を退職した場合に受け取ることのできる退職金額を基準に、その4分の1にあたる額を計算します。
破産法で破産財団の対象になるのは、破産手続き前までに生じた原因に基づく債権だけなので、破産手続き後にもっと働いて積み上がった退職金債権については新得財産として差押えできないからです。
= 現時点で会社を辞めた場合に受け取れる退職金額 × 1/4
で計算できます
上記でポイントになる「現時点で会社を辞めた場合に受け取れる退職金額」を算出するためには、会社の経理や総務担当に、退職金見込証明書を発行して貰う必要があります。これがなければ退職金額の算定ができないからです。
よくこの「退職金見込額証明書」を取ると、会社に怪しまれるんじゃないか、自己破産を勘付かれるんじゃないか、と心配される方も多いようですが、この退職金見込額証明書は何も自己破産だけに必要な書類ではありません。
- 不動産の住宅ローンを組むのに必要といわれた
- 長期ローンの与信審査に必要になった
- 保証人になる際に、銀行から必要といわれた
など、それらしい理由を説明して発行して貰うのがいいと思います。また万が一、自己破産をしようとしていることがバレたとしても、それを理由に会社を解雇するのは不当解雇にあたりますので、堂々としていれば問題ありません。
退職金見込額の8分の1にあたる金額が20万円以下の場合には、そもそも退職金債権は資産として見なされません。これを自由財産の拡張といいます。
破産法34条4項では、各裁判所の裁量により自由財産の範囲を拡張させることを認めています。例えば、東京地方裁判所では、支給見込額の8分の1が20万円に満たない退職金債権や、評価額が20万円に満たない自動車などは自由資産と見なします。
退職金の破産法上の破産財団に属する範囲は、退職金見込額の4分の1ですが、実際には将来の退職金は必ずしも受け取れることが確定しているものではありません。
そのため実務上は、破産財団に属する没収額は退職金見込額の4分の1ではなく8分の1までとし、さらにその8分の1相当額が20万円に満たない場合には、そもそも資産として扱わない、とされているケースが多いです。
逆に既に退職金が支給されてしまっているケースはどうなるでしょうか? この場合は、退職金かどうかというのはあまり関係なく、単純に「現金」または「預金資産」という括りで扱われます。
現金と預貯金の破産財団に属する範囲について、おさらいすると以下のようになります。
(2)口座預金 ・・・ 20万円以下の口座預金は自由財産。それを超える預金は破産財団(処分対象)