個人再生にかかる弁護士費用の相場はどのくらい?
個人再生は、裁判所に申請する手続きです。必要な書類や準備も多いですし、すべての債権者を対象としますので手間や時間もかかります。通常、全ての手続きを債務者本人が自力でやることは困難ですので、代理人弁護士(または司法書士)に委任することになりますし、裁判所もそれを推奨しています。それでは、個人再生を弁護士に委任する場合、いくら費用が掛かるのでしょう?
個人再生では必要な書類も多いし、不備があると再生計画が不認可になる可能性もあるから、やっぱり専門家への依頼が必要だよね? どのくらい費用がかかるかなー?
うーん、でもやっぱり結構高いなー! 借金が100万円単位で減ることを考えれば、仕方のない費用なのかな。。。ちなみに、どの弁護士さんにお願いするかで費用は結構変わるの?
- 弁護士費用の相場は40~60万円、通常は受任後の分割払いになる
- 個人再生の弁護士費用は、事務所によっても料金はそれほど大差ない
- 債務整理の経験が豊富で、信頼できそうな事務所を選ぶ。
- 司法書士の場合は30~40万円で依頼できる(ただし書類作成代行のみ)
- 司法書士の場合、個人再生委員が選任されると結局、総額が同じになる場合も
1.個人再生の弁護士事務所の費用相場って?!
2.個人再生の弁護士費用は、いつ支払いが必要?
3.弁護士への依頼と、司法書士への依頼の違いは?
4.司法書士に依頼すると、個人再生委員が選任される?
個人再生の弁護士事務所の費用相場って?!
個人再生の弁護士費用の相場は、大体どこの事務所も40~60万円の範囲になります。
民事訴訟や刑事裁判などとは異なり、個人再生は基本的には裁判所で定められた手順に沿って粛々と手続きを進める仕事なので、弁護士の腕の良し悪しによって劇的に結果が変わることはありません。そのため、どの事務所に依頼しても有名どころは大体この料金の範囲になります。
個人再生手続き費用 | 弁護士法人R | I法律事務所 | A法律事務所 |
---|---|---|---|
住宅ローン特則なし | 50万円~ | 50万円~ | 40万円 |
住宅ローン特則あり | 60万円~ | 記載なし | 50万円 |
地方の零細法律事務所などで広報や情報発信にもほとんど力を入れていない事務所だと、もう少し相場が下がる可能性もあります。ただそういった事務所の場合、経験や実績をホームページ等で確認することができず、知名度も低いことが多いので、(優良な事務所であれば問題ないのですが)そうかどうかの判断が難しい面もあります。
もちろん綺麗なホームページを構えて広告費をかけている事務所が、一概に優良な事務所であるとは言い切れませんが、無料ブログ等しか窓口がないような事務所に比べると、極端なハズレを引く可能性は低いように思います。
また、裁判のように弁護士の腕次第で結果が180度変わるようなことこそありませんが、それでも事務所に債務整理の経験や実績があるかどうかは非常に重要です。
経験の豊富な弁護士事務所に依頼することで、細かい部分での清算価値の算定や、債権者、裁判所との交渉の結果、弁済額に多少の差がでることはあると思います。なるべく債務整理の実績や経験が豊富な弁護士事務所を選ぶべきでしょう。
個人再生には、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)という制度があり、ローン返済中の住宅を手元に残したまま他の借金だけを圧縮することができます。個人再生を利用する最大のメリットともいえますが、この住宅ローン特則を利用するかどうかで弁護士費用が変わってくることがあります。
住宅ローン特則を利用する場合、個人再生前にあらかじめ銀行などの住宅ローン債権者と協議して、今後の支払い方法やリスケジュールなどについて相談しておく必要があります。(民事再生規則101条)
またその他にも、住宅ローン特則を利用する場合には、いろいろ手間や手続きが増えますので、弁護士事務所によっては「住宅ローン特則あり」と「住宅ローン特則なし」とで5~10万円の費用の差を設けている場合があります。
個人再生の弁護士費用は、いつ支払いが必要?
個人再生手続きで数百万円単位で借金の元本が減額できる場合、損得勘定でいえば50万円の弁護士費用を支払ったとしても決して高くはありません。任意整理に比べれば弁護士費用は断然高いですが、任意整理ではそもそも借金の元本は減りませんので、最終的な総支払額でいえば得するケースが多いはずです。(任意整理の弁護士費用)
とはいえ実際には、借金苦に陥っている方が、現実的にポンっと50万円のキャッシュを支払えることはあまりないでしょう。
弁護士費用を支払うために、金融機関からお金を借りたりした場合、それは詐欺罪にあたる可能性があります(参考「個人再生の直前に借入をしてはいけない?!」)。家族や親戚から援助して貰えればベストですが、そうもいかない場合も多いでしょう。
そのため、多くの弁護士事務所では、分割払いや一部後払いを認めています。
弁護士が個人再生を受任した後は、すべての債権者への支払いは一旦ストップします。そのため、多くの債務者の家計には、今までよりも余裕が生じるはずです。これを利用して、まずは弁護士費用を分割払いさせるケースも多いです。
分割払いの方法は、各事務所それぞれです。
50万円全額を10回などの分割で支払うことを認める事務所もあれば、20万円程度は最初に着手金として一括で受け取り、残りの30万円を個人再生の手続き期間中(4~6カ月)にかけて分割払いを求める事務所もあります。どの程度の着手金が必要か、後払いや分割払いが可能かどうかは、弁護士事務所に相談してください。
また裁判所によっては、履行可能性のテストのために、分割予納金や積立金が必要なので、それとの兼ね合いも検討する必要があります(分割予納金の場合は個人再生委員への報酬が先に天引きされます)。
他にも弁護士への委任後、実際に裁判所の申立てをする前に着手金を分割で払う方法もありますが、申立てまでの期間をあまり引き延ばしすぎると債権者に訴訟される場合もあるので注意が必要です。
弁護士への依頼と、司法書士への依頼の違いは?
当サイトでは何度か説明していますが、最も大きな違いは、司法書士は弁護士とは違って法定代理人になることができない、ということです。司法書士は書類作成の代行までは法律で認められていますが、あなたの代わりとなって裁判所に申立てをおこなったり、代理人として裁判所とやりとりすることはできません。(司法書士3条)
少し詳しい方であれば、「借金の金額が140万円以下なら、認定司法書士であれば代理人になれんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、これは簡易裁判所の話です。個人再生などの再生事件は、管轄が地方裁判所になりますので、認定かどうかに関わらず、すべての司法書士は書類作成代行までしか権限がありません。
上記の理由から、同じ費用相場であれば弁護士に依頼しない理由がありません。そのため、司法書士の方が費用相場が10万円程度安く、大体30~40万円の範囲で依頼できることが多いです。
安いところや、住宅ローン特則がないケースだと、20万円台で受任してくれる司法書士事務所もあります。
個人再生手続き費用 | M司法書士 | 司法書士法人S | 司法書士Y |
---|---|---|---|
住宅ローン特則なし | 30万円 | 34万9800円 | 30万円 |
住宅ローン特則あり | 35万円 | 39万9800円 | 32万円 |
これだけ見ると、司法書士の方がかなり安くてお得に感じます。では実務上、書類作成代行までしか出来ないと、何か問題はあるのでしょうか?
これは断言は難しいのですが、実務上は「どうしても弁護士でないと困る」という場面は恐らくありません。個人再生委員との面談には司法書士でも同席できるようですし、個人再生の場合は通常、裁判所の審尋もありません。ただ、裁判所との直接のやり取りなどができませんので、安心という意味では、やはり弁護士への依頼した方が遥かに安心なのは間違いありません。
また司法書士に委任した場合、個人再生委員が選任されてしまう可能性があり、そうなると結局、支払い費用が増えてしまうケースがあるため注意が必要です。
個人再生の場合は、個人再生委員という手続きの補助人(弁護士)が裁判所側からも選任される場合があります。なので、個人再生委員の報酬もあわせて考えないと司法書士を選択する意味がありません。
弁護士を代理人にしていれば、個人再生委員が選任されないことが多く、その分の報酬額が浮くため、(司法書士に委任した場合と比べて)結局トータルの支払い額が変わらないケースがあるのです。
まず東京地方裁判所の場合、全ての案件で必ず個人再生委員が選任されますが、その報酬は「弁護士が代理人」の場合が25万円、「本人申立て」の場合は15万円になります。問題は、司法書士に書類作成の代行を依頼した場合が、どちらに当て嵌まるか?です。
これについては、残念ながら明確なソースを見つけることができませんでした。が、いくつかの司法書士事務所のホームページで、「東京地裁では別途、25万円の分割予納金が必要」と記載されているのを確認しましたので、司法書士代理の場合は、25万円の分割予納金がかかる可能性があると思います。
その他の全国地方裁判所では、代理人として弁護士を立てている場合は、原則として個人再生委員は選任されません。つまり個人再生委員への報酬は0円です。一方、本人申立ての場合は必ず個人再生委員が選任されます。その場合は、相場として20万円前後の報酬が別途、必要になります。
司法書士代理の場合は、裁判所の運用次第では「本人申立て」と同じ扱いを受ける可能性があり、その場合には20万円余計な費用がかかる、ということです。もちろん司法書士に代理を依頼しても、個人再生委員が選任されない裁判所もあります。
まとめると以下のようになります。
裁判所 | 専門家 | 個人再生委員 | 報酬額相場 |
---|---|---|---|
全国の裁判所 | 弁護士 | 選任なし | 0円 |
全国の裁判所 | 司法書士 | 選任あり(△) | 約20万円前後 |
東京地方裁判所 | 弁護士 | 選任あり | 約15万円 |
東京地方裁判所 | 司法書士 | 選任あり | 約25万円(△) |
※ (△)はその「可能性がある」という意味です。必ずということではありません。
司法書士に個人再生手続きを委任する場合、この裁判所への予納金(個人再生委員への報酬)について、弁護士に委任した場合との違いを、敢えて向こうから教えてくれることはないでしょう。
つまり「依頼費用と別途、予納金が○万円必要ですよ」という説明はあっても、わざわざ「この予納金○万円は、もし弁護士に委任した場合は支払わなくて良くなるよ」とは教えてくれない、ということです。
とはいえ、それぞれの地方裁判所ごとの運用方針で、「個人再生委員が選任されるかどうか」「予納金は幾らなのか」といった情報はいまいち素人にはわかりません。なので、司法書士への委任を考えている場合は、ズバリ、「個人再生委員の報酬について、弁護士に依頼する場合とで違いはあるか?」という点を最初に聞いておくべきだと思います。
単に「なんとなくホームページでの費用が弁護士よりも安かったから」、という理由だけで司法書士を選ぶのはお勧めできません。