個人再生後に支払い遅延や滞納が続いたらどうなる?

個人再生の再生計画では、弁済額は大きく減額されますので、通常、余裕を持った返済が可能になります。しかし返済期間は3年間続きますので、なかには一時的な支出の増加や、あるいはたまたま忘れてしまったり、その他何らかの理由で支払いが滞ってしまったり遅れてしまう方もいます。
個人再生の再生計画に不履行があった場合はどうなるのでしょうか?

再生計画の認可決定後に支払いが遅れた場合
ねえねえ、先生ー!
再生計画の認可決定後に、もし支払いが遅れてしまったり滞ってしまった場合ってどうなるのかなー? やっぱり1回遅れたらもう再生計画が取消になってしまうのかなー?!
もちろん再生計画は前提として、絶対に遅れることはあってはならないし、もしそれで再生計画が取消になっても文句は言えないことは知ってて欲しい。その上で実際はというと、1回遅れたというだけで再生計画が取消になることはあまりないだろうね。
なるほどーっ、じゃあ万が一、うっかり振込忘れた、というような時は1回なら大丈夫な可能性もあるってことだね。でも2回、3回と支払い遅れがあったりすると、やっぱり再生計画の取消の申立てがされたりするんだよね?
そうなるだろうね。支払いが遅れた相手の債権者の借金が、総債権額の10分の1以上を占める場合には、その債権者は裁判所に再生計画の取消を申立てることができる。この要件を満たしてない債権者は、訴訟で回収を図ってくるだろうね。
  • 再生計画の認可決定後に支払い遅延があると、再生計画が取消しになる
  • 1度でも遅れると取消の可能性はある。ただ1回目は待ってくれることも多い
  • 取消の申立てができるのは、総債権額の10分の1以上を占める債権者のみ
  • 上記を満たさない債権者は、訴訟による強制執行で回収することになる

再生計画の不履行があると、再生計画が取消になる?!

これは個人再生時に、弁護士さんや司法書士さんから明確に注意を受けていると思いますが、個人再生では、再生計画の遅延や滞納などの不履行があった場合には、債権者の申立てにより再生計画が取消しになります。

個人再生後の支払い遅れに関しては、「何回までなら大丈夫ですか?」「1回でもダメなんでしょうか?」という回数に関する質問は多いですが、法律の条文上は1回でも不履行があれば、債権者は取消しの申立てをおこなうことが可能です。

再生計画の不履行による取消し
民事再生法189条「再生計画認可の決定が確定した場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。」

1項2号「再生債務者等が再生計画の履行を怠ったこと」
民事再生法189条

 
ただし再生計画の取消しには、まず債権者の申立てが必要です(裁判所が勝手に取消しにすることはありません)ので、債権者が申立てをしなければ、取消しになることはありません。

再生計画の不履行による取消しの手順-図

つまり、実務上は1度、うっかり忘れ等で遅れた程度であれば待ってくれる可能性もあります。

債権者も、わざわざ裁判所に取消しの申立て等をおこなうのは面倒です。また再生計画が取り消しになると個人再生により減額された債権はすべて元の金額に戻ってしまいますので、債務者はほとんどの場合、そのまま破産手続きに移行することになります。そうなると結局、債権者は債権を回収することができなくなってしまいます。

そのため、単に一時的な資金繰りの問題や、あるいは単なるうっかりミスで再生計画の支払いが遅れてしまった場合には、1度目であれば、ちゃんとその連絡を事前におこない、かつすぐに遅れた分の支払い取り戻せるのであれば、そう簡単に再生計画が取消しになることはないと思われます。(もちろん繰り返しますが、可能性がないわけではありません。債権者次第です。)

再生計画による支払いを振込日に忘れてしまった場合-イラスト

また言うまでもなく、出来ればそれまでにある程度の支払いの実績があることが望ましいです。例えば再生計画の開始後、1~2カ月ですぐに支払えなくなったような場合は債権者の持つ印象はかなり悪くなるでしょう。

再生計画の取消しの申立てができる債権者って?!

さらに再生計画の支払いの遅れが数カ月に渡って続く(遅れている分の支払いの目途がたたない)、または2回、3回と滞納が続く場合はさすがに債権者も黙ってはいません。

もし支払いが不能なのであれば、債権者からすれば、破産手続きで清算して貰ったほうが今すぐ1円でも多く回収できる可能性があるため、裁判所に再生計画の取消しの申立てをおこなってくる可能性は十分に考えられます。

ただし、これは意外と知られていないことですが、全ての債権者が誰でも再生計画の取消しの申立てができるわけではありません。裁判所に再生計画の取消しの申立てができる債権者は、実は再生計画で定められた総債権額の10分の1以上を占める債権者に限られています。

民事再生法198条 3項
第一項第二号に掲げる事由を理由とする同項の申立ては、再生計画の定めによって認められた権利の全部(履行された部分を除く。)について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる権利を有する再生債権者であって、その有する履行期限が到来した当該権利の全部又は一部について履行を受けていないものに限り、することができる。(民事再生法198条

再生計画の不履行による取消しの申立てができるのは、未履行分の総債権額のうち1/10以上を占める債権者のみ-図

例えば、個人再生の再生計画による支払総額が160万円で、うち60万円については既に返済が終わっていて残りの債務が100万円だとします。

この場合、支払いの遅れや不履行により再生計画の取消しの申立てができるのは、少なくとも残債が10万円以上ある債権者だけになります。債権額が残り7万円しかない債権者は、取消しの申立てをすることはできません。

債権者の強制執行による取り立てについて

「再生計画の取消し」の申立て以外にも、債権者は単に強制執行等の方法によって債権額を回収することもできます。そのため、前述の要件を満たさない債権者等は強制執行により再生債権の回収を図る可能性があります。

ただしこの場合、債権者は再生計画の不履行をもって直ちに強制執行をかけることはできません。

もしこれが企業の民事再生であれば、再生手続きの期間中に「再生債権者表」が作成されます。この再生債権者表は、裁判所の確定判決と同一の効力を有する、いわゆる債務名義にあたりますので、債権者はこの再生債権者表をもってすぐにでも強制執行を裁判所に申立てることができます。

しかし個人再生の場合には、手続き簡略化の目的から債権調査や確定の手続きが省略されるため、再生債権者表も作成されません。そのため、債権者は一度、簡易訴訟や支払督促により債務名義を取得してから、強制執行の申立てをしなければなりません。

再生計画の支払いが遅れた場合の対処方法って?!

まず再生計画の支払いが遅れる理由が、単なる「うっかり忘れ」あるいは「一時的な家計のやり繰り」の問題で、遅れた分はすぐに支払うことができる、という場合には、とにかく少しでも早く債権者、または担当の弁護士や司法書士に相談することが必要です。

再生計画による支払いを継続していく上で深刻な問題(例えば、来月から給与が入ってこなくなる等)があるわけではないので、債権者さえ納得してくれるのであれば問題は生じません。間違っても黙って滞納するようなことがないように、少しでも早く相談してください。

一方で、以下のような理由があって支払いができなくなった場合には事情が異なります。

  • 勤め先の会社が倒産してしまい収入が途絶えてしまった
  • リストラにあって職を失ってしまい、再就職先が見つからない
  • 病気や事故により長期間、働けなくなってしまった

 
上記のような理由がある場合には、再生計画による支払いを継続することは困難になってしまいます。

このようなケースでは、そのままでは再生計画を履行できませんので、民事再生法の制度に則って、「再生計画の期間を変更(延長)する」または「ハードシップ免責の制度を利用する」といった救済措置制度を利用することを検討します。これらについては、以下の記事を参考にしてください。

再生計画が履行できなくなった場合の対処法

・【関連記事】個人再生の計画の変更で弁済期間の延長はできる?
・【関連記事】個人再生が失敗したときのハードシップ免責って何?

ただしこれらの制度を利用するためには、いずれも厳しい条件があります。どの方法も利用することができない場合には、個人再生が取消しになることはやむを得ません。そのような場合には、すべての借金は個人再生前の状態(再生計画中に返済した金額を除く)に戻ることになります。

再生計画の取消しの効力
再生計画の取消し(第4項)の決定が確定した場合には、再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する。(民事再生法189条7項

 
また、再生計画の取消しにより白紙に戻ってしまった借金が返済できない場合には、そのまま破産手続きに移行することが多いです。再生計画が不履行のまま破産手続きの開始がなされた場合にも、個人再生により減額された借金等は、一度、元の状態(個人再生前)の金額に戻ることになります。(民事再生法190条

個人再生で支払額がいくらになるのか弁護士に相談したい方へ

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