特定調停の手続きでは強制執行を停止できるの?

借金の返済の滞納が続き、給与の差押えなどの強制執行手続きを取られている方にとってみれば、「経済生活の再建のために、まず強制執行を停めて欲しい」と強く願っている方も少なくありません。

相手方も法律で認められた手続きに乗っ取っている以上、強制執行をされても仕方がないのですが、それでも現実的に生活の立て直しを図る上で給与の一部が差押えられるのというのは金銭的にも精神的にもかなり厳しいものがあるのは事実です。

特定調停で強制執行を停止・中断できる?
ねえねえっ、先生ーっ!
特定調停の手続きで、貸金業者からの強制執行手続きを停止したり中断させることはできるのかなーっ?!
場合によっては可能なケースがあるね。とはいっても、特定調停の申立てで直ちに強制執行手続きが停止するわけではないよ。強制執行を停止するためには、別途、強制執行停止の申立てを行う必要があるんだ。
ふーんっ、なるほどーっ!
その執行停止手続きを行えば、強制執行を停止することができるんだねーっ!
絶対にというわけではないけれど、強制執行の停止が認められる可能性は高いね。裁判所が「事件の解決のためには、まず強制執行の停止が必要だ」と判断すれば、特定調停法7条1項に基づいて執行停止命令がくだされるんだ。

 

民事執行手続きの停止
特定調停法7条1項(法令データベース参照)では、強制執行が「特定調停の成立を不能もしくは困難にする」、または「特定調停の円滑な進行を妨げる」場合には裁判所の判断で強制執行の停止を命ずることができる。

強制執行停止の申立てについて

特定調停では、裁判所が必要だと判断してくれる場合において、強制執行手続きを停止させることができます。ただし、強制執行の停止は、特定調停の申立てで自動的に実施されるわけではなく、あくまで債務者本人からの申立てが必要になります。これが「強制執行停止の申立て」です。

強制執行停止申立書を提出する

強制執行の停止申立てを行うためには、申立書を別途、提出する必要があります。提出方法については、詳しくは弁護士の方や裁判所に確認していただくのが一番確実なのですが、強制執行手続き申立て書のフォーマット自体はネットでも探すことが可能です。

こちらの裁判所ホームページ(裁判所の申立て等で使う書式例)は大阪地方裁判所・大阪簡易裁判所・大阪家庭裁判所の申立て書類ですが、以下の書式をそのまま変更して使うことでも申立ては可能です。

saiban

上記のページにアクセスすると「強制執行停止申立書」というものがPDFファイル形式でダウンロード可能です。こちらを参考に弁護士の方や、裁判所などに相談されてみるといいでしょう。

強制執行を停止できるのは任意整理にはないメリット

特定調停と同様の効果が得られる債務整理の方法として「任意整理」を検討している方もいると多いと思います(参考:「特定調停と個人再生や任意整理の違いは?」)。

どちらも一長一短でメリットがあります。例えば任意整理であれば、基本的には、弁護士の方に丸投げするだけで借金の整理、交渉などを全て行ってくれますので面倒な書類の準備や、裁判官(調停委員)との面談などもありません。しかし、任意整理は裁判所を介さない私的な債務整理ですので、強制執行手続きを停止させることはできません

停止された強制執行は和解後に取り消される

特定調停の申立てで一時的に停止させた強制執行手続きは、特定調停が無事成立して和解できた場合には取り消されることになります。一方で、特定調停がうまく成立せずに失敗した場合には、強制執行権利は復活しますので、また差押えなどをされてしまう可能性があります。

その場合には、個人再生や自己破産などの別の債務整理手続きにすぐに移行するしかありません。個人再生や自己破産も、強制執行手続きを停止することのできる債務整理の方法で、特定調停に失敗した場合でも申立てを行うことができます。

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