特定調停の上申書と計算書の閲覧について
特定調停の申立てをおこなうと、簡易裁判所からの指示で、相手方の貸金業者は正確な借金残高を計算した「計算書」を裁判所に提出するよう要求されます。この計算書は第一回特定調停までに提出することが義務づけられています。
前に特定調停のスケジュールについての記事で、上申書や計算書の閲覧っていうのがあったんだけど、どういう意味なのーっ?!
特定調停の手続きでは、第一回の特定調停までに貸金業者側から「計算書」と「上申書」(ある場合のみ)の2つの書類が裁判所に提出・開示されます。これらの資料は、第一回の特定調停の日には調停委員が持ち出しており閲覧できない可能性があるため、調停日までに閲覧・コピーをしておく必要があります。
「計算書」について
計算書は金融会社から裁判所に対して、あなたの借金残高(約定利息ではなく、法定利息で再計算された借金残高の総額)が幾らなのかを開示した計算書類です。
この計算書は、自分の借金総額が法律的にみて幾ら分残っているのか、を確認できる重要な書類なので、必ず第一回の特定調停までに実際に閲覧しておく必要があります。
最近では少なくなりましたが、昔は直接、金融会社に取引履歴の開示や、正確な借金残高の再計算を求めても応じてくれない、情報を開示してくれないことは日常茶飯事でありました。そのため、自分たちで正確な借金残高を計算しようとしても、それが困難なケースが多々あったのです。
最近ではそういうケースは減っているので、取引履歴を開示すれば自分でも正確な借金残高は計算できるのですが、それでも金融会社側の提出する計算書を入手しておくことは必要だと思います。
「上申書」について
計算書はわかりましたでしょうか?。それでは次は「上申書」についてです。 上申書には主に以下の2つのパターンがあります。
- 利息引き直し計算を行った結果、借金残高が0円になったとき
- 裁判所が遠距離にあるため、出席しない、という旨を伝えるとき
1つ目は、法定利息である利息制限法に基づく引き直し計算をおこなった結果、実はもう借金が残っていなかった、という場合です。この場合、わざわざ特定調停で話し合いをする必要がありませんので、「債務者の借金残高はもう0円です」という旨を裁判所に報告するかたちになります。
「借金残高が0円なら最初からそう言ってくれればいいのに、特定調停を申告するまで黙っているなんて納得いかない」と思うかもしれませんが、それでもこの場合は嬉しい上申書のケースになります。
もう1つのケースは、「裁判所が遠距離にあるため出席しません、特定調停法17条に基づいて決定を進めてください」と、法律に基づく客観的な判断、決定を裁判所に委任するかたちの上申書になります。
特定調停法17条(参考:法令データベース)では、「調停委員会は双方から申立てがあった場合に関して、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容の調停条項を定めることができる」と定められている。
この場合、債権者と債務者の双方から異論がない場合、特定調停は成立したものとして見なされることになります。このように「上申書」の提出は必須ではありませんが、提出されているケースもありますので「計算書」とあわせてチェックしておくことが必要です。