個人再生で住宅や不動産の価値を査定する方法とは?
個人再生では、住宅の清算価値がいくらかによって最低弁済額(必要な返済額)が変わってきます。そのため、例えば住宅ローンが残っている方や、ローンを完済した不動産を所有している方は、個人再生にあたって不動産の査定額を把握しておく必要があります。
住宅の清算価値が高すぎると個人再生ができないって聞いたんだけど、手持ちの住宅や資産の評価額を知りたいときは、どうすればいいのかなー?!
個人再生の手続きで使用するということは、正直、債務者としては住宅の評価額がなるべく低く査定された方が嬉しいわけだよねー? どっちの評価額で提出すればいいのかな?
- 住宅の清算価値が高すぎると個人再生の開始決定がおりない
- 住宅の価格評価には不動産業者の査定書と固定資産額評価証明書がある
- 裁判所には、固定資産額評価証明書と業者の査定書の両方を提出する
- 固定資産評価証明は市区町村役場、または都税事務所で取得できる
個人再生では、住宅の評価額がなぜ必要なの?!
個人再生では、債務者が住宅を所有している場合にはその評価額を財産目録として裁判所に申告する必要があります。住宅や不動産の評価額には、以下の2通りがあります。
- 清算価値 = 評価額の全額 (既にローンを完済、または相続した不動産)
- 清算価値 = 評価額 - ローン残高 (まだ住宅ローンが残っている不動産)
個人再生では、最低でも上記の「清算価値」以上の金額を返済する義務を負います。これを清算価値保障の原則といいます。例えば500万円の清算価値を持つ住宅を保有している場合には、個人再生を申立てた場合の最低弁済額も500万円以上となってしまいます。
住宅の清算価値が高すぎると、それに比例して個人再生での最低弁済額も高くなってしまうため、裁判所からの個人再生の開始決定がおりない場合もあります。
そのため、住宅を保有している方は、その住宅の時価(購入価額ではなく、現時点での査定価額)を把握しておく必要があります。
住宅の評価額を把握する方法は2つあります。
1つは、市役所(市区町村役場)で取得することができる固定資産評価額証明書(固定資産税評価額証明書)です。これは主に、市町村が住宅や不動産から固定資産税や不動産取得税などの税金を徴収する際に、基準とするために定めた評価額の証明書です。
もう1つは民間の不動産業者から査定を取る方法です。大手会社であればインターネットなどから無料査定を受け付けている場合もあります。
住宅の評価額がわかる”固定資産評価額証明書”って何?!
固定資産評価額は、国が定めた固定資産評価基準に基づいて、市町村長(東京23区内は都知事)が決定します。概ね、土地は公示価格の70%、建物は建築費の50~70%を目安として固定資産の価値を評価する仕組みです。
固定資産評価額は、一般の民間業者のように不動産鑑定士などが鑑定するわけではなく、市役所の役人さんが評価基準に沿って決定します。そのため、実際の時価や建築価格とは一致しないことが多く、目安程度に使われることが多いです。
前述のように、固定資産評価額は固定資産税の算出根拠となる評価額です。また基準となる評価額は手続きコストの問題で、3年に1度しか評価換えが行われません。そのため一般的には、実勢価格よりも少し低めに評価されるようにできています。
また不動産の所有者は、この固定資産評価額に納得がいかない場合は、固定資産課税台帳に登録されてから一定期間内であれば再審査の申し出が可能です。
建物の場合には、「再建築価格方式」といって評価基準日にもう一度、同じ建物を建てるとしたら幾らかかるのか、という金額を算出し、そこから経年劣化による損失を差し引いて計算されます。(これが新築物件の場合、概ね建築価格の50~70%になることが多いです)。
土地の場合には、国土交通省が定める「公示価格」の70%を目安として設定されます。土地には、よく「一物四価」といわれるように、一つの土地に対して4つの値段(実勢価格、公示価格、路線価、固定資産税評価額)が付くといわれます。
このなかでは、固定資産税評価額が一番低く算出されやすい傾向にありますが、個人再生での資産評価で主に用いられるのはこの固定資産税評価額になります。
土地の評価額 | 価格 | 算出機関 |
---|---|---|
実勢価格 | 時価 | 一般市場 |
公示価格 | 実勢価格の90~95% | 国土交通省 |
路線価 | 実勢価格の70~80% | 国税庁 |
固定資産税評価額 | 公示価格の70% | 市町村長 |
さて、個人再生を裁判所に申し立てるにあたって、もし住宅や土地などの不動産を所有している場合には、その評価額を証明する書類を裁判所に提出する必要があります。(参考:「個人再生で必要な書類は?」)
通常、固定資産税評価証明書のみの提出で足りますが、裁判所によっては不動産業者の査定書を求められる場合もあります。また、実勢価格が固定資産評価額よりも低いことを証明するために、敢えて業者の査定書を任意で添付することもあります。
▼▼ 固定資産税評価証明書のサンプル ▼▼
固定資産税評価証明書の取得方法は、東京都23区内か、それ以外の市町村地方かによって申請する場所が異なります。東京都23区内の場合は、各23区内の都税事務所のどこでも申請することができます。それ以外に住宅(不動産)を所有している方は、固定資産が所在する各市町村に申請してください。1通400円ほどの手数料がかかります。
【本人が申請する場合】
・申請者本人が確認できる書類(1種類でOK-運転免許、旅券パスポート、住民基本台帳カード、2種類が必要-国民健康保険、国民年金手帳、共済組合員証、厚生年金保険、納税通知書等)
参考サイト
・東京都主税局-東京23区内の固定資産の「閲覧・証明」制度とは?
・都税に関する証明等申請時の「本人確認」方法について
正確に住宅評価額を査定するなら不動産業者に依頼すべき?!
固定資産税評価額は、あくまで周辺の路線価や再建築価格などを元に簡易的に計算されているものであり、実際に物件を売買する場合の実取引価格とは大きく異なる場合も珍しくありません。
そのため例えば、固定資産評価額が実際よりも高すぎて個人再生ができない(清算価値が高くなりすぎる)場合などは、不動産業者に査定を取った方がいい場合もあります。
大手の住宅売却の査定、見積もりサービスであれば、簡易的な査定書の作成は無料でできるところもあります。「住宅査定 無料」などで検索すると、たくさん業者は見つかりますので信頼できそうなものを選ぶといいと思います。
個人再生に必要な査定書なので、「実際には住宅は売る気はないんだけど、大丈夫かな・・・?!」と心配される方も多いかもしれませんが、そこは「将来、売ることを検討しているので現時点での売却価格を知っておきたい」くらいの説明で大丈夫だと思います。