借金問題と法律の用語集-2-

専属的合意管轄とは
専属的合意管轄とは、合意管轄のなかでも「法定管轄よりも優先する管轄地」のことです。例えば、契約書で「この契約についての紛争は、大阪地方裁判所を第一審の専属的管轄裁判所とする」という定めがあれば、被告の住所地が名古屋(つまり法定管轄は名古屋)であっても、第一審の管轄地は大阪地裁で決まりです。
一方、付加的合意管轄とは、「法定管轄と併存する管轄地」のことです。例えば、契約書で「大阪地方裁判所を管轄裁判所とする」としか記載がなく、「専属的」との文字がなければ付加的合意と解釈されます。この場合は、被告の住所地が名古屋であれば、裁判の管轄地は、大阪地裁、名古屋地裁のどちらでも良いことになります。
電話会議とは
電話会議システムとは、裁判の当事者(原告と被告)のどちらかが遠方で裁判に出頭するのが大変な場合に利用できる方法です。例えば、被告が遠方で裁判所に出頭できない場合に、裁判所から被告に電話をかけることで、裁判所にいる原告と電話先の被告とを繋いで裁判手続きを進めます。(この場合、原告側は裁判所に出頭していないとダメです)。ただし裁判所によっては「本人確認が難しい」との理由から、弁護士が代理人となっている場合のみ、電話会議システムを許可する場合もあります。

【参考】裁判に遠方で出頭できない時の電話会議システムでの和解

移送申立てとは
移送申立てとは、訴訟をおこされた被告(訴えられた側)が裁判手続きに入る前に、そもそも「裁判の管轄地を変更してほしい」と裁判所に申し立てる手続きをいいます。例えば、貸金業者やカード会社から、本社のある東京や大阪の裁判所に訴訟を提起された場合、被告の個人が福岡在住などで出頭が困難である場合は、民事訴訟法17条による裁量移送を申立てることができます(ただし裁判官が納得できる理由がなければ認められない場合が多いです)

【参考】遠方の簡易裁判所で訴訟された場合の移送申立ての方法

元利定額リボとは
まず定額リボ払いというのは、「月々の借入額に関係なく毎月の返済額が一定」の返済システムのことをいいます。例えば、毎月2万円の定額リボであれば、3月に3万円、4月に0円、5月に1万円借りたとしても、3~5月の返済額は2万円で一定です。
さらに「元利定額リボ」という場合には、この一定額のなかに利息も含まる返済方式をいいます。つまり「元本返済分+利息分」の合計額が毎月2万円になります。

【関連】カードローン等の残高スライド方式やリボ払いの仕組み

残高スライドリボとは
残高スライドリボとは、毎月の締切日の借入残高に応じて、返済額が変動する方式のリボ払いをいいます。通常はリボ払いというと、月々の借入額に関係なく、毎月一定の金額を返済する仕組みのことをいいます。例えば、月2万円のリボ払いであれば、いくら使おうと毎月の返済額は2万円です。
一方、残高スライド方式の場合は、「借入残高が10万円以上であれば最低月2万円~、借入残高が30万円以上であれば最低月3万円~」というように、残高に応じてリボの最低返済額が変動します。

【参考】カードローン等の残高スライド方式やリボ払いの仕組み

無権代理とは
無権代理とは、正当な委任を受けていない(代理権限がない)人が、勝手に本人を代理して第三者と契約などの法律行為をすることをいいます。例えば、借金をするときに、本人の承諾や委任を受けていないにも関わらず、勝手に他人の名前を保証人欄に代筆で署名したり他人の印鑑を押印するような場合です。このような無権代理行為は(本人が追認しない限り)当然、無効です。
利益相反行為とは
親権のある親は、本来、法律上当然に未成年の子供を代理することができます。これを法定代理といいます。そのため一般的には、親は子供の代理人として、子供に代わって契約(法律行為)をすることができます。
ただし、その契約が親と子供との間の契約であり、かつその契約の内容が、親と子供との利害関係が対立するものである場合には、親は子供を代理することができません。これを利益相反行為といいます。例えば、子供名義で遺贈された財産を親が譲り受ける契約や、親の借金の連帯保証人に子供を指定する契約は、親の単独ですることはできません。
表見代理とは
表見代理とは、法律上は無権代理ではあるものの、「正当な代理人だと誤解されるような外観があり、それを相手方が信じて取引をしてしまった」という場合に、その取引の相手方を保護するために、一定の場合に代理権を認めるという法律上の規定です。
例えば、AさんがBさんに委任状と印鑑証明書を預けていたせいで(実際にはその委任契約の期限が過ぎているにも関わらず)Bさんが代理人として勝手にCさんと契約をしてしまった場合で、かつCさんが委任契約の期限が過ぎていることを知らなかった場合、表見代理が成立します。この場合、Aさんは契約内容を履行しなければなりません。
筆跡鑑定とは
筆跡鑑定とは、証拠物の筆跡が本人の筆跡とどの程度一致しているかを、その道の専門家に鑑定して貰いそれを裁判の証拠として提出する方法です。民事訴訟法229条では「文書の成立の真否は、筆跡または印影の対照によっても証明することができる」とありますので、第三者の専門家が客観的に「本人の筆跡と一致しない」とする意見書は重要な証拠になります。ただし科学的な鑑定ではないので、それだけで100%真偽が決まるわけではありません。
有責事由とは
有責事由とは、法律上の離婚原因を作りだした有責配偶者の行為のことをいいます。典型的なものとしては、(1)不貞行為、(2)悪意の遺棄、(3)その他、婚姻を継続しがたい重大な理由などがあります。例えば、浮気をしたり、家計に生活費を一切入れなかったり、DVなどの暴力行為があった場合、これらは法律上の離婚原因となり、慰謝料の対象にもなります。
人事訴訟とは
人事訴訟とは、身分関係の形成や変更について争う訴訟です。例えば、離婚訴訟などが代表的です。一般の民事訴訟とは異なり、人事訴訟の場合は、その管轄が家庭裁判所になります。また「調停前置主義」といって、訴訟を提起する前に、まず調停をすることが法律で定められています。

【参考】離婚調停と離婚訴訟と、財産分与等の家事審判との違いは?

附帯処分とは
附帯処分とは、本来は家事審判で決定する「養育費の金額」「親権者の指定」「財産分与の方法」などの事項を、離婚と同時にする場合に限り、離婚訴訟の中でまとめて審理することをいいます。

【参考】離婚調停と離婚訴訟と、財産分与等の家事審判との違いは?

婚姻費用とは
婚姻費用とは、夫婦が別居している場合に、主に夫から妻や子供に送る生活費(仕送り)のことです。夫には、妻や子供を扶養する義務がありますので、たとえ離婚前で実質的に破綻状態だったとしても、婚姻中である限りは妻子の生活費を分担しなければなりません。
よく養育費との違いを聞かれることがありますが、養育費は「離婚後の子供の生活費」であるのに対し、婚姻費用は「別居中(離婚前)の妻・子供の生活費」である、という点が違います。婚姻費用の金額は、夫婦それぞれの年収と子供の人数から自動的に決まります。

【参考】婚姻費用の算定方法と控除できる費用、養育費との違い

滞納処分とは
滞納処分とは、税金(住民税や固定資産税など)や国民健康保険などを滞納し続けた場合に、国や市役所などの徴税吏員が、強制的に、銀行預金や住宅を差押えて、未納分の税金等を徴収する仕組みのことをいいます。通常、一般の私人や民間企業であれば、裁判をして確定判決を取り、その判決をもって裁判所に強制執行を申立てる、という手順を踏まなければ差押えはできません。しかし税金の未払いの場合は、支払い期限から一定期間が経過すれば、行政の権限で、いきなり滞納処分による差押えをすることができます。
換価の猶予とは
換価の猶予とは、税金等を滞納している場合に、税官庁や市役所に分割納付を認めて貰い、滞納処分による差押えを猶予して貰う(あるいは既にされている差押えを解除して貰う)ための制度です。換価の猶予には条件があり、(1)滞納者に誠実な納税意思が認められること、(2)原則1年以内に分割納付ができること、(3)差押えによって事業継続や生活維持ができなくなること、等が必要です。
自力執行権とは
自力執行権とは、税金などの公租公課の請求において、国や地方自治体(市役所)に認められた強制的な徴収権のことです。一般的に私たちが債権を強制的に請求するためには、裁判に強制執行を申立てなければなりません。例えば、いくら借用証書があったとしても、裁判所を介さずに直接、銀行に行って預金を差し押さえることはできません(これを自力救済の禁止といいます)。しかし、租税債権などの場合は、国や自治体に自力執行権が認められているため、滞納があれば、裁判所を介することなく預金や給与等を差し押さえて強制徴収することができます。

内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、郵便局が「いつ誰が誰にどんな内容の文書を送ったのか?」という事実を証明してくれるサービス付きの郵便のことです。相手に文書を送ったことが証拠として残るので、消滅時効の中断のための請求書や、契約解除のための催告書など、後で裁判になったときに「送った」「送ってない」で揉める可能性のある文書は、内容証明郵便を使って送ることが多いです。用紙や封筒についての決まりはありませんが、文書の内容については、1行に使える文字数、使用できる文字、などが決まっています。
即時抗告とは
即時抗告とは、裁判所の決定や命令に対する不服申し立ての方法です。決定の告知から1~2週間以内(各法律で定められた不変期間内)に申立てることができ、上級裁判所でもう一度、再審理を行って貰うことができます。例えば、地方裁判所の決定に納得がいかない場合は、即時抗告をすることで高等裁判所に再審理して貰うことができます。即時抗告は全ての決定や命令に対して出来るわけではなく、どのようなケースで即時抗告ができるかは各法律で個別に定められています。
請求異義の訴えとは
請求異義の訴えとは、相手(債権者)が強制執行の手続きをしてきた場合に、債務者側が、「請求権の存在や内容に異義があるので強制執行をしないでくれ」と、強制執行の不許を求めて提起する訴訟のことです。
強制執行の手続きは、確定判決や和解調書などの債務名義さえあれば可能です。そのため、例えば、裁判の判決後に債務者が任意で支払いを済ませたにも関わらず、さらに債権者が判決を用いて差押えを申立てることもできてしまいます。そのような場合には、債務者は「請求異義の訴訟」で対抗することができます。
第三者対抗要件とは
第三者対抗要件とは、何らかの権利の有効性を、契約の当事者間だけでなく、アカの他人(第三者)に対しても主張するための要件のことをいいます。例えば、不動産の所有権は、契約の当事者間では、売買契約が成立した時点で移転します。しかし、その所有権を全くの他人に主張するためには「登記」が必要です。つまり不動産の第三者対抗要件は「登記」です。他にも、例えば、普通車の所有権を他人に主張するためには、国土交通省の自動車ファイルへの登録(車検証の所有名義)が必要になります。つまり、普通車の第三者対抗要件は「登録」です。
占有改定とは
占有改定とは、物(動産)を相手に引き渡す方法の1つです。「引渡す」というと、私たちは一般的に、物を相手に手渡すことを想像しますが、法律用語でいう「引渡し」は他にもいくつかパターンがあります。例えば、占有改定は、「目的物を手元に置いたまま、引渡しを完了させる」というかなり特殊な引渡しの方法の1つです。占有改定の場合、実際には物は移動しません。
例えば、AさんがBさんに自転車を譲ることになった場合、Bさんが「この自転車は今日から俺のものね。でも、今日は持って帰れないからAさんのとこに置いておくね」と、Aさんに預けたまま帰ったとします。すると、法律上は引渡しが完了したものの、実際には物は移動していない、という状態になります。これが占有改定です。
債務の承認とは
債務の承認とは、自身の債務の存在を認めるような行為のことをいい、これは時効の中断事由の1つです。例えば、「元金や利息の一部を支払う行為」「口頭で支払うと約束する行為」「分割払いの契約書にサインする行為」などが債務の承認にあたります。
本来、商事債権(消費者金融など)の消滅時効は5年間です。そのため、5年間一切支払いをせずに請求を無視していれば、債務は時効により消滅します。しかし途中で債務の承認をしてしまうと、時効は中断(リセット)され、また5年間数え直しになってしまいます。

配偶者貸付とは
配偶者貸付とは、無収入の専業主婦(主夫)に対して貸金業者がお金を貸すときの法律上のルールの事をいいます。貸金業法という法律では、そもそも「総量規制」というルールがあり、消費者金融などのキャッシング事業者は、顧客に年収の1/3以上のお金を貸すことが禁止されています。しかし例外的に、専業主婦の場合は、夫の同意書や収入証明書の提出があれば、夫婦で合わせて(夫の)年収の1/3までの貸付が認められています。この例外的な制度のことを「配偶者貸付」といいます。

機関保証(奨学金)とは
奨学金の「機関保証」とは、連帯保証人ではなく保証機関(日本国際教育支援協会)に保証を依頼する制度です。保証料の支払いが必要になりますが、代わりに家族に連帯保証人になって貰う必要がなくなります。保証料は借りている金額によって変わりますが、大体、月2000円~5000円くらいの保証料が、毎月学生に支給される奨学金から天引きされます。

紛議調停とは
紛議調停とは、「最初の説明よりも高い費用を請求された」「弁護士の辞任・解任に際しての報酬の請求が納得できない」等の理由で、弁護士と依頼者との間で争いが生じた場合に、弁護士会がそれを仲裁する制度のことです。依頼者が弁護士会に申立てをすることで、弁護士法41条に基づき、弁護士会が調停を実施するかどうかを判断します。

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