借金で簡易裁判所から訴状が届いたときの答弁書の書き方

キャッシング(カードローン)やクレジットカードの滞納、携帯料金の未払いなどを長く放置していると、業者から簡易裁判所に訴訟を提起されてしまうことがあります。裁判は大変ですが、知識をしっかり持っていれば漠然と怖がる必要はありません。この記事では、まず「分割払いで和解するための方法」と「答弁書はどう記載するか?」について解説します。

次記事の「 簡易裁判所から呼出状が!出頭しないとダメ? 」とあわせて読むのがお勧めです。
簡易裁判所に訴えられたときの答弁書
ねえねえ、先生ー!
クレジットカードの支払いができなくて、未払いのまま放置してたら、裁判所から「訴状」と「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」っていうのが届いたんだけど・・・、どうすればいいの?
まあ落ち着いて。まず大事なのは、裁判所からの郵送物に入っている「答弁書」をちゃんと記入して提出することだね。払いたくても一括で支払えない場合は仕方ないから、「分割払いで和解にしてください」という主張を答弁書に書いて提出するしかない。
うぅ・・、裁判なんて初めてだから怖いなぁ。
答弁書で「月2万円ずつの分割払いにしてください」ってお願いすれば、分割払いで和解にしてくれるものなの? もし、無視して答弁書を出さなければどうなるの?
希望通りの金額で和解になるかはわからないけど、ちゃんと答弁書を出して、裁判所にも出廷すれば、大体のケースで最終的には「 裁判上の和解※ 」になるよ。逆に、答弁書を提出せずに裁判も欠席すれば、「一括払い」の欠席判決が出ることになるね。
うーん、あと答弁書の書き方もよくわからないんだけど。
相手方の訴状について、「請求の棄却を求める」とか「請求原因を否認する」とか、チェック項目が色々あるんだけど、これは全部、相手の言い分を認めてしまっていいのかな。借金があるのは事実だし。
請求趣旨は「棄却を求める」にするのが、形式的なルールだね。ただ一番しっかり伝えるべきなのは「一括では払えないので、分割払いを認めてください」っていう主張( 手元不如意の抗弁※ )だから、請求原因のところは認めてしまってもいいけどね。
  • 借金等の滞納で簡易裁判所に訴えられた場合、まず答弁書を提出するのが大事
  • 答弁書で「和解を希望」にして裁判所に出廷すれば、ほぼ裁判上の和解になる
  • 債務内容に争いがない場合は、答弁書は分割払いを認めて貰うために提出する
  • 相手の請求原因は認めてもいいが、第1回期日を欠席する場合は注意が必要
  • 請求原因を全て認めた上で欠席すると、1回で結審して判決になる場合がある
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まずは必ず「答弁書」を記載して裁判所に提出すること

簡易裁判所から特別送達で訴状が届いた場合、一緒に「期日呼出状」(口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状)と、「答弁書」(裁判所が作成した雛型のものと記入例)が入っているはずです。まずこれを確認してください。

大体、訴状が届いた日の1カ月後くらいに「第1回口頭弁論」の期日が設定されていて、その1~2週間前くらいまでが「答弁書」の提出期限になっているはずです。

第1回口頭弁論期日までの目安スケジュール

もちろん提出期限までにしっかり答弁書を出すことが基本ですが、もし何らかの理由で提出が遅れたとしても、実務上は、前日までに裁判所にFAXなどで郵送すれば全然間に合います。それによって提出期限に遅れたからといって裁判上、不利になることはありません。

答弁書は、分割払いで和解を認めて貰うために提出する

答弁書は自分でゼロから書いて作ることもできますが、裁判所からの郵便物に同封されている雛型をそのまま利用しても構いません。

訴訟事件が複雑な場合は、同封の答弁書だと記入欄が不自由なため、自前で答弁書を作成することも多いです。しかし単に「クレジットカードや消費者金融で借りたお金の未払い」等であれば、相手方の請求は正当なものですから、ほとんど争点もないはずです。であれば、同封の答弁書で十分です。

同封されている答弁書を使う?自作する?

これは1つ重要なポイントです。借金返済の滞納や未払い金による訴訟というのは、そもそも「借りた覚えはない」とか、「その金額は納得いかない」といった根本的なところを争う訴訟ではありません。

では何のために答弁書を提出するかというと、「支払う意思はあるけど、今は一括では返済できないので、分割払い(または利息免除、元本の一部減額、支払猶予など)を認めてください」という主張をするために答弁書を出すのです。ここをまず前提として理解しておいてください

逆にいえば、答弁書を提出せずに法廷を欠席すると「一括払いの判決」が出ることになります。(いわゆる欠席判決のことです)

分割払いを認めて貰うために答弁書を提出する-図

(1)答弁書を提出して相手と和解の交渉をして、上手くいけば裁判で「月×万円ずつ~」という分割払いの和解が成立する、(2)答弁書を提出せずに裁判を欠席したら、裁判所は「一括で×万円を支払え」という判決を出す、という違いがあるということをまず知っておきましょう。

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答弁書では相手の請求内容は認めてしまっていいの?

さて、少し話がそれましたが、「支払う意思はあるものの、今は一括では支払えないので、月1~2万円ずつの分割払いを認めて欲しい」というのが基本的な「被告側の希望」だと想定して話をすすめます。

この場合に、裁判所から同封されている答弁書の雛型にある、「請求の趣旨に対する答弁」と「請求の原因に対する認否」をどう記入すればいいのか?という問題があります。

つまり「債務(借金)の存在があること」は認めていて、その上で「分割払いして欲しい」とお願いしているのだから、ここは「認める」にチェック(レ点)を入れて返送すればいいのか、それとも形式上は「認めない」として争う形にした方がいいのか?という問題です。

「請求の趣旨」「請求原因事実」は認めるべき?-答弁書

この部分は、「第1回口頭弁論期日に裁判所に出廷するかどうか?」でも微妙に違います。ちゃんと出廷する場合は、「和解による分割払いを希望する」という意思表示さえしていれば、大体のケースで和解が成立しますので、あまり深く考えなくても大丈夫です。

一方、第1回口頭弁論期日を「擬制陳述※」で欠席する予定の場合は、ここで相手の請求を全面的に認めてしまうと、(分割払いを希望していたとしても)1回目の期日でそのまま結審して判決が言い渡されてしまう可能性があります。

なので結論からいうと、どちらにしても「全面的には認めない方がいい」ということになります。





「請求の趣旨」に対する答弁の記入方法

請求の趣旨に対する答弁というのは、相手が最終的に請求したい結論(「被告は原告に対して金××万円を支払え」という部分)についての反論です。

この請求の趣旨に対する答弁は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告負担とする」と記載するのがルールです。この部分は、そういう形式で提出するのが「お約束」だと理解してください。こちらに非があるとはいえ、一括で支払うことができない以上は、「請求の棄却を求めます」でいいのです。

同封されている答弁書の雛型であれば、管轄の簡易裁判所によっても書式が違うかもしれませんが、「棄却を求めます」という箇所にチェックを入れてください。

請求の趣旨に対する答弁の記入例

「請求原因」に対する認否の記入方法

次に「請求原因に対する認否」です。請求原因というのは、「平成○年○月○日にお金をいくら貸しました」というような、相手方の主張する請求の原因となる事実のことです。

この請求原因事実に対する認否は、(1)認める、(2)認めない、(3)知らない、の3つのいずれかで回答するのがルールです。ただしこれは先ほども述べましたが、実際にはほとんど争う余地はないはずです。

「本当にお金を借りたかどうか?」「債務や利息はいくらか?」「返済期日が到来しているか?」は、原告が金銭消費貸借契約書や取引履歴等を証拠として添付しますので、当たり前ですが、今更これらを「知らない」「認めない」と言い張ってもあまり意味がありません。

請求原因事実について争いようがない場合

方向性としては「請求の前提となる事実」は認めた上で、それに対する抗弁として「一括では支払えないので、分割でお願いします」という主張をするわけですから、原則、認めても問題ありません。(もちろん身に覚えのない請求であれば「不知」でいいです)

欠席する場合は不利になる可能性あり

期日に裁判所にちゃんと出頭する場合は、認めても特に問題はありません。請求原因については全て認めた上で、「支払えないので分割払い(+できれば利息や遅延損害金を免除)にしてください」という点を理由とともにしっかり主張すれば、多くのケースで和解が成立します。

答弁書の記載例

しかし第1回口頭弁論を 擬制陳述 で欠席する場合は、やはり請求原因を全面的に認めていると不利になる可能性はあります。つまり、請求の趣旨への答弁でいくら「棄却を求める」と言っていても、請求原因事実について「全て認める」となると、請求原因については自白が成立します。

そのため、「請求原因は全て認めているのだから、原告(相手方)の請求には理由がある」ということで、1回で結審して判決になる可能性があります。

欠席の場合、認めると1回で結審する可能性も

「追って認否」とは?

自分で答弁書を作成する場合は、請求原因の認否については「追って認否する」とだけ記載しておく方法もあります。「追って認否する」ということの意味は、2回目以降の口頭弁論期日までに、準備書面として提出していく、という意味です。

つまり第1回の期日では請求原因について「認めることも否定することもしない」ということですね。

追って認否

第1回口頭弁論までにほとんど時間がなく答弁書の準備が間に合わない場合などに用いる方法で、はっきり言ってしまうと「時間稼ぎ」です。本当は裁判手続き上、あまり好ましい方法ではありませんが、そういう記述も一応認められています。

これで答弁書で分割払いの和解案(返済プラン)だけ提示しておけば、第1回目の口頭弁論を擬制陳述で欠席した場合でも、もしその和解案を相手方(原告)が受け入れてくれれば、そのまま和解成立(和解に代わる決定)となります。

もし相手方がその和解案を拒否した場合でも、すぐには結審(判決)とならずに、次回の第2回口頭弁論期日が指定されることが多いです。

追って認否で欠席した場合の流れ

ただし裁判所からの郵送物に同封されている形式の答弁書では、この記載方法が出来ない場合が大半です(訴状の請求原因事実のどこに反論があるのかを具体的にチェックしないといけない仕組みになっていることが多いです)。

そのため「追って認否」をするのであれば、以下のページの書式などを参考に自作の答弁書を提出することになります。

外部リンク
3分でできる、答弁書!(趣味の法律セミナーさん)

 
ちなみに「分割払いで和解したい」という思いが本当に強いのであれば、ちゃんと期日に裁判所に出廷するか、事前に原告(相手方)に電話をして和解案の打ち合わせをしておくべきです。そうすれば1回目の期日ですぐに和解が成立します。

「なるべく裁判を引き延ばしたい」という裁判慣れした玄人の方ならともかく、多くの方は、「なるべく早く裁判は終わってほしい」と思っているでしょうから、分割払いを希望するなら1回目の口頭弁論期日で終わらせた方がいいです。





「和解を希望」「分割払いを希望」の欄にチェックを

分割払いによる和解を希望するのであれば、ここは両方とも必ずチェックを入れて、「平成○年○月○日から、毎月○万円ずつ支払う」という箇所に具体的な数字を記入してください。

目安としては(元本金額にもよるので一概には言えませんが)一般的には「分割払いの期間は3年間を超えない範囲」「月々の支払額は少なくとも月1~2万円以上」でないと、なかなか和解は成立しないでしょう。

答弁書-和解の記入欄

ただし、この箇所は「本当に支払える金額」を記入しなければ意味がありません。「この金額だと、和解が成立しないんじゃ・・・」と思うかもしれませんが、そもそも支払えない金額で和解しても全く意味がありません。それなら最初から裁判を欠席して判決を出されても結果は同じです。

例えば、「どんなに頑張っても月1万円しか支払いできない」のであれば、なぜそれだけの金額しか支払いできないのか?の理由(収入、扶養家族の有無、公的手当などの収支の内訳)も含めて、正直に別紙にその旨を記載してください。

払えない理由や言い訳などは、裁判手続きとしては、判決に何の関係もない(法的には何の抗弁でもない)のであまり書いても意味のない事情なのですが、目的が和解の場合は、一応書いておいた方がいいと思います。

利息や遅延損害金の免除は希望してもいいの?

裁判所に出廷して「裁判上の和解」をするのであれば、「経済的に苦しい」などの事情がある場合には、利息や遅延損害金を免除して貰えることも珍しくありません。

そのため、期日にちゃんと裁判所に出頭するのであれば、答弁書では「利息、遅延損害金の免除を求める」「元金部分について月○万円ずつ支払う」と少しわがまま気味に記載しておく方法もあります。

利息や遅延損害金は免除になる可能性あり?

裁判所に行って誠実に支払意思があることを示せば、裁判官も積極的に和解勧告をしてくれることが多く、司法委員もちゃんと仲裁に入ってくれるため、1対1で相手方(原告)と和解交渉する場合よりも、多少はこちらの言い分を受け入れて貰える場合が多いからです。(もちろん免除するかどうかを決めるのは、あくまで原告です)

一方で、擬制陳述で「書面の提出だけで裁判を終わらせたい」と思っている場合は、相手方(原告)が和解案を受け入れてくれない限りは、和解が成立することはあり得ません。裁判所は仲裁も助力もしません。なので、利息免除等の希望が通るかはかなり微妙です。

この「裁判所に出頭するかどうか」という問題は、次記事で詳しく記載することにします。

次記事
簡易裁判所から呼出状が!出頭しないとダメ?

 
もちろん事前に原告と電話相談などで打ち合わせをしていて、既に遅延損害金の免除などが合意できている場合は、その内容の通りに答弁書に記載して裁判所に提出すれば大丈夫です。

なお、元金(借りたお金の元本そのもの)の減額は難しいです。よほど「減額して和解しないと1円も取れないかもしれない」といった緊迫したケース(破産手続きをする可能性があるなど)でない限り、まず原告(相手方)が元本の減額による和解を受け入れる可能性は低いでしょう。

元本の減額による和解は、あまり期待しない方がいいです。

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