借金滞納で簡易裁判所から呼出状が!出頭しないとダメ?

キャッシングやクレジットカ-ドの利用、携帯料金の未払いなどで簡易裁判所に訴訟をおこされた場合、裁判所からは「期日呼出状」が届き、期日に出頭を求められます。もし「分割払いによる和解」を希望するのであれば、原則として裁判所に出頭しなければ、和解は成立しません。ただし例外として、事前に原告と話し合いで合意ができている場合は、被告は欠席しても、答弁書を提出していれば「和解に代わる決定」ができます。

前記事の「 簡易裁判所から訴状が届いたときの答弁書の書き方 」とあわせて読むのがお勧めです。
期日に裁判所に出頭しないとどうなる?
ねえねえ、先生ー!
携帯代の未払いで簡易裁判所から「期日呼出状」が届いて、一括では支払えないから「分割払い希望」で答弁書を出そうと思ってるんだけど、どうしても裁判所には出頭しないといけないのかな?
和解を希望するなら出廷した方がいいね。もしどうしても出頭できない事情があるなら、裁判所の書記官に電話して事情を説明した方がいいよ。事情によっては、期日を変更してくれる可能性もあるし。裁判所が遠隔地でいけない場合は、 移送申立て※ って方法もある。
うーん、そういうのじゃなくて、恥ずかしいんだけど、正直、裁判所に行くのが怖いんだよね・・。出頭しなくても、答弁書をだせば「 擬制陳述※ 」ができるから、被告側(あたし)は欠席しても大丈夫っていうような噂をネットで聞いたんだけど、それはどうなの?
擬制陳述※ はできるよ。簡易裁判所だと第1回口頭弁論期日だけに限らず、すべての期日を擬制陳述にして書面提出だけで終わらせることもできる。でもそれは判決を争う場合の話だね。和解は、基本的には裁判所に当事者2人が出頭しないと成立しないよ。
げげっ、そうなのかー・・・。
まあちゃんと支払ってない私が悪いわけだし、分割払いで和解にして貰うわけだから、道理的にいえばちゃんと裁判所に出頭すべきだよね。もし都合があってどうしても行けない場合はどうすればいいの?
裁判が始まる前に、原告と電話で打ち合わせをして、和解の案について合意を済ませていれば、裁判の日は答弁書だけ出して欠席しても「和解に代わる決定※」ができる可能性は高いね。あとは、判決になるのを覚悟した上で、答弁書だけ出して欠席するしかないかなぁ。
  • 簡易裁判所では全ての期日で準備書面等の提出による擬制陳述は可能
  • ただし裁判上の和解をするには、裁判所への両当事者の出頭が原則
  • 欠席する場合、事前に和解合意をしていれば和解に代わる決定となる
  • やむを得ない事情で出頭できない場合、期日変更になる可能性もある
  • 裁判所が遠方で出頭が困難な場合は、移送申立てという方法もある
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呼出状の期日に裁判所に出廷しないとどうなるの?

まず最初にこの話を理解する上で重要なポイントとして、裁判には擬制陳述(ぎせいちんじゅつ)という制度がある、ということを知っておく必要があります。

これは答弁書や準備書面などの必要書類をあらかじめ提出しておけば、被告側(訴えられている側)が裁判に欠席したとしても、「出席して提出した書面(答弁書や準備書面)を陳述した」と見なされて、裁判が進行するという制度です。民事訴訟法158条

被告側は欠席しても擬制陳述ができる-図

つまり答弁書をちゃんと記載して提出していれば、裁判に出席しても欠席しても、「答弁書の内容を裁判で主張する」という意味においては全く同じだということです。

地方裁判所の場合は、擬制陳述ができるのは最初の1回だけですが、簡易裁判所の場合は2回目以降も擬制陳述で進めることが認められています。そのため、被告側は一度も裁判所に出廷しなくても、答弁書や準備書面の提出だけで裁判を進めることは可能です。民事訴訟法277条

準備書面

準備書面とは口頭弁論で主張したい事項を書面にしたものです。実際の民事訴訟では、主張したい内容は、基本的にはすべて口頭ではなく書面で提出します。ここでは単純に、(1)最初に訴状に対して提出するのが「答弁書」、(2)2回目以降以降に自分の言いたいことを書面で提出するのが「準備書面」だと思ってください。

 
裁判所に一度も出頭しなくても、答弁書や準備書面で「自分の主張」をすべて書面として提出して、書証(陳述書やその他の証拠書類)もすべて提出していれば、理屈上は「判決」の勝敗には直接的に影響はありません。(裁判官の心証が良くないとか、相手方が口頭でした主張の内容がわからない、といった問題はもちろんあります)

では、なぜ「裁判所に出廷しなさい」と言われるのでしょうか? これは簡単で、裁判上の和解をするためには、被告と原告の双方が出廷していないと和解は成立しないからです。

和解は両当事者が出頭しないと成立しない

そもそも、キャッシングやカード滞納、料金未払いなどが原因で訴えられている場合、「判決」になったら負けることは最初からわかってるケースが多いので、「分割払いで和解できるかどうか?」が最初から唯一のポイントになります。これは以下の記事でも解説しました。

参考記事
借金で簡易裁判所から訴状が届いたときの答弁書の書き方

 
裁判官は和解勧告をすることはできますが、勝手に「被告は病気で大変なので、月2万円ずつの分割払いを認めます」「利息を免除してあげます」といったことを、判決で勝手に決めることはありえません。原告が「一括払い」を請求して訴訟をおこしたなら、判決も必ず「一括払い」なのです。

原告の請求趣旨のとおりの判決がそのまま出る

(※ 例外として、簡易裁判所の少額訴訟のケースのみ、裁判官が裁量で、分割払いや支払猶予の条件を付けて判決を出すことがあります。ただし貸金業者やクレジットカード業者などの業者訴訟が、少額訴訟でおこなわれるケースは稀です。)

つまり判決に向けて争うのであれば、簡易裁判所なら「擬制陳述」だけで一度も出廷せずにやり過ごすことも可能ですが、そもそも「判決になったら全く勝ち目がないので、和解で分割払いを認めて欲しい」という事件の場合は、やはり出頭するのが原則だということです。





裁判上の和解を目指すなら期日に出頭するのが原則

繰り返しますが、和解を目指すのであれば、「裁判所に出頭しないとダメ」というのが原則です。当事者がいないのに、裁判で勝手に和解が成立するはずがないからです。

ただし、例外として「和解に代わる決定」という制度はあります。これは、既に当事者間で和解の合意ができている場合は、その片方が裁判を欠席していたとしても、裁判所が和解の代わりに同様の「決定」を出してくれる、というものです。これは例外ケースなので後述します。

まずは、裁判の期日にちゃんと出頭した場合、その後の流れがどうなるかを解説しましょう。

簡易裁判所に出頭した場合の和解までの流れ

被告が(1)相手の請求原因を認めている、(2)支払の意思がある、(3)一括で支払う資力がないので分割払いによる和解を希望している、といった事情がある場合には、大抵の場合、裁判官が法廷で和解勧告をします。

和解勧告がなされると、被告(自分)は原告(相手方)と、司法委員という役職の人(多くの場合は、裁判所が非常勤で雇っている弁護士さんです)と一緒に、法廷から別室に移動します。

司法委員と別室に移動-イラスト

別室では、司法委員の仲裁のもとで、被告側には「月いくらまでなら払える?」「いつから支払いを開始できる?」、原告側には「何年間までの分割支払いなら妥協できる?」「利息や遅延損害金は免除できない?」ということを話し合います。

別室で司法委員の仲裁のもと、被告側の支払能力と原告側の請求との間で妥協点を探して、和解案をまとめる。

和解の話がまとまったら、法廷に戻り、司法委員が決まった和解案を裁判官に伝えます。すると、その場で裁判官が原告と被告2人に確認をして、裁判上の和解が成立します。(和解調書という、裁判所による公的な和解書が作成されます)

先ほども述べましたが、簡易裁判所では、被告が裁判所に出頭して和解を希望すれば、ほとんどのケースで和解が成立します。

そもそも裁判官が「和解による決着」に積極的なこともありますし、原告側(相手方)も、差押える財産の目星がついている(勤務先を知っている、預金口座を特定しているなど)場合は別ですが、そうでない限りは、判決を取ってもただの紙切れになってしまう可能性があるので、ちゃんと支払える金額で和解して貰った方が得だからです。

期日に欠席しても「和解に代わる決定」の可能性はある

例外として、口頭弁論期日に欠席したとしても和解できる場合があります。裁判所が「和解に代わる決定」をしたときです。

和解に代わる決定

簡易裁判所では、既に被告と原告の間で和解の合意ができている場合に、被告側からの「和解に代わる決定」の上申書(または和解案を提示した答弁書)が提出されていれば、被告が裁判期日に欠席している場合でも、裁判官が代わりに「和解案通りの分割払いによる支払を命じる決定」をすることができます。(民事訴訟法275条の2

 
ただしこれは、「原告(相手方)がこちらの提示した和解案に納得して受け入れる」ことが条件です。裁判所に出頭したときのように、裁判官が和解勧告をして味方してくれたり、司法委員が仲裁に入ってくれることはありません。

では「和解に代わる決定」が出る場合というのは、具体的にはどういうケースでしょうか?

事前に原告(相手方)と合意を済ませておく場合

よくあるのは、裁判が始まる前に事前に相手方に電話して、「月○万円ずつの分割支払いで答弁書を提出する予定ですが、その和解案でどうでしょうか?」ということを先に相談しておくという場合です。

あらかじめ、被告と原告の間で和解の合意ができているのであれば、裁判所としても裁判を続ける理由はありません。この場合は、被告が裁判を欠席していたとしても、原告側が「被告(こちら)が提示している返済計画で問題ありません」と言ってくれれば、裁判官は「和解に代わる決定」を出してくれます。

事前に和解の合意を済ませておく方法もある-イラスト

つまり、被告が欠席でいないので「裁判上の和解」はできないけど、その代わりに裁判官が「和解に代わる決定」として、その案の通りに支払命令を下すことができるわけですね。

「和解に代わる決定」のさらに詳しい説明を読む(※クリックタップで開閉)

もちろんこの場合も、答弁書を提出して擬制陳述としていることが前提です。「答弁書を提出しない」という選択肢はありません。なお、和解に代わる決定がされれば、裁判所からは後日「決定」というタイトルの書面が送られてきます。





単にどうしても裁判所に出廷できない場合

単に「仕事の都合で行けない」「育児があるので行けない」「裁判所が遠方なので行けない」などの理由でどうしても出廷できないので、やむをえず、擬制陳述により欠席する、という場合もあると思います。

この場合も、前回の 答弁書の書き方の記事 で詳しく解説しましたが、答弁書に「分割払いを希望する」という旨を記載して、現実的な返済プランを提示すれば、原告(相手方)がそれに納得してくれれば、「和解に代わる決定」が出る可能性はあります。

なので全くチャンスがないわけではありません。

答弁書だけでも可能性がなくはないけど.....イラスト

ただし月々の返済額が少なすぎたり、返済期間が長すぎるなど、相手方の原告が受け入れられないような和解案だとダメです。裁判所に出頭しない以上は、裁判官も司法委員も同情したり味方してくれることはない、ということは理解しておくべきです。

結局は、やはり「和解したい」のであれば、事前に原告と電話で話し合いをしておくのが確実です。

もし相手方が「絶対に和解には応じない」つもりなら、そもそも裁判所に出頭しても意味がない可能性もありますし、あるいは、ただ単に「裁判で 債務名義※ を取りたい」だけであれば、事前協議くらいは応じてくれる可能性が高いです。いずれにしても電話してみればわかります。

「事前協議には応じられないので、裁判所で話し合いましょう」と言われてしまった場合は、仕方ありません。どうしても裁判所に行けないのであれば、答弁書で和解希望だけ書いて、擬制陳述で欠席するしかありません。

※(注) もちろん、事前に電話で相談したからといって、相手方が「訴訟を取り下げる」「裁判外で和解する」ということは期待できません。相手としては、和解するにしても「裁判上の和解」(または和解に代わる決定)が欲しくて、わざわざ裁判をしているからです。なので、そういうスタンスで相談すると、「事前協議には応じられないので・・・」と言われてしまう可能性があります。
遠方で出頭できない場合は「移送申立て」という方法も

ちなみに、例えば「鹿児島に住んでいるのに、東京簡易裁判所に訴訟を提起された」というように、遠方なので裁判所に出廷できないという場合は、「移送申立て」という方法もあります。

移送申立てというのは、「自分の住んでいる地域を管轄する裁判所に、訴訟地を移してください」というお願いの申立てのことです。具体的な手続きについては、この記事では長すぎるので別の記事で解説します。

関連記事
遠方の簡易裁判所で訴訟された場合の移送申立ての方法

 
重要なのは、もし移送申立てをするのであれば、できれば「答弁書を提出するよりも先に、移送申立てをしておく」ということです。もちろん「どちらにしても仕事の都合で出廷できない」というような場合は、移送申立てをしても意味がありません。

その他の事情で「本当は出廷したいけど、どうしても出廷できない」という場合は、担当の裁判所書記官に相談してみてください。口頭弁論期日を変更できる場合もありますし、他にも「 電話会議システム 」を利用して遠隔から電話で弁論手続きに参加できる場合もあります 。

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