過払い金返還請求って何?
一時期よくテレビCMなどで見かけた過払い金返還請求。今更ですが過払い金返還請求って一体何なのでしょうか? あなたにも過払い金が発生している可能性はあるのでしょうか? 詳しく解説していきます。(現在は一部の方を除き、ほとんどの方の過払い金請求権の時効が消滅しています。この記事は過去に記載したものです)
過払い金返還請求って最近よく聞くんだけど、払いすぎた借金を取り戻せるっていう意味だよねっ?! これってどーゆう仕組みなのーっ?!
過払い金とは、法律で定められた上限金利を超えて支払った金利のことです。この法律(利息制限法)の上限金利20%を超えた金利は、例え契約書を交わして定めたものであっても基本的に無効であるため、返還請求が可能なのです。
過払い金はそもそもなぜ発生するの?!
そもそもなぜ過払い金は発生するのでしょうか? 簡単にいうと、この理由はほとんどの貸金業者が違法な高金利で貸付をおこなっていたからということになります。
2008年以前まで、多くの貸金業者が利息制限法という法律に違反する金利で貸付をおこなっていました。以下詳しく見ていきましょう。
過払い金を図にすると以下のようになります。前述のように、利息制限法という法律で定められた法定利息の上限20%を超える金利で金銭消費貸借契約を結び、返済をおこなっていた場合、その超過部分は過払い金として返還請求することができます。
過払い金の仕組みとしては、「法定利息を超えて支払った金利は取り返せる」これだけです。非常にシンプルですね。でもここで疑問が生じると思います。
そもそも法定利息を超えた金利が法律上、無効なのだとすれば、なぜ消費者金融や貸金業者は利息制限法に違反する高金利での貸付を行っていたのでしょうか? それも東証一部に上場するような大手貸金業者が揃って利息制限法に違反する高金利で貸付を行っていた、その社会的な背景は何なのでしょうか?
ほとんどの貸金業者が当時、堂々と利息制限法に違反する金利で貸付を行っていた理由。それは、当時の社会的な背景では、法律上のグレーゾーン金利という金利帯が存在したこと、そして一部の要件を満たした場合に利息制限法を超過する金利を認める規定が存在したこと、の2つです。
(2)貸金業法の「みなし弁済」により、一部条件で利息制限法の超過が認められていた
つまり、当時は一応それなりの正当性と根拠があって、消費者金融やカード会社、信販会社は堂々と利息制限法を超過する金利を取っていたことになります。
グレーゾーン金利というのは、利息制限法と出資法という2つの法律の間で定められる上限金利が異なることにより、生まれた金利帯のことです。利息制限法で定められた上限金利は20%にも関わらず、出資法という別の法律では最大29.2%までの利息が認められていました。
この出資法の上限金利に違反した場合、罰則規定がありましたが、利息制限法については違反しても罰則規定は存在しませんでした。
さらに、以下の「みなし弁済」により、一定の条件を満たせば利息制限法の上限を超える金利で貸付を実施しても良い、とされていました。そのため、多くの貸金業者がこの「みなし弁済」を盾に、利息制限法に違反する金利での貸付をおこなっていたのです。
旧貸金業法の43条で定められた項目で、一定の条件を満たし、かつ双方合意のもと(債務者も納得して)任意での金利の支払いに応じた場合に、利息制限法を超過する金利での契約を認める、という法律です。
みなし弁済が成立する条件については割愛しますので、別記事を参考にしてください。
とにかく2008年以前まではこういった社会的な背景もあり、事実上、利息制限法に違反する高い金利を取ることが容認されていました。しかしこの「みなし弁済」が徐々に過払い金訴訟や裁判の判決により覆されていく(否定される)ことで、過払い金請求権が正式に認められるようになっていきます。
2006年最高裁判決で「みなし弁済」の成立が否定される
「みなし弁済」に関する最高裁の判決のなかでも特に有名なのが、2006年1月の最高裁判決、いわゆる「シティズ判決」です。
当時、みなし弁済を盾に過払い金訴訟の下級審(一審、二審)で勝訴を重ねていたシティズ(現:アイフルグループ)という消費者金融が最高裁で敗訴し、その後の過払い金請求の流れに大きく影響を与えた判決です。
「みなし弁済の条件を満たしていたため、契約上の約定金利は合法であり、過払い金は存在しない」とするシティズの主張を棄却し、過払い金請求権を認めた平成18年1月13日の最高裁判決です。これ以降、貸金業者のみなし弁済の主張はほとんど認められなくなりました。
前述のように、みなし弁済が成立するための要件は、かなり細かくかつ厳格に定められています。例えば、必要な書類を迅速かつ正確に発行する、契約書には(契約番号ではなく)契約日を記載する、などの取り決めのことです。
こういった書面を取り揃えて、みなし弁済の訴訟には業界でも特に強かったシティズが最高裁の判決で敗訴したことで、この判決以降、事実上、みなし弁済の成立がほぼ否定されたことになります。これにより過払い金返還請求が可能となりました。
過払い金返還請求が可能なのは、どんな人なの?!
過払い金が発生する経緯について簡単に理解したところで、実際にどんな方に過払い金が発生している可能性があるのか知りたい方も多いと思います。過払い金の対象かどうかを理解するために重要なポイントは以下になります。
- 過去に利息制限法の上限金利20%を超える利息で返済をしていた
- 既に借金を完済、または返済中だが2008年以前からの取引がある
- 完済している場合には、最終取引日からまだ10年以内である
これらの条件に当て嵌まっていれば、過払い金の返還請求ができる可能性が高いです。特に数年間以上に渡って過去に取引をしていた場合、たかだが数パーセントの金利差であっても計算してみるとかなりの額の過払いが発生しているケースがあります。
ただ、2007年以降から段階的に貸金業法の改正が施行されており、それにあわせてほとんどの貸金業者が2007年中に金利を利息制限法の範囲内まで引き下げを実施しています。そのため、過払い金が発生している可能性があるのは、基本的に2008年以前に貸金業者と取引をしたことがある方に限定されます。
例:大手の金利変更 | 金利改定時期 | 改正前金利 | 改定後の金利(当時) |
---|---|---|---|
アイフル | 2007年8月1日以降 | ~29.2% | ~20% |
アコム | 2007年6月18日以降 | ~27.375% | 12%~18% |
プロミス | 2007年12月19日以降 | 13.5~25.55% | 7.9~17.8% |
既に過去に借金を完済し終わっている場合、それが利息制限法に違反する高金利での返済だった場合には過払いが発生している可能性が高いです。こちらの記事でも解説しているように、過払い金返還請求の権利の消滅時効は、最終取引日から10年間です。
つまりまだ最終取引の時点から10年が経過していなければ、過払い金の返還が請求できる可能性が高いです。過払い金の返還請求にも、弁護士への依頼費用などがかかりますので、1社あたり10万円以上の過払い金が発生しているなら検討してみてもいいのではないかと思います。
支払いの明細書や借入時の契約書を保管しておらず、自分が一体いくらの金利で返済をしていたのか、どれくらの過払いが発生していたのか、の計算ができない、というケースがあると思います。この場合も過払い金請求を諦める必要はありません。
まず1つには、貸金業者に過去の取引履歴の開示を請求するという方法があります。貸金業者には法律上、過去10年間の商業帳簿の保存義務があり、また利用者から求められた場合には開示に応じなければいけない、とする最高裁の判例もありますので、原則、開示請求に応じる業者が多いです。
現在まだ借金を返済中の場合は、法定金利を超過した利息分は原則、借金残高の返済に補填されることになります。このケースでは、超過分を補填しても借金が残る場合の扱いは、「過払い金請求」ではなく、任意整理になります。
扱いが任意整理になってしまうと、信用情報に傷がつく等のデメリットが発生してしまいます。詳しくはこちらの「過払い金請求のデメリット」の記事を参考にしてください。
過払い金請求の法律的な根拠は何なの?!
過払い金の返還請求権の根拠となる法律は、民法703条の「不当利得返還請求権」です。
不当利得とは民法703条で定められている「法律上の原因(根拠)がないにも関わらず、不当な利益を受け取ること」をいいます。例えば利息制限法上、無効であるにも関わらず、その説明がなく交わした契約による高利息も不当利得です。この不当利得は法律上、返還請求が認められています。
利息制限法を超過する金利は、本来、法律上は”無効な”金利です。無効ということは、債務が存在しない、ということなので、債務が存在しないにも関わらず弁済した分の金額というのは、消費者金融が不当に受け取ったお金ということで「不当利得」になります。
不当利得は民法703条により、不当に享受した利益額を限度として返還する義務を負う、と定められています。この不当利得返還請求権をもとに、払い過ぎた利息の返還を求めることを、通称として「過払い金請求」と呼んでいることになります。
この不当利得返還請求権の基づく過払い金の返還請求は、歴史的にはどのような経緯で可能になったのでしょうか? 実は、この過払い金請求に関する最高裁の判決が日本ではじめて出たのは、まだ昭和30年代の頃の話です。
過払い金請求が法律上、可能になるキッカケとなった歴史的な判決は以下の2つです。
(2) 昭和43年11月13日の最高裁判決
当時はまだ貸金業法の制定すらなく、後に栄える消費者金融業者もまだほとんどない時代ですが、この頃から2つの最高裁の判決が出たことで、利息制限法を超過する無効な金利については不当利得として返還請求が可能になったのです。
まず昭和39年11月18日の最高裁により、利息制限法を超過して支払った利息については、民法491条の適用により借金の元本に充当することができる、という充当合意に関する判決がでました。これにより、法定利息を超えて払い過ぎた利息分は、元本の返済に充てることができるようになります。
さらに、その後の昭和43年11月13日の最高裁判決により、利息制限法の超過利息を元本に充当し、計算上、完済となった後に支払われた金額は全て、不当利得として返還請求ができる、という判断を下したのです。
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