過払い金のつまみ食いって何?

過払い金返還請求がブームになった頃、利潤を追求する一部の弁護士の間で「過払い金のつまみ食い」という行為が横行して問題となりました。現在は日弁連の規定により、この「過払い金のつまみ食い」は禁止されています。今回の記事ではこの「過払い金のつまみ食い」について詳しく解説します。

弁護士が利潤追求で行った「過払い金のつまみ食い」って?!

司法試験法の改正により2006年から新司法試験が導入され、弁護士の合格者数が大幅に増加したことで、弁護士業界は供給過多により仕事がない状態に陥っていました。そこに突如現れた一攫千金ビジネスが「過払い金」です。

過払い金ビジネスに沸いた弁護士業界

利息制限法の上限20%を超える利息は全て無効で返還請求が可能、さらに返還は過去10年の取引履歴を遡って請求できる、という最高裁の判決が下されたことで、数多くの弁護士が過払い金の返還請求ビジネスに乗り出しました。これがいわゆる過払い金バブルです。

過払い金バブル
簡単に数百万円単位のお金が取り戻せる上に、その返還金の20-30%程度を「報酬金」として受け取れる過払い金返還請求は、弁護士事務所にとっても非常に利益率の高いビジネスです。 そのため非常に多くの弁護士事務所が過払い金ビジネスに参入し、一時期は過払い金の市場規模は数兆円ともいわれ、弁護士業界はいわゆる過払い金バブルに沸きました。

 
この過払い金バブルにより、借金問題に悩む多重債務者の立場にたった本来の弁護士としての役割を忘れ、利潤追求だけに走ってしまうような弁護士も多く現れました。具体的には、以下のようなモラルのない弁護士事務所が続々と現れたのです。

  • 一度も面談せずに、電話やメールだけで大量に案件を受任
  • 過払い金請求の仕事はすべて一般職の事務員に丸投げ
  • 過払い金の40%以上といった法外な弁護士報酬の請求

 
こういった債務者の立場にたたない、モラルのない弁護士事務所の手口が横行しました。同様に、そうした手口の1つとして問題となったのが「過払い金のつまみ食い」です。

“過払い金のつまみ食い”とは?!

過払い金のつまみ食いとは、依頼者に他にも借金があるにも関わらず、過払い金の案件だけを受任する行為のことです。任意整理や個人再生、自己破産と比較しても、過払い金は報酬率が高く、弁護士にとっても少ない労力で儲かりやすい仕事でした。

そのため他の借金を無視して、過払い金が発生している貸金業者だけを対象に過払い金返還請求する弁護士が出現したのです。

過払い金のつまみ食い
依頼者に他にも借金があるにも関わらず、他の借金の整理はせずに過払い金返還請求だけを行うことです。債務は本来、全ての借金の内容を明らかにして整理しないと借金問題は解決できません。しかし、過払い金返還請求の利益率が突出して高いため、過払い金だけを受任する弁護士が急増しました。

 

“過払い金のつまみ食い”の実例

なぜ過払い金案件だけを受任すると、弁護士にとって得なのでしょうか? あまり債務整理のビジネスに馴染みがない方だと、すぐにイメージがピンと来ないかもしれません。 そこで以下、実際に1つの「過払い金のつまみ食い」のモデル例を挙げて説明してみます。

過払い金のつまみ食いの事例

依頼者にはA社に60万円の過払い金、B社に100万の借金があったとします。本来、多重債務者の立場にたって考えたら、A社から取り戻した60万円の過払い金は、B社の借金100万円の返済に充当されるべきです。

しかし、弁護士の報酬だけを見れば、B社の借金を無視してA社の過払い金60万円だけを取り戻し、その20%を報酬として受け取った方が利益が上がります。これが過払い金のつまみ食いが流行した理由です。

 

このような無秩序な弁護士が余りに増えてしまったために、日弁連が規制に乗り出すことになりました。それが平成23年2月に定められた「債務整理事件処理の規律を定める規定」です。

 

債務整理事件処理の規律を定める規定

この日弁連の規定の8条により、「過払い金のつまみ食い」は正式に禁止されることとなりました。またその他にも、以下のような規律が定められました。

  • 過払い金報酬の上限は20%、訴訟をした場合は25%迄
  • 減額報酬は減額分の10%以下まで
  • 受任する弁護士は必ず自ら個別面談をする義務あり
  • 任意整理の解決報酬金は1社当り2万以下
  • 過払い金のつまみ食いは禁止(規定8条)

 
このように報酬体系の基準がある程度、規律として明示されたこと、面談義務を求められるようになったこと、過払い金報酬は取り戻した額のうち20%までを上限とすること、といったルールが定められたことで、今は昔ほどの無法地帯ではなくなっています。

このように弁護士事務所といっても、全ての弁護士が市民の味方というわけではなく、一部には弁護士としての職業倫理や使命を忘れて、過度な利益追求に走ってしまう弁護士もいますので、弁護士業界にも一定の規律やルールは常に求められることになります。

 

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