自己破産の復権とは?復権の手続きについて
自己破産の手続き期間中は、その人は法律上は「破産者」という扱いになり、一部の職業に従事することができなくなります。例えば警備員、宅建士、弁護士、税理士、行政書士、公認会計士、不動産鑑定士などなど、意外と多くの職業が自己破産による「資格制限」を受けてしまいます。一方、自己破産の手続きが終わり、この資格制限が解除されて、元の一般人の状態に戻ることを「復権」といいます。
自己破産で資格制限を受けて、一部の職業に就けなくなったとしても、その後、復権すればまた元通りその仕事に就けるっていう話を聞いたんだけど、復権って何ー?
あっ! ちなみに復権すれば、元の一般人の状態に戻るわけだから、またキャッシングしたり、クレジットカードとかも作れるようになったりするよねー? ねえ!復権したら!ねえ!
- 復権とは、法律上の資格制限が解除されて「破産者」ではなくなること
- 弁護士法、宅建士法などの「人の資格に関する法律」の制限がなくなる
- 自己破産の開始から復権までの期間は、通常は3~6カ月。免責確定するまで
- 復権するために特に手続きは必要ない。免責されれば自動的に復権する。
- 復権と信用情報は関係ない。復権してもクレカの新規作成や借入はできない
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1.自己破産で、破産者が「復権」するタイミングはいつ?
2.復権のための特別な手続きや確認方法はない
3.ズバリ「復権」するとどういう効果があるの?
4.クレジットカード等の与信審査とは全く関係ない
自己破産で、破産者が「復権」するタイミングはいつ?
私たちの一般的な感覚でいえば、破産手続きを受けた人はその先もずっと「破産者」としての烙印を押されるイメージがあるかもしれません。しかし法律上は、破産手続きが終了して免責が確定した段階で、その人はもう「破産者」ではなくなります。
自己破産の期間中は、「一部の職業に従事できなくなる」「引越しや海外旅行にいけなくなる」「郵便物を勝手に開封される」など、いろいろ行為や権利の制限を受けることになります(⇒ 参考:「自己破産のデメリット」)。
しかし、免責が確定して破産者でなくなれば、これらの制限は一切なくなります。
復権には2つの種類があります。「当然復権」と「申立てによる復権」です。当然復権はその名前のとおり、自己破産手続きの終了とともに、何もしなくても自動的に復権する(権利が復活する)ことをいいます。
具体的に自己破産で当然復権になる場合というのは、以下のケースです。(破産法255条)
- 免責許可の決定が確定したとき
- 債権者の同意により破産手続きの廃止が確定したとき
- 再生計画の認可決定が確定したとき
- 詐欺破産罪で有罪になることなく10年が経過したとき
これだけ読んでも、正直よくわからないですよね・・・。ただ、あまり心配する必要はありません。ハッキリいって、ほとんどのケースが(1)の免責許可の確定による復権だからです。
自己破産手続きをする以上、免責許可をもらって借金を帳消しにしたいのは当然ですし、実際、統計上もほとんどのケースで免責許可がおります。なので基本的には、「自己破産手続きが終われば、そのタイミングで復権する」とだけ理解しておけばOKです。
免責許可以外の復権
一応、他のケースも簡単に解説しておきましょう。(2)のように、破産者が自ら「破産手続きを廃止してください」と申し立てて、それに全ての債権者が同意した場合は復権します。もっとも債権者の立場からすると、同意すれば清算手続きが廃止され、配当を受けることができなくなりますので、現実的に廃止に同意することはほぼありえません。
(3)(4)は自己破産で、残念ながら免責許可がおりなかった場合の話ですね。この場合でも、原則、破産手続きの開始から10年が経過すれば自動的に復権します。
自己破産手続きで免責決定がおりなかった場合の選択肢は2つです。「個人再生を申立てる」か、「何もしない」か、です。個人再生を申し立てて、再生計画が認可されれば、(3)のように確定のタイミングで復権します。一方、何もしないで放置していても、詐欺破産罪に問われない限りは、勝手に10年で復権します。
申立てによる復権
このように「当然復権」というのは、何もしなくても勝手に復権することを言いますが、一方、自ら裁判所に「復権させてください」と申立てることもできます。これは「申立てによる復権」といいます。
破産者が弁済、その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは、破産裁判所は、破産者の申立てにより、復権の決定をしなければならない。(破産法256条)
例えば、自己破産で免責許可を受けることができなかったけど、その後に「自分で頑張って借金の残額を返済した場合」、「相続で財産が入って返済できた場合」、「5年の消滅時効が成立して借金がなくなった場合」などに、裁判所に申し立てることで、「破産者でなくなる」ことができるわけです。
もちろん前述のように、10年が経過すれば何もしなくても復権になりますが、途中で借金がなくなったため、「もっと早く復権したい」という場合の制度ですね。いずれにしても、これもあくまで「免責許可が下りなかった場合」であり、特殊なケースの話です。
たまに復権にあたって、「裁判所に何らかの手続きや申請を行わなければならない」と思われている方がいますが、復権のほとんどは「当然復権」ですので特別な手続きは何も必要ありません。
自己破産で免責が確定すれば、(あるいは破産手続きが廃止決定されれば)自動的に破産者は復権します。そのため、破産者は特に復権のための手続きや方法について意識する必要はありません。
同じように「復権を確認する方法はある?」と聞かれる方がいますが、これも特にありません。
強いていうのであれば、市役所で発行される「身分証明書」を取得すれば、そこに「あなたが破産者かどうか」は記載されていますので、それが確認方法になるかもしれません。身分証明書に「破産宣告の通知を受けていない」と記載されていれば、既に復権しています。
ズバリ「復権」するとどういう効果があるの?
破産者から「復権」すると、資格や職業に関する法律の制限が解除されます。
たまに「復権すれば、クレジットカードも作れるし、住宅ローンも組めるようになる」と勘違いする方がいますが、これらは全く関係ありません。あくまで「法律上の制限」が解けるだけです。
破産法では、復権の効果について「人の資格に関する法令の定めるところによる」と定められています。(破産法255条2項)
この「人の資格に関する法令」というのは、要は職業や士業によって定められた法律のことですね。たくさんあります。例えば一部を挙げると、以下のような法律です。
これらの職業や資格に関する法律には、資格要件として「破産者で復権を得ないもの」は資格士として登録できない、またはその職業に就けない、といった資格制限があります。どの法律でも同じように、「破産者で復権を得ないもの」というキーワードそのままで出てきます。
これらの記述がある職業や資格の制限は、破産後に復権すれば、全く問題なく従事することができます。
基本的にどの資格でも、自己破産をしたからといって、「また勉強して試験を受け直さないといけない」ということはありません。一時的に資格を喪失したり、日本○○○士会といった会から登録削除になるくらいで、復権したらまた登録の申請もすることができます。
破産法以外にも、「人の資格に関する法令」というキーワードが出現する法律があります。それが少年法です。少年法60条では、「少年のときに犯した罪により刑に処せられてその執行を受け終わった者は、人の資格に関する法令の適用については、将来に向かって刑の言渡を受けなかったものとみなす」という規程があります。(少年法60条)
これはつまり、「少年法の裁きを受けて罪を償った人には、法律上の資格制限を適用してはいけない」というルールです。多くの職業の法律では、自己破産と同様に「禁錮以上の刑に課されて5年以内の者はダメ」といった資格制限があります。ただし少年法による処罰の場合は、こういった資格制限を受けない、ということですね。
自己破産をすると、その記録は信用情報機関に5年~10年間、登録されることになり、そのデータは、銀行や貸金業者の与信審査に利用されます。
これは、別に法律で「破産者にはクレジットカードを作ってはいけない」「破産者にはキャッシングでお金を貸してはいけない」と決まっているわけではありません。単に、貸金業者や信販会社が、自らの与信判断で「貸さない」ようにしているだけです。
なので、法律上の復権の話とは全く関係がありません。
信用情報機関に自己破産の記録が残っている限りは、カードを作ったり、ローンを組んだりすることは難しいでしょうから、基本的には信用情報から履歴が消えるのを待つしかありません。