破産者名簿って何?自己破産すると破産者名簿に載る?
破産者名簿とは、本籍地のある市町村の役所で管理されている「破産者」の名簿のことです。ただし既に自己破産手続きで免責許可を受けている場合は、法律上は破産者ではありませんので、破産者名簿にも載りません。多くの方が誤解していますが、破産者名簿に記録されるのは、自己破産手続きで「免責がえられなかった人」だけですので、ほとんどの方には関係ありません。また、この破産者名簿は非公開のものなので、一般人や企業が閲覧することはありません。
自己破産をすると、「破産者名簿に名前が載る」って噂を聞いたんだけど、本当なの? その破産者名簿のせいで、親戚や職場(会社)に自己破産がバレることはあるのかな?
「破産者かどうか」を記録する名簿なんだから、自己破産した人は全員、記録されるわけじゃないの?
破産者名簿の意味がないじゃん。
でもそれだったら、破産手続きの期間中は全員、「破産者」になるわけだよね? じゃあ3カ月~半年間とか、自己破産の手続き期間中はやっぱり破産者名簿に載っちゃうんじゃないの?
じゃあもし免責不許可になっちゃって復権できなかった場合は、破産者名簿に載るわけだよね? そしたら会社の人とか親戚とか、誰でもその破産者名簿は閲覧できるの?
- 破産者名簿は、本籍地のある市町村で管理される破産者の名簿のこと
- 自己破産で「免責不許可」になった人しか、破産者名簿には載らない
- 破産者名簿に載ったとしても、一般人や企業が閲覧することはない
- 官報と破産者名簿は全く別のもの。官報は本気になれば誰でも閲覧できる
- 破産者名簿は、役所が身分証明書を発行する際に利用される
破産者名簿はそもそも何のために作成されるの?
破産者名簿のことを、官報(※)とごっちゃに混同されている方も多いですが、破産者名簿というのは本籍地の役所だけで管理されるものであり、どこにも公開されることはありません。そのため、一般の方の目に触れることはまずありません。
では何のために破産者名簿が作成されるのかというと、法律上、「破産者のままだと就けない仕事」「破産者のままだとできないこと」が存在するからです。例えば、警備員の仕事や生命保険の募集人、弁護士や宅建などの資格免許、後見人になる行為、等は、破産者のままだとできません。
そのため、例えば警備員として仕事に就く場合や、宅建の免許を取得する場合等に、会社や団体から「破産者でないことの証明」を求められることがあります。
この「破産者でないことを証明」する書類のことを身分証明書といいます。身分証明書というと、運転免許証やパスポートのことを想像される方も多いと思いますが、そうではなく、役所(国)が発行する「身分証明書」という名前の公的な書類があるのです。
この「身分証明書」を発行する際に、役所は破産者名簿を確認します。そのため、破産者名簿というのは、国が「この人は破産者じゃないですよ」(または「破産者ですよ」)という公的な証明書類を作成するときのために作られているのです。
もちろん前述のように一般の会社や民間団体が、勝手に役所に問い合わせて破産者名簿を照会したり、勝手に他人の身分証明書を取得することはできません。
そのため、身分証明書はあくまで自主的に提出が求められるものです。例えば、警備員として警備会社に就職したり、宅建の資格をとって免許の交付申請をするときに、「身分証明書を提出してください」と言われるわけですね。
破産者名簿は何のためにあるの?
- 破産者名簿は、役所が「身分証明書」という公的書類を作成するためにある
- 身分証明書は、その人が「破産者かどうか」を証明するための特殊な証明書
- 他人が勝手に破産者名簿を閲覧したり、身分証明書を取得することはない
- 身分証明書は「破産者が就けない職業」に就くとき自主的に提出を求められる
このように破産者名簿というのは基本的には、役所が身分証明書を作成するときにしか使われないものなので、それ以外の場面では全く関係ありません。よく自己破産することのデメリットとして「破産者名簿に載る」という説明を見かけることがありますが、通常は載ったとしても大したデメリットではありません。
さらに言うと、自己破産をした方のほとんど(約95%以上)の方は、そもそも一度も破産者名簿に載ることはありません。
破産者名簿に載るのは「自己破産をして復権を得ないもの」だけなので、破産手続きで借金が免責になって復権した方は、もう法律上は「破産者」に該当しないからです。
なので少なくとも、破産手続きが終わっている方で、無事、免責されている方は、破産者名簿には載っていません。上記の身分証明書を取得したとしても、他の方と同じように「破産者ではない」という証明が出るだけなので、過去の破産歴がバレることはありません。
もちろん、破産の手続き期間中は「破産者」に該当します。そのため昔は自己破産の開始決定(破産宣告)がされるたびに、いちいち本籍地の役所に通知をして破産者名簿を作成し、その後、その人が免責されて復権したら破産者名簿を閉鎖する、という手続きを踏んでいました。
しかし実務上は、大半の方が免責されて数カ月後には破産者ではなくなるわけですから、その都度毎回、破産者名簿に載せたり消したりするのは大変ですし、あまり意味がありません。
そこで平成17年1月の新破産法の施行以降は、原則、「免責されなかった場合」にのみ裁判所が本籍地の役所に通知をおこない、そのときにはじめて破産者名簿に載せるという取扱いに変更になったのです。
この根拠になるのが、以下の平成16年11月30日の最高裁からの通達です。
>> 最高裁民三第113号 破産手続開始決定確定等の通知について(※クリックで開く)<<
この通達によると、自己破産をした方で破産者名簿に載る方(本籍地の役所に通知がされる方)というのは、以下に該当するケースのみになります。
破産者名簿に載る方
- 破産開始から1カ月が経過して、まだ免責手続が係属しないとき
- 破産開始の1カ月後以降、免責許可申立てが全て取下げられたとき
- 破産開始の1カ月後以降、免責許可申立てが全て却下されたとき
- 免責不許可の決定が確定したとき
- 免責取消しの決定が確定したとき
上記に該当しない方は、自己破産をしても本籍の役所に通知されることがありませんので、一度も破産者名簿に載ることはありません。
また上記に該当する方であっても、その後、免責許可が下りたり復権されたときは、破産者名簿は閉鎖されることになります。破産者名簿が閉鎖されれば、身分証明書を発行しても破産歴は出てきませんので、過去に自己破産したことはわかりません。
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