外国人は非破産者を証明する身分証明書が取得できない?
「破産者で復権を得ないもの」に該当しないことを証明する公的な書類として、市役所で発行される「身分証明書」がありますが、これは在留外国人の方は発行することができません。身分証明書の情報は戸籍に記録されるものなので、日本に戸籍のない在留外国人は取得できないのです。ただし、類似のものとして「成年被後見人・被保佐人等」に該当しないことを証明する「登記されていないことの証明書」は外国人の方でも取得できます。
就職した仕事場で、破産者ではないことを証明する「身分証明書」の提出を求められたんだけど、これって在留外国人の方でも取れるものだっけー?
つまり「私は破産者ではありません」ってことを誓約する書類を作成して、それを代わりに提出するケースもあるってことだね。
じゃあ禁治産者でないことを証明する書類の場合も同じかなー?
- 「破産者でないこと」を証明する身分証明書は、外国人は取得できない
- 宅建免許等の場合は、在留外国人の方は代わりに誓約書を提出する
- 「登記されていないことの証明書」は在留外国人の方でも取得できる
- 被後見人・被保佐人に該当しないことの証明は、登記され…だけでOK
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破産者でないことを証明する「身分証明書」について
日常生活では通常あまりないケースですが、様々な手続きや就労、各種免許等の取得にあたって稀に「身分証明書」の提出を求められることがあります。
ここでいう身分証明書とは、パスポートや運転免許証の意味ではなく、「成年被後見人」「被保佐人」「破産者で復権を得ない者」のいずれにも該当しないことを証明する公的な書類で、市役所で発行して貰えるものです。
法律上、「破産者だと従事できない仕事」「破産者だとできない取引」等をする場合に、破産者でないことを確認するために提出を求められることが多く、例えば、警備員の仕事や、古物商の許可、資格の登録、会社の設立等にあたって提出を求められることがあります。
有名なところだと、宅建免許の取得のためにはこの身分証明書の提出が必要になります。
しかし、外国人の方はこの身分証明書を取得することはできません。
これは提出を求める側の方がよく理解していないケースもあるのですが、身分証明書は戸籍とともに管理されるものなので、日本に戸籍のない外国人の方には発行されません。
上記の宅建免許の場合は、代わりに「成年被後見人や被保佐人と見なされる者ではなく、かつ破産者でもない」ということを約束する誓約書の提出が求められます。
このように、誓約書のようなもので代替することが多いので、もし外国人の方で「破産者でないことを証明する書類を提出してください」と言われた方は、身分証明書の発行ができないことを相談してみてください。
なお少し似ていて紛らわしいのですが、成年被後見人・被保佐人等に該当しないことを証明する「登記されていないことの証明書」は、外国人の方でも取得できます。こちらは法務局で取得できますので、提出を求められれば必要に応じて提出してください。
上記の「身分証明書」とセットで2枚とも提出を求められることが多いですが、その場合は、在留外国人の方は「登記されていないことの証明書」だけを提出して、「身分証明書」については何か別の書面等で代替することになります。
「身分証明書」と「登記されていないことの証明書」の違い
身分証明書 | 登記されていないことの証明書 | |
---|---|---|
在留外国人の方 | 取得できない | 取得できる |
証明できる内容 | ・平成12年4月以前に「成年被後見人」「被保佐人」の登記がされていない ・「破産者で復権を得ないもの」ではない |
・平成12年4月以降に「成年被後見人」「被保佐人」の登記がされていない |
管轄 | 本籍地の市町村 | 法務局 |
身分証明書 |
---|
在留外国人の方 |
取得できない |
証明できる内容 |
・平成12年4月以前に「成年被後見人」「被保佐人」の登記がされていない ・「破産者で復権を得ないもの」ではない |
管轄 |
本籍地の市町村 |
登記されていないことの証明書 |
在留外国人の方 |
取得できない |
証明できる内容 |
・平成12年4月以降に「成年被後見人」「被保佐人」の登記がされていない |
管轄 |
法務局 |
なぜこんなややこしいことになっているかというと、平成12年4月以降から、「成年被後見人」「被保佐人」の登録(管理)が、法務局の管轄に変わったからです。
昔は成年被後見人、被保佐人は「禁治産者」として本籍地の戸籍情報に登記されていました。
しかし平成12年4月1日以降、成年後見制度が改正されてからは、禁治産者・準禁治産者の記録は、戸籍ではなく、法務局の「後見登記等ファイル」に登記されることになりました。それに伴い、名称も「成年被後見人」「成年被保佐人」に変わりました。
そのため、平成12年以前に成年被後見人等として登録されていないことを証明するためには「身分証明書」が、平成12年以降に成年被後見人等として登録されていないことを証明するためには「登記されていないことの証明書」が、2通とも必要な状態になっています。
また「破産者でないこと」を証明する書類は、今でも戸籍の「身分証明書」しかありません。
このサイトでは何度も解説していることですが念のため。「身分証明書」を取得・提出すると、過去に自己破産していることがバレてしまうのではないか、と心配される方いますが、既に免責許可を受けていれば問題ありません。
法律上、「破産者」に該当するのは、自己破産手続きが開始してから免責許可が確定するまでの間だけです。免責が確定した後は、自動的に復権しますので、破産者ではなくなります。
ほとんどの破産者は自己破産により免責されますので、実務上は原則、「免責されなかった場合」にしか、本籍地の市町村にその旨が通知されることはありません。
つまり、普通に自己破産手続きで免責確定を受けていれば、市役所で身分証明書を発行しても「破産者ではない」としか記載されませんので、身分証明書から過去の自己破産がバレることはありえません。
ただし自己破産手続きで 免責不許可※ になったりした場合は、破産者のままなので、身分証明書にも「破産者で復権を得ないもの」という記録が残ることになります。
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