破産管財人が選任される条件と、その驚きの役割や権限は?
破産管財人は、破産者が財産を所持していたり、免責不許可事由があったり、その他、何らかの調査の必要がある場合に選任されます。個人破産のおそよ半分近くのケースでは破産管財人が選任されています。管財人には、破産者の財産を処分する権限や、郵便物をチェックする権限、破産者が手続きの直前にした行為を否認する権限、その他さまざまな権限があります。
自己破産の手続きでは、破産管財人っていう人物が、裁判所から選任される場合があるって話を聞いたんだけど…。破産管財人っていうのは一体何者なの?
要するに、裁判所の仕事を補助する人ってことね。裁判官が、自ら破産者の財産を調査したり、車や家を売却するのは無理だもんね。でも、常に破産管財人が選任されるわけでもないんでしょ?
管財人が選任されるのは、全国の破産手続きのうち約4割くらいだね。ただし東京地裁に限定すると約6割くらいになるけど。主に以下のようなケースで管財人が選任されるね。
- 破産者に20万円を超える財産(預金・車・保険など)がある場合
- 破産者が家を所有していて、ローンの返済も残り少ない場合
- 借金を作った原因に問題(ギャンブル・浪費など)がある場合
- 破産手続きの前に、勝手に財産の名義を変更したり贈与した場合
- 破産手続きの直前に、一部の債権者だけに返済をした場合
- 破産者が事業を営んでいた場合、会社を経営していた場合
- 破産者が何か財産を隠していると疑われている場合
大きく分類すると、「破産者に財産がある場合」「免責許可に問題がある場合」「何らかの調査が必要な場合」の3つね。これって、要するに同時廃止(※)以外の場合ってことじゃない?
そもそも管財人が選任されないケースのことを《同時廃止》、管財人が選任されるケースのことを《管財事件》っていうんだ。だから同時廃止以外の場合には、必ず破産管財人が選任される。
だから同時廃止だと費用は2万円程度なのに、管財事件だと費用が20万円~と一気に高くなるのね。同じ破産手続きなのに、費用が全然違うのは、破産管財人の人件費(報酬)があるからなのか。
管財人が選任されるケースは全国的には約4割くらいです。破産者が何も財産を持っていない場合は、原則として管財人は選任されません。ただし免責不許可事由 ※ がある場合や、何らかの調査をする必要がある場合は、財産がなくても管財人が選任される可能性があります。その場合は、裁判所の費用も高額になるため、早めに弁護士に相談して対策を考えましょう。
- 管財人が選任されるケースは全体の4割くらい。東京では6割くらい
- 破産者に財産がない場合(同時廃止の場合)は管財人は選任されない
さっき、破産管財人は「裁判所に代わって破産手続きの業務をする人」って言ってたよね。てことは、普通の一般人ではないんでしょ?具体的にはどんな仕事をするのかなー?
各裁判所には破産管財人の候補者名簿があって、そこから裁判所の管轄内の弁護士が選ばれる。そして、主に以下のような仕事内容を裁判所に任されるんだ。
それに裁判所の代わりに仕事をするだけあって、やっぱり権限も超強力だね! 破産者の財産を没収したり、郵便物をチェックできるんでしょ。もし管財人の調査を拒否したらどうなるの?
法律上、破産者には管財人の調査に協力する義務があるんだ。拒否したり嘘の説明をすると、それ自体が免責不許可事由になってしまう。悪質な場合は刑罰もあるしね。
あと、破産者の立場として気になるのは、やっぱり最後の「免責についての意見書」だよね。意見書を書くってことは、管財人の気持ち次第で免責が左右されることもあるの?
基本的に裁判所は、管財人の意見書をそのまま鵜呑みにするからね。ただし、そもそも法律上の免責不許可事由(※)がない限り、免責不許可にはならないけどね。
- 破産管財人には「破産者の財産を管理・処分する権限」がある
- その他、管財人には調査のために必要な権限がほとんど与えられている
- 破産者は管財人の調査に協力する義務がある。協力しないと免責が下りない
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「破産管財人」についてのよくある質問
破産管財人の権限で処分できる財産の範囲について
破産手続きを申し立てると、裁判所は代理人の弁護士と面談をおこない、同時廃止 ※ にするか管財事件 ※ にするかの方針を決定します。管財事件になった場合、裁判所はすぐに管財人の候補者を内定し、開始決定と同時に正式に選任します。
破産管財人の基本的な使命は、破産者の財産を速やかに回収して管理し、適切な価格で売却することです。そのため、管財人は選任後すぐに破産者の財産を回収しなければなりません。
このことは、破産法78条で以下のように記載されています。
1項 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団 ※ に属する財産の管理および処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。
原則として開始決定時に破産者が所有している財産はすべて管財人による管理・処分の対象となります。(破産法34条)
ただし例外として99万円以下の現金は、自由財産として所持することが認められます。また東京地裁などの多くの裁判所では、20万円以下の預貯金、保険の解約金、車など、一部の生活に必要な財産についても、自由財産(の拡張)の範囲として当然に認められます。
自由財産として認められれば、管財人の処分権限の範囲から外れるため、没収されません。
また破産管財人が認めれば、総額99万円以下の範囲まで自由財産を拡張 ※ することもできます。例えば、車の価値が30万円、保険の返戻金が40万円といったケースでも、現金・預貯金などを含めた合計額が99万円以下なら、すべて自由財産の範囲として認められる可能性があります。
この「自由財産の拡張」を決定するのは裁判所ですが、それを認めるかどうか判断するにあたり、裁判所は管財人の意見を聴かなければならないことになっています。そのため、自由財産の拡張の判断をするのも管財人の権限の1つになります。
任意売却の権限
本来、破産者の財産は「競売」などの裁判所の手続きによって売却するのが一番公平です。しかし全ての破産者の財産をいちいち競売にかけていたら、すごく時間がかかってしまい、破産手続きの進行が遅れてしまいます。
そこで、破産管財人には「任意売却」の権限が認められています。任意売却とは、裁判所を介さずに直接、民間の業者に依頼して売却する方法です。例えば、車を中古車買取業者に売却したり、家を不動産業者に依頼して売却します。
動産(物品)の場合、一定の金額以内であれば、管財人は裁判所の許可がなくても独断で売却できます。一方、不動産の売却については、裁判所の許可が必要となります(破産法78条)
なお不動産の任意売却の場合、通常はまず親族に買取希望者がいないかを打診し、いなければ民間業者を介して売却します。
破産財団からの放棄
破産者から回収した財産の中でも、「ほとんど売却価値がないもの」「売ろうとしたが買い手が付かなかったもの」など、結果的に不要となった財産については、管財人は破産財団から放棄することができます。これを財団放棄といいます。
管財人が財団放棄をするためには、裁判所の許可が必要です。(破産法78条2項12号) また財団から放棄された財産は、最終的には破産者の手元に戻ってくることになります。
ただし財団放棄の対象が不動産で、かつ銀行などの抵当権がついている場合は、破産者の手元には戻ってきません。財団放棄された後は、銀行などの金融機関の手で競売にかけられることになります。
破産管財人には、否認権を行使する権限が与えられています。
否認権とは、破産者が「破産手続きの前に不当に自らの財産を減らすような行為」をした場合に、その行為を破産手続きで無効にする権限のことをいいます。
否認権は、訴え、否認の請求または抗弁によって、破産管財人が行使する。
破産者の財産は、すべての債権者に公平に分配(配当)されなければなりません。それなのに、手続きの直前に、破産者が勝手に一部の債権者だけに返済をしたり、財産を譲渡して減らしてしまった場合には、管財人はその行為を否認して財産を「取り返す」ことができます。
例えば、破産手続きの直前に友人だけに優先的に返済をしたり、破産手続きの3カ月前に保険の名義を家族に変更するような行為は、破産手続きの開始後に否認される可能性があります。
否認権行使については、以下の記事を読んでください。
この否認権を行使できるのは破産管財人だけです。そのため、否認権も破産管財人の権限の1つです。
もし破産者が財産を譲った相手が、素直に財産の返還に応じない場合には、管財人は(破産者に代わって)相手を裁判で訴えることで、財産を取り返すことができます。
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