個人再生や任意整理なら警備員の方でも借金が減らせる?
残念ながら警備員の方は、自己破産をすると警備業法上の欠格事由に該当し、警備員の仕事を続けることができなくなる可能性があります。そのため、借金があっても自己破産するのを躊躇してしまう、という話はよく聞きます。しかし警備員の方でも「任意整理」や「個人再生」といった他の手続きを選択することは法律上全く問題ありません。諦めないでください。
警備員の仕事についている人は、自己破産をすると仕事を続けられなくなるって聞いたんだけど…。じゃあ、借金を抱えて生活に困ってる警備員の人はどうすればいいの?
たしかに警備業法では「破産者は警備員になれない」と定められているから、破産手続き中は警備員の仕事に就けない。でも、任意整理や個人再生なら法律上は全く問題ないよ。
任意整理や個人再生なら、警備業法には引っかからないってことね。
でも法律上は問題なくても、債務整理を弁護士に依頼したことが警備会社にバレたら、解雇されたりしないの?
自己破産の場合は、警備会社によっては就業規則の解雇事由に該当する可能性があるけど…。任意整理や個人再生なら業務に支障はないはずだから、労働契約法上、解雇は認められない。
就業規則で定められていても、「客観的に合理的な理由」がなければ解雇は無効なのね。任意整理や個人再生は、警備業法の欠格事由じゃないから、解雇する合理的な理由にならないってことか。
逆に自己破産の場合は、法律で「警備員になれない」と定められてるわけだから、解雇する合理的な理由にあたる可能性がある。だから解雇が心配なら、任意整理か個人再生にした方がいいかもね。
警備員の方でも、個人再生や任意整理なら法律上の制限は全くありません。そのため、警備員の仕事を続けながら債務整理をすることができます。任意整理なら借金の利息をカットして月々の返済額を減らすことができますし、個人再生なら裁判所に申し立てて借金額を現在の1/3~1/5程度まで減らすことができます。どの債務整理の手続きがいいかは、ぜひ1度弁護士に相談してみてください。
参考 → 個人再生におすすめの法律事務所を探す
- 個人再生や任意整理なら、警備業法上の欠格事由にはあたらない
- 警備会社は、個人再生や任意整理を理由に従業員を解雇することはできない
“警備員”だから債務整理できない、は全くの誤解?!
警備業法14条では、警備員の欠格事由について定められており、「アルコール・麻薬中毒の人」「禁錮刑以上の刑に処された人」「心身に障害がある人」などに加えて、「破産者で復権を得ない人」も警備員になってはならない、と定められています。
しかし、実は任意整理や個人再生については何の記載もありません。そのため、任意整理や個人再生なら警備員の仕事を辞める必要はありませんし、会社に報告する必要もありません。
以下、それぞれの手続きの違いを簡単に説明しておきます。
債務整理の方法
手続き | 内容 |
---|---|
任意整理 | 消費者金融やカード会社など、金利の高い貸金業者と(裁判所を通さずに)和解交渉をし、利息の支払いを免除して貰って月々の返済額を減らす手続き。そもそも任意整理であれば、警備会社にバレる可能性はほとんどない。 |
個人再生 | 個人再生は裁判所に申立てをして、借金元本を100万円まで減額して貰う手続き。法律上は個人再生をしても欠格事由にならないので、警備員の仕事を続けられる。ただし官報 ※ の情報から、警備会社に個人再生をした事実がバレる可能性はある。 |
自己破産 | 自己破産は裁判所に申立てをして借金を0にして貰う手続き。法律上の欠格事由にあたるのは、開始決定~免責までの数カ月だけだが、その期間に警備会社に自己破産の事実がバレれば、解雇される可能性もある。(参考記事) |
任意整理や個人再生の場合は、どのくらい借金が減るのかがイメージしにくいかもしれません。
その場合は、以下の記事を参考にしてみてください。
任意整理はそもそも裁判所に申立てをせずに、弁護士と貸金業者とが直接交渉をして和解する手続きです。そのため、債務整理をした事実が外部に漏れることはありません。自分から言わない限り、警備会社にバレることはないでしょう。
一方、個人再生は、裁判所に借金の減額をお願いする公的な手続きです。そのため、全ての債権者に公平に告知するために、手続きの開始決定や認可決定時に国の機関紙である官報 ※ に氏名や住所などの個人情報が掲載されます。つまり一般公開されてしまいます。
個人再生の官報掲載については以下の記事を読んでください。
通常は、誰も官報の情報欄なんて見ていません。しかし警備会社の場合は、欠格事由の関係から、従業員の「破産」情報を官報でチェックしている可能性があります。個人再生は欠格事由ではないですが、同じ官報に載るのでバレる可能性は0ではありません。
ただし前述のように、もし警備会社に個人再生の事実がバレたとしても、会社はそれを理由に解雇することはできません。労働契約法という法律で「客観的に合理的な理由のない解雇は無効である」と定められているからです。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
破産者の場合は、警備業法上の欠格事由に該当するため、それを理由に解雇しても「客観的に合理的な理由がある」と判断される可能性があります。しかし個人再生や任意整理は、法律上何の制限もありませんので、それを理由に解雇することは許されません。
もし就業規則を理由に解雇されたとしても、違法な不当解雇として無効を争うことができます。
ちなみに誤解のないよう説明しておくと、警備員の方でも絶対に自己破産ができないわけではありません。法律上の欠格事由に該当するのは、裁判所の破産開始決定を受けてから免責許可が下りるまでの数カ月間だけだからです。
これについては以下の記事で説明しています。
たまに「1年前に自己破産してるので、警備員にはなれない」と思い込んでいる方がいますが、すでに免責許可の下りた方が警備会社に就職するのは全く問題ありません。また免責許可が下りた後に警備会社に破産したことがバレたとしても、それを理由に解雇することはできないでしょう。
前述のように、会社が従業員を解雇するには「合理的な理由」が必要です。すでに免責許可を得て復権しているのであれば、現時点では警備員の仕事に就けるわけですから、解雇する合理的な理由にはなりません。
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