年金担保融資は自己破産しても免責されない?
一般的には、国民年金法により年金を担保に融資を受けることは法律で禁止されています(参考:「自己破産で年金が差押えられることはある?」)。
しかし唯一、年金を担保に融資が国により認められている団体があります。それが独立行政法人福祉医療機構(WAV)の提供する年金担保融資です。
前に年金は、差押えや担保の対象とならない、自己破産後も受給し続けることのできる権利だって聞いたんだけど、例外の年金担保融資っていうのがあるのー?
年金担保融資とは、独立行政法人「福祉医療機構」のみに認められた年金を担保にした融資のことで、主に高齢者が医療費や住宅の修繕費など、一時的に高額な出費が必要になった際に貸付を行うことを目的とした制度です。
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そもそも年金担保融資って何の為にあるの?
そもそも年金は、原則として国民年金法24条で規定されているように、年金給付権を担保にしたり、譲渡したり、また差押えの対象とすることができません。
しかし、他に収入や担保財産のない年金生活のお年寄りの方にとって、もし年金を担保として借入のできる機構が1つもなければ、いざ医療費などの資金が必要になって困ったときに、最終的には闇金などの違法業者から借入をしてしまうことにもなりかねません。
そこで年金受給者でも万が一のケースで年金を担保に借入ができるように、国から認められて貸付をおこなっているのが、独立行政法人福祉医療機構の「年金担保融資」です。
年金担保融資の貸付の主な条件は以下のようなものになっています。
- 各年金証書を持っていて公的年金を受給中の方
- 生活保護を受給していない、年金支給が全額停止されていない
- 10~250万円の範囲の融資を希望している
- 年間で受給する年金の範囲内での融資
- 臨時生活資金の場合は、上限100万円まで
年金担保融資は「年金受給権」(年金を受け取る権利)を担保とする融資です。そのため、融資条件に一般の消費者金融などのような資産状況や収入といった項目がなく、年金受給者であれば誰でも融資を受けることが可能です。
年利は1.6%と低金利で、また返済方式は申込人の指定した金額を毎月定額で返済する(年金支給額から差し引く)かたちになります。返済額は毎月最低1万円~、最大で支給される年金額の2分の1までを返済に充てることができます。
高齢者に生活破綻が続出?!意外と怖い年金担保融資
しかし、実態として年金担保融資の貸付額のうち、約1割が借金返済を目的とした借入に使われているといわれています。年金担保融資は、年金の支給額から天引きするかたちで回収できる債権のため、回収が非常に簡単(貸し倒れリスクが低い)なため、比較的、融資条件が甘い、というのも原因の1つとされています。
自己破産は原則として、一般債権はすべて免責となる、つまり借金がチャラになる制度です。ところが、この年金担保融資に関しては、自己破産をしても借金がチャラにならないかなり例外的な融資の1つです。
年金担保融資の担保となっている「年金受給権」は、自己破産後も継続的に年金が給付される、という権利です。つまり、借金の返済原資(担保)である年金が自己破産後も毎月振り込まれるため、そこから自動的に年金担保融資の返済額が棒引きされる仕組みになっているのです。
年金担保融資の廃止は先送りに
年金担保融資を原因とする高齢者の生活破綻者が増加したことで、2010年には年金担保融資の廃止方針が閣議決定されました。しかし一方で、代替案となる制度の議論が進んでいないことが理由で、年金担保融資は今でも新規貸付が継続されています。
毎日新聞の2013年5月の調べによると、なんと過去1年間で年金担保融資を受けている年金受給者のうち5471人が経済的破綻による生活保護を申請していることがわかっています。
医療費や住宅修繕費、その他の目的で支出が嵩みがちな高齢者ですが、一方で、既に年金生活を送っている高齢者の多くは収入がないため、年金を担保に借金をしてしまうと簡単に破綻状態に陥ってしまいます。
しかし、お金を借りるお年寄りが多いということは、それだけ生活に困窮している方も多いということです。年金担保融資のような最後の受け皿がなければ、結局、闇金などの違法貸金業者を助長することにもなりかねません。年金担保融資の今後の動向や代替案に注目です。