自己破産のデメリットは実は結構少ない
自己破産はそのイメージの悪さからか、さまざまな虚偽の噂が蔓延しています。例えば「選挙権がなくなる」とか「会社を解雇される」など、全く根拠のないとんでもない噂がさも真実であるかのように言われていたりします。これらの自己破産のデメリットは本当なのでしょうか?
自己破産をすると、パスポートが取れなくなって海外旅行にも行けなくなるって友達に聞いたんだけどっ、これって本当なのーっ!?
このように自己破産は、世間的なイメージが悪いからか、根も葉もない噂や嘘が結構あるんだよ。例えば、選挙権がなくなるとか、戸籍に破産が記録される、とかね。
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自己破産手続きは、債務整理のなかでもおそらく最も多く誤解されている借金整理手続きの方法です。
実際のところ、今はネットの時代なので少し調べればこれらが嘘であることはすぐにわかりますが、それでも依然、これらのデマによるイメージからか自己破産をすると社会から失格の烙印を押されて社会生活に復帰できなくなるかのようなイメージを抱いている方は少なからずいます。
上記の他にも、特によくある自己破産に関するデマには以下のようなものがあります。
- 自己破産をすると戸籍や住民票に破産が記録される
- パスポートが取得できなくなり海外旅行にも行けなくなる
- 制限行為能力者として扱われるようになる
- 家具やエアコン、家電に至るまですべて没収される
- 一生、ローンやクレジットカードが利用できなくなる
少なくともこれらは全て嘘です。自己破産をしても、数年間、金融機関から借入やクレジットカードの新規発行ができなくなることを除けば、実際のところ社会的な生活を送る上でのデメリットというのは実はほとんどありません。
実際の自己破産のデメリットは主に、「財産が処分されてしまうこと」「職業上の欠格事由により一部の職業に就業できなくなること」「官報に名前などが掲載されること」「信用情報機関にブラックリスト登録されること」などになります。
とはいっても、これらのデメリットは全てが自己破産だけに限ったものではありません。なかには他の債務整理手続き、例えば個人再生や任意整理と共通のデメリットもあります。その意味でいうと、純粋に自己破産だけのデメリットというのはあまり多くありません。
- 財産が処分されてしまう
- 破産管財の場合、一部自由が制限される
- 郵便物が破産管財人に転送される
- 職業上の欠格事由にあたる
- 金融ブラックリストに登録される
- 官報に名前や住所が掲載される
- 裁判所での手続きが必要
- 全ての債権者が整理対象
やはり自己破産をする上で一般的に一番のデメリットだと思われるのは、この財産の処分です。例えば持ち家(ローン残高が住宅評価額の2倍に満たないもの)があったり、20万円以上の預貯金や自動車があったりすると、これらは全て破産管財人により処分されて売却されてしまいます。
しかし、その代わりに「免責」を受けて借金が帳消しになることを思えば、借金で苦しんでいる多くの債務者にとってはメリットの方が大きいのではないかと思います。また、特に最初から目ぼしい財産がない場合には、同時廃止手続きになりますので財産の処分はありません。
自己破産が破産管財事件として扱われた場合には、手続き期間中は住居の引っ越しや2箔以上の宿泊旅行、海外旅行などを自由に行うことはできず、裁判所への申立てが必要になります。これは破産法37条に以下のような定めがあるからです。
(破産者の居住に係る制限)
第三十七条 破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。
これを誤解・曲解して、「自己破産をするとパスポートが取得できなくなる、海外旅行に行けなくなる」といった噂が広まったのではないかと推測します。
ただしこの自由の制限を受けるのは自己破産の手続き期間中だけで、免責が降りた後はどこに引っ越そうが自由です。また手続き期間中であってもこの裁判所への申立ての許可は、比較的、簡単におりますので特にこの制限で苦労することはないでしょう。また破産管財事件でなく、同時廃止として扱われた場合にはこれらの制限はありません。
自己破産の手続き期間中は一定の職業に就くことができなくなります。これを職業上の欠格事由といいます。
法律の定めにより、特定の職業に就くことができなくなる要件のこと。例えば自己破産の手続き期間中は弁護士法7条により、弁護士資格に一時的に就くことができなくなりますが、これは自己破産が弁護士の職業上の欠格事由にあたるからです。
ただしここでも注意して欲しいのは、この職業上の欠格事由に該当するのはあくまでも自己破産の手続き期間中だけの話です。自己破産の手続きが終わってしまえば、これらの職業上の欠格事由にはあたらなくなるため、また再びこれらの職業に就くことが出来るようになります。
自己破産で一時的に就けない職業・資格 | 法律的な根拠 |
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弁護士 | 弁護士法7条5項 |
司法書士 | 司法書士法第5条 |
不動産鑑定士 | 不動産鑑定評価に関する法律第16条 |
公認会計士 | 公認会計士法第4条 |
税理士 | 税理士法第4条 |
宅地建物取扱主任者 | 宅地建物取引業法第18条 |
警備員 | 警備業法第14条 |