個人再生委員の職務や報酬、面談について詳しく解説!
東京地方裁判所では全ての個人再生の事件について、個人再生委員が選任される決まりになっています。大阪地裁、その他の裁判所でも負債額が大きい場合や、債権者により評価申立てがされた場合には個人再生委員が選任されます。この個人再生委員とは何をする人なのでしょうか? どういう条件で選任されて、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか?
東京地裁に個人再生を申立てた場合って、個人再生委員って人が選任されて個人再生手続きのチェックや補助をするって聞いたんだけど、具体的には何をする人なのかなー?!
個人再生を開始していいかどうか、とか、再生計画を認可していいかどうか、といった重要な決定に関して、裁判所に意見書を提出するのは個人再生委員の仕事なんだねー。
そ、それはちょっと緊張するなー。面接ってどんなことを聞かれるのかなー。パチンコで借金が増えましたっていうと、怒られたりしないー?
それで個人再生委員さんに払う費用なんだけど、再生債務者が負担するんだよねー?
これって幾らぐらいかかるのかなー?
- 東京地方裁判所の個人再生手続きでは、必ず個人再生委員が選任される
- 個人再生委員は、手続き開始や再生計画の認可に関して裁判所に意見する
- 個人再生委員は選任されて1~2週間以内に債務者と面接する
- 報酬は代理人弁護士がいる場合で15万円、いない場合は25万円
個人再生委員はどんな場合に選任されるの?!
個人再生委員は、裁判所が再生手続きの補助のために選任する委員のことで、通常は管轄裁判所にある弁護士会の所属弁護士から選ばれます。
実際にどのようなケースで個人再生委員が選任されるかですが、これは個人再生を申立てる裁判所によっても異なります。まず東京地方裁判所では全ての事案について個人再生委員が選任されています。
東京地方裁判所では、分割予納金による計画弁済の履行テストという独自の制度があるため、手続きに必ず個人再生委員が必要になります(参考:「分割予納金って何?」)。そのため東京地裁に個人再生を申立てる場合には、個人再生委員が付かないということはまずありません。
その他の裁判所の場合は、原則としてこちら側が代理人に弁護士を付けている場合には、個人再生委員の選任はありません。これは後述しますが、個人再生委員が選任される目的は、(1)再生債務者の財産や収入の状況を正しく調査すること(2)再生債務者が適切な再生計画案を作成するための勧告をすること、の2点であるため、債務者側の代理人に弁護士が付いていれば、同じことは代理人弁護士でも可能だからです。
そのため、債務者に代理人弁護士がいない場合(本人申立ての場合)は、個人再生委員は必ず選任されることになります。これは全国どの地方裁判所でも同じです。
申立てに弁護士でなく司法書士が関与しているケースでは、個人再生委員が選任される場合とされない場合があります。司法書士は法定代理人になることはできない(書類作成代行までしか認められない)ため、一部のケースでは個人再生委員が選任される可能性があるようです。
この辺りの運用も裁判所により異なります。例えば、福岡地裁では「個人再生委員の選任を要しない司法書士の推薦名簿」というものがあり、一定の研修を受けた司法書士は個人再生委員の選任なく、個人再生手続きを受任することができます。
またその他、債務額が特に大きいケース、または個人事業を営んでいて資産額が大きいケース等では、個人再生委員の選任が必要になる場合があります。例えば、大阪地裁では住宅ローンを除く負債総額が3000万円を超えるケースでは個人再生委員が選任されるようです。
上の例は、個人再生手続きの最初から個人再生委員が選任されるケースですが、それ以外にも、再生手続きの途中から個人再生委員が選任されることがあります。
債権者から債権の評価申立てがなされた場合です。
「評価申立て」とは、債権者と債務者の間で債権額についての意見が一致しない場合に、個人再生委員が中立的な立場から債権額を確定する手続きのことです。
(30万円)を借りて、(30万円+法定利息)を返す、といった単純な契約であれば、金額について争いが生じることはありませんが、過払い金についての争いがある場合や、不動産の担保価値について争いがある場合には、債権者と債務者との間で主張する金額が異なるケースがあります。
このような場合には、債権者が「評価申立て」をすることで、裁判所が個人再生委員に調査を依頼し、債権額を中立の立場で手続き内確定させます。この「評価申立て」がなされた場合には、東京地裁、大阪地裁、全国地裁問わず、個人再生委員は必ず選任されます。
個人再生委員の職務って何なの?!
では個人再生委員は、どのような役割の仕事があるのでしょうか?
民事再生法223条2項では、個人再生委員が選任される場合の職務について、以下のように規定されています。
(1)再生債務者の財産および収入の状況を調査すること
(2)評価申立てがあった際に再生債権の評価に関し裁判所を補助すること
(3)再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をすること
(民事再生法223条)
(2)の評価申立てに関しては前述の通りです。
では(1)と(3)に関しては具体的にはどのような仕事になるのでしょうか? これは主には、「再生手続きの開始決定」「再生計画の認可決定」の際の、裁判所への意見書の提出になります。
個人再生の申立てがあった場合、通常、裁判所は(選任の必要がある場合には)その日のうちに個人再生委員を選任します。そして、その日から3週間以内に個人再生委員は裁判所に、再生手続きを開始していいかどうかについての意見書を提出します。
個人再生委員は、申立て時の資料から再生債務者の財産状況等をチェックし、個人再生の開始要件を満たしているかを確認して意見書を作成します。その意見書を確認して、はじめて裁判所は個人再生手続きの開始を決定します。そのため、申立てから再生計画が開始するまでには1カ月の期間がかかります。
また、個人再生委員は財産目録等の資料の調査もおこないます。もし再生債務者が財産目録に記載すべき財産を記載していなかったり、または不正な記載をしていた場合には、個人再生委員の申立てにより再生手続きの廃止決定がなされます。(民事再生法237条2項)
最後に個人再生委員は、再生債務者から提出された再生計画の履行可能性についてチェックを行います。本当に計画通りに弁済ができそうかどうか、最低弁済額についての要件を満たしているかどうか、等を確認して裁判所に意見書を提出します。
再生手続きの開始決定前に再生債務者と面接をおこなうのも個人再生委員の仕事になります。
前述のように個人再生委員は、個人再生の申立てがあってから3週間以内に裁判所に開始決定の可否に関する意見書を提出しなければなりません。そのため、再生債務者がちゃんと開始決定の要件を満たしているかどうかを実際に確認するために、申立て後1~2週間のあいだに再生債務者と面談を行うことが多いです。
この個人再生委員の面接には、代理人弁護士も同席することができます。
通常この面接は、個人再生委員の弁護士事務所でおこなわれます。時間としては30分~1時間程度で、主に借金の金額、借金ができた理由、財産状況、今後の収入、等について聞かれ、また本当に返済ができそうかどうかを確認されます。
個人再生委員との面接は緊張すると思いますが、個人再生委員は裁判官ではありませんし、また何か悪いことをして取り調べを受けるわけでもないので、正直かつ誠実に聞かれたことを答えれば特に問題はないと思います。
これは東京地方裁判所でのみ、独自の制度として運用されている方法です。
東京地裁では再生手続き期間中に、実際に毎月、再生債務者に申立て書に記載した返済額をテストとして弁済させます。これは、再生債務者が本当に今の収入、生活レベルで計画通りの弁済を履行する能力があるかどうかをチェックするためです。
履行テストは、個人再生委員が用意した専用の「分割予納金口座」に振り込みます。この口座の開設や、月々の振込状況のチェックも個人再生委員の職務になります。なおここで振り込まれた資金は、個人再生委員への報酬に充てられ、余った分は返却されます。
個人再生委員の報酬(費用)はいくら掛かる?!
さてこの個人再生委員への報酬ですが、これは「裁判所の手続き費用」(予納金)の一種ですので、再生債務者が負担する必要があります。
東京地方裁判所の場合は、代理人弁護士がいる場合には15万円、代理人弁護士がいない(本人申立て)場合には25万円です。大阪地方裁判所や、その他の地方裁判所で選任される場合は、大体、相場としては20万円前後のようです。決して安くはありませんね。
個人再生委員は、別に積極的に再生債務者の味方をしてくれる存在ではありません。それでさらにお金も掛かるなら、出来れば選任されないようにして欲しい、と思うのが多くの再生債務者の本音ではないかと思いますが、東京地裁の場合は必ず選任されますのでどうしようもありません。
その他の地裁の場合は、代理人として弁護士に個人再生を委任していれば、前述のように個人再生委員の選任を避けることは可能です。ただし、財産が多くて権利関係も複雑な場合、債務額が多い場合等は、前述のように裁判所としても適正な調査が必要となるため、個人再生委員の選任もやむを得ない場合があります。
前述のように、再生債権の評価も個人再生委員の仕事です。ただし、評価の申立ては債権者がおこなうものですので、これにより生じる予納金はまずは債権者が負担します。費用の相場については、こちらの記事でも解説していますが2万円~5万円です。
東京地裁のように全ての事件で個人再生委員が最初から選任されている場合には、債権者による評価申立てがあるからといって、新たに別の個人再生委員が選任されることはありません。そのため、東京地裁の場合は、評価申立てに関して追加での予納金は発生しません。