アイフルの過払い金請求の対象期間と回収率の目安は?
アイフルは、クレジットカードのライフなどを子会社に持つ日本の大手消費者金融です。チワワを使った「どうする?アイフル」のCMでもお馴染みで覚えている方も多いはずです。かつてアイフルで借金をしたことのある方は、過払い金の請求ができるのでしょうか?
昔アイフルから借金をしていた人も多いと思うんだけど、アイフルの過払い金を返還請求することってできるのーっ?!
回収率としては、過払い金元本のどのくらいが戻ってくることが多いのかなー?!
一時期は業績もうなぎ昇りだったアイフルですが、2006年に取立方法や営業活動が問題視されて業務停止処分を受けたことにより失速し、さらに貸金業法の改正に伴い貸付金利を引き下げたことで収益が悪化。3000億円の赤字を計上し、2009年に経営再建のために私的整理の「事業再生ADR」を申請しています。そのため、業績や経営状態は決して良くはありません。
アイフルの過払い金請求のポイントは?!
過払い金請求による利息返還損失や、貸金業法改正による総量規制などの煽りで、消費者金融の最大手だった武富士が倒産するなど、独立系の消費者金融は苦しい状況に追い込まれています。
そのためアイフルも、経営維持のために過払い金損失などの出費は極力絞らざるを得ず、他の消費者金融と比較しても厳しめの対応に出てくることが多いです。
アイフルが貸金業法の改正決定を受けて金利を改定したのは、2007年8月1日以降の新規取引からになります。そのため、2007年8月1日以前からアイフルと取引を行っていた方は過払い金が発生している可能性が高いです。
金利の引き下げ時期 | 改正前金利 | 改定後の金利(当時) | |
---|---|---|---|
アイフル | 2007年8月1日以降 | ~28.835% | ~20% |
ただし過払い金の返還請求権の時効は、最終取引日から起算して10年間です。そのため、2007年以前にアイフルから借入をしたことがある方であっても、最終取引日から既に10年以上が経過している方に関しては、残念ながら過払い金を請求することはできません。(過払い金の消滅時効)
特にアイフルの過払い金請求で見られる特徴としては、
- 過払い金元本の3~5割での和解案の提示
- 訴訟で支払い判決が出た場合、ほぼ確実に控訴してくる
- 移送申立てなど、露骨な時間稼ぎを狙ってくる
などの傾向があると言われています。
基本的に和解案として提示される金額はかなり低いので、和解の場合の回収率は3~5割が相場になります。その金額に納得ができない場合は、訴訟を提起するしかありませんが、アイフルも過払い金訴訟には慣れていますので長期化することを覚悟しておく必要があります。
アイフルの過払い金で訴訟をする場合、法律的に争点になるポイントがある場合には、徹底的に争そってくる可能性があります。 実際に多い例として、取引期間中に支払いに遅延があった場合には「期限の利益の喪失」を主張されることがあります。
期限の利益の喪失とは、簡単にいうと債務者が「返済に遅れたことで契約内容を損なった」ことを意味しますが、これにより法律上は遅延損害金利率の適用が認められることになります。遅延損害金利率であれば、元金10万円以上に対しては最大26.28%までの金利が認められていますので、こちらの金利で再計算すべきだ、という主張内容になります。
ここで一応、遅延損害金利率について復習しておきましょう。遅延損害金とは、約定日までに返済を行わなかった場合にその借金元本に対して付すことのできる損害金利率のことで、利息制限法により通常の上限金利の最大1.46倍までの金利を取ることが認められています。
借金元本 | 法定金利の上限 | 遅延損害金の上限 |
---|---|---|
借金10万円以下 | ~20% | ~29.2% |
借金100万円未満 | ~18% | ~26.28% |
借金100万円以上 | ~15% | 21.90% |
たしかに支払いに一度、遅れてしまった場合、債務者側に非がありますので一部では遅延損害金利率の適用を認めざるを得ないケースがあります。しかし、遅延日以降の全ての取引に対して、遅延損害金利率を適用するというのは少し横暴な主張です。
例えば、平成18年3月に返済を遅延してしまったとしても、翌月4月には滞納分を一括で返済し5月以降はまた元通り通常の返済を続けたとしましょう。 この場合、アイフル側がその段階では特に期限の利益喪失や契約の無効について主張していない限り、契約の続行を認めて、再度、期限の利益を付与したと考えるのが妥当なハズです。 少なくとも過払い金訴訟の段階になって後出しジャンケン的に期限の利益を主張するのは違和感があります。
この遅延損害金利率での計算についての主張は、一部の裁判では実際に認められてアイフル側が勝訴した判例もあります。
しかし平成26年11月11日の札幌地方裁判所の判決、平成26年5月20日川崎簡易裁判所の判決、平成26年5月16日横浜地方裁判所の判決のように、遅延当時には何も主張せずに、後から「期限の利益の喪失」を主張して遅延損害金利率を求める行為は「信義則に反する」としてアイフル側の主張を棄却しています。(参考:「名古屋消費者信用問題研究会-期限の利益喪失・遅延損害金に関する判例」)
そのため過去にアイフルとの取引で遅延があったとしても、「信義則違反」だとして争そうことが可能です。
信義則(しんぎそく)とは、信義誠実の原則という言葉の略称であり、民法第1条2項で定められた「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」という文言を根拠とする法律上のルールです。わかりにくい言葉ですが、簡単にいうと民法上の権利の主張は「相手方との信頼関係のもとで、道義的・常識的に誠実に行われるべき」という大原則です。
ちなみに遅延損害金利率に関して争われる可能性があるのは、あくまで過去のアイフルとの取引で遅延が発生しているケースのみです。特に支払いに延滞がなかった方は上記の話はあまり関係ありませんので心配の必要はありません。
過払い金訴訟は通常、訴額が140万円以下である場合には、まず簡易裁判所といわれる場所で裁判がおこなわれます。訴額が140万円を超える場合には、地方裁判所に訴訟を提起することになりますが、この最初の裁判を第一審といいます。
この第一審で勝利して裁判所から過払い金の支払い命令が出た場合、多くの消費者金融は素直に支払いに応じることになりますが、アイフルは「控訴」により争いを継続する姿勢を見せてくることが多くあります。
裁判所の第一審の判決や決定について不服がある場合、相手方は「控訴」といって別の上級の裁判所でもう一度、再審をするよう申立てることができます。実際には、権利関係が明らかで再審の余地がない場合には、上級裁判所によりこの控訴の申立ては「棄却」されることになります。棄却がされた場合、第一審の判決が確定することになります。
アイフルが第一審の判決に対して控訴をしてくることは業界では有名ですが、実際には大半のケースで第一審の決定が認められ、控訴内容が棄却されますのでこの控訴にあまり意味はありません。
アイフル側もそのことは理解しており、判決を覆す目的で控訴しているというよりは、単に判決が確定するまでの時間を引き延ばすために控訴をしてくることが多いです。アイフルはこの他にも、過払い金請求に対しては徹底的に時間を稼ぐ方針を明確にしているため、訴訟により過払い金請求をする場合にはある程度の根気が必要になります。
アイフルのもう1つの時間稼ぎの戦略の1つが移送申立てです。移送申立てとは簡単に言うと、「管轄の裁判所の場所を変更してください」という申立てのことです。裁判をどの場所で行うかは、アイフルの過払い金訴訟にとってあまり重要な要因ではありませんが、一定の時間の引き延ばしができる他、管轄の裁判所が遠くなれば債務者にとっても色々と不便になるため、最近、実験的に主張してくるケースがあるようです。
詳しくはこちらの「アイフルなど過払い金訴訟で移送申立てをしてくるケース」を参考にしてください。
過払い金訴訟をする上で知っておくべきことって?!
アイフルの過払い金請求では、提示される和解案の額が低いこともあり、必然的に訴訟を検討する方も多いと思います。少しでも多くの額を取り戻したい場合には、やはり訴訟をすることが重要になりますが、そのために少し知っておくべきことがあります。
まず過払い金で訴訟を提起する場合には、弁護士費用が変わってきます。過払い金に対する弁護士報酬は、「過払い報酬」といって実際に取り戻せた金額のうち20~25%を報酬にあてるのが一般的です。弁護士会が定める倫理規定では、和解での過払い金請求の過払い報酬上限を20%、訴訟による過払い金請求の報酬を25%と定めています。
過払い報酬 | 上限の報酬率 |
---|---|
訴訟をしない場合 | 上限20% |
訴訟をする場合 | 上限25% |
こちらの記事でもシミュレーションなどを公開していますが、8割~9割で和解できるのであれば、裁判をしてもしなくても手元に戻るお金はあまり変わらない、というケースは少なくありません。
加えて過払い金で訴訟をする場合には、裁判費用は実費でかかります。この裁判費用は、請求する過払い金の金額(訴額)によって変わってきます。詳しくはこちらの記事「過払い金請求で訴訟する場合の裁判費用」を参考にしてください。
過払い金請求で訴訟する場合のデメリットの1つは「時間が掛かること」です。まして前述のようにアイフルは時間を引き延ばす作戦を戦略的に採用していますので、裁判は長期化する傾向にあります。全額の回収を狙う場合には、実際に過払い金が振り込まれるまでに最大で1年近くかかるケースもあるため、ある程度、腰を据えてじっくり取り組む必要があります。
アイフルに実際のところ、倒産するリスクはあるの?!
アイフルの過払い金請求でたびたび話題に上るのが、アイフルも武富士やアエルのように倒産してしまうのではないか、という噂です。もし消費者金融が倒産してしまうと、回収できる額が激減してしまうため、今後、過払い金の請求を検討している方にとっては少し気になるところです。
アイフルは独立系であるため、前々から「倒産するリスクがある」として早期の過払い金請求が推奨される傾向にありました。依然として、経営状態は良いまでは言えないものの、2015年現在では最悪期は脱した、との見方が一般的であり、倒産リスクはそれほど高いわけではありません。
アイフル決算 | 平成24年3月 | 平成25年3月 | 平成26年3月 |
---|---|---|---|
営業収益 | 114,002 | 99,619 | 91,858 |
当期純利益 | 17,391 | 22,705 | 30,461 |
現金期末残高 | 86,695 | 61,198 | 66,876 |
利息返還損失引当金 | 108,667 | 91,421 | 59,881 |
※数字の単位は(百万円)です。出典:「アイフルIR情報-有価証券報告書」
営業活動によるキャッシュフローもプラスに転じており、内部留保の保有現金も増えています。当期純利益に関しては3期連続で増益していますので、資金繰りについては何とか問題ないと言えるのではないかと思います。
さらにアイフルに関しては、2014年6月に銀行からの支援継続が決定したことも大きいです。前述のようにアイフルは2009年に事業再生ADRを適用し、銀行団から2721億円の支援を受けていましたが、そのうち1961億円の返済猶予期間は5年間と定められていました。
事業再生ADRとは、民事再生法や会社更生法などの法律上(裁判上)の手続きを行うことなく、民事的な団体や金融機関の支援を受けて事業再生を試みる再生手続きのことです。アイフルはこの事業再生ADRを利用することにより、法律上の倒産企業となることなく、事業の再建に取り組むことが可能となりました。
この事業再生ADRによる支援期間が終了するのが、当初は2014年とされていました。
しかし5年間で予定よりも400億円近くも多くの弁済をおこなったことと、リストラや事業縮小により業績の改善が見られたことで、銀行団による金融支援の継続が決定し、残債務1600億円相当についてもさらに5年間の軽減措置の延長(一部、年率8%の社債との交換)が決まりました。これにより、今後すぐにアイフルが倒産に追い込まれる心配はないとの見方が強くなっています。(参考:「日本経済新聞ニュース」)
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