自己破産をすると警備員の仕事は資格制限でつけない?

自己破産をすると、破産手続きの期間中は法律により警備員の職に就くことができなくなります。警備業法14条では「破産して復権を得ないものは警備員となってはならない」と定められているからです。そのため、警備会社の採用面接では、破産者でないことの誓約書や証明書を提出させられることが多いです。ただし既に免責を得て復権している方は問題ありません。

自己破産すると警備員の仕事に就けない?
ねえねえ、先生ー!
いま弟が自己破産を弁護士に依頼してるんだけど、今後、警備員のアルバイトを始めたいらしいの。それで、自己破産すると警備員になれないって噂を聞いて心配してるんだけど…。本当なの?
うーん、本当だね。
ちゃんと免責許可決定が下りて復権(※)するまでは、面接には行かない方がいいかも。警備業法という法律では、「破産して復権を得ないもの」が警備員になることが禁止されてるからね。
そうなんだ。
正直、警備員のバイトって誰でもできる仕事だと思ってた…。そんなに甘くないのね。でも警備会社は、破産者かどうかをどうやって調べるの? 実際はチェックなんてしてないんじゃない?
いや、そんなことはない。
警備会社は法律で、営業所ごとに警備員名簿を作成して保管することが義務付けられていて、その名簿には「欠格事由に該当しないことを確認した書類」を添付しないといけないことになってるんだ。
えーっと…、
つまり警備会社は、ちゃんと入社面接や研修のときに「破産者でないこと」を確認する何らかの書面を提出させて、それを保管することが法律で義務付けられてるってこと?
そのとおり。通常は、誓約書と市役所の「身分証明書(※)」という公的な証明書を提出させられる。「破産者かどうか?」という情報は、本籍地の役所で管理されてるから、もし破産者のままならこの身分証明書で破産者であることがバレてしまうね。

警備員-破産開始決定を受けていることは身分証明書に記載される―イラスト(saimu4.com)

ひえーっ!
役所の証明書なら嘘やごまかしは無理だね(泣)そういえば警備員になるには、他にも病院の診断書とか、法務局の証明書とか、たくさんの書類を提出させられるって聞いたことがあるな…。
そうだね。
警備会社にはときどき警察官の立ち入り検査もあって、警備員名簿や証明書をちゃんと保管してるかチェックされるから、意外とその辺は厳しいんだ。だから破産者の間はやめたほうがいいね。
【 補足 】

警備業法という法律では、「破産者は警備員になれない」と定められているだけでなく、警備会社に対しても、「警備員が欠格事由(破産など)に該当しない旨を確認する書面を提出させて保管すること」が義務付けられています。この書面は、法律上は本人の誓約書だけでも構わないことになっています。ですが、多くの警備会社では、採用にあたって役所の「身分証明書」などの公的な証明書の提出が求められます。

  • 警備業法は「破産して復権を得ないものは警備員になれない」と定めている
  • 警備会社は採用面接・研修時に、役所の「身分証明書」を提出させて確認する

「身分証明書」で本当に破産者とバレるの?
ねえねえ、先生ー!
ところで、その身分証明書には、いつからいつまで「破産者」と記録されるの? 例えば、今から弟が、弁護士さんに自己破産の依頼をキャンセルしても、身分証明書には破産者として載るの?
いや、それはありえない。
法律上、破産者になるのは裁判所の「破産開始決定」が出てから「免責許可」が下りるまでの間だけだからね。まだ破産手続きを申立てる前なら、身分証明書に破産の記録が付くことはない。
なるほど。
つまり、裁判所の「破産開始決定」が出た後に、裁判所の方から本籍地の市役所にその情報が通知がされるってことか。それで、本籍地の役所は、破産者を管理している名簿に新しく追加する、と。

破産開始決定後に、裁判所書記官から本籍地に通知が届く-イラスト

基本的な考え方はそうだね。
ただし実際には、裁判所は免責不許可になった人しか本籍地の市役所に通知をしていない。だから、実は破産して免責が下りた人のほとんどは、市役所の身分証明書には1度も載らないんだ。
え…ええっ!
ちょっと待って!今までの話は何だったの…! じゃあ、ふつうに破産手続きをして免責許可が下りた人は、手続き中も含めて1度も身分証明書に「破産者」とは記載されないってこと?
うん、実はそうなんだ。
前に、破産者名簿についての記事 でも解説したけどね。ほとんどの人は1~2カ月ですぐ免責されて復権するわけだから、全員をいちいち破産者として登録するのは、役所としても面倒だからね。
※ 本籍地の役所の破産者名簿については「破産者名簿って何?」を参考にしてね。
ふーん、何かどんでん返しって感じ。
じゃあ、要するに、破産の手続き中に警備会社の面接を受けて、身分証明書の提出を求められたとしても、ほとんどの人は破産者だとバレないんじゃないの?
うーん、ただ、どちらにしても採用時に「破産者ではありません」という誓約書を提出させられるし、嘘をつくと後で問題になる。それに警備会社が官報(※)をチェックしてる可能性もあるから、やっぱり破産手続き中はやめたほうがいいよ。
【 補足 】

現在の裁判所の運用では、身分証明書に「破産者」と記録されるのは、破産手続きをして免責が下りなかった一部の特殊なケースの人だけです。そのため、普通に免責が下りた人であれば、身分証明書からは破産の事実がバレない可能性もあります。ただし他にも誓約書や官報によるチェックの可能性もあるため、やはり本来は、破産手続きが終わるまで待つか、他の法律上の制限のない債務整理の手続き(任意整理や個人再生)を選択すべきです。

参考 → 債務整理におすすめの法律事務所を探す

  • 破産手続き中でも「身分証明書」からは破産者だとバレない可能性がある
  • ただし誓約書や官報、前職調査などで自己破産の事実がバレる可能性もある
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警備員になるための法律上の要件は意外と厳しい?!

警備員は他人の財産や安全を守るために、民間人でありながら法律で武器(警棒などの護身具)の携帯を認められた唯一の職業です。そのため、警備員は誰でもなれるわけではありません。

例えば、18歳未満の方、成年被後見人や破産者など自身に責任能力がない方、アルコールや薬物中毒の可能性がある方、過去に罪を犯して禁錮以上の刑に処された方、などは警備員になることができません。これらの「警備員になれない条件」のことを法律では欠格事由といいます。

警備員の法律上の欠格事由-イラスト

他にも具体的には以下のような欠格事由があります。

【 警備員の欠格事由 】

  • 成年被後見人や被保佐人、破産者で復権を得ないもの
  • 禁錮以上の刑に処され、執行が終わって5年以内の者
  • 過去5年以内に警備業法違反や警備業務で重大な不正行為をした者
  • アルコール・麻薬・大麻・あへん・覚せい剤の中毒者
  • 心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者

警備業法の条文はこちら(※クリックタップで開閉)

この警備業法の欠格事由は、正社員もアルバイトも関係なく、警備員の全員に適用されます。もちろん施設警備だけでなく、交通誘導の警備でも同じです。ただし一般企業に雇われて自社ビルの巡回をする守衛や、建設業者に雇われて自分の工事現場の交通誘導をする自家警備などは、警備業法の対象にはなりません。

警備員とは、法律上は他社のために警備業務を行う者のことを言うからです。
これについては以下のコラムで説明しています。

コラム:法律上の警備員とは(※クリックタップで開閉)

警備会社は採用時の提出書類も多い

警備業法では、警備員の欠格事由を定めるだけでなく、警備会社に対してもこれらの者を雇って警備業務をさせないようにチェックするよう厳しく定めています。そのため、警備会社の多くは、採用時に以下のような書類を提出させて、従業員が欠格事由に該当しないかどうかを確認しています。

採用時の提出書類

項目 内容
誓約書 破産者でないこと・成年被後見人でないこと・犯罪歴がないことなど、欠格事由に該当しないことを誓約させられる書面。これは法令で提出と保管が義務付けられる。(警備業法45条および警備業法施行規則66条)
病院の診断書 健康状態や薬物・アルコール依存がないことを確認するための診断書。法律上の義務ではないが、提出させる警備会社が多い。
住民票・免許証 18歳未満でないことを確認して、年齢や住所を把握するために必要。また未成年の場合は親権者の同意書も必要となる。
履歴書 過去に犯罪歴がないか、他の警備会社でトラブルをおこしていないか、などを確認するために必要。実際に過去に働いていた職場に電話をして在籍確認を行う、いわゆる「前職調査」をする警備会社も多い。
身分証明書 身分証明書とは、「破産者で復権を得ないもの」ではないことを証明するために、市役所が発行する公的な書類。(私たちが一般的にいう「身分証明書」とは全く別物)。現時点で破産者でないことを証明するために必要。
登記されていないことの証明書 法務局で発行される証明書で、「成年被後見人や被保佐人ではないこと」を証明するために必要。成年被後見人とは、認知症や精神障害などで判断能力を欠く者のことをいう。
誓約書
破産者でないこと・成年被後見人でないこと・犯罪歴がないことなど、欠格事由に該当しないことを誓約させられる書面。これは法令で提出と保管が義務付けられる。(警備業法45条および警備業法施行規則66条)
病院の診断書
健康状態や薬物・アルコール依存がないことを確認するための診断書。法律上の義務ではないが、提出させる警備会社が多い。
住民票・免許証
18歳未満でないことを確認して、年齢や住所を把握するために必要。また未成年の場合は親権者の同意書も必要となる。
履歴書
過去に犯罪歴がないか、他の警備会社でトラブルをおこしていないか、などを確認するために必要。実際に過去に働いていた職場に電話をして在籍確認を行う、いわゆる「前職調査」をする警備会社も多い。
身分証明書
身分証明書とは、「破産者で復権を得ないもの」ではないことを証明するために、市役所が発行する公的な書類。(私たちが一般的にいう「身分証明書」とは全く別物)。現時点で破産者でないことを証明するために必要。
登記されていないことの証明書
法務局で発行される証明書で、「成年被後見人や被保佐人ではないこと」を証明するために必要。成年被後見人とは、認知症や精神障害などで判断能力を欠く者のことをいう。

 
警備業法および施行規則は、警備会社に対して「警備員名簿」を作成し、これらの書類を添付して保管するように義務付けています。定期的に公安委員会(警察職員)による立ち入り検査もあり、もし備付け書類に不備があれば営業停止などの措置を命じられる可能性もあるため、警備会社もこの辺りはしっかりチェックしています。

警備会社への公安委員会の立ち入り検査のイラスト

※ 正確にいうと、法律で提出・保管が義務付けられているのは「誓約書」だけです。診断書や身分証明書などの書類は必須ではありません。そのため、警備会社によっては採用時に提出を求められない可能性もあります。ですが、私の知る限り、多くの警備会社はこれらの書類の提出を求めています。

警備会社に対する法律(※クリックタップで開閉)

「破産者で復権を得ないもの」は警備員になれない

すでに説明した通り、「破産者で復権を得ないもの」は警備員になることができません。警備会社も「身分証明書」「誓約書」などの書類を提出させて、採用時に破産者でないかどうかを厳格にチェックしています。では、そもそも「破産者で復権を得ないもの」とはどういう意味でしょうか?

破産者とは、法律上は「裁判所から破産開始決定の宣告を受けて、その後、まだ免責許可決定を受けていない状態の者」のことをいいます。つまり破産開始決定と同時に「破産者」となり、免責許可決定が下りれば復権して「破産者」ではなくなります。

破産手続き中、法律上の「破産者」に該当する期間-説明図

復権の意味については、以下の記事で詳しく説明しているので参考にしてください。

参考記事
自己破産の復権とは?復権の手続きについて
免責許可が下りるまで待てば警備員になれる

そのため、よくある誤解ですが「過去に自己破産したことがある」というだけで警備員になれない、ということはありません。すでに免責許可が下りている人は、破産者ではありませんので欠格事由に該当しません。他にも、以下のような方は法律上の「破産者」にはなりません。

【 破産者に該当しないもの 】

  • 弁護士に自己破産を相談しただけ
  • 裁判所に自己破産を申立てたが、開始前に取下げた
  • 裁判所に破産開始決定が認められなかった
  • 破産手続きを申立てて既に免責許可が下りている

 
一般的な自己破産の手続きの場合、同時廃止であれば開始決定から2カ月程度で免責許可がおります。少額管財でも3~4カ月で免責許可が下りるケースが多いです。
(参考記事「自己破産のスケジュール」)

そのため、通常、警備員になれない期間というのは、準備期間を含めてもせいぜい4~6カ月程度です。実はそれほど深刻な話ではありません。警備会社に就職したい方でも、その期間は我慢して別のアルバイトなどをし、免責許可が下りてから採用面接に行けば全く問題ありません。

一方、すでに現役で警備員をしている方や、施設警備の検定・指導教育責任者資格などを保有している方が自己破産する場合は、以下の記事を読んでください。

参考記事
現役警備員が自己破産すると今の職や資格・検定はどうなる?
「身分証明書」への破産者の記載について

身分証明書は、市役所で発行されている以下のような公的証明書です。
本籍地の役所で管理されている「破産者名簿 」を元に作成されます。

ここまで読んだ方ならおわかりだと思いますが、破産者名簿は「破産して復権を得ない者」のリストを管理する名簿です。そのため、まだ裁判所の開始決定を受けていない方や、逆にすでに復権を得ている方が、この名簿に載ることはありません。

既に免責許可を受けている場合の身分証明書の記載例―イラスト

また冒頭の先生の会話にもあるように、順調に破産手続きが進んで免責許可が下りた方の大半は、そもそも1度も破産者名簿に載ることはありません。現在の裁判所の運用では、裁判所書記官は、免責不許可になった人の情報しか本籍地役所に通知をしていないからです。

そのため、免責許可決定が下りてすぐに役所で身分証明書を取得したとしても、タイミングのズレで破産者の記録が残ってしまう、といったことを心配する必要はありません。
 

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