免責審尋の期日って何?集団審尋と個別審尋の違いは?
免責審尋期日とは、破産者と裁判官が直接会って面接をして、その破産者を免責にしていいかどうかを判断する期日のことです。現在の破産法では、免責審尋を行うかどうかは各裁判所の判断に任されており、免責審尋のない裁判所もあります。しかし東京地裁(本庁)では、同時廃止 ※ か管財事件かに関わらず、すべての破産者について免責審尋期日が設けられます。
裁判所に自己破産を申し立てて免責許可を貰うためには、1度、裁判所に出頭して裁判官と面接しないとダメって聞いたんだけど。免責審尋っていうのがあるんだよね?
例えば、東京地裁では、自己破産の開始決定がされてから2~3カ月以内に免責審尋期日が指定される。この日には、本人が裁判所に出頭して、裁判官と面接して、裁判官の質問の答えないといけない。
その免責審尋っていうのは、必ずどの裁判所でも行われるものなの? 破産手続きの間、一度も裁判所に出頭することなく免責になるっていう可能性はないのかなー?
免責審尋の日には、裁判官からどんなことを聞かれるんだろ。自己破産に至った経緯について、根ほり葉ほり聞かれたるするのかなー? 受け答えを間違えると免責不許可になる可能性もあるの?
同時廃止で免責不許可事由(※)もない場合は、ほぼ最初から免責されることが前提だからね。氏名や住所を確認されて、申立書の内容に間違いないか?を尋ねられて、少しお説教される位だね。
ちなみに免責審尋には、裁判官とマンツーマンで面接する「個別審尋」と、同時刻にたくさんの破産者を法廷に集めてまとめて面接する「集団審尋」っていうのがあるって聞いたんだけど…。
免責審尋が行われるかどうか、個別審尋なのか集団審尋なのか、当日どのような内容を聞かれるか、審尋の時間はどの位かかるのか、日程を変更できるかどうか、等は、裁判所によって傾向が違います。そのため、詳しいことは、自己破産をする裁判所の管轄内にある地元(最寄り)の弁護士に相談するのがおすすめです。
参考 → 自己破産におすすめの法律事務所を探す
- 免責審尋を行うかどうかや、その基準は各裁判所の判断に任されている
- 東京地裁では同時廃止/管財事件に関係なく、全件で免責審尋が行われる
- 東京地裁で同時廃止の場合(免責許可に問題がない場合)は集団審尋になる
- 大阪地裁では免責許可に問題がある破産者のみ、集団で免責審尋が行われる
- 他の裁判所では書面審理だけで、問題がある場合のみ免責審尋する事も多い
- 管財事件の場合は、債権者集会の日に併せて免責審尋が行われることが多い
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1.免責審尋は行われる裁判所と行われない裁判所がある免責審尋がある/ない裁判所
2.集団審尋が行われる場合と、個別審尋が行われる場合集団審尋と個別審尋の違い
3.免責審尋期日のスケジュールはいつわかるの?免責審尋日はいつわかる?
4.仕事を理由に免責審尋を欠席することはできるの?仕事を理由に欠席できる?
5.免責審尋の当日の流れはどんな感じ? 聞かれる内容など免責審尋当日に聞かれる内容
6.免責審尋に必要な持ち物は?服装はどうすればいいの?免責審尋の持ち物や服装
免責審尋は行われる裁判所と行われない裁判所がある
免責審尋が行われるかどうかは、裁判所によっても異なります。
すべての破産者について免責審尋が行われる裁判所もあれば、原則として書面審理のみで必要な場合(免責不許可事由がある場合など)だけ、免責審尋が行われる裁判所もあります。
以下、簡単に裁判所ごとの免責審尋の運用についてまとめます。
裁判所ごとの運用
各裁判所 | 免責審尋の有無 |
---|---|
東京地裁 | 同時廃止なのか管財事件なのかに関わらず、すべての破産者について、必ず免責審尋が行われます。 |
大阪地裁 | 同時廃止の場合、原則として免責審尋は行われません。免責許可について問題がある場合のみ、例外的に免責審尋が行われます。 |
名古屋地裁 | 同時廃止なのか管財事件なのかに関わらず、原則としてすべての破産者について免責審尋が行われます。 |
その他 | 同時廃止の場合、規模の小さい裁判所だと、免責審尋を開催しない場合も多いです。特に免責不許可事由がない場合は、書面審理のみで免責許可とする裁判所もあります。 |
例えば、東京地裁では、同時廃止 ※ の場合でも全員が免責審尋を受けなければなりません。そのため、最低でも1度は必ず裁判所に出頭することになります。
これは名古屋地裁も同じです。
一方、大阪地裁では、一度も裁判所に出頭することなく免責許可が下りるケースもあります。
他の地方裁判所でも、最近では(同時廃止であれば)一度も裁判所に出頭することなく免責許可が下りるケースは珍しくありません。
管財事件の場合や免責不許可事由がある場合
家や住宅などの売却可能な財産がある場合や、免責不許可事由 ※ が疑われる場合には、同時廃止ではなく管財事件 ※ となるのが一般的です。
管財事件の場合には、通常、必ず債権者集会 ※ が開かれます。
そのため、どちらにしても最低1度は裁判所に出頭しなければなりません。これはすべての裁判所で共通しています。
また管財事件の場合は、債権者集会の日に併せて免責審尋も一緒に行われることが多いです。
そのため、債権者集会に出席すれば、その後、あらためて別の日に免責審尋に呼ばれることは基本的にありません。
集団審尋とは、主に同時廃止の場合に、破産者の人数が多い大規模な裁判所において、同時刻にたくさんの破産者を1つの法廷に集めてまとめて免責審尋を行う方法をいいます。
東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁、旭川地裁などでは、この集団審尋が行われています。
ただし債権者から異議の意見書が出ている場合など、免責について問題がある場合には、上記の裁判所でも個別審尋になることが多いです。
裁判所ごとの運用
各裁判所 | 免責審尋の有無 |
---|---|
東京地裁 | 同時廃止の場合、通常は集団審尋になります。債権者から異議が出ている場合、免責許可に問題がある場合など、例外的に個別審尋となることもあります。 |
大阪地裁 | 同時廃止の場合、原則として免責審尋は行われません。ただし免責許可について問題がある場合は、例外的に集団審尋が行われます。 |
名古屋地裁 | 同時廃止の場合、原則として集団審尋になります。ただし破産者の人数が少ない場合には、1人1人の質問が多くなります。 |
その他 | 一般的には、現在はあまり集団審尋は行われません。地方の中小規模の裁判所では、免責審尋は行われないか、個別審尋で行われることが多いです。 |
集団審尋の場合には、10人~30人程度の破産者が一度に法廷に集められるため、1人辺りの面接時間は短いです。
後ほど詳しく解説しますが、法廷の傍聴席に座って順番を待ち、整理券の順番で前に呼び出されて、名前・住所や、「申立書の内容で間違いないか?」といったことを確認される程度で終わります。
例えば、東京地裁で集団審尋の場合は、1人あたり数十秒で終わることもあります。
集団審尋の場合はプライバシーの問題もあるため、1人1人の具体的な事情や破産の経緯について、踏み込んで質問を受けることは通常ありません。そのようなことを聞きたい場合には、個別審尋になります。
破産管財人が選任される場合(=管財事件の場合)には、前述のように、原則として債権者集会と免責審尋はセットで行われます。債権者集会を他の破産者と合同で行うことは通常ありえないので、免責審尋も必ず個別審尋になります。
免責審尋期日のスケジュールはいつわかるの?
免責審尋期日が指定される場合は、遅くとも自己破産の開始決定と同時にはわかります。
裁判所の開始決定通知と一緒に、免責審尋期日が通知されるからです。
弁護士に自己破産を依頼している場合には、裁判所からの通知は弁護士の事務所宛に届きます。
ですので、「免責審尋があるのかどうか?」「何月何日に開かれるのか?」は、自己破産の開始決定後に弁護士に聞いてみてください。
同時廃止の場合で、免責審尋が行われる場合は、自己破産の開始決定の2カ月後くらいに免責審尋日が指定されることが多いです。一方、管財事件の場合は、およそ2~3カ月後くらいに債権者集会日(+免責審尋期日)が指定されます。
なお、免責審尋の期日は官報公告 ※ にも掲載されます。
免責審尋は病気で入院しているなど、よほどの事情がない限り、欠席することは許されません。
なので仕事を理由に免責審尋を休むことはできません。
仕事を理由に免責審尋を欠席してしまうと、「免責許可を受けることの重大さを理解していない」「破産手続きに対する誠実さがない」と判断されて、裁判官の心証を損なう可能性もあります。
また無断欠席をすると、免責不許可事由にもなりえます。
ただし、実務上は、裁判官の方から代理人弁護士に対していくつかの日程の選択肢が提示されて、そこから弁護士が日程を選択するケースが多いです。破産者だけでなく、代理人弁護士のスケジュールの都合もあるからです。
そのため、「どうしてもその日程は厳しい」という日時がある場合には、あらかじめ先に代理人弁護士に伝えておけば、その日程を避けて免責審尋日を調整してもらえる可能性はあります。早めに伝えておくことが肝心です。
免責審尋の当日の流れはどんな感じ? 聞かれる内容など
ここでは東京地裁の集団審尋を例に、当日の流れを説明します。
自己破産を弁護士に依頼している場合は、当日は法廷で代理人弁護士と待ち合わせをして入廷することが多いと思います。弁護士と待ち合わせをしたら、一緒に入口で受付をして、整理券を受け取り、指定された法廷の傍聴席に座ります。
(裁判所によっては、法廷ではなく債権者集会室という会議室が使われる場合もあります)
同じ時刻に、複数の【破産者+弁護士】の組み合わせが集まり、傍聴席に座ります。
東京地裁のような大きい裁判所だと、破産者と弁護士で傍聴席が埋まることもあります。
指定された時刻になると、裁判官が入廷します。
最初は裁判官が傍聴席の破産者たちを前に、自己破産をすることの意味や、「反省して今後は節約した生活を送るように」といった軽いお説教をすることもあります。
その後、破産者が1人ずつ整理券の順番で、前方の被告人席に呼ばれます。
質問される内容は裁判所によっても違いますが、東京地裁では、人数も多いため、「氏名や住所、本籍に間違いはないか?」「書類の内容に間違いないか?」「免責不許可事由はないか?」といった簡単な質問がなされます。
基本的な質問には、「間違いありません」「相違ありません」等とだけ答えれば大丈夫です。
免責審尋までに債権者から異議が出ていなかったり、免責について特に問題がなければ、1人辺りの時間は30秒程度であっけなく終わることが多いです。そのため、「え?これだけ?」という印象を抱くかもしれません。
もし免責不許可事由が新たに見つかっていたり、債権者から異議が出ている場合は、代理人弁護士に対して「反論書を提出するように」と指示されます。この場合は、少し免責許可までのスケジュールが長引きます。
裁判官からの質問が終わったら、そのまま終わった順番に法廷から退出します。
あとは代理人弁護士から「免責許可決定の通知が届いたら、また連絡します」と言われて、そのまま解散です。特に免責に問題がなければ、代理人弁護士さんと顔を合わせるのは、その時が最後になることも多いです。
他の裁判所でも免責審尋で聞かれる内容は同じなの?
東京地裁(本庁)での集団審尋は、かなり簡易的な質問だけで終わることが多いです。
他の裁判所の集団審尋だと、もう少し1人辺りの質問の回数が多かったり、踏み込んだ内容の質問がされる可能性はあります。
とはいえ前述のように、あくまで集団審尋なので、プライバシーの問題もあります。
また詳しい事情はすでに申立書類や陳述書などに記載されていますので、そこまで1人1人に突っ込んだ質問がされることは通常ありません。
ただし裁判所によっては、「免責の意味を理解しているか?」「免責不許可になるのはどういう場合か?」といった自己破産の制度趣旨についての質問をされることはあるようです。
もし不安であれば、どのような内容を聞かれる可能性があるか、あらかじめ代理人弁護士と打ち合わせしておくといいです。
ただし裁判所によっては、免責審尋の期日呼出状とともに、「出頭者カード」が同封されている場合があるようです。その場合は、忘れずに出頭者カードを記入して持参してください。
ただしアクセサリーや貴金属などは身に着けないようにして、なるべく地味で質素な服装で行くようにしましょう。また、サンダルやスウェットのような恰好は一応避けたほうがいいでしょう。
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