生活保護者は自己破産費用(予納金)が免除される?
生活保護の受給者は、自己破産をするための費用(弁護士費用や裁判所への予納金)を支払うお金がないことも多く、法テラス※の立替制度を利用して破産費用を借りる方も多いです。通常、法テラスでは弁護士費用しか借りることはできませんが、生活保護受給者の場合は20万円を限度として裁判所の予納金も借りることができます。また、自己破産が終結した時点でまだ生活保護を受給中であれば、法テラスへの費用の返還(償還)義務も免除される可能性があります。
生活保護を受給している場合、借金があったら福祉事務所から「自己破産するように」指導されることが多いよね? でも自己破産の費用が用意できない場合ってどうすればいいのかなー?
ってことは、生活保護を受給していてお金がない方でも、自己破産をすることは可能ってことだね。。でも「立替えてくれる」ってことは、返済しないといけないんでしょ?
- 生活保護受給者は、法テラスを利用して破産費用の立替を受けることができる
- 生活保護受給者の場合は、弁護士費用だけでなく予納金も立替を受けられる
- 自己破産の手続き期間中は、生活保護受給者は返還(償還)が猶予される
- 自己破産後も生活保護を受給している場合は、返還(償還)義務が免除される
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1.生活保護の受給者は実質ほぼ0円で自己破産ができる?
2.生活保護受給者のための法テラスの猶予制度、免除制度
3.生活保護受給者のみ、裁判所の予納金も法テラスで援助される
4.生活保護受給者でも同時廃止になるとは限らない
生活保護の受給者は実質ほぼ0円で自己破産ができる?
収入や資産が一定基準に満たず、経済的に困窮している方は、法テラスに相談することで弁護士費用の立替を受けることができます。これは生活保護受給者のみに限らず、お金がなくて困っている方なら誰でも同じです。
通常の方は、収入証明書や確定申告書の写しを提出して、自分の収入が基準より低いことを証明する必要がありますが、生活保護受給者の場合は、単に「生活保護受給証明書」を提出すればOKです。
通常、この法テラスで借りたお金はあくまで「立て替えて貰っただけ」なので、返還の義務があります。利息は付きませんが、契約締結の2カ月後から月々5000円~10,000円ずつ償還していくことになります。
一方、生活保護の受給者であれば、この償還義務が自己破産の手続き期間中は、原則、猶予されます。また自己破産手続きの終了時にまだ生活保護を受給中であれば、償還義務は免除されます。
以下、それぞれの「猶予制度」と「免除制度」について解説します。
法テラスに紹介して貰った弁護士に自己破産を依頼して、その弁護士への依頼費用について法テラスで立替を受ける仕組みのことを「代理援助」といいます。
この代理援助で立替て貰った(借りた)分のお金は、「猶予制度」と「免除制度」があり、日本司法支援センターの業務方法書ではそれぞれ、以下のように定められています。
第31条 地方事務所長は、被援助者から償還の猶予を求める申請を受け、被援助者が次の各号に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるときは、援助開始決定において、事件進行中の期間における立替金の償還を猶予することができる。
(1)生活保護法による保護を受けているとき
(2)前号に該当する者に準ずる程度に生計が困難であるとき
破産手続き後の償還免除
第59条の3 地方事務所長は、被援助者から、立替金の償還の免除を求める申請を受けた場合において、被援助者が次の各号に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるときは、理事長の承認を得て、終結決定において、立替金の全部または一部の償還の免除を定めることができる。(略)
(1)生活保護法による保護を受けているとき
(2)前号に該当する者に準ずる程度に生計が困難であり、かつ、将来にわたってその資力を回復する見込みに乏しいと認められるとき
出典:日本司法支援センター業務方法書 平成26年3月25日法務大臣認可
このように、「生活保護法による保護を受けている」場合は、法テラスによる立替金について、「猶予」制度と「免除」制度の両方を利用することができます。
これらの制度を受けるためには申請をする必要がありますが、その点はケースワーカーの方や、法テラスの方に相談すれば教えてくれます。
生活保護受給者のみ、裁判所の予納金も援助される
この法テラスの代理援助の仕組みでは、本来は「弁護士費用」だけしか借りることはできません。裁判所に支払う実費まで援助することは想定されていません。
そのため、自己破産費用でかかる破産管財人への報酬(引継予納金)も、本来は自己負担になります。予納金を法テラスで借りることはできないのです。
しかし自己破産の場合は、同時廃止であれば実費は1万円程度で済みますが、少額管財になった場合は最低20万円の予納金が必要になります。
生活保護の受給者が、現実的に20万円の裁判所予納金を支払うことは難しいです。予納金が自己負担になってしまうと、「自己破産すらできない生活保護者」が増えてしまいます。
そこで平成22年の4月以降は、生活保護受給者に限り、裁判所の予納金についても法テラスの立替を受けられることになりました。以下、根拠を示します。
第14条の5 地方事務所長は、被援助者が生活保護法による保護を受けている場合であって、業務方法書 別表3の1(6)に基づいて、裁判所の決定に基づく予納金を追加して支出する場合において、必要があると認めるときは、別表3の1の(注)の実費の備考欄に定める限度額に加え、官報公告のための費用として裁判所に予納を求められた金額をさらに支出することができる。
【別表3の1(6)】
案件の内容 | 実費等基準額 | 備考 |
---|---|---|
自己破産事件 | 23,000円 | 1.予納金は被援助者直接負担とする。ただし、被援助者が生活保護法による保護を受けている場合は、裁判所の決定に基づく予納金を追加して支出することができる。 |
案件の内容 | 実費等基準額 |
---|---|
自己破産事件 | 23,000円 |
備考 | |
1.予納金は被援助者直接負担とする。ただし、被援助者が生活保護法による保護を受けている場合は、裁判所の決定に基づく予納金を追加して支出することができる。 |
【別表3の1(注)】
5.追加支出限度額(限度額を超える場合には原則として被援助者直接負担とする。)
(5)官報公告費を除く自己破産事件予納金 20万円
出典資料(1):民事法律扶助業務運営細則(最終改定 平成27年11月30日)
出典資料(2):日本司法支援センター業務方法書 別表
このように生活保護受給者であれば、自己破産にかかる以下の主な費用のすべてについて、法テラスの援助を受けることが可能です。
生活保護者が援助を受けられる費用
- 自己破産の代理人を依頼する弁護士の費用
- 裁判所への予納金(破産管財人の報酬、限度額20万円)
- 裁判所への官報公告費用(1万円弱)
なお予納金が20万円を超える場合は、その分については自己負担になります。
この立替金は、生活保護受給者に払われるわけではなく、法テラスから裁判所に直接、支払われます。
また、裁判所への予納金分の支出についても、先ほどの弁護士費用と同様、「猶予制度」「免除制度」を利用することができ、自己破産の終了時にまだ生活保護を受給していれば、返還義務が免除されます。
「生活保護受給者はほとんど財産は持っていないんだから、同時廃止になるだろう」と思われる方も多いかもしれませんが、最近は必ずしもそうとは限りません。
例えば、最近の生活保護の運用では、持ち家に住んだままでも生活保護の受給を受けることができます。「居住用」の自宅であれば、売却しなくても生活保護が受けられます。
そのため生活保護受給者であっても、不動産を所有している可能性があります。
一方、自己破産手続きでは、例え居住用の自宅であっても手元に残すことはできません。自宅を持っている場合には、管財事件になり、破産管財人により住宅は処分されます。
他にも過払い金があるケースや、生活保護の受給時に申告していなかった保険などの財産が見つかった場合等も、財産調査のために破産管財人が選任されて、管財事件になる可能性があります。
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