自己破産の期間が1カ月短縮できる?即日面接制度とは
東京地方裁判所では、自己破産の申立てをおこなった日にそのまま裁判官と弁護士が面談を行い、「同時廃止にするか少額管財にするか」を決定する、という即日面接制度が採用されています。他の地方裁判所の場合、自己破産の申立て書類を提出してから、自己破産の開始決定がなされるまでに2週間~1カ月かかるのが普通ですが、即日面接ではこの期間が短縮されます。
東京地方裁判所では、即日面接っていう制度があるから自己破産手続きの期間が他よりも短いって聞いたんだけど、即日面接ってどういう制度なのー?
でも他の裁判所では、自己破産の申立てをして、裁判所に開始決定をして貰うまでに、なんでそんなに時間がかかるの?
ただ破産手続きを開始するだけじゃないの?
- 東京地裁では即日面接があり、自己破産を申立てたその日に開始決定される
- 破産審尋で債務者が裁判所に行く必要はなく、弁護士と裁判官が2人で面接する
- 即日面接が利用できるのは代理人弁護士が申立てた場合のみ。司法書士はダメ
- 即日面接は東京地裁だけだが、横浜地裁にも早期面接という類似の制度がある
- 即日面接のメリットは、自己破産開始までの期間が2週間~1カ月短縮できる
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即日面接では1日で破産手続きが終わる場合もある
東京地方裁判所では、1日に約100件近くの自己破産の申立てがあります。そのため、自己破産の手続きを迅速に進めるために、【即日面接】という制度が利用されています。
即日面接とは、自己破産の申立てをおこなったその日のうちに、担当の代理人弁護士と裁判官とが面接をおこない、自己破産の開始決定をおこなう制度です。通常、申立ての日は書類を提出して終わりですが、即日面接の場合はその日のうちに「開始決定をするかどうか」の判断まで行われることになります。
通常の自己破産手続きに多い破産審尋(債務者と弁護士、裁判官の3人で面接する審尋)がありませんので、自己破産の開始決定までの期間が大きく短縮されます。具体的には、2週間~1カ月程度、手続きの期間が短くなることが多いです。
また後述しますが「同時廃止」の決定がおりた場合には、その日のうちに破産手続きが終了することになるので、たった1日で破産手続きが終わることになります。
※もちろん破産手続きが終わった後には、まだ免責審尋と免責許可決定があります。1日で借金が免責になるわけではありません。
即日面接の場合は、その日のうちに「自己破産手続きを開始決定するかどうか」「同時廃止にするか、管財事件にするか」の2点を決定します。
そのために裁判官が代理人である弁護士にいくつか質問をして、「財産がどのくらいあるか?」「借金がどのくらいあるか?」「免責不許可事由などはないか?」などを確認していきます。
これは裁判所が申立て代理人である弁護士を信頼しているからこそ、出来ることです。その日のうちに判断して決定を下すということは、債務者の財産や債務の状況についての書類がしっかり揃っていて、かつ代理人弁護士がしっかり債務者を調査・把握ができていることが前提になります。
そのため、代理人弁護士がいない場合(本人申立ての場合)は、即日面接を利用することはできません。司法書士に委任して申立てる場合もダメです。司法書士は、法定代理人の資格がなく書類作成代行までしかできないため、裁判官との即日面接ができないからです。
また書類に不備があったり、調査が不十分である場合(例えば、退職金の支給見込額があるのに調査がされていないなど)には追完指示となり、その日の決定が見送られる可能性がありますので、弁護士の先生に言われた書類の準備は早めにしっかり進める必要があります。
最終的に、弁護士と裁判官が即日面接をおこなって「自己破産手続きを開始して問題ない」と判断されれば、その日の夕方5時に「破産手続き開始決定」が出されます。
ちなみに即日面接は、即日ではなく3日以内の別の日にあらためて面接をおこなうこともできます。ただし通常は、二度も裁判所に足を運ぶのは手間なので、即日面接を選ぶケースが多いです。
裁判所に「特に処分するような財産は何もないな」と判断されれば、同時廃止となって破産手続きはその日のうちに終了します。つまり即日面接で同時廃止になった場合には、自己破産の申立てをおこなったその日のうちに破産手続きが終わることになります。
同時廃止では破産管財人の選任もされないため、裁判所に高額な予納金(東京地裁では最低20万円)を支払う必要もなくなります。手続きの期間も、管財事件に比べて大幅に短くなります。
そのため破産者の立場としては「できれば同時廃止になって欲しい」と願うのは当然です。では、同時廃止になるか、少額管財になるか、の裁判所の判断ポイントは何でしょうか?
これは以下の記事でも解説していますが、20万円以上の財産を持っているかどうか、が基準になります。
破産法で自由財産と定められているものは、ここでの財産には含まれません。例えば、99万円以下の現金や、評価額が20万円未満の自動車、解約返戻金が20万円以下の保険などの財産はカウントされません。
評価額が15万円の車と、解約返戻金が10万円の保険があったとしても、原則、少額管財にはならず、同時廃止が認められます。一方、評価額が30万円の車を1台所有していれば、それだけで少額管財になります。
- 住宅ローンの残債が住宅評価額の1.5倍以下の持ち家
- 99万円を超える現金
- 評価額が20万円を超える自動車
- 残高が20万円を超える預貯金
- 20万円を超える保険の解約返戻金
- 退職金(支給見込額の8/1が20万円を超えるもの)
上記にあてはまるような、「処分できる財産」を所有している場合は、即日面接で少額管財になります。また偏頗弁済や否認対象行為が見つかった場合にも、少額管財になります。
ちなみに同時廃止の方が破産者にとってのメリットは大きいのですが、東京地裁の「少額管財」は、一般の管財事件よりも遥かに予納金も安いので、少額管財になっても落ち込む必要はないと思います。
最低20万円は破産者にとってはしんどい金額ですが、免責を得るために頑張りましょう。
即日面接では、弁護士と裁判官が2人で面接をして自己破産の開始決定をしますので、いわゆる破産審尋はありません。そのため自己破産の開始決定前に、裁判所に出向いて裁判官と面接する必要はありません。
ただし終始、一度も裁判所に出向かなくていいということは全くありません。
同時廃止の場合でも、その後の免責手続きがあるのは、一般の破産手続きと同じです。免責審尋に出席しないと裁判所からの免責を受けることができません(借金がチャラになりません)ので、最低でも1回は必ず裁判所に出向く必要があります。
また少額管財になった場合には、破産管財人との打ち合わせにも出席することが多いですし、債権者集会にも最低1回は出席の必要があります。合計で3回程度は裁判所に出向く必要があるでしょう。
即日面接制度は他の地方裁判所では利用できないの?
即日面接は東京地方裁判所でのみ利用されている制度です。大阪地裁など、他の地方裁判所で利用することはできません。それでは他の地域に住んでいる方が、東京地裁に破産の申立てをおこなって、即日面接を利用することはできるのでしょうか?
また昔は全国どこからでも、自己破産を東京地裁に申立てることができた時代がありました。つい最近までも、近隣する県(神奈川県、埼玉県、千葉県など)に住所地のある破産者は、東京地裁に申立てをして即日面接を利用することができました。
しかし平成27年5月1日に、東京地方裁判所の運用方針が厳しくなり、原則として東京都内に住所地のある破産者しか、東京地裁に自己破産を申立てることはできなくなりました。そのため、今では東京に在住している方以外は即日面接を利用することはできません。
即日面接ではありませんが、類似の目的の制度が他の地方裁判所でも運用されているケースがあります。例えば、横浜地方裁判所には「早期面接制度」があります。
早期面接とは、自己破産の申立てをする際に、3日以内で面接を希望する日の候補を提出できる制度です。その候補日のなかから裁判所が日時を指定します。
東京地方裁判所のように、「申立てたその日のうち」ではありませんが、3日以内に早期面接により自己破産の開始決定が可能になります。この場合も、債務者本人が裁判所に出向く必要はありません。
ここまで「即日面接」や「早期面接」では、弁護士と裁判官が2人で面接をおこなうので債務者が裁判所に出向く必要がないが、それ以外の一般の破産手続きでは破産審尋があるので、債務者も裁判所に出向く必要がある、と説明しました。
しかし厳密にいえば、破産審尋は必ずしも口頭でおこなう必要はありませんので、実際には面接そのものがない地方裁判所も多いようです。例えば、大阪地方裁判所では破産審尋による面接はありません。(もちろん免責審尋はあります)
面接がない場合には、裁判所は申立て書類などを審査して問題がなければ、1~2週間で自己破産手続きの開始決定がされることになります。
いずれにしても、管轄の裁判所によって運用方針は異なりますので、気になる方は担当の弁護士さんに確認してください。