過払い金請求の消滅時効を中断(ストップ)させる方法
過払い金の消滅時効は、「過払い金請求の消滅時効は何年まで」でも説明したように取引終了から10年間と決まっています。しかしこの消滅時効の進行は、実際に「請求」を行い権利を行使することで、中断させることが可能です。
過払い金の消滅時効は取引終了時点から10年って聞いたんだけど、消滅の期限が迫っている人のために、この消滅時効の進行をストップさせる方法はないのかなー?!
- 過払い金請求の消滅時効は「請求」行為により中断できる
- 請求の方法には「裁判上の請求」と「裁判外の請求」の2つがある
- 裁判上の請求は消滅時効を0に戻す、裁判外の請求は6カ月中断する
正確には債権は時効期間が過ぎたからといって、ただちに”消滅”するわけではなく、相手方が「時効の援用」をおこなってはじめて成立するものですが、過払い金請求の場合、貸金業者側が時効の援用をしないということはあり得ないため、省略します。
過払い金の消滅時効を中断するための請求方法って?!
民法167条で定められているように、全ての民事債権は通常10年で時効となり請求権が消滅します。これを消滅時効といいますが、過払い金の請求権利もこの一般債権にあたります。
ただしこの権利の消滅時効は、実際にその権利を行使することで消滅時効の進行をストップさせることができます。
前述のように法律上の「請求行為」には、裁判上の請求と裁判外の請求があります。裁判上の請求とは、「訴訟提起」や「支払い督促の申立て」等の司法手続きにより裁判所を介して行う請求行為のことで、裁判外の請求とは内容証明郵便等で直接、請求書を送付して請求する行為のことです。
裁判上の請求は、手続きに手間や時間(場合によっては弁護士費用など)のコストが掛かりますが、時効を振り出しに戻すという非常に強力な法律上の効果があります。一度、裁判上の請求を行うと、時効はリセットされてもう一度ゼロから進行することになります。
一方で内容証明郵便による裁判外の請求は、請求書を送るだけなので簡単かつ手軽に可能というメリットがあります。その反面、消滅時効の中断は6カ月だけに限定されます。
またこの6カ月の時効の中断は1度きりしか使えない(もう1度請求して、12カ月引き延ばすことはできない)ため、請求が長期化する可能性がある場合には、裁判上の請求が必要になります。
裁判上の請求方法ってどういうものがあるの?!
裁判上の請求には、主には「支払い督促」「訴訟の提起」「民事調停」などの方法があります。裁判上の請求を行うと、まず申立てが受理された段階で、時効がいったん中断します。その後に確定判決等で債権が確定すると、時効期間がさらに10年延長されます。
請求 | 内容 |
---|---|
訴訟の提起 | 裁判所に過払い金請求の民事訴訟を提起すること。少額訴訟・通常訴訟を含む。 |
支払督促の申立て | 支払い督促とは裁判所に申し立てることで、裁判所から督促状を出してもらう制度。債務者からの異議の申立てがなければ、仮執行宣言を経て強制執行ができるようになる。 |
民事調停の申立て | 民事調停はお互いが合意のもと解決のために話し合い、紛争の解決を図るもの。簡易裁判所でおこなわれ、申立て費用は訴訟より安い。 |
支払い督促は、書類審査のみで裁判所に足を運ぶことなく、かつ訴訟の半額の手数料で金銭の支払いを請求できる司法手続きです(支払い督促について)。相手方が2週間以内に督促の異議申し立てをしなかった場合、債務名義(≒裁判所の支払い判決と同じ効力)を取得することができます。
法的手段としては最も簡単な手続きであるため、よく貸金業者が滞納債務者に対して使用する方法です。しかし、過払い金の請求金額が確定していない段階(争いがある場合)で、相手方が異議を申立てると通常の民事訴訟手続きに移行となります。ほとんどのケースでこうなるでしょうから、過払い金請求では最初から訴訟をすることが一般的です。
同様に、訴訟手続きには「通常訴訟」と「少額訴訟」があります。少額訴訟は訴額(過払い金の額)が60万円以下の場合に利用できる裁判手続きで、審理が1日で済みすぐに判決が出る、という魅力がありますが、こちらも金額が確定していない場合は、相手方が通常訴訟への移行を申立てる可能性が高く、結局、通常訴訟での争いになる可能性が高いでしょう。
裁判外の請求方法ってどういうものがあるの?!
裁判外の請求方法としては、基本的には電話でもメールでも手紙でも、直接的に請求する行為はすべて裁判外の請求になります。つまり理論上は、どのような方法であれ過払い金の請求さえすれば、時効は一時的に中断され6カ月延長されることになります。
ただし現実的には、裁判上の証拠として残すことを考えると内容証明郵便による過払い金の請求というのが必要になります。
内容証明郵便とは、「誰が、いつ、誰宛に、どんな内容の郵便を送付したか」を郵便事業会社が証明してくれる郵送方法のことです。日本郵便などで送ることができ、加算料金も430円と安価で送ることもできます。裁判上の証拠書類として扱うことが可能なため、金銭の請求書の送付などによく使用されます。
結局のところ証拠が残らないと、「言った」「言わない」の話になってしまった際に時効の中断を主張することが法律上、難しくなる可能性があります。そのため、時効の中断を目的に、裁判外の請求を行う場合には、確実に内容証明郵便を利用する必要があります。
内容証明郵便で請求書を送付する方法については、こちらの「過払い金の請求書の書き方と内容証明郵便の送り方」で詳しく解説していますので、こちらの手順を参考にしてください。
内容証明郵便と聞くと何か難しそうに感じるかもしれませんが、郵便局に文書を持っていって内容証明料430円を払って送付して貰うだけです。紙や封筒についての指定もありません。ただし、書面で使える文字数や使用できる文字について、一部制限がありますので、それもこちらの記事で確認してください。
前述のように裁判外の請求は、一時的に6カ月間、時効をストップさせる効力しかありません。さらに6カ月の時効中断の効力が使えるのは最初の1回目だけです。その後に何度も請求をおこなったからといって、その度に6カ月、時効が延びるわけではありません。
そのため、裁判外の請求を行って6カ月、消滅時効を延長したとしても、その期間内に何かの法的な手続き(裁判上の請求)を行わない限り、そのまま6カ月が経過すれば時効が成立してしまいます。
あくまで裁判外の請求は、(消滅時効の対策を目的として行うなら)一時しのぎに過ぎないという認識を持っておきましょう。裁判上の請求の手続きをする時間がない、消滅時効がすぐそこに迫っている、という場合に、取りあえず半年だけ引き延ばしておきたい、という場合に有効です。
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