過払い金返還請求の件数や金額の推移について

過払い金返還請求の件数や金額は、ピークを越えて今は年々減っている、との見方が一般的です。なぜなら過払い金返還請求には時効があり、取引完了時点から10年以上が経過すると、民法により債権が消滅してしまうからです。

過払い金返還請求の金額の推移って?!
ねえねえ、先生ー!
過払い金返還請求の金額の推移ってどうなってるのかなー? やっぱり2010年前後をピークに今は年々減っているの?!
そうだね、日本貸金業協会の資料によると利息返還金額のピークは2008年度~2009年度で、当時と比較すると減少しているね。でも実は意外なことに、今でも毎月200億円以上の過払い金返還額が発生していて、これはここ数年あまり減っていないんだ。
えーっ、そうなんだー。減っていないってどういうことなのー?! 過払い金の不当利得返還請求権は、完済日から10年で消滅時効になるから、過払い金請求ができる対象の人は年々減っていってるんだよね?
普通に考えるとそのはずだね。ただ、消滅時効が迫っていることを告知する法律事務所の過払い金のCMや広告が、最近またやや過熱していることも要因の1つかもしれないね。つまり対象者は減っているけど、認知度が上がっていることで横ばいになっているのかもしれない。

 
以前に「過払い金返還請求のブームはあと数年で終わる?」という記事をかきましたが、民法上の債権消滅時効の問題により、過払い金の対象者は年々減っているはずです。

しかし日本貸金業会の統計資料によると、2014年度(2014.04~2015.03)は年間を通じて毎月200億円以上の過払い金返還金額が発生しています。実はこの水準は2006年度とほぼ同等で、依然、過払い金の金額は大きく減っていないことがわかります。

過払い金の返還請求金額の推移ってどうなってるの?!

日本貸金業会(http://www.j-fsa.or.jp/)では、月次統計資料や年次報告書(JFSA白書)として毎月、毎年度の利息返還金額のデータを公開しています。その統計資料によると、2006年度以降の過払い金請求金額は以下のようになっています。

年度 利息返還金
2006年度 2936億円
2007年度 4724億円
2008年度 5909億円
2009年度 6589億円
2010年度 5191億円
2011年度 5212億円
2012年度 3670億円
2013年度 3009億円
2014年度 2717億円予測

出典:貸金業関連資料(http://www.j-fsa.or.jp/material/
利息返還金の合計金額です。利息返還に伴う元本毀損額は含まれていません

この統計をグラフにすると以下のようになります。たしかに過払い金ブームといわれた2008年度と比較すると利息返還金額は大きく減っていますが、ここ数年だけでみるとそれほど金額の推移に大きな変化はありません。

過払い金返還額のデータ推移

もう少し減っているという実感のある方も多かったのではないかと思います。要因の1つとしてはやはり前述のように、ここ1年でまた過払い金のCMや広告が急増していることが挙げられると思います。

特に以前のようなテレビCMだけでなく、YouTube広告をはじめとするネット上のメディアに多額の広告費を投入していることで、また過払い金に対する認知度が向上しているのではないかと思われます。





ここ2年間での過払い金の毎月の返還額推移

最後に2013年4月(2013年度)以降の毎月の利息返還額の推移データを記載しておきます(出典:JFSA)。2014年度に入ってからはやはり前年同月比でも1割減くらいの月が多く、2013年度と比較して返還金額はあまり減っていません。

年月 返還金額(単位:100万円) 前年同月比
2013年4月 24,807 -35.1%
2013年5月 23,956 -30.5%
2013年6月 23,993 -31.8%
2013年7月 24,932 -19.3%
2013年8月 26,311 -11.5%
2013年9月 26,759 -13.6%
2013年10月 23,708 -15.9%
2013年11月 24,933 -8.6%
2013年12月 26,796 -11.5%
2014年1月 23,346 -7.8%
2014年2月 22,409 -16.1%
2014年3月 29,002 -8.7%
2014年4月 21,559 -11.8%
2014年5月 21,964 -7.9%
2014年6月 24,217 1.8%
2014年7月 22,653 -9.1%
2014年8月 22,398 -14.9%
2014年9月 24,135 -9.7%
2014年10月 21,235 -10.5%
2014年11月 21,826 -12.7%
2014年12月 25,134 -5.2%
2015年1月 21,304 -8.9%

 
この規模の金額が、いつまでこの水準で推移するのか、というのは気になるところではあります。理論上は2017年中にはほぼ全ての過払い金請求の対象者が時効を迎えるはずなので、過払い金請求金額は、ほぼ0円になるはずです。ただ、時効を煽る広告活動等によるラストスパートもあるかと思いますので、今後の推移に注目したいところです。

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