悪質な弁護士の過払い金の着服が問題に?!
過払い金請求は、弁護士にとっても市場が大きく収益源になりやすい事案でもあります。たしかに利息制限法に違反した利息は不当利得であり、消費者にはその返還を請求する権利があります。また過払い金請求には、高度な専門知識や貸金業者との交渉事(場合によっては訴訟)が必要になる以上、その手続きを弁護士に依頼したい、と考えるのも当然のことです。
一般的には弁護士に依頼した方が楽。しかし一部には・・・
大半の弁護士は、依頼者のために誠実な業務をおこなっており、弁護士に依頼を行うことでより過払い金請求がスムーズに進むことが遥かに多いです。しかし一部には、弁護士という立場、職権を濫用し、悪質な詐欺まがいの行為を働く残念なケースも発生しています。
2014年8月に、過払い金請求をおこなった弁護士が、返還をうけた利息を依頼者に渡さずにそのまま着服していた事件が摘発されて問題になった事件がありました。
これはある大手の消費者金融が、過去に過払い金返還請求を行った2500件を対象に、依頼者にその後、過払い金を受け取ったかどうかを調査したところ、「返還の事実は知らなかった、過払い金は受け取っていない」という回答が少なくとも弁護士依頼の27件、司法書士依頼の18件で見つかった、というものです。
あってはならないことですが、そのうちの5件については、そもそも依頼者が弁護士に相談したり、過払い金の請求をしたという事実そのものもなく、弁護士や司法書士が勝手に消費者金融に過払い金請求をおこなっていた、ということがわかっています。
またその他にも、実際に貸金業者から取り返した金額よりも少ない金額を依頼者に伝えて、一部の過払い金を着服するような悪徳弁護士もなかには存在するようです。
過払い金請求などの事案では、依頼者が弁護士に依頼をすると弁護士から消費者金融に「受任通知」という通知が送付されます。この後の手続きは、原則、すべて弁護士を介してのやり取りとなります。
そのため、消費者金融と依頼者が実際に直接、話し合ったり交渉することはないため、仲介に入っている弁護士が詐欺を働こうと思ったら容易に過払い金の着服や、あるいは無断での請求が可能になってしまいます。消費者金融側も、請求件数が膨大のため、1件1件について調査を行うことが困難なようです。
また依頼者にとっても、「なんとか100万円を取り返すことができました」と言われたら、100万円だと信じるしかありません。実際には150万円返還されていたとしても、それを確認することは難しいという実情があるんですね。
今回のような、弁護士による過払い金の着服などのケースは、業務上横領罪や詐欺罪にあたる可能性があります。
弁護士は過払い金事件などの依頼を受けた場合、消費者金融から振り込まれた過払い金などは、弁護士個人の資金口座ではなく、別の「預かり金口座」で管理することが義務付けられています。
東京弁護士会の「預かり金等の取扱いに関する会規」の第3条(預かり金口座の開設)では、「会員は、預かり金の保管に備えるため、預かり金のみを管理する専用の口座(預かり金口座)を開設しなければならない」と定められています。
これに違反して、過払い金で取り戻した資金を弁護士の個人口座に着服することは、「業務上横領罪」や「詐欺罪」が成立する可能性があります。また今回のケースでは、消費者金融側が弁護士を懲戒請求もしています。
信用できる弁護、悪徳な弁護士の見分け方って?!
前述でもありますが、大半の弁護士事務所や司法書士事務所は、実際の消費者の立場にたって誠実な仕事をされています。一部の悪徳弁護士のために、過払い金などの消費者が請求できる正当な権利を行使できなくなるのも非常に問題です。
そこで注意すべき悪徳な弁護士の見分け方のポイントをまとめました。
- 依頼の過程で弁護士本人と面談がない
- 委任契約書がない
- 消費者金融との取引履歴を開示しない
- 進捗についての回答が数週間もない
- 依頼者の許可なく減額交渉や和解を進める
- 和解書の元本やコピーをくれない
また上記の他にも、「過払い金1社ごとの清算をしてくれない」(全社の返還請求が終わるまで清算しない、明細書を発行しない)などのケースでも注意が必要です。
また過払い金請求の報酬率は、弁護士会や司法書士会の規定で訴訟をしない場合で20%、訴訟をする場合には25%と定められています(詳細はこちら)。
そのため訴訟をしない場合で20%以上の報酬を請求してくる弁護士(または、訴訟をする場合で25%以上の報酬を請求してくる弁護士)は、弁護士会の規律を遵守していない、ということなので、依頼を辞めておいた方がいいでしょう。
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