借金や破産歴があっても公営住宅・公社・UR賃貸に住める?
借金があったり、過去に債務整理や自己破産をしている方でも、公営住宅(県営・市営住宅)や、公社住宅、UR賃貸に入居することは可能です。ただし公社住宅やUR賃貸の家賃は、それほど民間の家賃相場と比べて安いわけではありません。一方、公営住宅の家賃はたしかに安いですが、抽選方式のため入居するのが大変です。この記事では、公営住宅・公社住宅・UR賃貸の違いやそれぞれの入居方法を詳しく解説します。
収入も少ないし、借金がキツくて生活できないから、もう自己破産して県営住宅にでも転居しようと思ってるんだけど・・・。債務整理した人でも、公営住宅やUR賃貸には入居できるのかなー?
そもそも公的機関が管理する賃貸住宅には、主に、(1)公営住宅と、(2)公社住宅、(3)UR賃貸、の3つがあるんだけど・・・、この違いはわかるかな?
でも、どれも生活が苦しい低所得の人向けに国が提供してくれてる住宅、じゃないの? 家賃が安くて一般の民間物件よりもお得!っていうイメージがあるけど。
じゃあ、借金や債務整理でお金がなくて、住むところに困ってる人が探すべきなのは、公営住宅(県営住宅・都営住宅・市営住宅)ってことなの?
ただし公営住宅は収入要件があるから、一定基準以下の収入(目安としては月収15万8000円以下)の人しか入居できないよ。それに単身者だと入居条件がかなり厳しいから、基本は家族が対象だね。
いくら収入が少なくても、抽選でハズレて入居できないんじゃ意味ないよね。例えば、東京都内の場合、公営住宅の抽選の倍率ってどのくらいなの?
でも話が戻るけど、やっぱりUR賃貸や公社住宅も「家賃が安い」っていうイメージはあるけどなぁ。ほとんど周辺の家賃相場と変わらないなら、何か特別なメリットはないの?
- 公営住宅は都道府県が管理する低所得者向けの物件をいう。
- 公営住宅は年収が一定水準以下でなければ入居できず、抽選方式で倍率も高い
- 公営住宅の家賃は年収に応じて決まる。収入が少ない人ほど家賃も安くなる
- 公社住宅やUR賃貸は、逆に年収が一定以上でないと借りれない。
- 公社住宅やUR賃貸は礼金・更新料・仲介手数料が不要。単身者でも入居可
1.公営住宅の収入要件や入居方法、家賃の算定基準を解説
2.公社住宅の収入条件と家賃補助等のメリットについて
3.UR賃貸の収入条件や入居するメリットについて
4.公営住宅、公社住宅、UR賃貸、の違いまとめ
公営住宅の収入要件や入居方法、家賃の算定基準を解説
上記の説明にもあるように、公営住宅というのは都道府県などの自治体が所有する賃貸物件のことです。県営住宅、市営住宅、都営住宅なども全て公営住宅に含まれます。
全国には92万戸もの公営住宅があり、例えば、東京都の都営住宅だけでもその数は24万戸にも及びます。東京でいえば、全ての世帯のうち、およそ約4%の世帯が公営住宅に入居している計算になります(参考:東京都市整備局資料)。
そもそも公営住宅というのは、「公営住宅法」という法律に基づき、住居に困っている低収入の家族のために、福祉の目的で提供されている物件です。
そのため、家賃は民間の賃貸物件よりも遥かに安いのですが、「収入が一定水準以下でなければ入居できない」という収入要件があります。「お金に余裕のある人は、公営住宅には入居しないでください」ということです。
まず収入要件については、各自治体によって少し異なる可能性があります。
公営住宅法施行令では、原則として一般世帯で月収15万8000円以下、特別な事情のある世帯で月収25万9000円以下と定められています(平成28年9月現在)が、さらに各都道府県や自治体は、条例によりもっと低い収入基準を定めることも可能だからです。
ここで参考までに、神奈川の県営住宅と、東京の都営住宅を例に解説します。この2つの自治体の場合は、収入要件は全く同じです。
収入要件(年収)
世帯人数 | 原則階層 | 裁量階層 |
---|---|---|
1人 | 189万6000円 | 256万8000円 |
2人 | 227万6000円 | 294万8000円 |
3人 | 265万6000円 | 332万8000円 |
4人 | 303万6000円 | 370万8000円 |
5人 | 341万6000円 | 408万8000円 |
上記は世帯年収ですので、夫婦で収入がある場合は合算する必要があります。
例えば、夫の年収が200万円、妻の年収が50万円で、子供が1人であれば、年収250万円の3人世帯ですので入居可能です。
なお、ここでいう年収というのは、年間所得のことです。
給与所得者(サラリーマン)の方であれば源泉徴収票に記載されている「支払金額」の右横の「給与所得控除後の金額」の数字を使います。支払金額ではありませんので注意してください。
「原則階層」と「裁量階層」の違い
簡単にいうと、一般の方は「原則階層」の収入基準となり、高齢者世帯、障害者世帯、子育て世帯など、一部の優遇対象の世帯は「裁量階層」の収入基準となります。
要は、下記のような特殊な事情がある場合は、収入要件を少し緩和して貰えるということです。
裁量階層
対象世帯 | 概要 |
---|---|
子育て世帯 | 小学校就学前の子供がいる世帯 |
高齢者世帯 | 申込者が60歳以上で、かつ、同居人が全員「60歳以上または18歳未満」の場合 |
障害者世帯 | 1級~4級の身体障害者の方、または1級・2級の精神障害者の方 |
その他 | 戦傷病者世帯、被爆者世帯、ハンセン病療養所入所者、海外引揚者の世帯 |
同じ年収でも小さい子供がいたり、障害者の方がいる家庭だったりすれば、それだけ生活が大変なのは当然ですから、その分、多少は年収が高くても公営住宅に入居できるよう優遇されています。
ちなみに、公営住宅には他にも「改良物件」というのがあり、少し年収要件が異なる(もっと低くなる)のですが、ここではその説明は割愛します。各自治体の公営住宅募集ページ等を参考にしてください。
さらに公営住宅の入居には、「住宅困窮理由」というのが必要になります。つまり収入要件を満たしていたとしても、「住宅に困っている事情」がなければ公営住宅には入居できない、ということです。
具体的な住宅困窮理由としては、以下のようなものがあります。
- 他の世帯と炊事場、便所、浴室のいずれかを共同使用している
- 住宅が狭い(居住部分が1人あたり4畳以下)
- 住宅用ではない建物に住んでいる
- 家賃が高い(居住部分が1畳あたり3000円以上)
- 住宅がないために、親族や婚約者と同居できない
- 借地借家法に基づく正当理由で、大家に追い出されそう
- 通勤で片道2時間以上かかる
また、住宅困窮理由以外にも、
・個人の県民税や市町村民税を滞納していないこと。
・県営住宅の家賃を滞納していないこと。
といった条件があります。借金でお金に困っている方の中には、つい住民税を滞納してしまっている方も多いので、この点は特に注意してください。
家族の場合は、上記の収入要件と住宅困窮理由だけあればOKですが、単身者の場合は、さらに入居条件が厳しくなります。ハッキリ言うと、単身者の場合は、ほとんど「高齢者」か「生活保護受給者」の方しか入居できない、と思ってください。
単に収入が低いというだけでは、原則として単身者は入居できません。
単身者で入居可能な方
対象世帯 | 概要 |
---|---|
高齢者 | 60歳以上の方 |
生活保護受給者等 | 現時点で生活保護を受給している方 |
身体障害者 | 1級~4級の身体障害者の方、または1級~3級の精神障害者の方、 A1・A2・B1・B2の判定を受けた知的障害者の方。 |
DV被害者 | 配偶者暴力相談支援センターの一時保護等を受けてから5年以内の方、 配偶者に裁判所から接近禁止命令等が出て5年以内の方。 |
その他 | 戦傷病者、被爆者、ハンセン病療養所入所者、海外引揚者の方 |
この基準も、都営住宅と神奈川県営住宅とで全く同じです。
原則として、公営住宅は家族向け(一般世帯向け)の賃貸物件なので、単身者の方で上記のいずれにも当てはまらない方は、後述する「公社住宅」や「UR賃貸」を検討した方がいいかもしれません。
公営住宅の場合は、一般の営利目的の賃貸物件とは異なり、低所得者の方向けに低廉な家賃で物件を貸すことが目的です。そのため「年収に応じて家賃の額が変わる」という独自の制度が採用されています。これを応能応益家賃制度といいます。
つまり、同じ部屋に住んでいても、年収100万円の人と年収200万円とで家賃の額が違うのです。当然、年収の低い方ほど家賃は安くなり、年収の高い方ほど家賃も高くなります。
公営住宅は、年収が一定基準以下でなければそもそも入居できませんが、いったん入居してしまった後に、年収が増えることはありえます。その場合は、年収に応じて家賃が周辺相場並みに高くなるので、「このまま公営住宅に住んでいても意味がないな」ということで、自然に退去を促すことができるわけですね。
(もちろん、年収が一定水準以上まで上がると、直接的な「退去勧告」もなされます。)
公営住宅の家賃の算定方法
あまり難しく覚えても意味がないので、大まかな説明だけします。
公営住宅の家賃の算定方法は、あらかじめ法律で定められた「家賃算定基礎額」に、「市区町村立地係数」を掛けて計算されます。原則は、収入に応じた家賃算定基礎額がベースになるのですが、田舎と都内の物件の家賃が同じわけがないので、そこに立地係数を加味するわけですね。
例えば、都内であれば以下のようになります。
・目安の家賃 = 家賃算定基礎額 × 市町村立地係数
家賃算定基礎額
入居者の月収額 | 額 |
---|---|
10万4000円以下 | 34,400円 |
12万3000円以下 | 39,700円 |
13万9000円以下 | 45,400円 |
15万8000円以下 | 51,200円 |
18万6000円以下 | 58,500円 |
21万4000円以下 | 67,500円 |
25万9000円以下 | 79,000円 |
25万9000円超え | 91,100円 |
参考:公営住宅法施行令2条
市町村立地係数
市区町村名 | 係数 | 市区町村名 | 係数 |
---|---|---|---|
千代田区 | 1.60 | 港区 | 1.50 |
渋谷区 | 1.40 | 品川区・中央区 | 1.35 |
新宿区・文京区・目黒区・大田区 | 1.30 | 江東区・世田谷区・豊島区 | 1.25 |
台東区・北区 | 1.20 | 中野区・杉並区・板橋区・練馬区・江戸川区・武蔵野市 | 1.15 |
荒川区・足立区・葛飾区・立川市・三鷹市・府中市・調布市・小金井市・国立市・狛江市・東久留米市・西東京市 | 1.10 | 墨田区・八王子市・町田市・小平氏・東村山市・国分寺市・清瀬市・多摩市 | 1.05 |
昭島市・日野市・東大和市・稲城市 | 1.00 | 青梅市・福生市・武蔵村山市・羽村市 | 0.95 |
あきる野市・瑞穂町 | 0.90 | 日の出町 | 0.85 |
奥多摩町 | 0.70 | – | – |
市区町村名 | 係数 |
---|---|
千代田区 | 1.60 |
港区 | 1.50 |
渋谷区 | 1.40 |
品川区・中央区 | 1.35 |
新宿区・文京区・目黒区・大田区 | 1.30 |
江東区・世田谷区・豊島区 | 1.25 |
台東区・北区 | 1.20 |
中野区・杉並区・板橋区・練馬区・江戸川区・武蔵野市 | 1.15 |
荒川区・足立区・葛飾区・立川市・三鷹市・府中市・調布市・小金井市・国立市・狛江市・東久留米市・西東京市 | 1.10 |
墨田区・八王子市・町田市・小平氏・東村山市・国分寺市・清瀬市・多摩市 | 1.05 |
昭島市・日野市・東大和市・稲城市 | 1.00 |
青梅市・福生市・武蔵村山市・羽村市 | 0.95 |
あきる野市・瑞穂町 | 0.90 |
日の出町 | 0.85 |
奥多摩町 | 0.70 |
例えば、月額収入が8万円の方であれば、「家賃算定基礎額」による賃料は34,400円です。さらに千代田区の公営住宅であれば、「立地係数」は1.60なので、立地を考慮した賃料は月55,040円になります。
ところが全く同じ物件に住んだまま、年収が24万円まで上がった場合はどうでしょうか?
この場合は、家賃算定基礎額は79,000円。そこに立地係数1.60をかけて、家賃はおよそ月126,400円となります。同じ物件でも、なんと家賃が7万円も高くなってしまうわけですね。
こうした制度によって、年収の低い方でも自治体に住居を安く貸して貰える一方で、ある程度、年収が上がった方は、自主的に退去を促すことができる仕組みになっています。
なお実際には、この他にも物件ごとに、その部屋の間取りの広さ(規模係数)、築年数の古さ(経過年数係数)、浴室やエレベーター等の設備の充実度(利便性係数)などが考慮されて家賃算定に反映されますが、ここではその説明は割愛します。
近年は、高齢者を中心に低所得世帯が増加しており、また単身世帯でも生活保護受給者の数が年々増えていることから、「公営住宅に入居したい」と希望する方は非常に多いです。
特に都心部の公営住宅は、その抽選倍率もかなりの数字になります。
例えば、先ほど「都内には都営住宅が24万戸数もある」ということをお話しましたが、そのうち、例年、空き家となって定期的に入居募集にかけられる物件は、年間3000戸数ほどです。それに対し、都営住宅の応募者数は年間で8万人近くに及びます。
そのため、都営住宅(一般募集住宅)の場合、抽選倍率はおよそ30倍にもなります。
都営住宅の定期募集は、毎年5月と11月の2回に分けて行われています。直近の数字だと、平成28年5月の定期募集の際には、一般世帯向けの物件1450戸の入居募集に対し、40,395名の申込があり、その抽選倍率は27.9倍となっています。(参考:JKK東京「都営住宅の募集案内」)
他の都道府県や市の公営住宅の倍率
東京の都営住宅の人気・倍率は、その他の都道府県の公営住宅と比べても少し異常です。そのため、参考までに他の都道府県や市の公営住宅の、直近の抽選状況を紹介しておきます。
自治体 | 募集時期 | 募集戸数 | 応募者数 | 抽選倍率 |
---|---|---|---|---|
東京都 | 平成28年5月募集 | 1450戸 | 40,395人 | 27.9倍 |
神奈川県 | 平成28年5月募集 | 950戸 | 6,648人 | 7.0倍 |
横浜市 | 平成28年4月募集 | 655戸 | 8,523人 | 13.0倍 |
大阪市 | 平成28年7月募集 | 501戸 | 3,734人 | 7.5倍 |
東京都 | |
---|---|
募集時期 | 平成28年5月募集 |
募集戸数 | 1450戸 |
応募者数 | 40,395人 |
抽選倍率 | 27.9倍 |
神奈川県 | |
募集時期 | 平成28年5月募集 |
募集戸数 | 950戸 |
応募者数 | 6,648人 |
抽選倍率 | 7.0倍 |
横浜市 | |
募集時期 | 平成28年4月募集 |
募集戸数 | 655戸 |
応募者数 | 8,523人 |
抽選倍率 | 13.0倍 |
大阪市 | |
募集時期 | 平成28年7月募集 |
募集戸数 | 501戸 |
応募者数 | 3,734人 |
抽選倍率 | 7.5倍 |
このように都営住宅の倍率は突出して高いのですが、その他の主要都市の市営住宅や県営住宅も、それなりの高倍率になります。
ただし、これらの倍率はあくまで平均倍率であり、実際の物件ごとの抽選倍率ではありません。基本的には、やはり条件の良い人気物件に倍率が集中する傾向にありますので、倍率の低い物件を狙えば、上記の表ほど抽選が厳しいということはありません。
物件ごとの倍率表は、大体の自治体で公開されています。例えば、平成28年の都営住宅(一般募集住宅)の倍率表はこちら です。
抽選の優遇倍率制度について
なお抽選の倍率には、「優遇倍率」というものもあります。一定の条件を満たす世帯についてのみ、当選率を数倍にして下駄を履かせてあげる制度です。
以下、参考までに、都営住宅の主な優遇対象者だけ紹介しておきます。
優遇倍率
対象者 | 概要 | 当選率 |
---|---|---|
準多子世帯 | 同居家族に18歳未満の児童が2人いる場合 | 5倍 |
多子世帯 | 同居家族に小学校就学前の児童が2人いる場合 | 7倍 |
ひとり親世帯 | 母子・父子世帯で、同居家族が20歳未満の子供だけの場合 | 7倍 |
高齢者世帯 | 申込者が60歳以上で、同居者全員が高齢者・未成年等 | 7倍 |
難病患者等 | 法律上の指定難病であることが診断書で確認できる世帯など | 5倍 |
生活保護受給者 | 申込者または同居親族の1人が生活保護受給者 | 7倍 |
障害者世帯 | 申込者または同居家族の1人が身体障害・知的障害者の方など | 5~7倍 |
準多子世帯 | |
---|---|
概要 | 同居家族に18歳未満の児童が2人いる場合 |
当選率 | 5倍 |
多子世帯 | |
概要 | 同居家族に小学校就学前の児童が2人いる場合 |
当選率 | 7倍 |
ひとり親世帯 | |
概要 | 母子・父子世帯で、同居家族が20歳未満の子供だけの場合 |
当選率 | 7倍 |
高齢者世帯 | |
概要 | 申込者が60歳以上で、同居者全員が高齢者・未成年等 |
当選率 | 7倍 |
難病患者等 | |
概要 | 法律上の指定難病であることが診断書で確認できる世帯など |
当選率 | 5倍 |
生活保護受給者 | |
概要 | 申込者または同居親族の1人が生活保護受給者 |
当選率 | 7倍 |
障害者世帯 | |
概要 | 申込者または同居家族の1人が身体障害・知的障害者の方など |
当選率 | 5~7倍 |
参考:東京都市整備局「都営住宅の優遇抽選制度 」
この倍率や条件も自治体によって全然違います。
例えば、神奈川県営住宅にも同じように「母子・父子家庭優遇」「多子優遇」「障害者優遇」「高齢者優遇」などが存在しますが、優遇倍率はいずれも3倍です。
また都道府県によっては、「落選優遇」というものがあり、過去に何度も定期募集の抽選で落選している人が、倍率において優遇されるケースもあります。
公社住宅の収入条件と家賃補助等のメリットについて
さて次は、公社住宅の話です。
公社住宅も公的機関(住宅供給公社)の管理する賃貸物件で、同じく住居に困っている人(住宅困窮者)に物件を貸すことを目的にしています。しかし公社住宅は、低所得者向けの物件ではありません。どちらかというと、普通の中堅所得者を対象にした物件です。
全国におよそ13万戸数の公社住宅があり、特に、東京都住宅供給公社(JKK東京)の賃貸物件だけでも7万戸数と、やはり東京の公社住宅が圧倒的に多いです。
全国の公社住宅 (平成26年末時点)
都道府県 | 戸数 |
---|---|
東京都 | 64,222戸 |
神奈川県 | 13,395戸 |
愛知県 | 4,354戸 |
大阪府 | 19,591戸 |
兵庫県 | 4,364戸 |
福岡県 | 9,477戸 |
全国合計 | 130,047戸 |
参考:全国住宅供給公社等連合会「住宅供給公社の業務」
住宅供給公社は、各都道府県や主要都市などを中心に40社ほど存在します。
一応、地方自治体(国)が運営してはいますが、原則として独立採算なので、収益性が悪いと倒産してしまいます。実際、昔はすべての都道府県と主要都市に合計57の住宅供給公社が存在していましたが、平成28年時点で、そのうち既に16公社が破綻・解散しています。
その意味では、基本的には採算が取れないと生き残れないため、「民間の賃貸物件と変わらない」と考えていいかもしれません。
公社住宅の賃貸物件は、上記のような理由から、必ずしも周辺相場に比べて大幅に家賃が安いわけではありません。
しかし、さすが公的団体が管理・運営しているだけあって、築年数が古い割にはしっかりと修繕・リフォームがされている物件が多いです。そのため、そういった意味での割安感やお得感があります。そもそもの対象が中堅所得者向けなので、家賃に手頃感のある物件は多いのです。
さらに後ほど詳しく解説しますが、特定優良賃貸という物件を選べば、国や都から家賃補助が出るケースもあります。
- 基本的には先着順で空き家に入居できる。抽選は不要。
- 年収要件など条件が明確なため、民間の賃貸物件のように職業や外国籍による不利がない(例えば、夜系の水商売をしてる方等でも借りやすい)
- 中堅の収入世帯向けなので、安くて手頃な家賃の家族向けの物件が豊富にある。
また単身世帯でも入居できる物件を探せる。 - 管理会社が公的団体なので、修繕や立退きの際なども安心。
- 仲介手数料や更新料、礼金が不要。(ただし敷金は2~3カ月分必要)
- 特定優良賃貸住宅(とくゆうちん)の場合は、国から家賃補助が出る場合がある。
公社住宅の場合は、基本的に抽選はありません
一年を通じてずっと先着順で入居募集をおこなっていますので、物件を探したい場合は、「○○県 住宅供給公社」「○○県 公社住宅」といった検索をすれば、各住宅供給公社の物件掲載サイトが見つかると思います。
※ 神奈川県「公社の賃貸」、東京都「JKK東京の賃貸物件」
なお、ここまで説明したように「公営住宅」と「公社住宅」は全く別のものですが、たまに都道府県が、公営住宅の管理を住宅供給公社に委託している場合があります。
例えば、東京都ではJKK東京(公社)が、公社住宅だけでなく都営住宅の管理も受託しています。
どちらもJKK東京のホームページで募集案内していたりするため、少し混同する方もいるみたいですが、あくまで都営住宅は東京都の物件です。
先ほども少し説明しましたが、公社住宅にも収入条件があります。しかしこの収入条件は、公営住宅とは逆で、「年収いくら以上でなければ入居できない」という下限基準の条件になります。
例えば、東京都と神奈川県それぞれの住宅供給公社の、一般賃貸住宅の年収要件は以下のとおりです。
月収基準(東京都)
家賃 | 同居者がいる場合 | 単身世帯の場合 |
---|---|---|
月収基準 | ||
6万円以上 | 家賃の4倍以上 | 家賃の4倍以上 |
9万円未満 | 家賃の4倍以上 | 24万円以上 |
12万円未満 | 36万円以上 | 30万円以上 |
12万円以上 | 40万円以上 | 30万円以上 |
同居者がいる場合 | |
---|---|
家賃 | 月収基準 |
6万円以上 | 家賃の4倍以上 |
9万円未満 | 家賃の4倍以上 |
12万円未満 | 36万円以上 |
12万円以上 | 40万円以上 |
単身世帯の場合 | |
家賃 | 月収基準 |
6万円以上 | 家賃の4倍以上 |
9万円未満 | 24万円以上 |
12万円未満 | 30万円以上 |
12万円以上 | 30万円以上 |
参考:JKK東京「一般賃貸住宅 申込資格」
月収基準(神奈川県)
家賃 | 月収基準 |
---|---|
3万9500円以下 | 15万8000円以上 |
9万円未満 | 家賃の4倍以上 |
9万円以上 | 36万円以上 |
参考:神奈川県住宅供給公社「お申し込みの資格等」
このように住宅供給公社によって条件は違いますが、おおよその目安として、安い物件の場合は、家賃の4倍くらいの月収が必要だと考えておけば良いでしょう。詳しくは、各住宅供給公社のページを参照してください。
またその他の条件として、以下が必要になります。
- 住宅に困窮していること(持ち家がないこと)
- 連帯保証人を用意できること、または保証会社を利用すること
- 外国籍の方の場合は、3カ月以上適法に在留していること
過去に借金で債務整理したことがある方は、この「連帯保証人または保証会社」という条件が問題になる可能性があります。が、連帯保証人の問題については、後で、公営住宅・UR賃貸との比較でまとめて説明します(※すぐ読む )
特優賃(とくゆうちん)という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
特定優良賃貸物件というのは、国や都道府県が一定の家賃補助をおこなってくれて、周辺相場よりも安い家賃で入居できるファミリー向け賃貸物件のことです。
公社住宅の中にも、住宅供給公社が所有する特定優良賃貸住宅が含まれており、このような物件を選んだ場合は、国や都道府県から家賃補助が貰える場合があります。これも公社住宅の1つの大きなメリットですね。
ちなみに東京都の場合は、この特定優良賃貸のことを「都民住宅」という呼び方をしています。
都民住宅には、「都営住宅」タイプと「公社住宅」タイプの2種類があるので少しややこしいのですが、ここから説明するのは公社住宅タイプの話です。
都民住宅の家賃補助の仕組み
まず特定優良賃貸は、その性質上、2人以上の家族でないと入居できません(単身世帯ではダメです)。また家賃補助を受けられる物件と、そうでない物件があります。全ての都民住宅で家賃補助が出るわけではありません。
また当然、年収についての条件もあります。
都民住宅の場合、世帯年収(家族の収入の合計)が、以下の年収区分のいずれかに属する場合は、国から家賃補助を受けられる可能性があります。
区分 | 家族数ごとの年間総所得 | ||
---|---|---|---|
2人 | 3人 | 4人 | |
Ⅰ(Ⅰ-1) | 278万円~323万6000円 | 316万円~361万6000円 | 354万円~399万6000円 |
Ⅰ(Ⅰ-2) | 323万6001円~359万6000円 | 361万6001円~397万6000円 | 399万6001円~435万6000円 |
Ⅱ | 359万6001円~424万4000円 | 397万6001円~462万4000円 | 435万6001円~500万4000円 |
Ⅲ | 424万4001円~514万4000円 | 462万4001円~552万4000円 | 500万4001円~590万4000円 |
Ⅳ | 514万4001円~626万円 | 552万4001円~664万円 | 590万4001円~702万円 |
Ⅴ | 626万1円~759万2000円 | 664万1円~797万2000円 | 702万1円~835万2000円 |
家族人数2人 | |
---|---|
区分 | 年間総所得 |
Ⅰ(Ⅰ-1) | 278万円~323万6000円 |
Ⅰ(Ⅰ-2) | 323万6001円~359万6000円 |
Ⅱ | 359万6001円~424万4000円 |
Ⅲ | 424万4001円~514万4000円 |
Ⅳ | 514万4001円~626万円 |
Ⅴ | 626万1円~759万2000円 |
家族人数3人 | |
区分 | 年間総所得 |
Ⅰ(Ⅰ-1) | 316万円~361万6000円 |
Ⅰ(Ⅰ-2) | 361万6001円~397万6000円 |
Ⅱ | 397万6001円~462万4000円 |
Ⅲ | 462万4001円~552万4000円 |
Ⅳ | 552万4001円~664万円 |
Ⅴ | 664万1円~797万2000円 |
家族人数4人 | |
区分 | 年間総所得 |
Ⅰ(Ⅰ-1) | 354万円~399万6000円 |
Ⅰ(Ⅰ-2) | 399万6001円~435万6000円 |
Ⅱ | 435万6001円~500万4000円 |
Ⅲ | 500万4001円~590万4000円 |
Ⅳ | 590万4001円~702万円 |
Ⅴ | 702万1円~835万2000円 |
参考:JKK東京「家賃補助制度の仕組み」
上表のように、都民住宅では、まず年収に応じて「Ⅰ~Ⅴ」の5つの区分に分類されます。
家賃補助が出る物件の場合は、それぞれの区分に応じて「入居者が実質的に負担する家賃の額」(入居者負担額)が定められています。本来の家賃との差額は、国や都が負担してくれる、という仕組みです。
ただし、この家賃補助というのは永久に続くものではありません。
家賃の入居者負担額は、毎年約3.5%ずつ値上がりしていきます(つまり家賃補助は毎年少しずつ減らされていきます)。そして最終的に、本来の契約家賃額に追いついた時点で、家賃補助はなくなります。
また公社が物件の管理をはじめてから20年以上経過している場合には、入居日に関係なく、国からの家賃補助は0円になります。
そのため、都民住宅(特定優良賃貸)であっても、既に管理開始から20年以上が経過している物件については、今から入居しても家賃補助は出ません。
なお、地方自治体によっては、全ての物件で、もう家賃補助が出ていないケースもあります(例えば、神奈川県ではすでに家賃補助の対象となる特定優良賃貸住宅はありません)ので、各都道府県の公社のページをよく確認してください。( 神奈川県リンク)
UR賃貸の収入条件や入居するメリットについて
さて、最後はUR賃貸の話です。
UR賃貸は、基本的に公社住宅とかなり似ています。(1)最低限の足きりになる収入条件がある点、(2)公的機関が物件を管理している点、(3)礼金や更新料、仲介手数料が不要な点、(4)抽選ではなく先着順で入居できる点、なども公社住宅と同じです。
公社住宅の場合は、各都道府県や市の住宅供給公社がそれぞれ物件を管理していましたが、UR賃貸の場合は、独立行政法人の都市再生機構という1団体が全国の物件をまとめて管理しています。
その物件の管理戸数はなんと75万戸にも及びます。民間の不動産グループでいえば、大東建託の管理物件数が86万戸(2015年時点)で全国1位ですが、それに次ぐ国内2位の物件管理数となっています。
そのため、「日本最大の大家さん」と言われることもあります。
- 基本的には先着順で空き家に入居できる。(ただし一部の新築物件は抽選あり)
- 築年数の古い物件でも、間取りや設備が、
現代生活に合わせてリフォームされた綺麗な物件が多い - 安くて手頃な家賃の家族向けの物件が豊富にある。単身世帯でも入居できる。
- 仲介手数料や更新料、礼金が不要。(ただし敷金は2カ月分必要)
- 連帯保証人が不要で、かつ保証会社を付ける必要もなし。
- 昔の大規模団地の物件も多いが、都心部の高層タワー等もあり
幅広くてお洒落な物件も多い
UR賃貸の場合は、前述のように全国のどの物件も都市再生機構が管理していますので、収入要件も明確です。公営住宅や公社住宅のように、「各自治体によって違う」ということはありません。
収入要件
家賃 | 同居家族がいる | 単身者の場合 |
---|---|---|
20万円以下 | 家賃の4倍以上または月収33万円以上 | 家賃の4倍以上または月収25万円以上 |
20万円超 | 月収40万円以上 | 月収40万円以上 |
同居家族がいる | |
---|---|
家賃 | 基準月収額 |
20万円以下 | 家賃の4倍以上 または月収33万円以上 |
20万円超 | 月収40万円以上 |
単身者の場合 | |
家賃 | 基準月収額 |
20万円以下 | 家賃の4倍以上 または月収25万円以上 |
20万円超 | 月収40万円以上 |
参考:UR都市機構「お申込み資格について」
上記の月収基準には、同居親族の収入や、親族からの仕送りの収入を合算することができます(ただし申込者本人にも、最低でも基準の1/2以上の収入が必要です)。
よほど家賃の高い物件でなければ、基本的には家賃の4倍程度の収入が基準になります。この点でも、やはり公社住宅に近いですね。
UR賃貸の場合、この他に特に記載することはありません。家賃補助などの国の制度や、住居困難理由などの申込資格があるわけでもないので、収入条件が明瞭に決まっている点以外は、ほとんど民間の賃貸物件と変わりません。
公営住宅、公社住宅、UR賃貸、の違いまとめ
最後に「公営住宅」「公社住宅」「UR賃貸」の違いをまとめておきます。
公営住宅 | 公社住宅 | UR賃貸 | |
---|---|---|---|
全国戸数 | 92万戸 | 13万戸 | 75万戸 |
運営 | 都道府県・市 | 住宅供給公社 | 都市再生機構 |
入居方法 | 抽選方式 | 先着順受付 | 先着順受付 |
収入要件 | 上限基準あり | 下限基準あり | 下限基準あり |
住宅困窮 | 住宅困窮者が対象 | 住宅困窮者が対象 | 特になし |
家賃補助 | 応能応益家賃制度 | 特定優良賃貸 | 特になし |
単身者の入居 | 厳しい | 入居できる | 入居できる |
保証人 | 連帯保証人が必要 | 連帯保証人が必要 | 不要 |
全国戸数 | |
---|---|
公営住宅 | 92万戸 |
公社住宅 | 13万戸 |
UR賃貸 | 75万戸 |
運営 | |
公営住宅 | 都道府県・市 |
公社住宅 | 住宅供給公社 |
UR賃貸 | 都市再生機構 |
入居方法 | |
公営住宅 | 抽選方式 |
公社住宅 | 先着順受付 |
UR賃貸 | 先着順受付 |
収入要件 | |
公営住宅 | 上限基準あり |
公社住宅 | 下限基準あり |
UR賃貸 | 下限基準あり |
住宅困窮 | |
公営住宅 | 住宅困窮者が対象 |
公社住宅 | 住宅困窮者が対象 |
UR賃貸 | 特になし |
家賃補助 | |
公営住宅 | 応能応益家賃制度 |
公社住宅 | 特定優良賃貸 |
UR賃貸 | 特になし |
単身者の入居 | |
公営住宅 | 厳しい |
公社住宅 | 入居できる |
UR賃貸 | 入居できる |
保証人 | |
公営住宅 | 連帯保証人が必要 |
公社住宅 | 連帯保証人が必要 |
UR賃貸 | 不要 |
公営住宅と公社住宅の場合は、原則として連帯保証人を用意することが要求されます。
ただし公営住宅の場合は、万が一、連帯保証人が立てられない場合でも、自治体に相談すれば、「もし今後、保証人が見つかったら必ず報告します」という旨の誓約書を一枚書くことで、入居を認めて貰える場合もあるようです。
問題は、公社住宅の保証人が見つからない場合です。
公社住宅の場合、連帯保証人を用意できない人は、保証会社を利用しなければなりません。そのため、連帯保証人がいない場合は、保証会社による入居審査が必須になります。
公社住宅の保証会社というのは、多くの場合、アプラスやオリコなどの信販会社です。
例えば、神奈川県住宅供給公社の物件の保証会社はアプラスですし、東京都住宅供給公社(JKK東京)の保証会社はオリコです。
信販会社ということは、審査の際には必ず信用情報(※)を開示します。
そのため、過去に借金やクレジットカードの滞納がある方、自己破産などの債務整理をしている方など、信用情報でブラックリスト入りしている方の場合、公社住宅の審査に受からない可能性があるのです。(もちろん連帯保証人がいる場合は、信用情報による審査はありません。)
家賃保証会社の審査については、以下の記事もあわせて参考にしてください。
そういった意味では、UR賃貸であれば、連帯保証人も保証会社も一切不要なので、「収入はあるけど、過去に債務整理をしていて信用情報に傷がある」「連帯保証人になってくれる親族もいない」という方の場合は、公的住宅のなかではUR賃貸が最もおすすめかもしれません。
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