生活保護の支給額っていくら?最低生活費の計算方法

生活保護の支給額は、世帯ごとの「最低生活費」を基準に決定されます。この最低生活費は、厚生労働省が居住地域、世帯人数、家族の年齢などを元に、憲法25条で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要な金額を算出したもので、基本的にはこの最低生活費=毎月支給される生活保護の額、になります。ただし別途、年金等による収入がある場合には、その金額分は支給額から除外されます。

生活保護の支給額と最低生活費について
ねえねえ、先生ー!
生活保護の支給額って、たしか家族の人数や住んでいる地域とかによっても違ってくるよねー? あらかじめ、自分の世帯の生活保護費(支給額)がいくらぐらいになるか、計算する方法はあるのー?
生活保護の支給額は、世帯の最低生活費を基準に決定されるから、それを計算すれば大体の支給額の目安はわかるね。毎月支給される「生活扶助」と、その他、状況によって毎月支給される「住宅扶助」「教育扶助」「生業扶助」等の合計額が最低生活費になるよ。
ふむふむ、
生活扶助っていうのは、食費とか光熱費とかケータイ代とか、本当に月々の生活費として支給されるものだよね? で、住宅扶助は家賃の支払い、教育扶助は子供の学校教育のために支給されるものかな?
そうだね、大体、その辺りが毎月実費(現金)で支給されるものだから、これを計算すれば、世帯の月々の最低生活費がわかるね。簡単な計算方法はこの記事でも解説するよ。ただ、生活保護費の仕組みは複雑だから、正確な数字を確認したい場合は福祉事務所に聞いてね。
うん、
それで世帯の「最低生活費」がわかったら、基本的に、その金額がまるまる支給される、と考えていいのかなー?
他にも年金とかがある場合は両方、受給することはできるの?
いや、生活保護の他にも収入がある場合には、その分、生活保護の支給額は減らされるよ。あくまで全部の収入を合計して、「最低生活費」になるように調整される。例えば、最低生活費が10万円の世帯で、年金の受給額が5万円なら、生活保護の支給額は5万円だね。
  • 生活保護には「生活扶助」「教育扶助」「住宅扶助」など7つの種類がある
  • 現金で毎月支給される可能性があるのは、主に生活扶助・住宅扶助・教育扶助
  • 生活扶助は、住んでいる地域、世帯人数、家族の年齢、によって決められる
  • 持ち家がなく、賃貸で部屋を借りている場合は、家賃は住宅扶助で賄われる
  • 小中学校の子供がいる場合は教育扶助が支給される。高校生は生業扶助が支給

生活保護の「最低生活費」ってズバリいくらなの?

生活保護の支給額は、「最低生活費」を基準にして算定されます。そのため、毎月支給される生活保護費をおおよそで計算するためには、まず自分の最低生活費を把握することが重要です。

ところが、この最低生活費は住んでいる地域、世帯人数、年齢、その他(母子家庭、障害者の方は加算される)、持ち家の有無、学校に通う子供の有無、等でも金額が変わってきますので、決して計算は簡単ではありません。

さまざまな世帯の家庭環境に応じて、正確に「最低生活費」を支給する必要があるため、ある程度、計算が複雑になるのは仕方ありません。以下、計算方法を説明しますが、正確な金額を知りたい場合は、福祉事務所の窓口で確認することをおすすめします。

生活保護の扶助は7種類ある。最低生活費はその合計額

まず生活保護には7つの種類があります。最低生活費というのは、これらの合計額のことをいいます。

例えば、小中学校に通う子供がいる場合には「教育扶助」が支給されますし、持ち家がなく賃貸物件に住んでいる場合には「住宅扶助」が支給されます。これらは当然、人によって支給される人と、支給されない人がいます。それによって最低生活費も変わります。

生活保護の種類

種類 支給方法 内容
生活扶助 金銭給付 生活保護の基本となる支給額。衣食や光熱費、日常生活費等の目的
住宅扶助 金銭給付 賃貸物件に住んでいて家賃が必要な場合の支給額。その他、自宅の補修等
教育扶助 金銭給付 小学校・中学校などの義務教育を受けるのに必要な支給額。
生業扶助 金銭給付 就労支度金や、事業のために器具資材、技能習得、高等学校就学等の費用
医療扶助 現物給付 国民健康保険と同等の治療を受けれる。薬、入院、手術等の現物支給。
介護扶助 現物給付 要介護・要支援の認定がされた方向け。介護保険と同等の援助を受けれる
出産扶助 金銭給付 被保護者が出産する場合に支給される扶助。
葬祭扶助 金銭給付 葬儀をおこなう場合に支給される扶助。

 
このうち、「医療扶助」や「介護扶助」などは現物給付になりますので、最低生活費の計算には含まれません。
葬祭扶助や出産扶助は、日常的に継続して支給されるものではありませんので、一般の世帯での最低生活費に関わってくるのは、主に「生活扶助」「住宅扶助」「教育扶助」の3つになるはずです。

そのため、ここでは3つの扶助をもとに最低生活費を計算する方法について説明します。

生活保護の基本である「生活扶助」の計算方法

生活扶助は、日常の最低限の生活を営むために支給される生活保護費です。そのため一般的には、この生活扶助のことを「生活保護費」だと考えても差し支えありません。

この生活扶助の基準額の計算がまた難しいのですが、基本的には、「第1類」「第2類」「加算額」の3つの要素により構成されています。この3つの要素の合計額が生活扶助になります。

生活扶助の3つの計算要素

要素 内容
生活扶助 第1類費 世帯の1人1人(個人)のために支給される生活費。年齢によって1人辺りの支給額が異なる
生活扶助 第2類費 世帯のために支給される生活費。例えば、家庭全員の電気代や水道ガス代などを負担するための支給額
加算額 身体障害者の方や、母子家庭の方、妊婦の方、などを対象に特別に加算して支給される金額

 
さて、それぞれの生活扶助費を計算するにあたって、まず重要なのは、自分が住んでいる場所(生活保護を申請する場所)を把握することです。

生活保護費は、どこに住んでいるかによって支給額が変わってきます。東京の23区内などは物の物価や地価も高いため、「1級地」として最低生活費も高く設定されています。一方、鳥取県(鳥取市以外の市町村)に住んでいる場合は、「3級地」として最低生活費も低く見積もられています。

以下に、各都道府県の市町村がそれぞれ、生活保護法上の何級地に該当するか、の一覧をまとめていますので参考にしてみてください。パソコンで閲覧されている方は、「Ctrl+F」キーで自分の市町村名を検索できます。

>>全国の市町村の生活保護上の級地一覧を確認する(※クリックで開く)<<

級地が確認できたら、その級地をもとに以下の一覧表から「第1類」と「第2類」それぞれの金額を探して、それを合計してください。原則として、それが世帯の最低生活費になります。

生活扶助費 第1類

年齢 1級地-1 1級地-2 2級地-1 2級地-2 3級地-1 3級地-2
0~2歳 26,660円 25,520円 24,100円 23,540円 22,490円 21,550円
3~5歳 29,970円 28,690円 27,090円 26,470円 25,290円 24,220円
6~11歳 34,390円 32,920円 31,090円 30,360円 29,010円 27,790円
12~19歳 39,170円 37,500円 35,410円 34,580円 33,040円 31,650円
20~40歳 38,430円 36,790円 34,740円 33,930円 32,420円 31,060円
41~59歳 39,360円 37,670円 35,570円 34,740円 33,210円 31,810円
60~69歳 38,990円 37,320円 35,230円 34,420円 32,890円 31,510円
70~歳 33,830円 32,380円 30,580円 29,870円 28,540円 27,340円

 
ここに、世帯人数に応じて以下の逓減率をかけます。

逓減率というのは、世帯人数の多い家族への支給額が大きくなりすぎる(単身世帯に比べて有利になる)ことを防ぐために、人数に応じて上記の金額から1人辺りの支給額を少し減らす計算率のことをいいます。

逓減率

世帯人数 逓減率
1人 1.0倍
2人 0.885倍
3人 0.835倍
4人 0.7675倍
5人 0.7140倍

 
少しわかりにくいかもしれませんね。例えば、都内の「1級地-2」に単身で住んでいる30歳の場合、第1類の生活扶助額は上の図表のとおり、36,790円です。

一方、同じ都内の「1級地-2」に30歳の夫と妻、4歳の娘の3人で暮らしている場合、それぞれの第1類の生活扶助額の合計は、(36,790円×2 + 28,690円)で合計10万2270円になりますが、3人世帯なのでココに「0.835倍」の逓減率が適用されます。

そのため、合計額は8万5395円となります。

「え? 家族の人数が多いだけで、こんなに減らされるの?」と驚かれるかもしれませんが、以下の「生活扶助費 第2類」で調整されるので大丈夫です。第2類の生活扶助費は、世帯人数が多いほど多く貰えます。

生活扶助費 第2類

世帯人数 1級地-1 1級地-2 2級地-1 2級地-2 3級地-1 3級地-2
1人 40,800円 39,050円 36,880円 36,030円 34,420円 32,970円
2人 50,180円 48,030円 45,360円 44,310円 42,340円 40,550円
3人 59,170円 56,630円 53,480円 52,230円 49,920円 47,810円
4人 61,620円 58,970円 55,690円 54,390円 51,970円 49,780円
5人 65,690円 62,880円 59,370円 57,990円 55,420円 53,090円

 
先ほどの都内の「1級地-2」の例でいえば、単身世帯(30歳)の場合は、最終的に合計額が 7万5840円となります。これが基本的には生活扶助になります。一方、3人世帯(夫婦30歳、娘4歳)の場合は、合計額は14万2025円になります。

少ないと感じるかもしれませんが、最低限度の生活を営むためなので、こんなものでしょう。

アパートや賃貸マンションに住んでいる場合は、家賃は別途、住宅扶助として支給されますので、ここから家賃を支払う必要はありません。

加算額

対象者 1級地 2級地 3級地
身体障害者1級2級 26,310円 24,470円 22,630円
身体障害者3級 17,530円 16,310円 15,090円
母子世帯 児童1人 22,790円 21,200円 19,620円
母子世帯 児童2人 24,590円 22,890円 21,200円
3歳未満の児童の養育費 15,000円

 
さらに身体障害者の方や、母子家庭の場合には、別途、上記の額を最低生活費に加算することができます。
その他、状況に応じて「妊産婦加算」「老齢加算」「在宅患者加算」「放射線障害者加算」等の加算を受けられる可能性があります。詳しくは福祉事務所の窓口でご相談ください。

なお北海道や東北の寒い地域では、11月~3月にかけて上記の生活扶助に加えて「冬季加算」として、光熱費を目的とした支給額が上乗せされます。

賃貸居住物件の家賃は「住宅扶助」で別途、支給される

賃貸マンションやアパートに住んでいる場合は、生活扶助から直接、家賃を負担する必要はありません。別途、住宅扶助として家賃が支給されます。

ただしこの住宅扶助の金額には上限がありますので、好きな家に住めるわけではありません。上限となる支給額以上の賃貸に住んでいる場合でも生活保護を受給することはできますが、通常は、その後に福祉事務所から転居を指導されます。

さて、この住宅扶助の家賃の上限金額も、やはり住んでいる都道府県、級地、世帯人数で決まります。以下、平成27年7月1日に改正適用された住宅扶助(家賃)の限度額を表にまとめています。

>>お住まいの地域の住宅扶助(家賃)の上限額を確認する(※クリックで開く)<<

そのほか、転居に伴う敷金や礼金、契約更新料なども住宅扶助として支給されます。
持ち家に住んでいる場合は、家賃としての住宅扶助は支給されませんが、補修などが必要になった場合には住宅維持費用が支払われます。

義務教育の子供がいる場合の「教育扶助」の基準額

さらに義務教育を受ける必要のある子どもがいる場合には、生活扶助や住宅扶助とは別に、「教育扶助」として毎月一定額が支給されます。この基準額も最低生活費に含まれます。

教育扶助の基準額

基準額 小学校 2150円
中学校 4180円
学習支援費 小学校 2560円
中学校 4330円

 
基準額は、鉛筆やノートなどの文房具、ハーモニカや書道道具などの学用品の購入、通学帽子や上履き、等の通学用費のために毎月支給されるものです。

一方、学習支援費は、教科書以外の教材(市販の参考書など)や、課外クラブ活動のために支給されるもので、そのほかの一般の生徒に比べて不利な立場になることがないよう、追加支援の意味で支給されます。

そのほか、正規の教科書代や、学校の給食費、通学交通費などは別途、実費で支給されます。

高等学校等就学費

基本額 5300円
学習支援費 5010円

 
高等学校への就学は、義務教育ではありませんので、教育扶助の支給対象ではありません。しかし今は高校に行くのは当たり前の時代ですので、高等学校就学費は「生業扶助」でカバーされています。

上記の基本額と学習支援費は毎月支給されるものですが、この他にも、「授業料」「入学料」「教科書代」「通学交通費」等は実費で支給されます。

実際の生活保護の支給額(最低生活費)の計算例

さて、では実際にどういう家族構成で暮らしている人が、いくら位の生活保護を受給できるのか、その具体例をいくつか計算してみましょう。

単身で東京に1人暮らしの場合

年齢 40歳
住所 東京都練馬区
世帯人数 1人
居住 賃貸アパート(家賃5万円)

 
この場合、まず居住地の級地は「1級地-1」ですから、生活扶助の金額は38,430円(第1類)と、40,800円(第2類)の合計で79,230円になります。その他の加算はありません。

また住居は賃貸ですから住宅扶助の支給対象になります。東京の1級地なので、上限は53,700円です。そのため、家賃の5万円は全額が支給されます。

以上が基本的な最低生活費になりますので、合計12万9230円が毎月支給されることになりそうです。

家族4人(子供2人)で北海道暮らしの場合

年齢 父52歳、母44歳、娘14歳、娘9歳
住所 北海道旭川市
世帯人数 4人
住居 賃貸物件(家賃4万円)

 
この場合、まず居住地の級地は「2級地-1」ですから、それぞれの生活扶助の第1類の金額は、父親が35,570円、母親が35,570円、娘1人目が35,410円、娘2人目が31,090円で合計13万7640円になります。ただし世帯人数が4人なので、逓減率の「0.7675倍」が適用されて、第1類の合計額は10万5638円になります。

また生活扶助の第2類は「2級地-1」で4人世帯ですから、55,690円になります。3歳未満の児童はいませんし、母子家庭ではありませんので、その他の加算はありません。

次に住宅扶助ですが、こちらは旭川市で3~5人世帯に分類されますので、上限支給額は3万6000円です。現状、暮らしている物件の家賃は4万円ですが、生活保護で支給されるのは3万6000円までですので、残りは生活扶助から負担するか、通常は転居指導を受けて引越しをすることになります。

また小学校に通う娘が1人、中学校に通う娘が1人いますので、それぞれ教育扶助を受けることができます。これらが基準額、学習支援費の合計でおよそ13,220円です。交通費等、場合によってはさらに支給されることもあるかもしれません。

これらの扶助をすべて合計すると、月々の最低生活費は21万548円になります。他に特に手当や収入がなければ、この全額が生活保護により支給されます。

収入がある場合は、その分、生活保護の受給額が減る

最低生活費は、あくまで憲法で保障する「最低限度の文化的な生活」を送るために国民の税金から支給されるものなので、必要以上に多くの金額を受給することは認められません。

そのため、生活保護の他に、年金や給与所得等の収入がある場合には、その金額分は「収入認定」されて、その分、生活保護の支給額が減らされることになります。

年金給付やその他、手当による収入があり、収入認定された場合、その分、支給額が減る-図

例えば、最低生活費が10万円の世帯で、障害年金の支給額が5万円ある世帯では、生活保護の支給額は5万円になります。最低生活費の全額が支給されるわけではなく、全ての収入の合計額が最低生活費になるように、生活保護の支給額が調整されるのです。

労働収入の場合は控除が受けられるので、働いた方が得

これを聞くと「じゃあ働いてもその分、生活保護の支給額が減るだけなんだから、働いたら損じゃん!」という方もいるかもしれません。しかし、労働収入の場合は収入認定の際に、一定額の控除を受けることができますので、結果的には働いた方が得になる仕組みになっています。

例えば、最低生活費が15万円の世帯において、アルバイトによる収入が5万円あったとします。この場合、1万8000円の控除を受けることができるため、収入は3万2000円(5万-1万8000円)分しか認定されません。

労働収入の場合は控除を受けられる-図

収入認定が3万2000円なので、生活保護の支給額は11万8000円になります。つまりアルバイト収入の5万円とあわせると、月の可処分所得は合計16万8000円になり、働かない場合(支給額15万円)と比べると、1万8000円手取りが多くなります。

ただし、これは労働収入だけの話です。年金収入やその他、手当では勤労控除を受けることはできません。

「働いたら損をする」という仕組みのままだと、生活保護者の自立的な更生を促すことができないため、労働収入に限っては、このような控除による特別なインセンティブが設けられています。

基礎控除(勤労控除)

基礎控除の額は、平成27年度の時点で以下のように定められています。世帯のなかで、働いている人が2人以上いる場合は、1人目と2人目とで控除額が違いますので注意が必要です。

>>給与収入やバイト代がある場合の基礎控除額表(※クリックで開く)<<

給与等の収入が1万5000円以下であれば、全額が控除されますのでそのまま手元に残すことができます。
また、働いて稼ぐ金額が大きくなればなるほど、その分、控除額も大きくなりますので、最終的に手元に残る金額(世帯収入の合計額)が大きくなります。

その他の控除

上記は、基礎控除(勤労控除)だけを一覧表にまとめていますが、他にも高校生や大学生のアルバイトの場合は「未成年控除」を受けることができます。未成年の給与収入の場合は、上記の基礎控除に加えて、さらに月11,600円まで控除が可能です。

また、ちゃんとした定職(継続性のある仕事)に就いた場合は、新規就労から6カ月間は、月額10,300円の「新規就労控除」を受けることができます。
詳しくは担当職員(ケースワーカー)の方に相談してみてください。

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