失業保険の支給金額と条件、期間、給付制限について

「失業して生活が苦しい」という方は、まずは忘れずに最寄りのハローワークで失業保険を申請しましょう。以前の勤務先で週20時間以上働いていて、かつ1年以上勤務していた方であれば、最低3カ月間は、月10~20万円の失業手当を受給できます。失業保険の仕組みは、自分で調べて申請しなければ誰も教えてくれません。この記事をしっかり読めば、失業保険の受給方法が完璧にわかりますので、ぜひ勉強してください。

失業保険の支給金額と条件を知りたい!
ねえねえ、先生ー。
職場の人間関係やストレスで鬱病になって、半年で仕事を辞めちゃったんだけど、このままだと来月から生活できなくなりそう・・・。生活費の借金もあるし。失業保険って貰えるかなぁ?
鬱病で辞めたなら、半年間しか働いてなくても失業保険が貰える可能性はあるね。本来は、雇用保険に1年以上加入していた人が対象だけど、会社の都合でクビになった人や、心身の障害で退職した人は、6カ月以上雇用保険に加入してれば、失業手当が貰える。
そうなんだ。
でも、そもそも「雇用保険」に加入していたかどうかも、正直よくわかんないなぁ。アルバイトだったし。アルバイトやパートの人でも失業保険って貰えるものなの?
雇用形態は関係ないね。
アルバイトでも、週20時間以上働いていたなら、雇用保険には加入しているはずだよ。雇用保険法上の義務だからね。継続して31日以上勤務してないとダメだけど、君の場合は、半年働いてたなら問題ない。
そうなんだ・・・良かった。
それで失業保険っていうのは、大体、いくら位、貰えるものなのー? それに、どのくらいの期間、貰えるものなのかなー? もちろん、ずっと貰えるわけじゃないよね。
失業手当の金額と支給期間は、「辞めた理由」「当時の給与額」「年齢」「勤続年数」などの条件によって変わるから、一概にはいえない。でも大体、支給額は月10~20万円くらいだね。支給期間は、君の場合は1年未満で辞めてるから、最長で3カ月だよ。
なるほど。
でも3カ月間、月10万円でも支給して貰えるなら全然ありがたいよね。何とか生活もできそうだし、支援を受けてる間に、次の職場も見つかりそう! ・・・で、その失業手当はいつから貰えるの?
自己都合で退職した人の場合は、一般的には支給開始までに4カ月かかるね。不正受給を回避するために、すぐには受給できない制度になってるんだ。でも、会社都合でクビになった人や、鬱病等で仕方なく退職した人は、申請して1カ月程度ですぐ受給できるよ。
  • アルバイトでも週20時間以上働いていれば、失業手当が貰える可能性はある
  • 失業手当が受給できる条件は、原則、雇用保険に1年以上加入していること
  • ただし会社都合で解雇された場合は、雇用保険に半年加入していればOK
  • 失業手当は最寄りのハローワークで申請する。申請には離職票の提出が必要
  • 自己都合で退職した方は、3カ月の給付制限があるため支給開始が遅くなる

雇用保険に加入していた場合は、まず失業手当を受給する

失業保険というのは雇用保険制度の1つで、「失業した方が再就職するまでの生活を支援する」ための制度です。名前は有名ですが、実際に支給を受けたことのある方は少ないかもしれません。

失業保険は、再就職の支援が目的なので「仕事を辞めた」というだけで、次の仕事を探す気がない方、今後就職する予定がない方には支給されません。あくまで次の仕事が見つかるまでの間、生活に困らないように支給される保険金です。

失業保険は、雇用保険者が、次の仕事を探すまでの間、生活に困らないように支給される保険金

また、そもそも雇用保険に加入していなかった方にも支給されません。
雇用保険に加入条件は、以下です。

(1)31日以上の雇用されていた。
(2)週20時間以上働いていた。

上記に該当する方は、本人の意思や勤務先の意思に関係なく、法律によって雇用保険への加入が義務付けられます。なので、アルバイトの方でも、週20時間以上働いていて、1カ月以上続けて勤務していたのであれば、雇用保険そのものへは加入していたはずです。

雇用保険の加入条件の図

しかし問題は、失業手当の受給要件を満たしていたかどうかです。

失業手当は、雇用保険に加入した方全員に対して、無条件で支給されるものではありません。
一定の年数以上、雇用保険に加入して保険料を払っていた方に対してだけ支給されます。





失業手当の受給要件について

失業手当が支給される人の条件は、おおまかにいうと「1年以上雇用保険に加入していた人」です。しかし正確にいうと、退職理由によって条件が異なります。

この退職理由というのは、失業保険において非常に重要です。後で説明する「支給期間」や「支給金額」、そして「支給開始までに待つ期間」のすべてについて、この退職理由が関係してきます。

なので最初に、退職理由の3つの区分を説明しておきます。

退職区分

区分 内容
一般離職者 普通に自己都合で退社した場合です。「仕事を辞めざるをえなかった特別の事情」はなく、単に転職したい、今の職場の人間関係に疲れた、などの場合は、この一般離職者に含まれます。
特定受給資格者 会社の倒産、解雇により離職した場合です。事務所の廃止や移転に伴い、通勤できなくなって離職したようなケース、賃金が支払われなくなって仕方なく辞めたケースも含みます。
特定理由離職者 労働契約の期間が満了し、希望したのに契約が更新されなかった場合や、自己都合で退職したものの、その理由に仕方のない事情があった場合です。心身障害や、妊娠・出産等に伴い一時的に退職した場合等を含みます。

一般離職者
普通に自己都合で退社した場合です。「仕事を辞めざるをえなかった特別の事情」はなく、単に転職したい、今の職場の人間関係に疲れた、などの場合は、この一般離職者に含まれます。
特定受給資格者
会社の倒産、解雇により離職した場合です。事務所の廃止や移転に伴い、通勤できなくなって離職したようなケース、賃金が支払われなくなって仕方なく辞めたケースも含みます。
特定理由離職者
労働契約の期間が満了し、希望したのに契約が更新されなかった場合や、自己都合で退職したものの、その理由に仕方のない事情があった場合です。心身障害や、妊娠・出産等に伴い一時的に退職した場合等を含みます。

 
特定受給資格者というのは、「会社都合で退職した人」のことです。一方、特定理由離職者というのは、「正当な理由があって、自己都合で退職した人」のことです。この2つは失業保険では同じように扱われます。

「正当な理由」というのは、具体的には、以下のような場合です。

「正当な理由」での自己都合退職の例(※クリックタップで開閉)

うつ病で職場を退職した場合も、原則として「特定理由離職者」になります。(ただし現在は完治して就労可能な状態でなければ、失業手当は受給できません)。医師の診断書などがある場合は、ハローワークでそれを提示してください。

一般離職者、特定受給資格者、特定理由離職者、どれに分類されるかで受給条件が全然違う-図

一般離職者、特定受給資格者(特定理由離職者)それぞれの受給条件

一般離職者の場合は、1年以上雇用保険に加入することが失業手当の受給条件です。

つまり「1年以上働いていた場合は失業手当が出る」「半年で辞めたのであれば失業手当は出ない」ということです。わかりやすいですね。

ただし、より正確にいうと「離職前の2年間のうち、11日以上勤務した月が12カ月以上ある」ことが条件です。なので、例えば、「半年間働いて半年間休職してから、また復帰して半年働いた」というケースでも失業保険は支給されます。

一般離職者の場合は、退職前の2年間のうち、1年間以上雇用保険に加入していれば受給可能-図

一方、特定受給資格者と特定理由離職者の場合は、6カ月以上雇用保険に加入していれば失業手当が支給されます。(こちらも正確にいえば、「離職前の1年間のうち、11日以上勤務した月が6カ月以上」であれば、支給対象です。)

つまり会社が倒産したり、リストラされたり、ケガで働けなくなった場合は、かわいそうなので条件が少し緩和されるわけですね。

特定受給資格者、特定理由離職者の場合は、退職前の1年間のうち半年以上、雇用保険に加入していればOK-図

ただし一時的にケガや病気、育児や介護のために離職した場合でも、「現在は仕事への復帰を希望している」「再度、働こうとする意思と能力がある」場合でなければ、失業保険は受給できません。

失業保険の手当はあくまで「再就職のための支援資金」だからです。

失業保険の支給金額について

さて、気になるのは「いくら支給されるのか?」だと思います。

これは、その人の会社員時代の(1)月収、(2)年齢、の2つの条件によって、当時の日給の50~80%の範囲で決まるのですが、結構、計算式が複雑で面倒くさいです。その割には、最終的には上限やら何やらがあって、結局のところ月10万円~20万円の範囲におさまります。

なので大体、月10~20万円くらいと思っておけばいいと思います。

一応、計算方法としては、まず退職前6カ月(半年)に支給された賃金総額を計算します。
ここには残業代は含めていいですが、賞与やボーナス、退職金は含めてはいけません。そして、その賃金総額を180日で割ります。つまり1日あたりの賃金を計算するわけです。

まず、会社員時代に過去6カ月間で支給された給与総額から、1日あたりの賃金を計算する。賞与や退職金は除く。-図

賃金日額が計算できたら、それを以下の表に当てはめてください。
表に記載されている「給付率」を掛けた金額が、1日あたりの失業手当として支給されます。
例えば、賃金日額が1万円で給付率が50%なら、1日あたりの失業手当は5000円です。

失業手当の計算方法

離職時の年齢 会社員時代の賃金日割 給付率 失業手当(月間)
29歳以下 2320円~4639円 80% 5万5680円~11万1330円
4640円~11739円 50~80% 11万1360円~17万6100円
11740円~12879円 50% 17万6100円~19万3200円
12880円~ 19万3200円(上限)
30歳
~44歳
2320円~4639円 80% 5万5680円~11万1330円
4640円~11739円 50~80% 11万1360円~17万6100円
11740円~14309円 50% 17万6100円~21万4650円
14310円~ 21万4650円(上限)
45歳
~59歳
2320円~4639円 80% 5万5680円~11万1330円
4640円~11739円 50~80% 11万1360円~17万6100円
11740円~15739円 50% 17万6100円~23万6100円
15740円~ 23万6100円(上限)
60歳
~64歳
2320円~4639円 80% 5万5680円~11万1330円
4640円~10569円 45~80% 11万1360円~14万2680円
10570円~15019円 45% 14万2680円~20万2770円
15020円~ 20万2770円(上限)

離職時の年齢が29歳以下
賃金日額 給付率 月の支給額
2320円~ 80% 5万5680円~
11万1330円
4640円~ 50~80% 11万1360円~
17万6100円
11740円~ 50% 17万6100円~
19万3200円
12880円~ 19万3200円
(上限)
離職時の年齢が30~44歳
賃金日額 給付率 月の支給額
2320円~ 80% 5万5680円~
11万1330円
4640円~ 50~80% 11万1360円~
17万6100円
11740円~ 50% 17万6100円~
21万4650円
14310円~ 21万4650円
(上限)
離職時の年齢が45~59歳
賃金日額 給付率 月の支給額
2320円~ 80% 5万5680円~
11万1330円
4640円~ 50~80% 11万1360円~
17万6100円
11740円~ 50% 17万6100円~
23万6100円
15740円~ 23万6100円
(上限)
離職時の年齢が60~64歳
賃金日額 給付率 月の支給額
2320円~ 80% 5万5680円~
11万1330円
4640円~ 45~80% 11万1360円~
14万2680円
10570円~ 45% 14万2680円~
20万2770円
15020円~ 20万2770円
(上限)

参考資料:厚生労働省「雇用保険制度

上記の表では、実際の生活がイメージしやすいように、失業手当を月額に換算(1月30日計算)してあります。が、本来は失業手当の支給額は日割です。

例えば、33歳で退職前6カ月の給与が220万円だった方(賃金日額は1万2222円)であれば、給付率は50%ですから、失業手当の日額は6111円です。

失業手当は、4週間に1度おこなわれる失業認定日(後述)のたびに支給されますので、28日分(4週間分)がまとめて口座に振り込まれます。そのため、先の例であれば、(6111円 × 28日 = 17万1108円)が、実際に口座に振り込まれる金額になります。

失業認定日のたびに28日分が支給されるので1回の支給額は17万1108円-図

なお、給付率が「50~80%」「45~80%」となっているところは、かなり複雑な計算式を要します。詳しい計算式を知りたい方は、以下をご覧ください。

給付率の計算方法(※クリックタップで開閉)

失業保険の支給期間について

さて、次に気になるのが「いつまで失業保険を貰えるのか?」ではないでしょうか。

受給できる期間は、90日間が目安です。ただし実際には、退職理由、雇用保険に加入していた期間、年齢、などに応じて90日~240日の間で差があります。

以下、一般離職者の場合と、それ以外(特定受給資格者/特定理由離職者)にわけて説明します。

一般離職者の場合

年齢 雇用保険の加入期間 失業手当の支給期間
共通 1年~10年未満 90日
10年~20年未満 120日
20年以上 150日

全年齢共通
雇用保険の加入期間 失業手当の支給期間
1年~10年未満 90日
10年~20年未満 120日
20年以上 150日

特定受給資格者、特定理由離職者の場合

年齢 雇用保険の加入期間
1年未満 5年未満 10年未満 20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
35歳未満 90日 90日 180日 210日 240日
45歳未満 90日 90日 180日 240日 270日
60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日

30歳未満の場合
雇用保険の加入期間 失業手当の支給期間
1年未満 90日
1年~5年未満 90日
5年~10年未満 120日
10年以上 180日
30歳~35歳未満の場合
雇用保険の加入期間 失業手当の支給期間
1年未満 90日
1年~5年未満 90日
5年~10年未満 180日
10年~20年未満 210日
20年以上 240日
35歳~45歳未満の場合
雇用保険の加入期間 失業手当の支給期間
1年未満 90日
1年~5年未満 90日
5年~10年未満 180日
10年~20年未満 240日
20年以上 270日
45歳~60歳未満の場合
雇用保険の加入期間 失業手当の支給期間
1年未満 90日
1年~5年未満 180日
5年~10年未満 240日
10年~20年未満 270日
20年以上 330日
60歳~65歳未満の場合
雇用保険の加入期間 失業手当の支給期間
1年未満 90日
1年~5年未満 150日
5年~10年未満 180日
10年~20年未満 210日
20年以上 240日

 
例えば、26歳の方が勤続年数3年で自己都合により退社した場合の失業手当の支給期間は3カ月です。一方、52歳の方が27年間勤めていた会社を解雇された場合の、失業手当の支給日数は330日(およそ1年間)です。

このように長く勤務していた方や、会社都合で解雇されたり方のほうが、失業保険で手厚く保障を受けられることがわかります。

失業保険の受給を開始するまでに4カ月かかる?

ここが失業保険を理解するために、非常に重要なポイントです。
一般離職者(正当な理由なく自己都合で退職した方)の場合は、実際に失業保険が給付されるまでに、3カ月間、待たなければならないという制度が存在します。

ご存知の方も多いと思いますが、これを給付制限の期間といいます。

給付制限・・・一般離職者の場合、3カ月間は失業保険を受給できない期間がある。

これは何度も繰り返しで、自己都合で退社しては失業保険を受給する、という不正を防ぐためです。
一般離職者の場合、理屈上は、1年間勤務してから退職すれば、そのたびに3カ月間の失業保険が受給できます。これを悪用されてしまうと、極端な話、1年間働くたびに3カ月の休暇が貰えることになってしまいます。

もちろん、そんなに退職していたら転職でも不利になりますし、実際にそんなことをする人はいないと思いますが、一応、制度上もそういったことが出来ないように、「正当理由のない自己都合での退職の場合は、実際に支給を開始するまでに3カ月の空白期間をつくる」というルールになっています。

退職した方の大半が失業手当を貰わずに転職する理由

このような理由で、自己都合退職の場合は、退職してから3カ月間(後述する待機期間なども含めると実質4カ月間)は失業手当が支給されません。無収入になります。

そのため、多くのサラリーマンの方が、失業保険を受給することなく、次の転職先を決めて就職していきます。3カ月もあれば、大体、次の職場も見つかっちゃいますからね。

受給資格が決定した後、3カ月間は失業手当が貰えない。そのため待たずに転職する方が大半-図

ちなみに、給付制限の対象になるのは一般離職者だけです。

例えば、ケガや病気で退職を余議なくされた方(特定理由離職者)や、会社が倒産してリストラされた方(特定受給資格者)の場合は、すぐに失業手当の受給を開始できます。

大体の目安としては、(1)給付制限のない方の場合は、離職日から1カ月での受給開始、(2)給付制限のある方は、離職から4カ月での受給開始、となります。





失業保険を受給するまでの流れとスケジュール

離職した日から、実際に失業保険を受給するまでのスケジュールは、以下です。

失業保険の受給までの流れとスケジュール-図

以下、全体の流れを大まかに説明します。

全体の流れ

用語 内容 日程例
受給資格決定日 最初にハローワークに行って失業保険の受給申請をする。この日に受給資格や退職理由が確認される。受給条件に問題がなければ、その日のうちに受給資格決定がなされる。 8月4日
待機期間 受給資格決定の日から7日間を「待機期間」という。この期間中は、失業保険は受給できない。本当に次の転職先が決まっていないことを確認するための空白期間。 8月10日
受給説明会 別名で「雇用保険受給説明会」「初回講習」とも言う。失業保険を受給するためには、その期間中、決められた回数の求職活動を行う必要がある。その求職活動の方法や、不正受給についての注意説明等がなされる。 8月11日
初回
失業認定日
「失業状態であること」を認定する日。28日(4週間)ごとに設定される。この失業認定日の時点で次の就職先が決まっていなければ、失業手当が受給できる。ただし給付制限のある方は、この時点ではまだ受給できない。どちらにしても出席は必要。 9月1日
給付制限 一般離職者(自己都合の退職で、かつ正当理由のない方)は、待機期間が終了した日から3カ月間が、給付制限期間となる。この期間中は失業手当は受給できない。またこの期間中に2回以上の求職活動を行う必要がある。 11月10日
2回目
失業認定日
給付制限のある方は、給付制限期間の終了後、最初の失業認定日の時点でまだ「失業状態」であれば、ようやく失業手当が支給される。支給されるのは、給付制限期間終了の翌日以降(11月11日~)の分。 11月24日
振込日 失業認定日からおよそ5営業日以内に、指定した金融機関の口座に振り込まれる。初回は日割計算になるが、2回目以降は満額(28日分)が支給される。 11月28日

受給資格決定日
日程例 8月4日
内容 最初にハローワークに行って失業保険の受給申請をする。この日に受給資格や退職理由が確認される。受給条件に問題がなければ、その日のうちに受給資格決定がなされる。
待機期間
日程例 8月10日
内容 受給資格決定の日から7日間を「待機期間」という。この期間中は、失業保険は受給できない。本当に次の転職先が決まっていないことを確認するための空白期間。
受給説明会
日程例 8月11日
内容 別名で「雇用保険受給説明会」「初回講習」とも言う。失業保険を受給するためには、その期間中、決められた回数の求職活動を行う必要がある。その求職活動の方法や、不正受給についての注意説明等がなされる。
初回失業認定日
日程例 9月1日
内容 「失業状態であること」を認定する日。28日(4週間)ごとに設定される。この失業認定日の時点で次の就職先が決まっていなければ、失業手当が受給できる。ただし給付制限のある方は、この時点ではまだ受給できない。どちらにしても出席は必要。
給付制限
日程例 11月10日
内容 一般離職者(自己都合の退職で、かつ正当理由のない方)は、待機期間が終了した日から3カ月間が、給付制限期間となる。この期間中は失業手当は受給できない。またこの期間中に2回以上の求職活動を行う必要がある。
2回目失業認定日
日程例 11月24日
内容 給付制限のある方は、給付制限期間の終了後、最初の失業認定日の時点でまだ「失業状態」であれば、ようやく失業手当が支給される。支給されるのは、給付制限期間終了の翌日以降(11月11日~)の分。
振込日
日程例 11月28日
内容 失業認定日からおよそ5営業日以内に、指定した金融機関の口座に振り込まれる。初回は日割計算になるが、2回目以降は満額(28日分)が支給される。

 
待機期間というのは、受給資格決定の直後に、「本当に働いていません」「まだ次の転職先は決まっていません」ということを確認するための空白期間です。既に次の転職先が決まっている人が、失業保険を不正に受給するのを防ぐことが目的です。

この待機期間と給付制限を、たまに混同される方がいますが、全く別のものです。
待機期間は、自己都合退職の方、会社都合退職の方、どちらも同じように設けられています。この7日間は、失業手当を受給することはできませんし、アルバイトやパートをすることもできません。

では次に、最初の「ハローワークに受給申請に行く」ところをもう少し掘り下げて解説します。

まずはハローワークに行って離職票を提出する

失業保険の給付を受けるためには、会社を退職したことを証明する「離職票」という書類2枚が必要です。離職票は、退職してから10日後くらいに会社から送られてきます。

以下のような2枚の書類です。

離職票は2枚の用紙で、退職理由や給与額等が記載されている。退職後に会社から交付される-図

離職票

離職票の種類 内容
離職票-1 「離職票-1」は、失業手当を振り込んで貰うために、振込先の金融機関や口座番号などを指定して記入するための用紙です。
離職票-2 「離職票-2」は、会社が退職時にハローワークに提出している「離職証明書」と同じ内容のものです。会社側が職安に申告した「退職理由」「過去6カ月間の給与額」が記載されています。
離職票-1
「離職票-1」は、失業手当を振り込んで貰うために、振込先の金融機関や口座番号などを指定して記入するための用紙です。
離職票-2
「離職票-2」は、会社が退職時にハローワークに提出している「離職証明書」と同じ内容のものです。会社側が職安に申告した「退職理由」「過去6カ月間の給与額」が記載されています。

 
すでに述べたように、離職票-2に記載されている「退職理由」と「過去6カ月の給与額」を元に、失業手当の受給額が決まります。つまり、給与額や退職理由は自己申告ではありません。会社側が事前にハローワークに申告します。

「離職票-1」「離職票-2」は、どちらも失業保険を受給するために必要なものです。もし手元にない場合は、必ず会社に請求して発行して貰うようにしてください。

離職票を会社から貰っていない場合

会社側は、元従業員から請求を受けた場合、離職票を発行する義務があります。
しかし逆にいえば、本人が「いらない」といえば、離職票を発行する義務はありません。

ほとんどの会社はわざわざ請求しなくても、退職後に離職票を送ってくれます。
あるいは退職前に「離職票はいるか?」と確認されることが多いです。

しかし稀に、会社が勝手に「離職票は不要だろう」と判断して発行してくれないことがあります。
特に意外と多いのが、「次の転職先が決まっている」と嘘をついて退職したケースです。

基本的に離職票は、失業手当を受給する目的以外に使用しません。
そのため、既に次の転職先が決まっているのであれば、「離職票は要らないだろう」と勝手に判断されてしまう可能性があります。

転勤先が決まっていると嘘をついていると、離職票がてっきり要らないと誤解される場合も-イラスト

もちろんこの場合でも、後から本人が「やっぱり離職票は要ります」といえば、会社には発行義務があります。

離職票の発行の仕組み

離職票というのは、会社が発行するものではなく、職安(ハローワーク)が発行するものです。
会社はまず職安に「離職証明書」を提出し、職安に離職票を発行して貰って、それを元従業員に交付します。結構、手続きが面倒くさいのです。

離職票発行の流れ 1.職場がハローワークに「雇用保険資格喪失届」と「離職証明書」を提出、2.ハローワークが離職票を発行、3.会社が離職票を退職者に送付

もし離職票が不要であれば、会社としては、離職証明書を提出する必要もありませんし、ハローワークまでわざわざ離職票を取りに行く手間も省けます。

そのため、会社によっては面倒くさがって「転職が決まってるなら離職票は要らないでしょ」と言ってくるかもしれません。しかし別に理由を説明する必要はありません。

理由はともかく、会社側は元従業員が請求すれば、離職票をすぐに交付する義務があるのです。
ですので、「必要なので発行してください」とだけ言えばOKです。どうしても発行してくれない場合は、ハローワークの窓口に相談してください。





「失業認定日」を理解すれば、失業保険の仕組みがわかる

失業保険の仕組みを理解する上で、最も重要なのが「失業認定日」です。

失業認定日とは、「その日の時点で被保険者が失業状態であること」を認定する基準日のことです。つまり、失業認定日の時点で「失業状態」であれば、失業手当が貰えます。これは先ほども説明した通りです。

失業認定日の時点で失業状態であれば、失業手当が貰える-図

「失業状態」とは、具体的には、「就職する能力と意思があって、努力もしている(就職活動をしている)が、まだ就職できていない状態」のことをいいます。つまり失業認定されるためには、単に職に就いていないというだけでなく、「積極的に就職活動をしている」ことの証明が必要です。

失業認定日は、28日サイクル(4週間毎)で設定されています。
そのため、失業保険の受給者は、支給期間中、28日ごとにハローワークに行って「就職活動しています」「でもまだ就職できてません」ということを報告し、毎回、失業認定をして貰わなければなりません。

先ほど、失業保険の支給期間は、およそ90~150日間と説明しました。
しかしこれは、あくまで「最長で支給される日数」です。実際には、28日ごとに審査が行われ、失業状態だと認定された日数分だけその都度、失業手当が支給されます。

寝てても失業手当が支給されるわけではないのです。

支給期間中も、失業認定日
のたびにハローワークに行って失業認定して貰う-図

通常の失業認定日の基本ルールは3つ

まず、失業認定日の基本ルールを確認しましょう。
通常の失業認定日(初回を除いた2回目以降の失業認定日)の基本ルールは、以下の3つです。

  • 失業認定日は28日(4週間)ごとのサイクルで設定される。
    前回が9月1日(木)であれば、次の認定日は9月29日(木)
  • 失業認定日に失業状態が認定されると、前回の失業認定日から
    今回の失業認定日までの失業手当が「後払い」で支給される
  • 失業認定されるためには、前回の失業認定日から今回の失業認定日までに、
    最低2回以上、求職活動をしなければならない

 
そのため、例えば、失業保険の受給期間が3カ月であれば、その期間中は「求職活動2回 ⇒ 失業認定日 ⇒ 求職活動2回 ⇒ 失業認定日 ⇒ 求職活動2回・・・」をずっと繰り返すことになります。

「求職活動」とは具体的に何をすればいいのか

「求職活動」が具体的に何を指すかは、自治体によって異なります。

本当に緩いところだと、「ハローワークに行って、設置されているパソコンで数分間、求人検索をする。気になる求人票があれば、数枚プリントアウトする。あとは求職活動アンケートを貰って帰る」程度で、求職活動実績と認められることもあります。

しかし基本的には、「履歴書を送って求人に応募する」「実際に採用面接に行く」といった程度の活動が必要です。この辺りは、雇用保険受給説明会でしっかり解説がありますので、必ず確認しておきましょう。

初回の失業認定日だけは例外で、求職活動は不要

このように、失業認定日までに「最低2回以上、求職活動をする」というのが、失業保険を受給する条件です。

しかし初回の失業認定日だけは例外です。

初回の失業認定日の場合は、「求職活動は1回以上」で構いません。さらに「受給説明会(初回講習)への参加を1回の求職活動として報告」できます。つまり、まだ実際の就職活動をしていなくても、説明会に参加していれば、初回は失業認定されます。

初回の失業認定日までは、雇用保険受給説明会に参加していればOK。-図

給付制限がない方(会社都合での退職の方)の場合は、初回の失業認定日のあと、すぐに1回目の失業手当が支給されます。そのため、最初の失業手当の振込までは、実質的に就職活動の報告は不要です。

一方、給付制限がある方(自己都合での退職)の場合は、給付制限後の2回目の失業認定日で、はじめて失業手当が支給されます。

この2回目の失業認定日までに、合計3回以上の求職活動の実績が必要です。
もちろん、そのうち1回は受給説明会への参加が含まれますので、給付制限期間の3カ月の間に、あと2回、求職活動をすればいいことになります。3カ月で2回なので、結構、時間には余裕があります。

一般離職者の場合は、給付制限明けの次回失業認定日までに、受給説明会+2回以上の求職活動が必要-図

ちなみに給付制限の期間中は、失業手当の受給はできませんが、ハローワークに申告すれば、一定範囲でのパートやアルバイトは認められます。

さすがに「3カ月間、全く働いてはいけない」となると生活できない方もいますからね。

ただし一定期間以上、継続して就労していると「就職した」と見なされて、失業手当が貰えなくなります。一般的には、「週20時間まで」が1つの目安ですが、どの程度のパートなら可能かは、必ずハローワークに確認してください。

また、待機期間(7日間)では、アルバイトやパートは一切禁止です。
混同しないようにしてください。





初回の失業手当の支給額は、意外と少ないので注意

前述のように、失業手当というのは「失業状態と認定された期間分の後払い」です。

そのため、初回の失業認定日では、いきなり1カ月分(28日分)が支給されるわけではありません。これを誤解して失業手当に期待していると、「思ってたより振込額が少なくて生活できない!」ということになりかねません。注意してください。

給付制限のない方

給付制限がない方の場合、初回の失業認定日で支給される金額は、「待機期間終了の翌日」から「初回の失業認定日の前日」までの失業手当です。

初回の失業認定日は、最初にハローワークで申込みをした日(受給資格決定日)の4週間後です。そこから待機期間の分を差し引くので、初回の支給額はおよそ20日分程度になります。

初回の振込額は、待機期間の分が支給されないので少なくなる-図

もちろん、次の失業認定日からは満額(28日分)が支給されます。

給付制限のある方

給付制限がある方の場合、初回の失業認定日で支給される金額は、「給付制限の期間終了の翌日」から「次の失業認定日の前日」までの失業手当です。

こちらはさらに短く、初回の支給額はおよそ10日分程度しかありません。

理由は、給付制限の期間がピッタリ3カ月なのに対して、失業認定日のサイクルは28日だからです。つまり給付制限の期間中に1カ月につき3日ずつ認定日の周期がズレるので、「給付制限の終了日~次の失業認定日」までの期間が10日程度、短くなるのです。

一般離職者の初回振込額-周期がズレるので、初回の振込額は10日分程度しかない-図

もちろん、次の失業認定日からは満額(28日分)が支給されます。
 

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