離婚すると専業主婦でも1/2の財産分与を請求できる
離婚をすると、夫婦の片方はもう一方に対して財産分与を請求できます。通常は、妻が夫に財産分与を請求することが多いはずです。この財産分与は、浮気や不貞などの離婚理由とは一切関係ありません。また分与割合は、夫婦で築いた財産の貢献度(寄与率)に応じて決定されますが、外で働いているサラリーマンの夫と、家事や育児をする専業主婦との貢献度の割合を、客観的に算定することは難しいので、裁判では原則1/2ずつと判断されます。
離婚するときって、奥さんが旦那さんに財産分与を請求できると思うんだけど、これって奥さんに浮気などの離婚原因(有責事由)がある場合でも、貰えるものなの?
奥さんが家庭を支えることで貢献していた分の金額が、夫の稼いだ財産のうち何割に相当するかっていうのは、ちょっと計算のしようがないような・・・。
- 妻が専業主婦でも夫が高収入でも、財産分与は原則1/2ずつになる
- ただし夫が経営者、開業医など特殊な才能で莫大な資産を築いた場合は例外
- 結婚前からお互いが持っている財産は「特有財産」となり財産分与の対象外
- 夫婦が共働きで財布(預金)も別々の場合は、基本的には財産分与の対象外
- 将来の退職金は支給時期が近い場合は、財産分与の対象となる場合がある
1.財産分与の対象となる共有財産と、対象にならない特有財産
2.借金などの「負の財産」は共有財産の分割対象になる?
3.財産分与の分与割合(夫婦の寄与率)はどう決めるの?
4.財産の流出や持ち出しがあった場合の「持ち戻し」とは?
5.慰謝料的財産分与や扶養的財産分与って何が違うの?
財産分与は、共有財産を寄与度に応じて分割する手続き
財産分与とは、「夫婦2人の共有財産を、それぞれの寄与度(率)に応じて分割する手続き」のことです。まずこれが大前提なので、知っておいてください。
面倒なので便宜上、慰謝料の請求とあわせて清算することはあります(慰謝料的財産分与といいます)が、そもそもの法律上の根拠としては、財産分与の請求権と、慰謝料や養育費などの請求権は全く別のものです。
以下が、離婚時の財産分与の根拠となる条文です。
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。(民法768条)
そのため、離婚原因を作ったのが夫婦のどちらであれ、浮気の慰謝料や養育費の支払い額がいくらであれ、それらの請求とは関係なく、財産分与の請求は可能です。婚姻期間中に築いた財産は夫婦2人のものなので、多く財産を持っている側(夫)は、財産を持っていない側(妻)に財産を渡さなければなりません。
なお、浮気の慰謝料請求や、養育費の請求額については以下の記事を参考にしてください。
財産分与の対象となる財産のことを「共有財産」といいます。一方、財産分与の対象とならない財産のことを「特有財産」といいます。
例えば、夫婦それぞれが結婚前から持っていた財産は「特有財産」になり、財産分与の対象とはなりません。そのため、元々不動産などの高額な資産を持っているお金持ちの夫と結婚して、その後、すぐに離婚をしても夫の財産の半分を貰うことはできません。当たり前ですね。
その他、特有財産と共有財産の違いは以下になります。
特有財産 | 共有財産 |
---|---|
独身時代(結婚前)から保有している財産 別居後(婚姻生活の破綻後)に取得した財産 結婚中に、個人的に贈与された財産 結婚中に、個人的に親族から相続した財産 |
婚姻中に形成した財産は原則すべて共有財産 |
特有財産 |
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独身時代(結婚前)から保有している財産 別居後(婚姻生活の破綻後)に取得した財産 結婚中に、個人的に贈与された財産 結婚中に、個人的に親族から相続した財産 |
共有財産 |
婚姻中に形成した財産は原則すべて共有財産 |
「共有財産にあたる財産はどれか?」を把握する方法は非常にシンプルです。結婚中に増やした財産、結婚中に得た財産は、原則すべて共有財産だからです。
例えば、夫婦の預金口座で婚姻時より増えた分、結婚中に購入した住宅や車、家にある家財道具や美術品、加入した生命保険や学資保険などは、どちらの名義か、どちらが購入したかに関係なく、原則、共有財産になります。
結婚生活中(別居するまで)に取得した、預貯金、現金、保険の解約返戻金、不動産、株や有価証券、自動車、家財道具、美術品、将来の退職金、年金受給権
逆に、例外になるのは「個人的に贈与を受けたり相続した財産」です。これらは夫婦で協力して形成した財産ではありませんので、婚姻中に得た財産であっても共有財産にはなりません。例えば、結婚中に夫が相続した不動産は、財産分与の対象にはなりません。
また、共有財産になるのは実質的に婚姻関係が破綻するまでに夫婦2人で取得した財産です。離婚が成立した日までではありません。例えば、途中で結婚生活が破綻して別居していれば、(戸籍上は結婚したままでも)別居後のお互いの財産は共有財産にはなりません。
特有財産であることの立証責任
繰り返しますが、離婚時の財産には「特有財産」と「共有財産」があり、共有財産はすべて財産分与の対象となります。「これは特有財産だから、財産分与したくない!」と調停や裁判で主張する場合は、その証明は自分でしなければなりません。
例えば、「預金口座のうち300万円は独身時代から私が貯めていたものだから、特有財産です」という主張をするのであれば、過去の(婚姻時の)通帳の預金明細や残高を提出して証明することになります。
特有財産であることを自分で証明できない場合には、残念ながらその財産は「夫婦の共有財産だ」と推定されます。(民法762条2項)
2項 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。(民法762条2項)
夫婦が共働きで財布も別々の場合
夫婦が共働きで、それぞれの能力に応じて稼いだ収入を別々の個人名義の預金口座で管理している場合には、わざわざこれを合算して2分割するのも不合理ですから、この場合は性質的に「特有財産」と判断されます。そのため、共働きでそれぞれが自分の名義で貯蓄している場合は、財産分与の必要はありません。
例えば、平成6年5月31日の東京家庭裁判所判例では、「夫が画家、妻が作家としてそれぞれ婚姻前から独立して仕事をし、収入は個人名義の口座で管理して、婚姻生活の費用は必要に応じて分担して支出していた」というケースについて、それぞれの個人名義の預金口座や、著作物の著作権、などを特有財産と判断しました。
ただし、婚姻生活中に夫婦のどちらかが一方的に生活のための費用を支出していたり、あるいは育児休暇等により、妻に働けない期間があった場合には、その分については調整が必要になります。また住宅などの共有財産については、財産分与が必要です。
夫婦のどちらか一方が負っている借金等の債務については、「夫婦共同生活の中で生じたもの」については財産分与の対象になります(東京地裁 平成11年9月3日判決)。
最も典型的なものは住宅ローンですね。結婚生活中に、夫婦2人の居住用のために購入した住宅(マイホーム)で、離婚時に売却した後もローンが残ってしまった場合は、残りの債務は夫婦2人で負担しなければなりません。
ただし金融機関との関係でいえば、債務者は変わりません。例えば、夫名義で契約した住宅ローンで、売却後に500万円の債務が残ってしまった場合でも、あくまで金融機関に対して借金を負っているのは夫だけです。なので銀行に「半分は元妻に請求してくれ」と言うことはできませんが、夫から妻に負担分を請求(求償)することはできます。
住宅の財産分与の問題はかなりややこしいので、別記事にまとめています。参考にしてください。
また他にも、妻が生活費のためにキャッシングで借りたお金なども、財産分与の対象になります。ただしこれも、妻から夫に半分を請求することは可能ですが、消費者金融に対して直接、返済義務を負っているのは妻だけです。
また個人的な浪費や遊興のために借りたお金は、財産分与の対象にはなりません。例えば、夫が結婚中にパチンコや競馬のために借りたお金を、財産分与で妻が負担する必要はありません。
結婚前から保有している財産は、「特有財産」として財産分与の対象にはなりません。しかし例えば、結婚前から保有している不動産から発生する賃料収入や、結婚前から保有している株の配当、運用利益などはどうでしょうか?
こういった収入を「特有財産の果実」といいますが、「特有財産の果実も、また特有財産になるか?」については、さまざまな意見があり、一概には言えません。
例えば、特有財産である不動産や株から発生する収益を、全く別の預金口座で管理していて「家計に一切充てていない」という場合、結婚中の生活費はすべて別口座の給与所得から支出していた、という場合は、特有財産として認められる可能性があります。
これは昭和57年7月26日の東京高裁の判決が理由です。この判決は、財産分与ではなく、婚姻費用の分担額の算定について争そわれた事例ですが、「特有財産の果実が特有財産になるか?」という点での考え方は同じです。
東京高裁は、「婚姻から別居に至るまでの間、…夫が勤務先から得る給与所得によって家庭生活を営み、…賃料収入は、直接生計の資とはされていなかったものである。…別居した妻としては、従前と同等の生活を保持することが出来れば足りると解するのが相当である」として、婚姻費用算定において、特有財産である不動産からの賃料収入を、夫の収入に含めない考えを示しました。
この考え方に従うと、特有財産からの配当や賃料収入などを完全に別口座で管理していて、家計用の支出や給与口座と全く混ざっていない場合は、特有財産を主張できる余地はあります。ただしケースバイケースです。
将来発生する債権については、原則として財産分与の対象とはなりません。財産分与はあくまで、離婚時に持っている共有財産を清算する手続きだからです。
ただし退職金債権のように、離婚前の原因によって将来発生する債権については、妻にも一部を受け取る権利が生じる可能性があります。具体的には、以下の2つの要件を満たす場合は、将来の退職金も共有財産として財産分与の対象にすることができます。
- 将来の退職金の支給時期が近いこと。長くても10年以内
- 退職金支給がほぼ確実であること。大手上場企業や公務員など。
これを難しい言葉でいうと、「近い将来に受領しうる蓋然性(その事柄が実際に起こるか否かの確実性の度合)が高い場合」というのが、裁判所が退職金を共有財産として認める場合の判断基準になります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
財産分与の分与割合(夫婦の寄与率)はどう決めるの?
さて、財産分与の対象となる「共有財産」の範囲が定まったら、これを実際に夫婦で分割しなければなりません。この分割する割合のことを分与割合といいます。
この分与割合は、共有財産を形成するための夫婦の貢献度の割合(寄与率)によって決まります。
ただしこの分与割合は、冒頭から何度か述べているように、基本的には1/2ずつで決まりです。妻が専業主婦として育児や家事などを担っていた場合でも、内助の功が認められますので、婚姻中に夫が稼いだ財産の半分を財産分与で請求する権利があります。
夫としては「これは俺が優秀で能力が高かったから稼げたもので、半分も取られるのは納得いかない」と思うかもしれません。
しかし気持ちはわからなくもありませんが、多少、夫の収入が平均よりも高いといった程度の個別事情は、一般的に今の裁判では考慮されません。
細かいことを言い始めると、妻の家事や家計管理の能力が高いか低いか、精神的にどのくらい夫の支えになっていたか、妻が家庭を支えたことによる間接的な経済利益はいくらか、妻が家にいて働けなかった分の機会損失はいくらか、などをすべて数値化しなければならなくなりますが、そんなことは不可能だからです。
もちろん本人同士で、「夫6割、妻4割くらいが妥当だよね」と話し合って離婚協議が成立した場合には、それでも構いません。上記はあくまで調停や裁判で争そった場合の話です。
またサラリーマンの夫の収入が多少高いといった程度では、原則1/2ルールは変わりませんが、一部の特殊なスキルや才能により多額の資産を形成した場合には、夫婦の貢献度の割合が考慮される場合があります。以下、それについて解説します。
医師や弁護士のように、特に難易度の高い特殊なスキルや資格によって高額な資産を築いた場合には、共有財産についても夫の寄与率が高いと判断されやすくなります。
要は「結婚中に2人で協力して形成した財産」というよりも、「夫が結婚前に本人の努力で築いた特有財産(医師という資格)の貢献」が大きいと判断されるわけです。これも当然といえば当然ですね。
有名なのは、福岡高裁の昭和44年12月24日判決です。以下、一部引用します。
夫の財産が全部夫婦の協力により取得されたもので、しかも双方の協力の程度に甲乙がないような場合であれば、財産分与の額を定めるにあたり夫の財産の2分の1を基準とすることも確かに妥当であろうが、本件においては、一審被告(夫)が前示の如き多額の資産を有するに至ったのは、一審原告(妻)の協力もさることながら、一審被告(夫)の医師ないし病院経営者としての手腕、能力に負うところが大きいものと認められる・・・(略)
このケースは、病院経営者である夫の4億円近くの財産に対して、妻が半分の2億円近くの財産分与を請求して裁判をした事例です。
裁判所は、夫が4億円の財産を築いたのは、妻の協力も一部にはあるものの、本人の医師資格取得の努力や、病院経営の手腕によるところが大きいといった事情を考慮し、妻への財産分与額は2000万円が相当だ、という判断を示しました。
もう1つの典型例は、夫が会社の経営者で独自の商才によって莫大な資産を築いていた場合で、妻が一般的な専業主婦で夫の仕事にはそれほど関与していないケースです。
例えば、以下は会社の経営者である夫への財産分与で、妻の1/2の請求が認められなかったケースです。ただしあまり一般的なケースではないので、簡単な紹介に留めます。
東証一部上場企業のオーナーで220億円の資産を築いた夫への財産分与請求です。裁判所は妻の寄与率を5%相当として10億円の財産分与を命じました。
【参考外部リンク】高収入者高額資産家の財産分与
東京地裁判決 平成7年4月27日
不動産管理会社を経営して6億円相当の資産がある夫に対して、妻が半分の3億円の財産分与を請求したケースです。裁判所は「妻の貢献度は3割程度」として現金1億円と不動産一部の財産分与を命じました。
【参考外部リンク】高収入者高額資産家の財産分与
いずれも夫が経営者として数億円以上の資産を形成している極端なケースなので、あまり参考になるかはわかりませんが、このレベルであれば、さすがに一般の主婦である妻に1/2の財産分与を認めるのは妥当ではない、という判例が示されています。
逆にいえば、このような極端な事例でさえも、一定の割合で妻の貢献が認められて数億円単位の財産分与が命じられているわけですから、よほど特殊な技能や莫大な資産でない限り、やはり原則1/2ルールが適用される、と考えて問題ないはずです。
株やFXなどのトレードによる運用も、独自の才覚と言えそうな気がしなくもありません。しかし短期売買やデイトレードなど、結婚後に株や外貨を売り買いして稼いだ分については、やはり妻の内助の功が認められますので、半分ずつか、それに近い割合での財産分与が認められることになります。
その点では、高額所得のサラリーマンと基本的な考え方は変わりません。
ただし結婚前から夫が保有していた株や不動産の資産額がそもそも大きく、その特有財産の運用益で大きく稼いでいる場合には、妻がその財産管理に直接的に貢献していない限り、夫の財産分与での寄与率が高くなる可能性があります。
これは夫の独自のスキルや才覚が認められたというよりは、そもそも結婚前に保有している「特有財産」の貢献が大きいと認められる、という話ですね。
財産の流出や持ち出しがあった場合の「持ち戻し」とは?
あくまで例外的なケースではありますが、離婚前に夫婦のどちらかが財産を持ちだしたり、ごっそり使いこんでしまった場合には、一部の財産の持ち戻しが認められる可能性があります。
例えば、夫婦の共有財産が800万円あったにも関わらず、妻が夫に無断で200万円を持ちだして(生活費に関係のないことに)費消してしまったとします。この場合、普通に財産分与をすると、残りの600万円の共有財産を妻300万円、夫300万円で1/2ずつ分割することになります。
しかし夫としては、よく使途のわからない200万円ものお金の流出があるのに、その分を無視して残りの600万円の財産の半分を持っていかれる、というのは納得いかないでしょう。
このような場合、もし持ち戻しが認められれば、夫婦の共有財産は、財産流出前の800万円として計算することができます。つまり計算上は夫に400万円、妻に400万円の財産分与となり、そのうち200万円については既に妻に財産分与されたものとして扱うことができるため、残りの600万円の共有財産の分配は、夫が400万円、妻が200万円となります。
裁判でこのような「持ち戻し」が認められるケースは稀ですが、特に妻に「明らかに生活水準に見合わない浪費」があった場合や、「勝手に株やギャンブルなどで使いこんでしまった場合」、「結婚前の借金の返済に夫婦の共有財産を充てた場合」などは、持ち戻しの可能性があるとされています。
以下、関連する弁護士ドットコムさんの質問がありましたので、リンクを紹介しておきます。
ただしこの持ち戻しという概念は、そもそもは遺産相続で定められたもの(民法903条「特別受益」)であり、財産分与では法律上、明記されているわけではありません。
過去に東京高裁で持ち戻しを認めた判例はありますし、財産分与について定めた民法768条3項の「その他一切の事情を考慮して」という部分で「持ち戻しが可能」という解釈は可能とされていますが、あまり一般的なものではありません。
また上記のリンク先の解説にもあるように、裁判で持ち戻しを認めて貰うためには「夫婦の共同生活と無関係なことに費消された」ということを立証しなければなりませんが、その立証責任は夫側(財産を費消された側)にありますので、使途がわからない場合は難しいようです。実際には、法制度というよりは、調停での交渉材料の1つといった感じになるでしょう。
慰謝料的財産分与や扶養的財産分与って何が違うの?
さて、ここまで財産分与の基礎について解説してきましたが、ここまで解説したオーソドックスな財産分与の方法を「清算的財産分与」といいます。それぞれの夫婦の貢献割合に応じて、原則1/2ずつで財産を清算する方法のことですね。
一般的に財産分与といえばこの「清算的財産分与」のことを言いますし、法律的にも民法上の財産分与請求権というのは、この清算的財産分与に基づく請求権のことを言います。
ただ、実は財産分与には、この清算的財産分与以外にもあと2つの種類があります。「慰謝料的財産分与」と「扶養的財産分与」です。あまり意識する必要はないのですが、一応、財産分与について調べているとよく出てくる言葉なので、簡単に解説しておきます。
慰謝料的財産分与については、最初でも少し触れましたね。本来、「慰謝料請求権」(民法709条)と「財産分与請求権」(民法768条)は法律上も全く別の権利です。
しかし実際には、わざわざ別々に清算するのも面倒なので、財産分与と慰謝料請求をまとめて清算してしまうことがよくあります。
例えば、夫の不倫が原因で離婚するケースで、夫に対して200万円の慰謝料請求権がある場合、財産分与で夫が妻に200万円多く分与するようにすれば、慰謝料の問題と財産分与の問題がまとめて片付くわけですね。
このような財産分与の方法を慰謝料的財産分与といいます。
特に夫婦2人だけで離婚協議書を作成して合意をした場合には、そもそも「慰謝料請求権」と「財産分与」をキチンと切り離して協議していないケースも多いですが、双方が納得して合意していればそのような協議書でも当然、有効になります。
扶養的財産分与については、たまに誤解されることがありますが、子供の扶養とは関係ありません。子供の扶養はあくまで「養育費」の問題であり、夫婦の共有財産を分割する「財産分与」とは、性質的にも全く別の話です。
では「扶養的財産分与とは何なのか?」というと、これは「離婚後の妻の扶養を考慮した財産分与」のことです。
民法上、夫が離婚後の妻を扶養しなければならない義務はどこにもありません。離婚後は他人なので当然ですね。しかし、それだと今まで専業主婦で働いていなかった妻などは、いきなり経済的に不安な立場に置かれることになります。
「そのために財産分与で1/2の財産を渡してるんじゃないか!」と思う夫もいるかもしれませんが、1/2の財産を分与するのは、夫婦の共有財産の半分が当然に妻の財産だからです。夫が妻に恵んであげているわけではなく、もともと妻の分なのです。
扶養的財産分与とは、その「もともと妻の分である財産」に加えて、「今後、扶養義務がなくなり経済的に不安定な立場に置かれる」ことを考慮して多めに財産分与をすることをいいます。
最もこの扶養的財産分与は必ず認められるものではありません。離婚後の妻が経済的に困っていない場合や、既に独立して経済的に自立できている場合は必要ありません。
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