裁判に遠方で出頭できない時の電話会議システムでの和解

遠方で訴訟された裁判所に出頭できない場合には、前回の記事で紹介した「 移送申立て 」の方法の他に、電話会議による参加を裁判所にお願いする方法もあります。判決で白黒を付けるために争う場合には、法廷での口頭弁論期日には電話会議システムは使えませんので、最低でも一度は裁判所に出頭する必要がありますが、訴訟上の和解をしたい場合などは、弁論準備手続期日にして貰って電話会議だけで和解することも可能です。

関連記事「 簡易裁判所から呼出状が!出頭しないとダメ? 」とあわせて読むのがお勧めです。
遠方でも電話会議システムで裁判に参加できる?
ねえねえ、先生ー!
裁判所から訴状と呼出状が届いたけど遠方で出廷ができない場合で、もし 移送申立て(※) も却下された場合でも、電話会議っていうので遠隔から期日に参加する方法もあるって聞いたんだけど本当ー?
そういう制度はあるね。口頭弁論期日では電話会議システムは利用できないんだけど、弁論準備手続きであれば、裁判所が相当だと判断して許可してくれれば、電話会議での参加は可能だよ。弁論準備手続きでも、主張書面の提出や 裁判上の和解(※) もできるし。
弁論準備手続き・・・? なんか難しいな。。
つまり、「遠方で出頭できないので、期日を口頭弁論じゃなくて弁論準備手続きにして、電話会議で参加させてください」っていう上申書を裁判所に提出すればいいのかなー?
そうだね、裁判所書記官にも相談してみるといいよ。ただし簡易裁判所での訴訟の場合は、あまり弁論準備手続きはやらないから、主に地方裁判所の話かな。簡易裁判所の場合は、書面の提出だけで 擬制陳述(※) もできるから、最悪、欠席しても裁判は進められるし。
なるほどー。
ちなみに、代理人に弁護士さんが付いていないと電話会議システムは利用できないっていう話も聞いたことがあるんだけど、本人訴訟や応訴でも電話会議が利用できる可能性はあるのかなー?
うーん、微妙なところだね。最終的には裁判所の判断だけど、携帯電話とかだと「本人かどうかわからない」っていう理由で断られるケースも多いみたいだね。何らかの本人確認ができる場合は、許可される可能性はあるから、先に一度裁判所に相談したほうがいい。
  • 電話会議システムは、弁論準備手続期日または協議準備期日で利用できる
  • 弁論準備手続きは、争点整理を目的とした簡易的な弁論期日みたいなもの
  • 弁論準備手続きだけでも裁判上の和解はできるが、判決まで行くのは無理
  • 簡易裁判所でも弁論準備手続きはできるが、主には地方裁判所からが多い
  • 電話会議は弁護士事務所と裁判所での通話が多い。本人訴訟の例は少ない

電話会議システムは、口頭弁論期日には利用できない?

電話会議システムとは、決められた期日の指定時間に裁判所から被告側に電話をかけて、裁判所の会議室と遠隔の被告とを音声通話で繋ぐことで、音声会議によって裁判を進める方法をいいます。

どちらか一方が遠隔に住んでいるなどの正当な理由があって裁判所に出頭することが難しい場合に、裁判所が「必要だ」と判断して許可してくれれば、電話によって裁判手続きに参加することができるわけですね。

電話会議によって遠隔から期日参加できる-イラスト

なお、民事訴訟では、最低でもどちらか一方は期日に出廷していないと音声通話はできません。たとえば、原告が裁判所に出廷して、裁判官と原告とが会議室に揃っている状態で、会議室から被告側に電話をかけて当事者全員を音声で繋ぐかたちで、裁判手続きが進行されます。

ちなみに電話会議システムを利用する場合、裁判所の方からは三者通話が可能なやや特殊な装置を使って電話をかけます。

これにより裁判所側で複数人(裁判官や原告)が喋っても、それが電話先の被告側にも伝わり、また被告側が電話先で喋った内容も裁判所の会議室で、みんなが聞き取れるようになるわけですね。

電話会議は口頭弁論期日では利用できないので注意

基本的に、電話会議システムは口頭弁論期日では利用することができません。

「えっ!じゃあ意味ないんじゃないの?・・・」と思われる方もいるかもしれませんが、裁判手続きというのは、全てが法廷(口頭弁論期日)でおこなわれるわけではありません。

特に長引きそうな訴訟事件などは、最初の段階の争点整理(主張を書面で提出して陳述したり、証拠を整理したり)といった手続きは、会議室のラウンドテーブルで、弁論準備手続きとしておこなわれることも多いのです。

口頭弁論と弁論準備手続きの電話会議の利用

弁論準備手続き

弁論準備手続きとは、最初にガーッと両者の主張や争点、証拠などを洗い出して合理的に訴訟手続きを進めるための手続きです。口頭弁論期日と同じように、裁判所から期日が指定されて、その日に被告と原告の双方が出席します。準備書面が提出できる、期日に和解や訴訟の取下げや請求認諾ができる、といった点も口頭弁論期日と同じです。

 
口頭弁論期日と弁論準備手続期日は、どちらも書面で主張を陳述したり、話し合いで 裁判上の和解 をしたりすることもできますので、非常に似ています。証人を呼んで証人尋問することまではできませんが、書面での証拠(書証)の証拠調べなら弁論準備手続期日でも出来ます。民訴法170条2項

また口頭弁論期日は法廷で一般公開のもとでおこなわれるのですが、弁論準備手続期日は会議室などの小部屋で(一般的には)非公開でおこなわれるということです。そのため、ざっくばらんな話し合いもしやすく、裁判官の本音や考え方なども聞きやすくなります。

そして一番の違いは、電話会議システムは、口頭弁論期日では利用することができませんが、この会議室(小部屋)での弁論準備手続期日であれば、利用することができるというのがポイントです。(民訴法170条3項)

和解で終わらせるな
ら、弁論準備手続だけでも可能-図解

もちろん弁論準備手続きでは、和解によって裁判を終結させることも可能です。なので遠隔に住んでいる方が、電話会議システムを利用して裁判上の和解をしたいという場合は、原則、この弁論準備手続きが行われることになります。

民事訴訟法170条の条文をチェック(※クリックタップで開閉します)

判決で裁判の最後まで争いたい場合は出廷が必要

最初に述べたように、弁論準備手続きはあくまで「裁判での争点や証拠を整理する」手続きに過ぎません。

そのため、弁論準備手続きのなかで和解することはできますが、最後の判決まで持っていくことはできません。弁論準備手続きのなかで整理された当事者の主張は、最終的には口頭弁論期日において、法廷で陳述しなければならないからです。

【結果の陳述】

当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。
民事訴訟法173条

つまり、せっかく弁論準備手続において準備書面を提出して主張を述べたり、書証を提出したりしても、法廷での口頭弁論に出席しなければ、裁判の基礎資料とはならないわけですね。。

判決まで争うなら口頭弁論は必要になる

ただし簡易裁判所での訴訟であれば、口頭弁論の期日のほうも「擬制陳述」という他の制度を使うことで、書面だけ提出して欠席することは可能です。もちろん裁判官に「最低でも1度は出廷してください」と言われてしまう可能性はありますが、理屈としては、すべて欠席で裁判を進めることもできなくはありません。

参考記事
借金滞納で簡易裁判所から呼出状が!出頭しないとダメ?

 
(※補足)・・・そもそも実務上は、簡易裁判所ではあまり「弁論準備手続」はおこなわれません。それほど争点が複雑な事件が多くないからです。

一方、地方裁判所での裁判の場合は、2回目以降の口頭弁論期日では、擬制陳述をすることは認められていませんので、陳述をするために必ず何度かは裁判所に出廷しなければなりません。

簡易裁判所と地方裁判所の違い-簡易裁判所は2回目以降の口頭弁論も欠席できる

進行協議期日でも電話会議システムを利用することは可能

電話会議システムは「弁論準備手続期日」だけでなく、「進行協議期日」でも利用することができます。これは法律の条文には書いてありませんが、民事訴訟規則96条でそう定められています。民事訴訟規則

ただし、実際には進行協議期日が開かれることはあまりありませんので、この記事ではあまり詳しくは解説しません。軽く読み飛ばしても大丈夫です。

進行協議期日でできることの多くは、弁論準備手続期日でもできますし、わざわざ進行協議期日を開かなければならない場面は実はあまりありません。さらに進行協議期日の場合は、期日のなかで裁判上の和解をすることができませんので、訴訟の直接的な解決はあまり期待できません。

進行協議期日のイラスト

交通事故での民事訴訟などで、実際に裁判所の外に出て現地調査をしたい場合などに進行協議期日が開かれることがあります(進行協議期日は裁判外で行うことができるというメリットがあります)が、どちらかというと例外的です。

民事訴訟規則96条の内容をチェック(※クリックタップで開閉)

代理人弁護士がいないと電話会議システムは使えない?

これは一番気になるところですよね。ただ、結論からいうと「裁判所の判断による」ということになりますので、正直わかりません。担当の裁判所書記官などに訪ねるのが一番早いです。

法律の条文上は、「代理人弁護士がいないとダメ」なんてどこにも書いていないわけですが、現実的な悩みとして「本人確認をどうするか?」という問題があります。

本人による電話会議の場合、確認が難しい-図

携帯電話等での参加だと、被告の本人確認が難しい場合も

被告側に弁護士が付いている場合は、裁判所は、期日の指定時間に弁護士事務所に電話をします。弁護士会にも登録されている弁護士事務所の固定電話にかけるわけですから、当事者確認という意味では裁判所も安心です。

弁護士がいる場合の電話会議-イラスト

一方、本人が電話で期日に参加するとなると、それが「本当に被告本人なのかどうか?」は確認がむつかしい場合があります。

自宅やオフィス(職場)など、ハッキリと場所がわかる固定電話などで取れる場合はまだいいですが、プライベートな本人の携帯電話での通話会議となると、ますます本人確認が難しくなります。

そのため、裁判所によっては「代理人弁護士がいないとダメ」「携帯電話だとダメ」という理由で、遠隔からの電話会議による参加申請が却下されてしまうことはあります。

携帯電話だと本人確認の理由で断られることも

電話会議システムが利用できるかどうかを最終的に決めるのは、裁判官の判断です。代理人弁護士の有無だけでなく、裁判所ごとの設備の有無や、本人確認の方法、電話をかける場所、必要性の高さ(遠方や病気などの事情)などから総合的に判断します。

そのため、既に何度か裁判所に出廷したことがある、その他、何かの方法で本人確認ができる場合など、一定の条件で電話会議が認められる可能性もあります。こればっかりは相談してみないとわからないので、とりあえずは担当の裁判所書記官に確認してみてください。

電話会議システムの申請はどうやってやるの?

「裁判地が遠方である」ということを理由とした電話会議システムの利用申請は、特に決まった申請の書式などがあるわけではありません。答弁書や準備書面などに「遠方で出頭できないので電話会議にして欲しい」旨を記載してもいいですが、普通は別途、上申書を提出するかたちになります。

問題は、最初に解説したように、口頭弁論期日では電話会議システムは利用できませんので、最初の第1回期日をいきなり電話会議にするのは難しいケースが多いということです。

最初の1回目期日を弁論準備手続きにはできない?

最初の期日は、裁判所から「訴状」と「口頭弁論期日呼出状」が届いて一方的に口頭弁論の期日が指定されます。

これに対し、最初の期日を「弁論準備手続き」に変更することも理屈としては出来なくはありませんが、弁論準備手続きをするためには、裁判所は原告・被告両方の意見を聞かなければならないことになっています。

【民事訴訟法168条】

裁判所は、争点及び証拠の整理を行うために必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続きに付することができる。民訴法168条

そのため、普通は、期日が終わって次回の期日を指定するときに、裁判所が両当事者の意見をその場で聞いて、「じゃあ次回は、弁論準備手続きとします」といったかたちで弁論準備手続きに付すことを決めます。

最初の第1回口頭弁論期日の前に、いきなり弁論準備手続期日を差し込むということは、あまり一般的ではないので、裁判所書記官に相談しても「最初の1回はとりあえず裁判所に出廷して、その時に裁判官に伝えてください」と言われることもあるようです。

第1回口頭弁論後の上申

どうしても最初の1回目の口頭弁論期日に出廷できない場合は、先ほども述べましたが、最初の1回目の口頭弁論期日は、擬制陳述により欠席することができます。

なので最初の期日は答弁書だけ提出して欠席し、そのときに「遠方で出廷できないので、次回以降の期日を弁論準備手続きによる電話会議にしてほしい」旨を上申書などで提出するかたちになるでしょう。(もちろん裁判所書記官にも連絡します)

簡易裁判所の場合は、和解に代わる決定の方が簡単

なお、単に「借金をしているけど、返済していなくて貸金業者に訴えられた」というような場合で、「相手方の請求原因はすべて認めていて、分割払いで和解したいだけ」という場合は、簡易裁判所であれば、和解に代わる決定 もできます。

簡易裁判所での訴訟の場合は、そもそも全ての期日で書面提出による擬制陳述が認められていますので、「弁論準備手続きや電話会議までは必要ない」と判断される可能性もあります。

そういった場合に、原告側と話し合いをして分割払いで和解をしたければ、裁判外で、まず原告に電話をして和解案を取りつけてから、「和解に代わる決定」の上申を裁判所にしてください。そうすれば、被告は裁判所に出廷しなくても、裁判所が和解決定をしてくれます。

簡易裁判所では「和解に代わる決定」ができる-イラスト

これについては、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

参考記事
借金滞納で簡易裁判所から呼出状が!出頭しないとダメ?

 
なお和解に代わる決定(和決)は、簡易裁判所だけで認められている制度です。

地方裁判所では、このように「被告が遠方で欠席している状態でも、和解を簡単に成立させる」という方法はありません(受諾和解という方法はありますが少し面倒)ので、和解をするにしても、電話会議による弁論準備手続きを求めることが多いです。

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