債務整理の途中で依頼する弁護士を変更・解任したい場合

弁護士に債務整理を依頼する契約は、民法上の「委任契約」にあたります。委任契約は、当事者の一方がいつでも解除することができます(民法651条)。解除に理由はいりません。ただし着手金は戻ってきませんし、仕事の進捗度合に応じて一部、成功報酬を請求される可能性もあります。そのため、相当の事情がない限り、途中で弁護士を変更するのは得策ではありません。

債務整理の途中で弁護士を変更したい
ねえねえ、先生ー!
いま弁護士さんに任意整理の手続きをお願いしてるんだけど…。何だか頼りなくって。いつ連絡しても先生に繋がらないし、事務スタッフの説明も毎回違うし…。今から弁護士を変更できるかな?
うーん、できるのはできるよ。
委任契約は、法律上、当事者のどちら側からでも一方的に解除できるからね。ただし着手金は戻って来ないから、ちょっと対応に不満がある程度なら、あまり変更は勧めないかな…。
えっ、そうなんだ!
でも、そもそも着手金はまだ全額払ってないんだけど…。
5万円を4カ月かけて分割払いする約束で、いま10万円(2回分)まで支払ったとこなんだけど、この場合はどうなるの?
それは契約内容にもよるね。
一般的にいえば、既に払った分は戻って来ないし、残りの10万円(2回分)も請求される可能性は十分ある。特に、すでに業者側とコンタクトや交渉を開始してたら、着手金は全額請求されるだろうね。
そうなんだ。
じゃあ、今から弁護士を変更したら、着手金を二重に支払わなくちゃいけなくなるのね…。それはキツイなぁ。でも、さすがに成功報酬まで請求されることはないんでしょ?
いや、それも微妙だね。契約内容による。
一般的には、手続きがある程度進んでいれば、進捗度合(割合)に応じて成功報酬の一部を請求されてもおかしくない。
例えば、以下のような契約になってることが多い。

債務整理の委任契約書の内容(途中解約時の清算条項)について-説明イラスト

これは当たり前の話だけどね。
委任契約は「当事者がいつでも解除できる」んだから、こういう約束にしておかないと、仕事が完了する直前に弁護士を解任すれば、成功報酬を払わなくていいことになっちゃうからね。
そう言われれば…そうね。
でも私の場合は、弁護士さんはまだ受任通知を送ってくれただけっぽいし…。まだ交渉に着手してる感じはないの。それで、成功報酬まで請求されたらちょっと納得いかないんだけど。
うーん、普通はその段階なら、成功報酬は請求しないけどね。
ただ、どうしても報酬の返還や請求で弁護士さんとトラブルになった場合は、弁護士会に紛議調停(※)を申立てて、仲裁して貰うという方法もあるよ。
【 補足 】

一般的にいえば、債務整理の手続きは、訴訟のように相手と法廷で争うわけではなく、決められた手続きをミスなく進めるだけなので、経験豊富な法律事務所を選べば、極端に結果に違いが生じることはありません。費用も二重にかかるので、途中で弁護士を変更するのはあまりお勧めできません。ただ、どうしても事情があって弁護士を変更したい場合は、他の弁護士にご相談ください。

参考 → 債務整理におすすめの法律事務所を探す

  • 弁護士との委任契約は、原則として依頼者の側からも一方的に解除できる
  • ただし着手金は戻ってこないし、成功報酬も一部請求される可能性がある
  • 債務整理の内容を変更(例:任意整理 ⇒ 破産)するなら弁護士変更はあり
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弁護士との委任契約を解除する場合の費用の問題

債務整理を弁護士に依頼するときの契約は、民法上の委任契約にあたります。

委任契約とは、依頼者がある法律行為を相手方(弁護士)に委託する契約のことです。自分にとって重要な法律行為を任せるわけですから、双方に信頼関係がなければ成り立ちません。そのため、民法では「委任契約は当事者がどちらからでも、いつでも解除できる」と定められています。

根拠:民法651条(※クリックタップで開閉)

委任契約の解除に理由はいりません。単に「契約を解除したい」と電話で伝えるか、FAXなどの文書で通知すればいいだけです。どこまで仕事が進んでいるか、正当な理由や落ち度があるかどうかは法律上は関係ありません。委任を解除する権利は保証されています。

委任契約は依頼者の側からでも、いつでも解除をすることができる。理由を伝える必要もない-説明イラスト

※ これについては、「やむをえない理由がなくても依頼者の側から有償(報酬あり)の委任契約を解除できる」とした昭和56年1月19日最高裁判決が有名です。

根拠:最高裁判例(※クリックタップで開閉)

成功報酬の問題

しかし依頼者の側からいつでも委任契約を解除できるからといって、成功報酬を支払わなくていいわけではありません。当たり前ですが、受任者(弁護士)は報酬を期待して仕事をしているわけですから、その利益は法律で保護されています。

これは民法651条2項で定められています。

【 民法651条 】

2項 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただしやむを得ない事由があったときは、この限りではない。

例えば、仕事が完了する直前に依頼者が(報酬を払いたくないという理由で)一方的に委任契約を解除した場合、相手は損害賠償請求をすることができます。損害賠償請求というと難しく感じますが、ここでいう損害とは「成功報酬を受け取れなくなること」です。

ですので、要するに「相手は成功報酬を請求できる」という意味になります。仕事が途中までしか完了していない場合は、進捗度合に応じて成功報酬を請求できます。

通常は「委任契約書」に解除時の清算方法が記載される

このように民法上は損害賠償請求権によって、報酬を請求する権利が認められています。ですが、具体的な損害額がいくらなのかをいちいち争うのは面倒です。そのため、通常はあらかじめ契約書に「途中で解除した場合」の報酬の清算方法が記載されます。

契約書の内容は、法律事務所によって違いますので、ご自身の契約書を確認してください。私が実際に見たことのある委任契約書には、以下のように記載されていました。
 

委任契約書

中途解約
甲(=依頼者) 及び 乙(=弁護士)は、書面をもって相手方に通知することにより、本委任契約を終了させる権利を有する。

中途解約時の清算
1)甲は、甲が本件受任業務を途中で終了させる場合であっても、乙に対して、着手金の返還を請求することはできない。
2)本件受任業務の終了前に、甲の事情により、乙が解任された場合には、業務の進行の程度に応じて、乙は成功報酬の一部を請求できるものとする。

 
着手金は前金のようなものですから、原則として弁護士が一部でも仕事に着手していれば、返還請求はできません。例えば、既に受任通知を送っていたり、取引履歴の開示請求などをしている場合は、着手金は戻ってこないと思っていいでしょう。

分割払いでまだ着手金の支払いが終わっていない場合でも、残り分を請求される可能性は十分あります。

着手金が分割払いでまだ支払いを終えていない場合も、残りの着手金は請求される可能性あり-説明イラスト

また弁護士事務所によっては、契約書に「乙(弁護士事務所側)の責めに帰することのできない事由によって解任された場合は、報酬の全額を請求する」とまで記載されているケースもあります。この場合は、弁護士側に落ち度がないのに解任するのであれば、契約上は成功報酬を全額支払わなければなりません。

ただし「解除には正当な理由がある」「弁護士事務所側に明らかに過失や帰責事由がある」と思っていて、双方の意見に食い違いがあり、報酬を支払うことに納得がいかない場合は、後述(こちら)する「紛議調停」で話し合うこともできます。

本当に弁護士を変更した方がいいのか?の判断基準

債務整理を主に取り扱っている法律事務所の場合、どうしても1事件あたりの報酬が低い(債務者はあまりお金を持っていません)ため、ある程度、たくさんの事件を効率的にさばいて行かないと事務所を経営していけません。

そのため、細かい仕事はパラリーガルと呼ばれる事務スタッフさんが対応している場合が多く、例えば、電話やメールをしても、あまり弁護士さん本人が対応してくれない事務所もあります。忙しい事務所だと、連絡が遅い・適当に対応されてると感じることもあるかもしれません。

こうした対応に不信感を覚えたり、不安になって「弁護士を変更したい」と考える方は少なくないようです。

弁護士と連絡が付かないtこの不安・心配-イラスト

しかし債務整理に関していえば、それだけを理由に弁護士を変更するのが得策かどうかは微妙なところです。前述のように、着手金を2倍支払わなければならない上に、弁護士事務所を変更したところで、それほど結果に大きく差が生じるとは限らないからです。

そもそも弁護士事務所による違いってあるの?

例えば、裁判で争うような場合は、弁護士さんの腕次第で判決にモロに影響がでることがあります。双方の主張に食い違いがあり、争う相手も弁護士(刑事事件なら検察)だからです。そのため、裁判の途中で弁護士を変更したり、控訴に伴って弁護士を変更することは、よくあります。

しかし債務整理はそういう種類の手続きではありません。むしろ決まった形式の書類をミス・不備なく揃えたり、業者側の担当者と定型的な交渉を進める手続きなので、経験豊富な弁護士事務所にさえ依頼すれば、そう結果に大きく違いが生じることはありません。

どの法律事務所でも基本的に仕事内容や手順は同じなので、債務整理の結果にさほど差は生じない-イラスト

もちろん、あなたの人生の大事な手続きを依頼するわけですから、あまり無責任なことは言えません。全く信頼できないのであれば、後悔のないように思い切って弁護士を変更するのも手です。ですが、費用対効果という面で考えると、「対応が親切・丁寧でない」という理由で弁護士を変えるのは、あまり意味がないかもしれません。

※ 程度にもよります。例えば、半年以上も何の音沙汰も進捗もないとか、何度連絡しても数週間以上返事がないとか、あまりにも対応が酷い場合は変更を検討すべきです。

ちなみに、これは既に弁護士に依頼をして着手金を払ってしまった場合の話です。これから依頼するのであれば、丁寧・親切な弁護士事務所を選ぶのに越したことはありません。

法律事務所の変更を検討した方がいい場合

逆に変更を検討してもいい場合とは、そもそも債務整理の手続きの自体を変更したい場合で、かつ依頼している弁護士がその手続きを受任してくれない場合です。

例えば、「自己破産がいい」と思って弁護士に相談したけれど、弁護士に「あなたは免責不許可事由 があるので自己破産は無理だ」と言われ、雰囲気に流されて任意整理で契約してしまった。その後、自分で色々と調べて他の弁護士にも相談した結果、やはり「任意整理では支払っていけない」「自己破産でも免責の可能性はある」と思うようになった。といったケースです。

債務整理の手続きを変更したくなり、引受けてくれる弁護士が他にいる場合は変更もあり-イラスト

任意整理の途中で自己破産への切り替えを検討することは、実務ではよくあります。
これについては以下の記事で説明していますので参考にしてください。

参考記事
任意整理の途中で自己破産に変更(切り替え)はできる?

 
手続き自体を変更する場合は、もう1度同じ弁護士に依頼をするにしても、契約範囲が異なるため、再度委任契約を締結しなおさなければならない可能性が高いです。また、そもそもその弁護士が「自己破産は無理だ」と言っているのであれば、弁護士を変更するしかありません。

費用の返還で弁護士とモメた場合の「紛議調停」とは

「紛議調停」とは、弁護士と依頼者の間でトラブルが生じたときに、所属の弁護士会が仲裁に入って調停を行う制度のことです。例えば、着手金や報酬金についての争い、書類や預かり品の返還についての争い、その他の損害賠償請求について、弁護士法41条に基づいて弁護士会が仲裁をおこないます。一般的には費用は無料です。

根拠:弁護士法41条(※クリックタップで開閉)

調停をするかどうかは申立ての内容を聞いた上で、弁護士会が判断します。正当な理由がなければ、調停は実施して貰えません。例えば、言い掛かりのような不当な目的で調停を申し立てた場合は、弁護士会によって「調停しない旨の決定」がなされます。

ちなみに2014年には701件、2015年には650件の紛議調停が弁護士会により受任されています。東京では年間280件ほど、大阪では年間70件ほどの件数です(弁護士白書より)

紛議調停の内容

調停が実施される場合は、数回、弁護士会から呼び出されて事情を聞かれます。直接、相手の弁護士と同じ部屋で話し合う場合もあれば、別々の部屋で個別に話を聞く場合もあり、その辺りは弁護士会によっても異なるようです。

弁護士の変更や解任にあたり、あまりにも理不尽に報酬を請求されて納得できない(例えば、まだ具体的な仕事にほとんど着手していないのに成功報酬まで請求されるなど)と考えている方は、最寄りの弁護士会に問い合わせてみるといいでしょう。
 

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