任意整理で特定の債権者だけ整理するのは偏頗弁済になる?

任意整理では、特定の債権者だけを交渉の対象とすることができます。一方、すべての債権者に平等に返済せずに、特定の債権者だけの返済を優先する行為のことを”偏頗弁済”といいます。任意整理は偏頗弁済にあたるのでしょうか?

任意整理で特定の借金だけ対象にするのは”偏頗弁済”?!
ねえねえ、先生ー!
任意整理で、例えば銀行と信販会社、消費者金融、カーローンの4つの借金のうち、消費者金融の借金だけを債務整理するのは、偏頗弁済として法律上、問題になるのかなー?!
いや、問題ないよ。偏頗弁済というのは、民事再生や破産申請の際に問題になるもので、任意整理の場合はそもそも関係ないから大丈夫だよ。 特定の債権者にだけキチンと返済して、他の債権者を任意整理しても問題にはならない。
そっかー、任意整理の場合は「特定の債権者だけを対象にできる」っていうのがそもそものメリットだもんねー。 じゃあ任意整理では”偏頗弁済”が問題になることはないってことなのー?!
任意整理だけで解決する場合は問題ないね。ただし、任意整理をした後に、すぐ間もなく自己破産をした場合には、偏頗弁済を疑われる可能性がある。それだけ注意する必要はあるかもしれないね。

 
他の自己破産や個人再生の手続きと混同されるからか、任意整理をする際に「特定の債権者だけに全額返済する行為は”偏頗弁済”にならないのか?」という質問を受けることがあります。

任意整理では、一部の債権者だけ対象にしても問題ない?!

こちらの記事でも解説していますが、任意整理の最も大きなメリットの1つは「特定の債権者だけを選んで債務整理ができる」という点です。

なぜこの点がメリットなのかというと、私たちは社会生活を送っていく上で「この借金だけは全額キチンと返済したい」という場面が多々存在するからです。例えば、以下のようなケースです。

  • 車や住宅を手放したくないからローンは返済したい
  • 主要口座があるから銀行カードローンは返済したい
  • 身内や友達の借金だけは迷惑かけずに返済したい
  • 会社にバレないよう労働金庫の借金は返済したい

 
上記のような例に該当する方は少なくないはずです。一方で、クレジットカード(信販会社)や消費者金融の借金は、もう返済できないから債務整理をして借金負担を軽減したい。

そんなときに、特定の債権者や業者だけを対象にできる任意整理は非常にメリットが大きいのです。

そもそも”偏頗弁済”はなぜ問題なのか?

ここで少し偏頗弁済について復習しましょう。偏頗弁済とは、すべての債権者に平等に返済せずに、特定の債権者だけに優先的に返済をする行為のことで、個人再生や自己破産を申請する際には問題となります。

偏頗弁済
個人再生や自己破産を申請する前後、または実質的に支払いが停止した後に、特定の債権者だけに優先的に返済をおこなうこと。他の債権者の利益を害する行為とみなされ、自己破産や個人再生の許可が降りないケースもある。

 
特定の債権者だけに返済を行うかどうかは債務者の自由のような気もしますが、一体なぜ、この行為が”偏頗弁済”として問題視されるのでしょうか? それは、個人再生や自己破産が法律上認められた手段であり、債権者に拒否権がないからです。

個人再生や自己破産では、債権者は拒否権がない?!

“拒否権がない”というのは正確な表現ではありませんが、実質、債務者が破産を宣告してしまうとほとんどの場合、債権者は何もすることができません。基本的には債権を諦めるしかなく、一方的に損をさせられることになります。

例えば自己破産は、すべての債権者を対象として一方的に「もう借金は返済できません!」と宣言する制度です。任意整理のように、任意の交渉ではないため、納得できなければ拒否するということもできません。

偏頗弁済の前提には「債権者平等の原則」がある

ところが、自己破産をしておきながら実はまだ資金に余裕があり、一部の債権者だけにはちゃんと返済する、というのでは、返済して貰えなかった債権者は一方的に損してしまうことになります。これは債権者保護の観点からフェアではありません。

そのため、個人再生や自己破産では、法律上、債権者平等の原則が重視されており、そのため偏頗弁済が禁止されているのです。 任意整理ではそもそも、そのような前提がないため、偏頗弁済の問題も生じません。

任意整理をした後に、続けて自己破産をする場合は注意!

ただし任意整理をした後に、続けて自己破産をする場合には、偏頗弁済を疑われるケースがあります。例えば、以下のような場合です。

任意整理後に偏頗弁済が疑われるケース

トラ夫さんは、銀行カードローンで50万円、キャッシングで120万円、カード会社から40万円、労働金庫から70万円、の借金がありました。

労働金庫と銀行の借金については返済を続けたかったため、キャッシングとカード会社からの借金160万円のみを任意整理の対象として弁護士に依頼しました。消費者金融とカード会社には、弁護士から受任通知が送付されたため、一時的に支払いをストップすることができました。

その後、数カ月に渡って任意整理の交渉をしましたが、結局、今後の返済もかなり困難なことがわかったため、自己破産手続きに切り替えることに決めました。すると消費者金融やカードの信販会社は、これは”偏頗弁済”だ、と怒りました。

 

上記の例はなぜ偏頗弁済が疑われるのでしょうか?

任意整理をすると任意整理の手続き期間中は、対象となる業者については支払いを停止することができるようになります(参考:「任意整理の受任通知で借金の取り立てを止める方法」)

 

任意整理から自己破産に切り替えた場合のポイント

このポイントを整理すると、以下のようになります。

  • 任意整理の手続きで数カ月、特定の債権者の返済を停止していた
  • その間も、他の債権者には通常通り返済を続けていた
  • 結局、任意整理はせずに自己破産に切り替えた

 
自己破産手続きの前に数カ月に渡って、特定の債権者だけに優先的に返済を行っていたため偏頗弁済を疑われることになります。この場合に争点になるのは、自己破産への切り替えが意図的なものだったかどうか、です。

意図的に任意整理から自己破産に切り替えたわけではないことがわかれば、問題がないケースが多いですが、一応、偏頗弁済にあたる可能性があるという認識を持っておくようにしましょう。

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