共有名義人が行方不明な場合に住宅を任意売却する方法

住宅ローンを連帯債務で借りている場合で、稀に共有名義人が行方不明になってしまうケースがあります。例えば、離婚後に元夫(元妻)と連絡が取れなくなり、消息がわからなくなるケースです。もし共有名義人が住宅ローンを滞納している場合で、かつ完全に行方不明になっている場合でも、競売を回避して住宅を任意売却する方法はあるのでしょうか?

共有名義人が行方不明の住宅を任意売却できる?
ねえねえ、先生ーっ! 離婚した元夫(共有名義人)が「住宅ローンを滞納してる」って債権者から連絡が来たんだけど、元夫の住所を前回の記事の方法で調べて、それでも行方不明だった場合ってどうすればいいのかな? このままじゃ住宅が競売になっちゃうよ!
うーん、住民票に登録されている住所にも住んでいない、元旦那の実家に聞いても行方がわからないとなると、完全に住所不定で行方不明になるね。連帯債務である以上、元妻が元夫の代わりに住宅ローンを支払うことができない限り、正直、住宅を残すのは難しい。
そうだよね・・・せめて、住宅ローンの残債がなるべく少なくなるように、競売じゃなくて任意売却にしたいんだけど、たしか元夫(共有名義人)の同意がないと任意売却はできないよねー? 共有名義人が行方不明の場合は、どうすればいいのかなー?
一応、不在者財産管理人という制度がある。これは裁判所に申し立てて、不在者の財産を管理するための管理人を選任してもらう手続きのことだね。不在者財産管理人が選任されれば、元夫が行方不明のままでも住宅を任意売却できる可能性はあるよ。
へー、便利な制度があるんだねー。
じゃあ裁判所に「元夫が行方不明になったので、不在者財産管理人を選任してください」と申立てて、その管理人に「共有名義の住宅を任意売却したい」と伝えればいいの?
そうだね、もう少しだけ細かくいうと、不在者財産管理人は行方不明者の代わりにその財産を管理・保全するのが仕事だから、管理人だけの判断では住宅の任意売却はできない。だから、別途、家庭裁判所に権限外行為許可を貰う必要があるけどね。
ふむふむ・・・、
あといくつか疑問があるんだけど、そもそも不在者財産管理人って誰なの? あと「元夫が行方不明者だから不在者財産管理人を選任してください」っていうのを、元妻が勝手に申し立ててもいいの?
不在者財産管理人は自分で候補者を推薦できるよ。通常、親族がなるケースが多いから、元夫の身内で協力してくれる人がいればいいね。もし候補者がいなければ、裁判所が弁護士や司法書士を選任する。あと申立ては、利害関係人なら大丈夫。元妻でもできるよ。
なるほどー!
まあとにかく元夫が行方不明でも、住宅の任意売却はできる可能性があるってことだよねー。まずは早速、不在者財産管理人の選任を申立てないとダメだな。
ただし重要な注意点だけど、不在者財産管理人の選任には3~6カ月、更にそこから権限外行為許可に3カ月程度かかるから、かなり早い段階で動かないと間に合わない可能性が高い。債権者から競売開始決定通知が届いてからだと現実的にはもう厳しいね。
  • 共有名義人が行方不明の場合、裁判所へ申立て不在者財産管理人を選任できる
  • 不在者財産管理人が家庭裁判所から権限外行為許可を貰えば、任意売却も可能
  • 不在者財産管理人の仕事は財産の保全なので、住宅売却には正当な理由が必要
  • 放っておくと共有名義の住宅が競売になるようなケースでは任意売却も可能
  • 不在者財産管理人の手続きは時間がかかる。競売に間に合わない場合も多い
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共有名義人が行方不明の場合の不在者財産管理人って?

住宅ローンの連帯債務などで共有名義になっている住宅は、通常、共有名義人の全員の同意がなければ任意売却できません。

ところが、例えば離婚後に夫が家を出ていったケース(妻と子供は家に残った場合)で、その後、元夫は「もう自分は関係ないから」と住宅ローンの支払いを滞納して連絡が付かなくなってしまう場合があります。

元夫の滞納の図

離婚協議書などで「住宅ローンは今後も引き続き夫が支払う」という約束をしていたとしても、それは元妻と元夫との間の約束であり、住宅ローン債権者には関係のない話です。連帯債務である以上、元夫が滞納すれば、その分は当然、元妻に請求されることになります。

もし元妻が住宅ローンを代わりに支払うことができなければ、住宅ローンの期限の利益が喪失し、住宅は競売にかけられます。

まずは戸籍附票に登録されている最新の住所を調べる

「電話での連絡が付かなくなった」「知らない間に引越していた」「実家に聞いても居場所がわからない」といった場合には、まずは「戸籍の附票」から現在、住民登録されている夫の最新の住所を調べる必要があります。

戸籍の附票を役所で取得

元妻であれば、条件によっては比較的、簡単に元夫の「戸籍の附票」を取得して、現在の住所を確認できる可能性があります。この辺りに手順については、以下の記事に詳しくまとめましたので参考にしてください。

もし単に元妻に黙って引越しただけであれば、行方不明(不在)とはいえませんので、勝手に元夫の財産を処分することはできません。現在の住所を特定して、住宅ローンの支払いを求めるか、任意売却に協力して貰うよう説得しなければなりません。

行方不明の場合には、不在者財産管理人の制度が使える

「住民票に登録されている住所に住んでいない」「身内でも元夫の居場所がわからない」といった本当に行方不明になっているケースでは、不在者財産管理人の制度が使える可能性があります。

不在者財産管理人とは、裁判所が選任する管理人のことです。行方不明になった不在者に代わって、その人の財産(不動産など)を管理、保全します。

不在者財産管理人の説明図

不在者財産管理人の選任

従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。(民法25条

不動産などの財産は、適切に管理(メンテナンス、保守点検、固定資産税の支払い等)をしないと、その価値を維持し続けることができません。

基本的には所有者の自己責任ですから放っておけばいいのですが、財産を放置することで債権者、相続人、共有名義人などが損をする場合には、彼ら利害関係人が裁判所に申し立てることで、不在者財産管理人を選任することができます。

不在者財産管理人を選任して任意売却するための手続き

まず不在者財産管理人を選任するためには、本当に元夫が行方不明(不在)だと裁判所に認定して貰う必要があります。当然ですが「どこに住んでいるかはわかっているけど、連絡を全て無視される」といった場合に不在者財産管理人の制度を利用することはできません。

裁判所に「不在者」であると認めて貰うための条件とは

不在者財産管理人とよく比較される制度として「失踪宣告」があります。失踪宣告は、裁判所がその行方不明者を「死亡した」とみなす制度のことですが、こちらの場合、行方不明が認識された時点から7年が経過してはじめて失踪宣告が成立します。

失踪宣告の説明図-失踪宣告の場合は、行方不明の認識時点から7年経過しないと認定されない。

一方、不在者財産管理人の制度の場合は、このように行方不明になってから何年以上といった期間の定めはありません。

ただし「容易に帰来する見込みがない者」というのが条件になっていますので、1~2カ月間、行方がわからない程度では、不在者財産管理人の選任が認められる可能性は低いでしょう。一応、目安として1年以上ともいわれていますが、ケース次第です。

(もちろん不在者財産管理人の制度の場合は、不在者は「死亡した」とは見なされません。単に不在の期間中に財産を代わりに管理する人を選任する手続きに過ぎません。)

不在の事実を証明するための書類の提出

元妻が不在者財産管理人の申立てをする際には、裁判所に元夫が不在であることを証明するための書類を提出する必要があります。

例えば、郵送物(不在者宛で返送されたもの)、行方不明者届(旧捜索願)の受理証明書などを提出します。また、裁判所が実際に不在かどうかを確認するために、家族や身内などにも事情の聴取をおこないます。

他にも不在者財産管理人の申立てには以下の提出書類が必要になります。

  • 不在者財産管理人選任申立書
  • 不在者の戸籍謄本、戸籍の附票
  • 財産管理人候補者の住民票、戸籍の附票
  • 不在者の財産に関する資料(不動産の登記事項証明書など)
  • 申立人との利害関係を証明する書類

 
不在者財産管理人の申立ては、不在者の身内や親族だけでなく、債権者、共有名義人、相続人などの利害関係人でも可能です。

ただ、不在者であることを証明するための「行方不明者届」は誰でも出せるわけではありません。
行方不明者届を出せるのは、原則として親権者や配偶者、後見人、密接な関係にある恋人や同居者、雇い主等に限定されていますので、日常で接点のない元妻が行方不明者届を出すことはできません。

その場合は郵便物などで証明をするか、元夫の身内(親族)に行方不明者届を出して貰うかたちになります。

不在者財産管理人になるために資格は必要?

不在者財産管理人は、申立人が候補者をたてることができます。特に資格は必要ありませんので、適任であれば誰でも大丈夫です。一般的には、不在者の親族などが管理人になります。

不在者財産管理人の申立ての際に、候補者を挙げることができる。特に資格はなし。

ただし不在者と直接、利害関係がある候補者は、裁判所に却下される可能性があります。

不在者財産管理人は、不在者にとって少しでも有利になるように財産を管理・保全することが役割です。そのため、例えば法定相続人など不在者と利害関係のある人物は適任ではありません。

もし申立人が候補者をたてなかった場合には、家庭裁判所が弁護士、司法書士などから不在者財産管理人を選任します。

裁判所から弁護士等が選任された場合には、彼らに支払う報酬が必要になります。不動産などの財産から支払い可能な場合はそこから支払われますが、財産から支払うことができない場合には、別途、数十万円の予納金が必要です。

住宅を任意売却するための「権限外行為許可」とは?

さて前述のように、不在者財産管理人の役割はあくまで財産の管理や保全です。不在者が見つかるまでの間、財産を管理するのが仕事であり、原則として勝手に財産を売却することは認められていません。

権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
(1) 保存行為
(2) 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為(民法103条

ただし住宅を売却しないと、滞納処分や差押えにより住宅が競売になってしまうようなケースでは、裁判所に「権限外行為許可」を申立てることで、売却の許可が認められる可能性があります。

不在者財産管理人が住宅を売却するには、家庭裁判所の「権限外行為許可」が必要-図

具体的には、例えば以下のようなケースですね。

  • 固定資産税が払えずに住宅の維持が困難になっている場合
  • 不在者が住宅ローンやその他の債務を滞納している場合
  • 建物が極度に老朽化していて、修復や取り壊し費用もない場合

 
今回のような、元妻と元夫が連帯債務になっているケースでは、(2)の理由により住宅の任意売却が認められる可能性がありそうです。

【管理人の権限】
管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。(民法28条

権限外行為許可にあたっては、「その住宅の売却価格が適正かどうか?」「売却の必要性が本当にあるかどうか?」などが家庭裁判所によりチェックされます。

例えば「住宅の地価がいま値上がりしていてチャンスだから、売却して利益を出したい」といった理由では、売却することはできません。

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