保証会社の代位弁済後の「住宅ローンの巻き戻し」とは?

個人再生では、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用することで、住宅ローンを残したまま他の借金だけを減額して整理することができます。既に住宅ローンの返済を滞納していて、保証会社による代位弁済が履行されてしまった後でも、6カ月以内に個人再生の申立てをすると、保証会社の代位弁済前の状態(銀行に月々分割払いする状態)に戻すことができます。これを「住宅ローンの巻き戻し」といいます。

住宅ローンの巻き戻しって何?!
ねえねえ、先生ー!
住宅ローンを3カ月以上とか滞納すると、保証会社に代位弁済がされて、債権者が保証会社に変わっちゃうよねー? この状態でも個人再生はまだ間に合うのー?!
そうだね、保証会社の代位弁済から6カ月以内であれば、住宅資金特別条項付きの個人再生を申立てることで住宅ローンを巻き戻すことができるよ。つまり、保証会社の代位弁済前の状態に戻すことができ、また銀行に毎月返済することで住宅を手元に残せるんだ。
へぇー、凄い! でも住宅ローン返済を滞納してたから、契約違反によって期限の利益が喪失して、保証会社に債権が移ったわけだよねー? それを「何もなかったこと」にすることについて、銀行が許可してくれるのはどうしてなのー?!
それは、法律で決まっているから(笑) 銀行からすると正直、住宅ローンの巻き戻しは手続きも面倒だし、歓迎はしてないと思う。でも民事再生法204条1項で、個人再生の認可が確定した場合、保証会社による保証債務履行はなかったものとみなす、と定められているんだ。
  • 保証会社の代位弁済から6カ月以内であれば、住宅ローンは復活できる
  • 再生計画が裁判所に認可されると、代位弁済はなかったことになる
個人再生でいくら借金が減るのか、他の債務整理の方が良いか診断する

個人再生の「住宅ローンの巻き戻し」って一体何なの?!

個人再生の住宅資金特別条項が凄いところは、ただ住宅ローンを残したまま債務整理ができるだけではありません。

既に住宅ローンが破綻して債権が保証会社に移ってしまっている状態でも、6カ月以内であれば、元の返済できていた状態にまで「巻き戻す」ことができるのです。こんな凄い救済措置は、個人再生の住宅資金特別条項以外にはまずあり得ません。

以下、住宅ローン巻き戻しの流れを順番にもう一度、確認しましょう。

住宅ローン巻き戻しの説明図1-まず銀行への滞納3カ月程度で期限の利益を喪失する

まず銀行への住宅ローンの返済が滞った場合、3カ月以上滞納が続くとローン契約の違反により期限の利益を喪失します。期限の利益を喪失すると、ローン債務者は銀行に残りの債務を一括で返済する義務を負うことになります。しかし当然、ローン残債務の一括返済をできるお金なんてないでしょうから、次の段階として、保証会社による代位弁済がおこなわれます。

住宅ローン巻き戻しの説明図2-保証会社による代位弁済(肩変わり)と求償権による請求

保証会社があなたの代わりに、残りのローン債務を銀行に一括返済します。これを代位弁済といいますが、この代位弁済によって債権者が銀行から保証会社に代わります。また保証会社も求償権に基づき、あなたに残債務の一括返済を求めることになります。同時に、住宅の抵当権も銀行から保証会社に移転します。

住宅ローン巻き戻しの説明図3-保証会社が抵当権を行使し、住宅を競売にかける状態

さらに3~6カ月が経過すると、保証会社は住宅に付いた抵当権を行使して、住宅を競売にかけて処分することで債権の回収を図ります。ここまでが、住宅ローンを滞納してからの一般的な流れです。

しかし、保証会社の代位弁済から6カ月以内に住宅資金特別条項付きの個人再生を申立てると、最初の図の(1)の状態にまで住宅ローンの巻き戻しが可能になります。

銀行による「期限の利益の喪失」も、「保証会社による代位弁済」も、「抵当権行使による競売開始手続き」も、すべて中止、または無かったことにすることができます。そのため、個人再生の認可決定後には、また銀行を債権者として月々の分割返済をおこない、住宅にもそのまま住み続けることができるのです。

ただし、競売手続きが既に開始している場合には、入札日までに個人再生を申立てる必要があります。誰かに落札されてしまった後だと、競売手続きを中止することはできません。

これらをまとめて図にすると以下のようになります。

住宅ローン巻き戻しのまとめ図- 返済滞納 ⇒ 期限の利益の喪失 ⇒ 保証会社の代位弁済 ⇒ 競売手続き を巻き戻し

なお、銀行に対して滞納していた住宅ローンの未納返済分は、そこに利息、遅延損害金を付けた金額をきちんと銀行に返済する必要があります。これらの滞納分の返済額は、個人再生の返済計画に盛り込まれ、今後3年間(最長5年間)かけて返済することになります。

例えば、住宅ローンの毎月の返済額が10万円、滞納額が80万円(利息、遅延損害金をあわせて100万円)とすると、再生計画期間中は、復活した住宅ローンの返済額10万円に加えて、毎月2.7万円(100万円÷36カ月)、合計12.7万円を毎月銀行に返済する必要があります。(期限の利益回復型の場合)

なぜ個人再生では「住宅ローンの巻き戻し」が可能なの?!

正直にいって、この住宅ローンの巻き戻しは債務者にひたすら都合のいい制度です。一度は返済滞納により、期限の利益を喪失し、債権が保証会社に移った住宅ローンを元通りの戻すことについて、なぜ銀行は許可してくれるのでしょうか?

これは個人再生がそもそも、住宅ローンを所有する個人の債務者を救済するために設けられた制度であることが大きいです。つまり、法律でそう定められているから銀行も許可してくれている、ということになります。
この住宅ローンの巻き戻しは、民事再生法204条で定められています。

・民事再生法204条 保証会社の債務履行の取り扱い
住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合において、保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行していたときは、当該保証債務の履行は、なかったものとみなす。

またこの住宅資金特別条項が、保証会社の代位弁済から6カ月以内であれば利用できる旨は、民事再生法198条で規定されています。
この「巻き戻し」のルールが設けられているため、保証会社も6カ月が経過するまでは競売を申立てないところも多いです。

・民事再生法198条 住宅資金特別条項を定めることができる場合
保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から6月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたとき、(中略)住宅資金特別条項を定めることができる。

個人再生の申立てにあたって、できれば事前に(弁護士等に委任して)銀行や住宅ローン債権者と打ち合わせをおこなうことは必要だと思います。

銀行や保証会社からすると、住宅ローンの巻き戻しがおこると非常に手続きが面倒になる場合があります。仙台地方裁判所の「個人再生手続き利用にあたって」でも、住宅ローン特則を利用する場合は、債権者と事前に打ち合わせることを推奨しています。

ただし住宅ローンの巻き戻しについては、銀行や保証会社の担当者も受任通知を受け取った段階で、相手側から方針を確認するために連絡してくることも多いようです。

住宅ローンの巻き戻しで注意すべきことって何?!

住宅ローンの巻き戻しがおこると、多くの権利関係が「保証会社の代位弁済前」「銀行の期限の利益喪失前」の状態に戻ります。例えば、以下のようなことがおこります。

  • 保証会社の求償権は消滅し、保証債務が復活する
  • 住宅ローン債権が金融機関(銀行)に復活する
  • 保証会社への抵当権移転登記が抹消される
  • 団体信用生命保険(だんしん)が復活する

 
もし保証会社による競売が実行されていて、それを住宅ローン特則により中止した場合には、競売費用や抵当権移転登記の費用等を誰が負担するのか、という問題があります。
これについては、特別な取り決めが事前になされていない限り、原則、住宅ローン債権者らの負担となるようです。ただし、事前に契約で(抵当権行使等の費用について)債務者負担である、と定められている場合には、債務者負担になります。

費用がもし債務者の負担となった場合には、これらの費用は再生債権として扱われることになりますので、最低弁済額の基準に基づいて減額されます。住宅資金特別条項の要件は満たしていませんので、これらの諸費用が住宅ローン債権の一部に組み込まれることはありません。

既に保証会社に一部の債務を返済した場合

保証会社による代位弁済がおこなわれた後に、保証会社に一部の借金を返済した場合はどうなるでしょうか?

もし保証会社の求償権について、一部、返済した後に住宅ローン特則を利用して「巻き戻し」がおこった場合、その分の支払いは保証会社から銀行(元の住宅ローン債権者)に支払われることになります。そのため、保証会社に返済した分もちゃんと住宅ローンの返済金に充当されることになります。

これは民事再生法204条2項に、以下のような規定があるからです。

保証会社が保証債務を履行した場合

認可決定の確定前に再生債務者が保証会社に対して保証債務に係る求償権についての弁済をしていたときは、再生債務者は、同項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなった者に対して、当該弁済をした額につき当該住宅資金貸付債権についての弁済をすることを要しない。この場合において、保証会社は、当該弁済を受けた額を同項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなった者に対して交付しなければならない。 (民事再生法204条2項

ただし上記の規定は再生債務者のみに当て嵌まります。

そのため、もし再生債務者ではなく保証人が保証会社に求償権の一部を返済した場合、この返済金が自動的に住宅ローン債権に充当されることはありません。
この場合は、保証人は保証会社に対して不当利得返還請求権を得ますので、自力で保証会社から支払い分の返還を得ることができます。(保証会社は求償権の全額について、銀行から返還を得ることができるため、損はありません)。

 

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