個人再生で減額されない非減免債権って何?

個人再生で減額できない債権には、前に解説した一般優先債権や共益債権以外にも、非減免債権というものがあります。 非減免債権には、例えば交通事故の加害者になってしまった場合の損害賠償金(重大な過失あり、人身事故のみ)や、個人再生前の未納分の養育費、などがあります。

個人再生の非減免債権って何?!
ねえねえ、先生ー!
個人再生手続きには、借金の減額が認められない「非減免債権」っていうのがあるって聞いたんだけど、これって前に勉強した一般優先債権とはまた違うものなのー?!
そうだね、一般優先債権は税金など、法律上、返済の優先順位が高い債権だね。一方、非減免債権は一般の再生債権と変わらない普通の債権だけど、社会通念上、減額するべきじゃない、債権者が保護されるべき、といった債権なんだ。
ふーん、じゃあ非減免債権は減額されないとはいっても、その他、手続き上の扱いは他の借金と同じなんだねー。
社会通念上、減額するべき債権って具体的にはどんなものがあるのかなー?
例えば、不法行為による損害賠償金とかだね。(1)悪意(相手を害する意思)を持っておこなった不法行為の損害賠償金や、(2)重大な過失によって相手の生命や身体を害する不法行為の損害賠償金は、非減免債権となって減額されない。
なるほど、ふむふむ。
じゃあ例えば、無免許や飲酒運転でおこした人身事故の損害賠償金とかは(2)にあたりそうだね。一方で、同じ交通事故の損害賠償金でもブレーキ誤操作や物損事故だと、減額されるのかなー?
その通りだね!
もちろん交通事故に限らず、暴力事件でも窃盗でも、とにかく(1)(2)に当て嵌まる損害賠償金は、個人再生では減額されない。あとは、個人再生の開始前までの未納養育費も非減免債権だね。
  • 非減免債権は性質上は他の一般債権と同じだが、減額されない債権
  • 不法行為の損害賠償金や養育費など、社会的に保護すべきものが対象
  • 再生債権の一部なので、債権者一覧表、再生計画への記載が必要
  • 再生計画の期間中は一部のみ返済し、期間満了時に残額を一括返済する
個人再生でいくら借金が減るのか、他の債務整理の方が良いか診断する

非減免債権ってどういう債権なの?

個人再生では、債権者平等の原則がありますので、一般優先債権や共益債権を除き、基本的にすべての債権は平等に扱わなければならないことになっています。そのため、キャッシングで借りたお金だろうと、奨学金や友人からの借入だろうと、全て同じ免除率で平等に減額されます。

しかし中には、同じ一般債権であっても社会的に保護されるべき債権というものがあります。

例えば、暴力や詐欺、窃盗、その他の不法行為によって誰かに損害を与えた場合、その損害賠償金までも(他の借金と同じように)減額されてしまうというのは、債権者の立場からすると納得がいかないはずです。

減免されたら困る債権-漫画

そこで社会的にも特に保護する必要性の高い債権については、一般債権であっても減額をしないことを定めました。これが非減免債権です。

非減免債権に当て嵌まる具体的な債権は?!

非減免債権(非免責債権)の要件については、民事再生法229条3項で定められています。正確な細かい要件は条文を読んで確認していただくとして、ここではザックリと非減免債権の要件を以下の3つにまとめてみます。

  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償金
  • 故意や重過失により、生命・身体を害する不法行為の損害賠償金
  • 子の監護や扶養義務、婚姻費用分担義務による請求権

 
損害賠償金が非減免債権にあたるかどうか、のポイントは2点です。まず、悪意の有無(相手を積極的に加害する意思があったかどうか?)です。悪意ある不法行為なら、問答無用で非減免債権になります。

次に、悪意がない場合(つまり、わざと相手を害する意思はない場合)です。この場合「故意または重大な過失」があり、かつ「生命または身体を害する不法行為」という2つの条件が揃えば、非減免債権になります。

非減免債権にあてはまるかどうか、説明チャート図

以下、具体的な例をいくつか確認してみましょう。

交通事故の損害賠償金

一口に損害賠償金といっても様々です。不法行為により損害を受けた場合の請求は、すべて損害賠償請求なので、具体例も多岐に渡ります。ここでは、あくまで身近な一例として交通事故の損害賠償金をとって説明します。

交通事故の加害者になった場合、通常、悪意や故意はないでしょうから「重大な過失」があり、かつ「生命又は身体を害する」かどうかがポイントになります。この時点で、まず軽い過失の事故や、物損事故は非減免債権ではないことになります。(つまり減額されます。)

では、どのようなケースが「重大な過失」にあたるでしょうか? 以下をご覧ください。

重大な過失の例
飲酒運転、居眠り運転、無免許運転、30キロ以上のスピード違反、過労や薬物で正常な運転ができない場合、など

著しい過失の例
前方不注意、わき見運転、酒気帯び運転、30キロ未満のスピード違反、著しいハンドル・ブレーキ操作ミス、など

例えば(1)の酒酔い運転や、無免許運転などで人身事故をおこした場合、その損害賠償金は非減免債権になります。一方、ハンドル操作ミスや、わき見運転、30キロ未満の速度違反などによる事故の損害賠償金は、重大な過失ではない(非減免債権ではない)ので減額されます。

未納の養育費

養育費のうち、個人再生前に未納だった支払い分については非減免債権になります。もっとも、今後支払いが到来する分の養育費については、非減免債権ではなく共益債権になります。

また離婚時の慰謝料についても議題になることが多いですが、これは前述の「悪意の不法行為に基づく損害賠償金」にあたるかどうかがポイントになります。養育費と慰謝料については、以下の記事で詳しく説明しているので参考にしてください。

非減免債権の個人再生手続き上の扱いはどうなる?

非減免債権は、あくまで性質上は他の借金と同じ、再生債権です。「減額がされない」というだけで、手続きには参加する必要があります。

個人再生の開始決定後の注意点について

一度、個人再生の手続きが開始すると、非減免債権といえど手続き外で勝手に返済することはできなくなります(民事再生法85条1項)。他の借金と同様、債権者一覧表に記載をして裁判所に債権を届出し、最低弁済額の算定額にも含めて弁済率を計算します。

その後、裁判所により再生計画の認可決定、確定がされると、はじめて非減免債権の返済を開始することができるようになります。

非減免債権の支払い方法の注意点について

非減免債権は、再生計画の履行期間中は、他の借金と同じ弁済率だけを弁済します。例えば、再生計画で総債権額の20%を弁済することが決められたとしたら、再生計画の履行中(3年間)は、非減免債権についても20%だけを弁済します。

残りの80%は、再生計画の履行期間が満了したときに一括で支払います。例えば、非減免債権が60万円だとした場合、再生計画の3年間では12万円だけを弁済し、期間の満了時に残りの48万円を一括弁済する、ということです。

非減免債権支払いの説明図

非減免債権の支払い方法についても、以下の記事が参考になります。

期間満了時に残額を一括で支払うためには、再生計画の履行期間中にコツコツと積立をしておく必要があります。ただ現実的には、再生計画の履行だけで一杯一杯で、とても積立の余力がないケースもあるでしょう。

そういった場合には、再生計画の弁済期間が終了した時点で、別途、また非減免債権の債権者との間で、残額の支払い方法について協議することになります。

 

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