個人再生は家族(妻・夫)や職場にバレずに手続きできる?

借金があること、個人再生することを家族や職場にはバレないようにしたい、という方は多いです。妻や夫に内緒で個人再生をすることはできるのでしょうか? また同居していない親や家族、会社や勤務先にバレないように個人再生を進めることはできるのでしょうか? またバレないようにするには、何を気を付ければいいでしょうか?

妻や夫、会社に内緒でバレずに個人再生できる?
ねえねえ、先生ー!
一緒に暮らしている妻(や夫)に内緒で個人再生をしたいって考えてるんだけど、同居家族や配偶者にバレないように個人再生することはできるのかなー?
うーん、別居している家族や親などであれば、バレないことは可能だけど、同居している夫婦の場合は難しいかもしれないね。まず裁判所に提出する家計収支表や収入証明書の問題がある。 家計を共有する同居人がいる場合は、全体の収入と支出を報告しないといけない。
なるほどー。
過去2カ月分の家計収支表と給与明細書の提出だよね。 例えば、もし旦那さんが個人再生をする場合って、奥さんもパートをしていたら、奥さんの収入証明書も提出が必要ってことなのー?
そうだね、配偶者にも収入がある場合は、妻の過去2カ月分の給与明細書も提出が必要になるんだ。妻が無収入であれば、多少バレにくい可能性はあるけど、でも家計表の作成(食費や光熱費とか)にあたって協力して貰うことは必要になるんじゃないかな。
そうだねー、同居している妻や夫にまで内緒で個人再生を進めるのは難しいかもしれないー。
勤務先はどうなのー? 会社にバレないように個人再生をすることはできるかなー?
職場の場合は、会社関係から借入をしているかどうかがポイントだね。例えば、労金や共済組合、または上司など勤務先から直接、借入をしている場合は、そのまま個人再生をすれば絶対バレる。債権者平等の原則で、勤務先だけを手続きから除外できないからね。
ふむふむ、
でも職場や関係者から借入さえしてなければ、個人再生はバレないってことで大丈夫なのかなー? 裁判所から勤務先に確認があったりとかしないよねー?
借入がなければ裁判所から連絡がいくことはないね。唯一、心配の可能性があるとすれば、退職金見込額証明書を貰うときと、官報に掲載されるときだけど、普通の職場なら官報なんて誰も見ないし、退職金は自分で計算する方法もあるしね。まぁバレないでしょ。
  • 同居している家族(妻・夫)にバレずに個人再生をするのは難しい
  • 家族全体の家計収支表や、配偶者の過去2カ月分の給与明細書も提出が必要
  • 会社や勤務先には、直接、借入をしていない限りバレる可能性は低い
  • 退職金見込額証明書を貰う必要があるが、自分で計算することも可能
個人再生でいくら借金が減るのか、他の債務整理の方が良いか診断する

同居する家族や妻・夫に内緒で個人再生するのは無理?

同居していない親や兄弟であれば、個人再生がバレる可能性は非常に低いです。一方で、同じ家に住んでいる親や、妻・夫にバレないように個人再生をすることは一般的には難しいとされています。同居する家族、配偶者に収入がある場合には、その家族の収入証明書も必要になるからです。

ただし、同居する家族が無収入の場合で、かつ家計収支表を黙って用意できる場合は、借金や個人再生を内緒にすることはできるかもしれません。以下、ポイントになる箇所について順に確認していきましょう。

家計収支表、給与明細書など必要書類をどう用意するか?

同居する妻や夫に個人再生を内緒にする上で、最もハードルが高いのが給与明細書や家計収支表です。 夫が個人再生を申立てる場合、家計を同一にしている妻についても収入がある場合は、過去2カ月分の給与明細書を裁判所に提出しなければいけません。

夫が個人再生を申立てる場合、夫の過去2年の源泉徴収票、過去2カ月の給与証明書に加え、妻に収入がある場合は妻も過去2カ月の給与明細書が必要-説明図

例えば共働きや、妻がアルバイトに出ているようなケースですね。普段から、給与明細書の保管場所を共有している場合には問題ないかもしれませんが、そうでない場合は「なんで給与明細書がいるの?」という質問への言い訳が必要になります。

同様に家計収支表についても同じです。生計を一にする家族がいる場合には、全員の収支が必要になります。これも個人再生手続きのことを明かすことなく用意できるのであれば、問題ないかもしれません。例えば、元々普段から奥さんが細かい家計簿を付けているケース等です。

ただそうでない場合は、事情を説明して協力を仰がないと、家族全体の家計収支表を作るのは難しい気がします。光熱費等の支払いを奥さんがしている場合には、その明細書などもキッチリ保管しないといけませんし、他にも、預金通帳や、保険の返戻金証明書などが必要になります。

裁判所からの郵便物をどう内緒にするか?

裁判所からの通知書や郵送物が自宅に届いてしまうと、個人再生手続きのことが同居家族にバレてしまうことになります。これを避けることは可能なのでしょうか?

これは簡単で、弁護士に個人再生を委任している場合は、弁護士が申立人(申立代理人)になりますので、通常、裁判所からの郵便物は弁護士事務所宛に届くことになります。また、個人再生手続きの開始申立書にも、「送達場所」(裁判所からの郵便物の受け取りを希望する場所)を指定する項目があります。

裁判所からの送達場所は、弁護士が代理申立人の場合は、通常、事務所になる-説明図

そのため、念のため、「自宅に裁判所からの通知や郵便が来ないようにしたい」ということを弁護士事務所に確認しておけば、まず問題ありません。

また(弁護士ではなく)司法書士が書類作成代行をする場合には、本人が自ら「送達場所届出書」を裁判所に提出し、司法書士事務所を送達場所、送達受取人に指定すれば大丈夫なようです。(参考:「東京司法書士会三多摩会 平成15年度裁判所との実務懇談会」)

家族や妻・夫が借金の保証人になっている場合は?

家族が再生債権について連帯保証人等になっている場合は、個人再生を弁護士に委任して受任通知が送付された時点で、債権者から保証債務の履行を求められ残額を一括請求される可能性があります。そうなると、当然、個人再生がバレる可能性が高くなります。

家族や夫・妻が保証人の場合、個人再生をすると保証人に一括請求がいく-図

個人再生手続きでは、最終的に借金の減額の認可決定が下りたとしても、保証人にはその影響は一切及びません。保証人の方も個人再生の手続きをしない限り、保証債務から逃れることはできませんので、家族が保証人の場合は、個人再生を内緒にすることは不可能だと思います。

会社や勤務先に個人再生がバレないようにするには?

同様に、「会社や勤務先に個人再生や借金のことがバレないかな?」と心配になる方も多いようです。ただしこの場合は、勤務先関連から直接、借入をしていなければ、借金や個人再生をしたことがバレる可能性はかなり低いです。

逆に直接、職場からお金を借りている場合には、その債権も個人再生の対象になってしまいますので、隠すことは不可能でしょう。

勤務先やその関係から直接お金を借りている場合って?

よくあるケースでいえば、会社員が会社の労働組合を通じて、労金から借入をしているケースや、公務員の方が共済組合から借金をしているケース、または上司や同僚から直接、借金をしているようなケースです。

共済組合、ろうきん、上司、同僚など会社からの借入があるケース-説明図

(ただし厳密にいえば、ろうきんの借金を個人再生の対象としても、必ずしも会社にバレるとは限りません。会社の労働組合を通して労金から借りている場合には、会社の組合が返済保証等をしている場合にはバレる可能性がありますし、また労働組合が立替をおこなって給料から天引きしているような場合もバレるでしょう。そうでないケースでは、一概には言えません。)

さて、これらの勤務先から借入をしている場合、そのまま個人再生の申立てをすると、裁判所から債権者に「個人再生手続き開始決定通知」が届きますので、債務者が個人再生手続きに入ったことがバレることになります。

勤務先からの借入だけを個人再生しないことは可能?

個人再生手続きでは、債権者平等の原則がありますので、特定の債権者だけを手続きから除外することはできません。例えば、カードローンやキャッシングの借金だけを個人再生の対象として、共済組合の借金は個人再生しない、ということはできません。
そのため、勤務先の借入が残っている場合には、個人再生手続きに入れば必ず勤務先にもバレることになります。

一つの解決策として、個人再生の手続きを弁護士に委任する前(できれば1カ月前まで)に、勤務先の借金だけを先に完済してしまうということは可能です。弁護士が各債権者に受任通知を送付した後は、個別の債権者だけに返済することは偏頗弁済として原則禁止されますが、委任前であれば、少額であればそれほど問題視されることはないでしょう。

弁護士への委任前に完済すれば、職場にはバレない-説明図

弁護士への委任後に職場の借金だけを完済した場合は、偏頗弁済となります。偏頗弁済は悪質だと判断されれば、「不当な目的によるもの」として申立てが棄却される可能性があります。 また棄却されない場合でも、否認権行使の対象行為となりますので清算価値に返済分を上乗せする必要があります。簡単にいうと、個人再生での返済額がその分、増えることになります。

会社や組合からは、直接お金を借りていない場合について

前述のように、会社や組合、その他関係からお金を借りていない場合には、基本的には個人再生や借金が職場にバレることはないでしょう。以下、一応気を付けたほうがいい点がいくつかありますので紹介します。

退職金見込額証明書を貰うときに、個人再生がバレる?

個人再生では、会社勤めの場合、まだ受領していない退職金についても(仮に現時点で受け取った場合の金額の)1/8に相当する額は資産として申告する必要があります。

退職金見込額の1/8は資産として清算価値に加える-説明図

そのため勤続年数がまだ浅い場合は必要ありませんが、勤続年数が5年を超える場合には、現時点で「どのくらい退職金が受け取れる見込みがあるのか」を証明する退職金見込額証明書の提出が裁判所に求められます。

ただ、この退職金見込額証明書を会社に発行して貰う、というのは現実的にはハードルが高い場合があります。というのも、「退職金見込額証明書を発行して欲しい」と会社の経理や事務にお願いした時に、理由や提出先を聞かれてしまう可能性があるからです。通常あまり発行しない書類なので、「そんなの何に使うの?」となるわけですね。

適当な最もらしい言い訳があればいいのですが、残念ながら「退職金見込額証明書」という書類が債務整理(個人再生、自己破産)以外で必要になるケースは聞いたことがありません。なので少し詳しい方が調べれば、すぐ勘付く可能性があります。

一応、言い訳として定番なのは、「住宅ローンの与信審査で必要と言われた」というものです。ただこれも嘘ですので、実際に「銀行の書類(必要書類欄に退職金見込額証明書が明記されたもの)」を提出してください、と言われたら詰んでしまいます。

最もそこまで深く追求されない可能性もありますので、あまり深く考えずに聞くだけ聞いてみるのもアリです。どちらにせよ、「個人再生をしている」「借金で困っている」という決定的な証拠にはなりません。

退職金規定をもとに自分で計算して提出する

会社から「退職金見込額証明書」を貰うのが難しい場合、就業規則に「退職金規定」があれば、それをもとに自分で計算するという方法もあります。

労働基準法上は、退職金の支給自体は義務ではありませんので、中小企業等では退職金制度がそもそもない場合もあります。しかし、退職金の制度がある場合には退職金規定を作成することが義務付けられていますので、会社に退職金制度がある場合は、退職金規定を確認することができるはずです。

退職手当の定めについて
労働基準法 第89条(作成及び届出の義務)

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。
3の2 「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」

多くの場合、この退職金規定に具体的な計算方法や、勤続年数に伴う退職金支給率表(別表)が書かれています。なので退職金見込額証明書の発行が難しい場合には、会社が定める就業規則の退職金規定をコピーしてください。

退職金の計算が簡単である場合には、退職金規定のコピーの提出だけで足りる場合もあります。複雑な場合には別途、退職金規定に基づく計算書を提出します。この辺りの計算は複雑ですが、弁護士事務所にお任せすれば基本的には全てやってくれるはずです。

官報への掲載で会社にバレることはある?

個人再生をすると、官報という国の機関誌に名前と住所が3回掲載されることになります。個人再生の手続きの開始決定時と、書面決議の時、再生計画の認可決定時の3回です。

個人再生手続きでは基本3回、官報に掲載される-説明図

ただし一般の民間企業であれば、官報の掲載情報をチェックされる、ということはまずあり得ません。官報はインターネットでも無料で公開されていますが、情報量が膨大な上に休日以外は毎日発行されています。中身はただの氏名と住所の羅列ですから、少なくとも雑誌にように暇潰しで読むことはありません。

可能性があるとすれば、掲載情報を業務でデータベース化しているような業種に限られますので、保険会社、警備会社など(自己破産での欠格事由になる職業)や、銀行などの金融機関、信用情報機関、市役所くらいだと思います。あとは情報を悪用しようとする闇金業者くらいでしょうか。

また、インターネットの官報の各ページはPDFファイルでアップされており、文字情報ではありませんので、ネット上で名前を検索しても該当の官報ページが検索に引っかかることはありません
なので官報への情報掲載が原因で、民間会社である勤務先に個人再生がバレることはないでしょう。
 

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