過払い金は消費者金融が倒産していても請求できる?

過払い金は消費者金融が倒産してしまうとなかなか債権の回収が難しくなります。これは「過払い金請求が1日でも早いほうがいい理由」でも記載していますが、法人が倒産したり会社更生に入ると、全ての債務が清算・圧縮の対象となってしまい、取り戻せる過払い金が大幅に減額されることになります。

過払い金請求は貸金業者が倒産していても可能?
ねえねえっ、先生ーっ!
過払い金が発生している消費者金融が倒産してしまったら、やっぱり過払い金の回収は難しいのかなーっ!?
そうだね、倒産というのは厳密には法律用語ではないけど、例えば、会社が破産手続きに入ってしまうと、会社の財産は破産管財人によって管理され、全ての債権者に(債権額に応じて)平等に配当されることになるから、1人あたりが取り返せる過払い金額は大幅に減ってしまうね。
ふーん、他にも会社更生や民事再生手続きっていうのもよく聞くけど、これも取り戻せる過払い金の額が減ってしまうのかなー?!
そうだね、会社更生や民事再生も、世間一般でいう”倒産”の1つだね。これらの再生手続きは、破産処理に比べると取り戻せる金額は多くなるけど、それでも当初の過払い金元本と比較すると数パーセント程度しか戻ってこない可能性が高いね。
  • 貸金業者が倒産してしまうと、取り戻せる過払い金が大幅に減る
  • いわゆる”倒産”には破産手続き、民事再生、会社更生の3つがある

 

貸金業者が倒産してしまうと、過払い金はどうなるの?!

貸金業者の倒産は近年では珍しいことではありません。総量規制や過払い金債務の圧迫により、中小規模の貸金業者も含めると、かなりの数の貸金業者が2000年代後半~近年にかけて倒産、廃業を余議なくされています。

貸金業者数の年次推移グラフ(平成11年~)

上のグラフ図は「財務局、都道府県登録、貸金業者数の年次推移グラフ(平成11年~)」ですが、見てわかるとおり、物凄い勢いで登録貸金業者の数が激減しているのがわかります。

平成11年時点で3万件を超えていた貸金業者数は、平成24年には2350件にまで10分の1以下に減少しており、かつての街金、金融全盛期の時代と比べると、いまでも消費者金融や貸金業者にとっては厳しい時代が続いているともいえます。

では、もし貸金業者が倒産してしまったら過払い金の返還請求は可能なのでしょうか? あるいはどのくらいの金額を取り戻すことができるのでしょうか?

倒産すると過払い金の額が大幅に減る-武富士の例

貸金業者が倒産してしまうと、取り返せる過払い金の額が大幅に減少してしまいます。例えば、かつて第2位の貸付残高を誇り、日本トップクラスの消費者金融の武富士が2010年9月に会社更生法の適用を申請したことは記憶に新しいかと思いますが、そのときの武富士の配当率はわずか3.3%でした。

武富士の倒産(会社更生)と配当率の図

これはつまり、武富士に100万円の過払い金が発生していたとしても、3万3000円の配当しか受け取れない、ということになります。武富士は過払い金の未払い(未請求)の顧客を200万人以上抱え、推定の過払い金債務が2兆円にも及ぶという莫大な債務超過であったため、1人あたりの過払い金額が大幅に圧縮されてしまったのです。

これは武富士の場合だけでなく他の貸金業者の倒産でも同じです。2012年に倒産したクラヴィスの例などでもわかるように、貸金業者の倒産によって過払い金配当率が数パーセントまで落ちてしまうことは珍しくありません。

それだけ過払い金請求は債権者の数が多い(請求者の母数が多い)ため、相手業者が倒産してしまうと回収が困難になる債権だということがわかります。

“倒産”には、破産と民事再生、会社更生の3つがある

ちなみに、世間一般では会社の経営破綻の状態に、”倒産”という言葉を用いることが多いですが、実はこの倒産という言葉は正しい法律用語ではありません。いわゆる倒産といわれる状態には、以下の3つのパターンがあります。

倒産の3つの種類-破産、民事再生、会社更生

最も大きな違いは、会社そのものを消滅させて財産を全て分配するか、会社は存続させて再生計画を立案するか、の違いです。会社を清算して消滅させる場合には破産手続き、会社を何らかのかたちで存続させ、再建していく場合には民事再生、または会社更生を選択します。

倒産の種類 会社の存続 経営陣 法律 分配金 担保権
破産手続き 消滅 退陣 破産法 少ない 行使できる
民事再生 再建 継続 民事再生法 やや多い 行使できる
会社更生 再建 退陣 会社更生法 やや多い 行使できない
倒産 破産手続き 民事再生 会社更生
会社存続 消滅 再建 再建
経営陣 退陣 継続 退陣
法律 破産法 民事再生法 会社更生法
分配金 少ない やや多い やや多い
担保権 行使できる 行使できる 行使できない

 
民事再生と会社更生の違いは少しわかりにくいと思います。 正直、過払い金請求の債権者という立場であれば、あまりどちらの手続きでも変わらないので気にする必要はあまりないかもしれません。

簡単な違いとしては、まず「民事再生」は会社主導で再建計画をたて、債権者の承認を得たうえで再生を進めていきます。経営者がそのまま残ることができ、また手続きも会社更生法に比べて簡単なので、比較的、債権者の数が少ない会社や大規模でない会社は民事再生を適用することも多いです。

一方で「会社更生」は裁判所が選任した破産管財人が再建業務をおこないます。それに伴い、現経営者は退陣を余議なくされます。また手続きもかなり厳格かつ複雑になっており、債権者や関係者の数が多い大規模な会社の再建の際に適用されます。その他、会社更生だと債権者が自由に抵当権などの担保権を行使できない、という違いもあります。

過去に倒産した貸金業者の倒産方法と配当率は?!

ちなみに、武富士は会社更生手続き、SFコーポレーション(三和ファイナンス)は破産手続き、クラヴィスも破産手続きで倒産処理をおこなっています。
以下、最近、倒産した貸金業者について一覧をまとめてみました。

貸金業者名 倒産日 倒産の種類 配当率
武富士 2010年9月28日 会社更生 3.3%
クラヴィス 2012年7月5日 破産手続き 1%未満
丸和商事 2011年4月8日 民事再生 1.65%
SFコーポレーション 2011年8月26日 破産手続き
アエル 2008年3月24日 民事再生 6.812%
クレディア 2008年5月22日 民事再生 40%

 
クレディアの配当率が特に高いのが目立ちますが、それ以外でいえば概ねやはり数パーセント(1~6%)の弁済率であることがわかります。つまり基本的には、貸金業者が倒産してしまうと、過払い金元本の数パーセントしか返還されなくなってしまう、ということです。

これがこちらの記事でも述べているように、1日でも早く過払い金請求をした方がいい、と一般的にいわれる理由でもあります。

ちなみにクレディアは、再生計画案において「30万円か40%のいずれか多い方」という返還方法を示しました。つまり、30万円以下であれば過払い金の全額、30万円を超える金額であっても最低30万円、または債務額の40%の多い方を受け取ることができたのです。他の倒産した貸金業者と比較してもかなりの高配当率で、なぜこんなに他の業者と違うのかは不思議です。

以下、各貸金業者の概要プロフィールです。

SFコーポレーション

SFコーポレーションは旧三和ファイナンスと同じ消費者金融業者です。資本金は10億円をこえ、2004年売上高は459億円にも上る大手消費者金融でしたが過払い金債務の返還が困難となり2011年8月26日に破産手続きを申請しました。

丸宮商事

丸宮商事は現在は、民事再生法による会社更生手続きを経て、ダイレクトワンに社名を変更しています。消費者金融業を営んでいた時代は、「ニコニコクレジット」「アイリス」などの消費者金融会社を保有していました。

こちらも俳優の竹中直人さんを起用するなどして、当時はテレビCMをたくさんうっていましたが、2010年の貸金業法の改正および過払い金返還請求で収益が大幅に悪化。2011年4月に民事再生法による倒産を申請しています。

クラヴィス

クラヴィスも日本大手の貸金業者の1つで、リッチやクオークローンとも社名が変わっただけで基本的に同じ会社です。クオークローンは出資法の上限ギリギリの29.2%の利息で貸付をおこなっていましたが、他社と同様、貸金業法・出資法の改正により利息制限法の上限20%を超える金利をとることができなくなり、経営状況が悪化。2012年7月に破産申請をおこないました。

アエル

アエルは外資系の貸金業者(消費者金融)です。同じく改正貸金業法の施行、および過払い金返還請求訴訟の増加が原因で資金繰りが悪化し、2008年3月に東京地裁に民事再生法による倒産を申請しています。

 

貸金業者が倒産した場合は、債権者届出を必ずすること

過払い金が発生している貸金業者が倒産してしまった場合に、まず絶対にやらなければいけないのが債権者届出書の提出です。

企業が倒産(破産、会社更生)すると、裁判所は破産管財人を選任して、その企業の財産状況を把握するとともに、どのくらいの債権者がいて、いくらの債務を抱えているのかを調査、整理します。このときに「自分もこの企業の債権者だよ」ということを期限内に名乗り出ておかないと、清算時の配当を受けることができなくなってしまいます。

裁判所に申し立ててから配当までの破産手続きの流れの図

通常、過払い金が発生している対象者であれば、倒産した貸金業者が裁判所に提出する債権者一覧表に名前があるはずなので、裁判所から「債権者届出」についての通知が来るはずです。しかし、もし業者が裁判所に提出した債権者リストから、名前が漏れている場合には期間内に自分で破産管財人等に申告しなければいけません。

大抵の場合、貸金業者のホームページなどで倒産情報について告知されていますので、倒産した業者から数パーセントでも過払い金を取り戻したい場合には、倒産後の最新のリリース情報を細かくチェックしておく必要があります。

 

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