過払金に纏わる利息制限法や出資法、貸金業法の改正まとめ

貸金の利息に纏わる法律はここ10年でも大きく変化しています。 特に、”上限利息”を定める法律の多くが2008年以降にかけて改正されたことで、長年放置されていたグレーゾーン金利が撤廃され、今の任意整理や過払い金返還請求に繋がっています。

法律改正にいたるまでの社会的な経緯と流れ

こちらの記事の復習になってしまいますが、2000年前半頃までは「利息制限法」と「出資法」という2つの相反する法律が存在していました。利息制限法では、貸付金の上限金利は最大20%までしか認められていなかったにも関わらず、出資法では貸付金の上限金利は29.2%と定められていたのです。

利息制限法 出資法
上限金利 15~20% 29.2%
違反した場合の刑事罰 なし あり
みなし弁済の規定 あり なし

 
上記のように、利息制限法の上限金利は20%でしたが、違反した場合の罰則規定がなかったこと、出資法上は違反ではなかったこと、さらに後述する貸金業法の「みなし弁済」というややこしい制度があったために、利息制限法の上限を超過して29.2%の金利で貸し付ける消費者金融やサラ金が大半でした。

アイフルやプロミス、アコムや、セゾン、ニコス、また今はもうありませんが、武富士などのサラ金も25%を超える高金利で貸付をおこなっていたのです。

利息制限法違反が正当化されていた理由が”みなし弁済”

多くの消費者金融やサラ金、カード会社が、利息制限法に違反する高金利で貸付をおこなっていたのは、単に罰則規定がなかったというだけではありません。また別の「貸金業法」という法律で、”みなし弁済”という仕組みが定められていたからです(現在は廃止済)

みなし弁済
改正前の貸金業法43条で定められていた”みなし弁済”では、一定の条件を満たしている場合、利息制限法を超える金利で貸付をおこなっても良い、とされていました。一定の条件とは、主に「利息という認識で、消費者が任意で支払っていること」「出資法の上限金利29.2%を超過しないこと」の2点です。

 
2000年代前半、消費者金融やサラ金業者の多くがこの”みなし弁済”を盾に、利息制限法を超過する高金利での貸付が横行することになり、後に世間を騒がせるグレーゾーン金利問題に発展したのです。

しかしこの”みなし弁済”について、最高裁が平成18年1月に「債務者が、利息制限法に違反する金利であることを認識しながら任意で支払った場合」を除き、利息制限法を超過する金利はすべて無効であり、みなし弁済は適用されない、という決定的な判例を下しました。

 

平成18年最高裁判決で、全ての状況が完全に一変した

消費者金融が契約の際にわざわざ、「この利息は利息制限法に違反する金利ですが、大丈夫でしょうか?」などと確認するハズがありませんので、この判例によって実質、すべての消費者金融や信販会社の貸付金利が無効だということになってしまったのです

これは後の消費者金融や金融業界を揺るがす決定的な判例でした。この日を境にすべての状況が一変した、といっても過言ではないと思います。また、これが消費者金融の最大手「武富士」を倒産に追い込んでしまうほどの、空前の過払い金ブームに繋がることになったのです。

 

そして、怒涛の法改正の流れに繋がる

結論からいって、今ではこのグレーゾーン金利問題は完全に撤廃されています。この最高裁の判決以降、貸金業法の改正、出資法の改正、と怒涛の勢いで法律が改正されていったからです。

具体的には、貸金業法の「みなし弁済」の規定は撤廃され、また利息制限法を超過する金利での貸付は、(例え出資法の範囲内だったとしても)貸金業法の法令違反で行政処分の対象となることが決まりました。 さらに出資法の上限は、29.2%から20%まで大きく引き下げられることになったのです。

利息制限法、出資法、貸金業法の改正をまとめてみた

少し社会背景の説明が長くなってしまいましたが、このように貸金業や利息に纏わる法律は、2006年の最高裁の判決を皮きりに、ここ10年でめまぐるしく変化しました。そこで、利息制限法、出資法、貸金業法の改正の流れをここで改めてまとめてみたいと思います。

利息制限法

利息制限法に関しては唯一、ここ10年でも内容にほぼ(*)変更はありません。ただし、今までは利息制限法に違反する金利で貸付をしても(出資法の範囲内であれば)お咎めなしでしたが、貸金業法・出資法の改正後は、行政処分の対象となります。

利息制限法 上限金利 遅延損害金限度
元金10万円以下 ~20% ~29.2%
元金100万円未満 ~18% ~26.28%
元金100万円以上 ~15% 21.90%

 
現在、すべての貸金業者はこの利息制限法を厳守しなければならず、例外もグレーゾーンも存在しません。わかりやすくて単純明快ですね。 遅延損害金に関しては、上限利息の最大1.46倍までを請求することが利息制限法4条で認められています。(参考:「遅延利息って何?」)

 

貸金業法

ここ10年の改正で最も金融業界に激震を与えたのがこの貸金業法の改正です。2006年にグレーゾーン金利の撤廃をはじめとする貸金業法の改正案が議論されるようになり、2007年(平成19年)12月19日にこの法律の核となる本体が施行されました(第3施行)。

またその後も第4次、第5次と断続的に改正法が施行され、完全施行は2010年6月18日に施行となりました。貸金業法で改正された主なポイントは以下です。

  • みなし弁済制度の廃止
  • 利息制限法と出資法の間での貸付を行政処分対象に変更
  • グレーゾーン金利の撤廃
  • 貸金業務取扱主任資格の創設
  • 総量規制による貸付金の規制

 
2006年に改正案が臨時国会に提出、2008年に本体部分施行、2010年に完全施行、という流れで長年の課題であったグレーゾーン金利やみなし弁済の問題が撤廃されました。これにより2006年を皮切りに、消費者による過払い金返還訴訟が続出し、消費者金融の多くは負債に多額の「利息返還損失引当金」の計上を余議なくされることになります。

またもう1つ、消費者金融や貸金業者の多くに打撃を与えたのが総量規制による貸付の制限です。

総量規制
貸金業法の改正で同時に制定されたのがこの総量規制です(※銀行は対象外)。これにより、消費者金融などの貸金業者は、債務者の年収の3分の1までの金額しか貸し付けてはいけないことになりました。 この総量規制に違反があった場合、行政処分の対象となります。

 
この「総量規制」と「みなし弁済の撤廃」により、消費者金融は貸付金利を下げて、また貸付額を制限されることとなります。また同時に、過去10年に渡って受け取ってきた利息制限法に違反する金利を返還する義務が生じることとなり、独立系の消費者金融は、経営基盤がかなり苦しくなりました。

 

出資法

出資法は昭和29年頃から存在するかなり古い法律です。昔、設立当初は上限金利がなんと年利109.5%という今では考えられない闇金レベルの水準が設定されていましたが、そこから50年かけて出資法の上限金利は段階的に引き下げられていくことになります。

改正年月 金利
最初 109.5%
1983年11月 73%
1986年11月 54.75%
1991年11月 40.004%
2000年6月 29.2%
2010年6月 20%

 
2010年頃に出資法の金利は、利息制限法と同じ水準の20%まで下がり、利息制限法との間での矛盾が解消したことになります。 もちろん厳密に言うと、貸付金が100万円未満の場合は利息制限法上の上限金利は18%なので、まだ中間金利が存在することになります。

しかしこの中間金利は、前述の貸金業法の改正により行政処分の対象となることが決まったため、グレーゾーン金利の問題が完全に撤廃されたことになります。

ここに来てまた法改正?!自民党が上限金利の緩和検討

この物語は実はまだ終わりではありません。自民党が政権を担い、アベノミクスにより再び好景気を取り戻しつつある今、自民党がまた上限金利の緩和を検討していることが明らかになっています。

自民党:貸金業者に認可制を導入、金利や融資額の規制を緩和
4月25日(ブルームバーグ):自民党は貸金業の規制緩和の検討を始める。政府から認可を受けた健全な貸金業者に限り、現在20%の貸出上限金利を29.2%に引き上げたり、貸し付け総量規制を撤廃することなどを議論していく方針だ。アベノミクスの下でリスクに応じた高い金利や限度額で融資できる自由度を高める。

引用:http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N4IZPZ6K50Z301.html

 

再び上限金利をかつての消費者金融の全盛期と同じ水準の29.2%まで戻すということ、また年収の3分の1を貸付上限とする総量規制を緩和すること、の2つの指針を自民党が検討している、ということです。 全ての貸金業者が対象ということではなく、一部認可制ということなので、アイフルやアコム、プロミスなどの大手消費者金融に限られるのかもしれません。

今後の法改正の動きに注目

個人的には金融緩和には賛成ですが、上手く法律を改正しないと、またグレーゾーン金利の問題が発生し、将来的にまた第二次過払い金請求ブームが巻き起こるような事態になりかねないので、そこは注意が必要だと思います。今後の経過に注目したいところです。

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