アイフルなど過払い金訴訟で移送申立てをしてくるケース

過払い金返還請求で訴訟をおこなった際に、いわゆる「引き延ばし」などの時間稼ぎのような対応をしてくる場合があります。例えば、アイフルは「移送申立て」という方法で裁判の引き延ばしを図ることがあります。不当な移送申立ては最近では却下されるケースも増えてきていますが、この移送申立てとその対処方法を理解しておきましょう。

過払い訴訟で移送申立てをされたら?
ねえねえ、先生ーっ! 消費者金融に過払い金返還訴訟をおこすと、業者によっては「移送申立て」等で裁判の引き延ばしを図ってくる、という話を聞いたんだけど、これってどういうことなのーっ?!
移送申立てというのは、裁判をおこなう裁判所を訴状が提出された裁判所ではなく、消費者金融の本社がある裁判所などに移送してくれ、と申立てる手続きのことだね。特に意味はなく、単に過払い訴訟をおこしている消費者側のやる気を削ぐ、時間を引き延ばすための戦略として用いられることもあるんだ。
えー、そうなんだー。
管轄の裁判所が決定するまで審理は開始できないから、移送申立てをすることで裁判の開始を引き延ばすことができちゃうんだねー・・。もし移送申立てを受けたら、どういう対処方法をとればいいのかなーっ?
弁護士に相談して具体的な対処法を検討するのがいいと思うけど、一般的には「移送申立てに対する意見書」等を提出して移送の却下を申立てることになるね。遠い裁判所などに移送になってしまうと手続きも面倒になるし、日程調停や経済的な負担でも不利になることがあるからね。
  • 貸金業者の一部は、時間の引き延ばしのために移送申立てを行ってくる
  • 移送申立てに対しては「移送申立てに対する意見書」で抗弁する

 
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過払い金訴訟の「移送申立て手続き」って何なの?!

まず前提として、過払い金請求の訴訟は原則として、原告(請求者)の住所地を管轄する裁判所に提起することができます。これは民事訴訟法5条で定められています。過払い金請求などの財産権上の訴えは、原告の住所地で裁判ができると決められているのです。

民事訴訟法5条 (財産権上の訴え等についての管轄)
1.財産権上の訴え ・・・ 義務履行地

厳密にいえば上記は例外規定であり、民事訴訟法4条の普通裁判籍では相手方の住所地で裁判を行うことになっています。つまり、過払い金返還訴訟においては、相手方の住所地で裁判をするか、自分の住所地(義務履行地)で裁判を行うかは自分(原告)が選択できることになります。

管轄裁判所について-原則としては民事訴訟法4条に基づき自分の住所地で裁判できることの説明図

ただ、相手方の業者の住所地でわざわざ裁判をする理由がないのと、裁判所までの交通費や諸々の諸経費、移動の時間や手間が大変なため、自分の住所地を管轄する裁判所に提起することが一般的ではないかと思います。

貸金業者側がする「移送申立て手続き」とは何なの?!

一方で貸金業者は、上記の訴訟に対して管轄裁判所を変更するように申立ててくることがあります。これが「移送申立て」という手続きです。この際に貸金業者は、「営業拠点を減らしているため、裁判地に出向くことができない」等の理由で民事訴訟法17条を主張してきます。

民事訴訟法17条 (遅滞を避ける等のための移送)

第一審裁判所は、訴訟がその管轄に族する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の住所地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

または、契約書の合意管轄条項をもとに移送を申し立てられることもあるようです。合意管轄条項とは、契約書などに「甲及び乙は、本契約に関して裁判上の紛争が生じた場合は、○○地方裁判所を第一審の合意管轄裁判所とすることに合意する」というような条項を盛り込んでおくことをいいます。

貸金業者と契約した際に、金銭消費貸借契約にこのような合意管轄条項が含まれている場合には、それを抗弁に移送申立てを行ってくる場合があります。

貸金業者側の移送申立ての図

ただし、こうした移送申立てはほとんどが「時間稼ぎ」のために、審理日の引き延ばしを目的としたものであることが多く、適切な意見書を提出すれば棄却されることが多いです。

貸金業者の移送申立ては、意見書で却下できる

まず前者の民事訴訟法17条の問題については、(1)過払い金訴訟の証拠方法は取引履歴、契約書、などの書証中心であり、原告裁判地にて十分審理できること、(2)原告は個人であり業者側法人との経済的な格差があること、の2つをポイントに意見書を提出することが重要です。

外部参考ブログ:貸金業者からの移送申立て
http://stsnagasaki.blog.fc2.com/blog-entry-22.html

後者については、実際に契約書にどのように記載がされているかによって異なりますが、一般的には貸金業者との契約における合意管轄条項は、「専属的合意管轄」ではなく、「並存的合意管轄」と解釈されるのが主流です。

専属的合意管轄の場合は、契約書に記載された裁判所以外への訴訟は基本的に却下されてしまいますが、並存的合意管轄の場合は、法律上の有効な管轄裁判所と、契約上の管轄裁判所の並存を認める(つまりどちらで訴訟をしても良い)とする合意になります。

この判断は、契約書内に「専属的」という文字が記されているかどうか、が一番のポイントになります。貸金業者との金銭消費貸借契約では、「専属的」という文字が記載されていないことが多いようです。その場合、業者の移送申立ては却下できます。

移送申立てに対する意見書の提出方法

上記の理由から、貸金業者から移送申立てが提出されたら「移送申立てに対する意見書」を用意してもらって弁護士に抗議してもらいましょう。移送申立てに対する意見書とは、以下のようなものです。

移送申立てに対する意見書

 
移送申立てに対する意見書の書式は、こちらの裁判所ページでも配布されています(PDFはこちら)。意見書で移送申立てに反対する場合には、2の「その他」に丸をつけて、反対意見の理由を記述することになります。

ただこの書式でないといけないということはありません。必要な項目を満たしていれば、他の書式やフォーマットによる意見書でも問題ありません。

貸金業者が移送申立てをしてくる本当の理由は?!

アイフルをはじめとする貸金業者が、過払い金訴訟で移送申立てをしてくる理由の大半は、前述のように実際に管轄裁判所を変更したいというよりは、むしろ時間稼ぎの意味合いが強い、という見方が一般的です。

貸金業者によっては、第一回目の審理期日の直前になって移送申立てをおこなってきます。この場合、管轄裁判所が決定しない限りは審理を進めることができませんので、期日は延期になり訴訟は振り出しに戻ることになります。つまり、判決確定までの時間の引き延ばしとしては、有効な戦略であるといえます。

「移送申立て」による時間稼ぎは、裁判ではよくあること?!

移送申立てを利用して時間を稼ぐという手法は、過払い金返還訴訟だけに限らず、裁判の世界では割と有名な方法のようです。移送の申立てをすること自体は、被告にも認められている法律上の権利ですので、自分に有利なように行使してくるのは当然といえば当然なのかもしれません。

いずれにせよ、移送申立てが本当に認められる事例はあまりないようなので、冷静に対応することが必要です。

 

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