過払い金返還訴訟で控訴される場合について

過払い金請求で裁判をする場合、第一審で勝訴をしてもその判決に納得がいかない、あるいは時間の引き延ばし等、別の目的で貸金業者側が控訴をしてくるケースがあります。

取引の分断の問題や、悪意の受益者の問題など、法律的な争点がある場合はもちろん、アイフルなど、特別な争点がない場合でもとにかく控訴をしてくる、という事例もあります。

貸金業者に控訴されると、どうなるの?
ねえねえ、先生ー! 簡易裁判所などの第一審で、支払い命令の判決が出たとしても、貸金業者側に控訴されることがあるよねー? そのときって裁判の判決は振り出しに戻ってやり直しって考えてもいいのー?!
うーんそうだね、法律上の難しい争点などがある場合だと、控訴審で判決が覆る可能性もあるだろうね。ただ、判決確定までの時間稼ぎのために業者側が控訴してくるような例もあるし、司法統計的にも、判決のうち7割は控訴棄却(第一審の判決内容の支持)だから、それほど不安になる必要はない。
ふーん、なるほどー。
控訴審の手続きの流れ的には、どうなるのかなー?! 控訴審の判決が出るまでにはどのくらいの期間がかかるのー?!
まず第一審の判決から14日以内に控訴申立てが必要、かつそこから50日以内に控訴理由書の提出が貸金業者に求められる。また、控訴審の7~8割は一回目の口頭弁論で結審するから、控訴申し立てから6カ月以内には判決がでる可能性が高いね。
  • 原審の判決に納得いかない、または時間稼ぎで控訴される場合がある
  • 司法統計では控訴の7割は棄却され、第一審の判決が認められる
  • およそ8割の案件は控訴から半年以内に1回の口頭弁論で結審する

 
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第一審の判決後に貸金業者に控訴されたらどうするの?!

せっかく第一審の裁判が終わり、業者に支払命令の判決がでて喜んだのも束の間、貸金業者側に控訴されてしまい、また裁判を1からやり直すのか、と疲弊した気持ちになる方も多いかもしれません。 ここで控訴とは、どういうものなのかを復習しておきましょう。

そもそも「控訴」って一体何なの?!

過払い金返還訴訟では、訴額140万円以下であれば簡易裁判所、140万円を超える額であれば地方裁判所で、最初の裁判がおこなわれると思います。これを第一審といいますが、この第一審の判決に納得がいかない場合、原告、被告ともに「控訴」をすることができます。

控訴とは、より上級の裁判所(第一審が簡易裁判所であれば、地方裁判所。第一審が地方裁判所であれば、高等裁判所。)に裁判のやり直し(再審)を申立てることで、原告、被告ともに認められた権利です。

控訴の仕組み-原告、被告ともに第一審の内容に不服の場合、上級裁判所に再審請求できる

ちなみに、第一審の判決に不服がある場合の再審請求を「控訴」、第二審の判決に不服がある場合の再審請求を「上告」といいます。上告は原則として、最高裁判所という司法の最高機関で最終判決が下されます(第一審が簡易裁判所の場合は、上告が高等裁判所になる場合もあり)。

貸金業者側が控訴をする目的や狙いは?!

貸金業者側が第一審の判決に対して控訴してくる目的には、主に以下の2つのケースが考えられます。

  • 取引の分断消滅時効などの法律上の争点があるケース
  • ただ単に判決確定を先送りにして時間稼ぎをしたいケース

 
前者は純粋に法律上の争点があり、判決に不服があるために控訴をしてくる、というケースです。一方で後者は、過払い金の振込を少しでも先延ばしにすることで有利な和解交渉を引き出したり、時間を稼ぐことを目的とした控訴です。

後者の場合はまず、控訴審で負ける(判決が覆る)ということは、ほとんどありません。例えばアイフルなどが、この時間稼ぎを目的とした控訴をしてくることで有名ですが、控訴判決前に取り下げて和解を申し入れてくるケースも多いようです。

一方前者では、原審の判決が覆る可能性がないわけではありませんが、第一審で勝訴しているという事実からも有利なことには変わりありません。

司法統計から見る”控訴審の判決と期間”とは?

なぜ第一審で勝訴していることが有利なのか、というのを司法統計から確認しておきましょう。最新で公開されている平成25年度の控訴審通常訴訟既済事件数(PDF)と、平成24年度の控訴審通常訴訟既済事件数(PDF)を確認してみましょう。

年度 総数 判決数 棄却数 取消し数 和解数 取下げ数
平成25年度 8,829 5,271 4,026 1,200 1,496 1,928
平成24年度 12,101 7,154 5,806 1,304 1,786 3,040
年度 平成25年度 平成24年度
総数 8,829 12,101
判決数 5,271 7,154
棄却数 4,026 5,806
取消し数 1,200 1,304
和解数 1,496 1,786
取下げ数 1,928 3,040

※全地方裁判所の事件の種類及び終局区分別の控訴審通常訴訟既済事件数

この司法統計データからみても、控訴審で第一審の判決が取り消される(覆る)件数は、平成25年度で8829件中1200件で13%、平成24年度で12101件中1304件で10%とそれほど高いわけではありません。

判決まで進んだ事件数の割合でみても、平成25年度で22%、平成24年度で18%です。もちろん決して低いわけではありません(あまりに低いとそもそも控訴審の意味がありません)が、少なくとも原審通りの判決が出される可能性の方が7割以上と遥かに高いわけです。

特に過払い金の控訴審の場合は、前述のように判決確定までの時間稼ぎを目的とした控訴も少なくないため、判決が覆る可能性は上記の司法統計よりもさらに低くなるのではないかと思います。とはいえ、あくまで統計は統計ですので参考程度にしてください。

審理期間 総数 3カ月以内 6カ月以内 1年以内 口頭弁論1回 口頭弁論2回
平成25年度 8,829 2,920 4,741 1,019 72.8% 20.5%
平成24年度 12,101 4,526 6,176 1,209 72.1% 20.4%
年度 平成25年度 平成24年度
総数 8,829 12,101
3カ月以内 2,920 4,526
6カ月以内 4,741 6,176
1年以内 1,019 1,209
口頭弁論1回 72.8% 72.1%
口頭弁論2回 20.5% 20.4%

※控訴審の審理期間(当審受理から終局まで)別件数と、口頭弁論実施回数別の割合

一方、こちらは控訴審の審理期間別の件数です。ほとんどの案件が半年以内に結審(審理が終了すること)していることがわかります。3カ月以内に結審している件数も少なくありません。

この背景として、控訴審では72%とほとんどの事件が口頭弁論1回で結審していることに理由があります。高等裁判所などは、特に民事訴訟の場合、多数の事件を抱えていて大変忙しいこともあり、1回口頭弁論をするだけで、ほとんどが提出された控訴理由書や答弁書をもとに判決が下されます。

控訴審が実施されるまでの流れ

それでは最後に具体的な控訴審の流れをみてみましょう。まず第一審の判決がでると、原審の裁判所から送達先の住所に宛てて、判決正本が送付されます。この判決正本を受け取った翌日から起算して2週間で、第一審の判決が確定してしまうため、控訴をする場合には2週間以内に「控訴申立て」(控訴状)を原審裁判所に提出する必要があります。

過払い金の控訴の流れとスケジュール

控訴状を提出したら、控訴日から50日以内(約7週間以内)に控訴の理由を記した控訴理由書を提出する必要があります。前述のように、控訴は1回の審理だけで終了するケースが7割以上なので、この控訴理由書の内容が一番重要になります。

逆に貸金業者側に控訴されている場合は、この控訴理由書を受けて1カ月以内(最低でも1回目の口頭弁論期日まで)に答弁書を裁判所に提出します。ケースによっても異なりますが、基本的には「第一審で全ての審理は十分に尽くされている」という趣旨で、棄却するよう主張することになると思います。

なお、この控訴申立ての流れは裁判所公式ページにも記されていますので、詳しくはこちらを参考にしていただければと思います。

 

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