裁量免責を得るには同時廃止ではダメ!免責不許可の判例

破産者に、明らかな免責不許可事由がある場合、破産手続きは、少額管財として申立てるのが原則です。同時廃止にしてしまうと、破産管財人が選任されないため、裁判官は十分に破産者の人柄や生活状況、破産に至った経緯を調査することができず、結果、裁量免責が得られなくなる可能性があります。実際、平成26年7月11日の東京高裁判決では、「同時廃止として申立てたことにより免責不許可になってしまった判例」が存在します。

裁量免責を得るためには同時廃止ではダメ
ねえねえ、先生ー!
明かな免責不許可事由がある場合でも、反省していれば、裁量免責 になる可能性があるって聞いたけど…、この裁量免責を貰うためには管財事件 じゃないとダメなのかな?
※ 裁量免責ついては『 裁量免責でギャンブルや浪費、投資の借金でも免責になる?』を参考にしてね。
事実上はそうだね。
裁判所にもよるけど、免責不許可事由がある場合は、裁判官に「少額管財として申立てるように」と指示されるケースがほとんどだ。
同時廃止だと、裁判官が調査できる範囲が限られているからね。
・・・んっ?!
事実上ってことは、別に法律で「裁量免責にするためには、管財事件を申し立てて、管財人 を選任しなければならない」って決められてるわけではないんだ?
そうだね、破産法のルールではない。
だから理屈上は、同時廃止でも裁量免責の決定はできる。でも同時廃止だと、裁判官は、破産者の提出する申立資料や陳述書を読んだり、せいぜい1度、面談する(破産審尋 )くらいしかできない。
うーん、なるほど。
それだけだと、免責不許可事由について詳しく調べたり、「破産者が十分に反省しているかどうか」「生活が改善されているかどうか」を調査することができないのか…。
一方、管財事件であれば、管財人が破産者と何度も面談したり、電話をすることもできる。債権者から聞き取り調査をすることも可能だ。
だから裁判官は、できるだけ客観的な管財人の意見を聞いてから、裁量免責の判断をしたいんだ。

本人側から提出する書面や陳述だけでは信用度が低いので、管財人の中立的な意見を聞いて免責を判断するーイラスト

たしかに同時廃止だと本人の話しか聞けないもんね。
反省文を提出したり、破産審尋で「反省してます」って言っても、あんまり信憑性がないのかも。実際に、同時廃止だと裁量免責が貰えなかった例ってあるのかな?
あるよ。有名なのが、平成26年7月11日の東京高裁の判決だ。
この事案では、最初、同時廃止として自己破産を申し立てたものの、免責不許可事由が発覚したことで、免責不許可決定となった。それを不服として、破産者が即時抗告(※)をしたケースだ。
※ 即時抗告ついては『 自己破産でもし免責不許可になったらどうすればいいの?』を参考にしてね。
なるほど。
最初の地方裁判所では裁量免責が貰えなかったのか。それで高等裁判所が、最終的な免責の判断を下すことになったのね。
で、高等裁判所はなんて言ったの?
高等裁判所は、
「同時廃止では、裁判所は管財人の調査結果や意見を聞くことができないから、免責不許可決定を覆すような証拠資料がない」といって、破産者の抗告を棄却したんだ。

判例を読む(※クリックタップで開閉)

うへー…、厳しい判断だね。
要するに、「同時廃止を選択した以上、こっちも判断する材料がないんだから、高等裁判所でも結論は変えられないよ」ってことだよね。
まあ、たしかに地裁の判断を「おかしい」とする根拠がないし。
そうだね。でも逆にいえば、管財事件だったら免責不許可が覆ったかもしれないってことだ。つまり、「裁量免責の判断にあたっては、管財人の中立的な調査結果や意見書が重要な証拠になる」ってことが、判例として示されたことになる。
【補足】

東京地裁、大阪地裁をはじめ、多くの裁判所では、免責不許可事由がある場合には「少額管財」として申し立てることが当たり前になっています。裁判所によっては、同時廃止として申し立てることが可能なところもありますが、同時廃止にすると管財人を選任することができず、裁判官に、破産者にとって有利な材料を伝える機会もなくなり、結果、裁量免責が得られにくくなる可能性があります。よく弁護士に相談してください。

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  • 明かな免責不許可事由がある場合には、管財事件として申立てるのが一般的
  • 同時廃止として申立てると、裁量免責が得られにくくなる可能性がある
  • 同時廃止では、裁判官は本人の話しか聞けないため証拠の信頼度が低くなる
  • 管財人の客観的な調査や意見書があると、裁量免責のための重要な材料になる
  • 平成26年の東京高裁判決で、同時廃止で裁量免責を求める抗告が棄却された
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同時廃止だと裁量免責が得られにくくなる可能性がある

パチンコや浪費による借金で自己破産をする場合など、明らかな免責不許可事由 がある場合には、少額管財として破産手続きを申立てるのが一般的です。

東京地裁の場合

例えば、東京地裁では、免責不許可事由がある場合には、「免責調査型」の少額管財に振り分けられます。ここでは破産手続きの間、破産者は毎日、家計簿を付けるように指導され、さらに毎月1度、管財人と面談をして家計簿を提出させられます。

管財人は3~4カ月ほど破産者の生活状況を監視し、問題がなければ「免責についての意見書」を作成して、裁判官に提出します。裁判官は、管財人の意見書を読んだ上で、裁量免責 にするかどうかを判断します。

免責調査型の説明イラスト-数カ月の間、破産者は家計簿をつけたり、毎月管財人と面談して指導・監督を受ける

詳しくは、以下の記事を読んでください。

参考記事
少額管財には免責調査型、資産調査型など10種類がある

 
一方、地方の裁判所によっては、破産者に反省文を提出させて、それをもって、同時廃止で裁量免責を認めるところもあります。

しかし一般的には、同時廃止だと裁判官が自ら調査できる範囲が限られてしまうため、「裁量免責を認めていいかどうか?」の判断材料が不足しがちです。そのため一定期間、管財人に生活を指導・監督させて、管財人の意見書をもとに免責判断をすることが多いのです。

平成26年7月11日の東京高等裁判所の判決の経緯

以前から東京地裁では、免責不許可事由がある場合には、原則として少額管財に振り分けられる運用がなされていました。

しかし前述のように、「少額管財でなければならない」という法律上のルールはありませんでした。そのため、この平成26年判決は、はじめて正式に「同時廃止では、裁量免責が得られない可能性がある」ということが、法的判断として示唆された重要な判例といえます。

事件の経緯

この判例のケースは、「破産者が、破産手続きの13年前に不動産を妻に無償で譲渡した行為が、詐害行為 という免責不許可事由にあたり、かつ破産者に誠実さが認められないため、免責不許可が相当である」として、免責不許可決定がなされた事案です。

以下、詳しく説明します。

【 あらまし 】

平成12年頃、破産者は会社を経営しており、会社の連帯保証人として個人でも1000万円の債務を背負っていました。またその当時、自宅として不動産を所有していました。

破産者は当時、妻からも1000万円の借入があり、妻への返済のために、不動産の借地権を妻に無償(タダ)で譲渡しました。
この不動産には670万円ほどの住宅ローンが残っていましたが、住宅には約4000万円程の価値があり、その借地権には2000万円程の価値がありました。そのため、妻に無償で譲渡した借地権には、1000万円以上の余剰価値があった、と裁判所に認定されました。

その後、13年も経過してから、平成25年に破産者は自己破産を申立てました。
このとき、破産者側が同時廃止を希望したことと、その時点では破産者に財産がなかったことから、裁判所は同時廃止を決定し、また破産者に免責許可決定を出しました。

ところが、債権者がこの免責許可に対して即時抗告をしたため、裁判所は「再度の考案」(高等裁判所に審理を持っていく前に、もう一度、原裁判所が考え直して決定を変更すること)を行いました。その結果、裁判所は、破産者の13年前の不動産の譲渡行為が、破産法252条1項の詐害行為 にあたると認定しました。これは免責不許可事由の1つです。

また、破産者が債権者にほとんど返済を行っていなかったことから、「破産者の対応は不誠実であり、免責不許可が相当である」として、元の免責許可決定を取り消し、あらためて免責不許可決定を出しました。

これに対し、今度は破産者が即時抗告をしたため、審理は高等裁判所に持ち込まれました。
しかし高等裁判所は、同時廃止であることを理由に「裁量免責を認める証拠資料がない」として破産者の抗告を棄却し、地裁の免責不許可決定を支持しました。

免責不許可のイラスト

 
既に述べたように、東京高裁は「同時廃止であること」を理由に破産者の抗告を棄却しています。
これが決定的に重要なポイントです。

東京高裁は、「破産手続きの免責判断について…は、破産管財人が自己の調査結果に基づいて述べる中立的な意見が重要な意味を持ってくる」として、裁量免責の判断の根拠として、管財人の意見が重要な証拠資料となることを判示しました。

また「破産者が同時廃止の申立てを選択した場合、裁判所としては、管財人の調査結果や意見を聞くことができない」として、「その上で、破産裁判所が免責不許可決定をしたのであれば、高等裁判所でそれを否定する手立てがない」と説明しました。

一般的に、裁判所が裁量免責を認めるには、破産者が「誠実な人間」であることが求められます。
管財人の意見書がないということは、破産者が誠実な人間であることを裏付ける客観的な証拠資料が何もない、ということになります。

このケース自体はやや特殊な事例ではありますが、判例の内容からすると、免責不許可事由がある場合には、少額管財として申し立てたほうが安全なのは間違いありません。
 

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