自己破産後に起業したり、取締役に就任できるの?

前回、「任意整理をした後に起業をすることはできるのか?」という記事を記載しました。任意整理の場合は、任意での話し合い(和解交渉)のため法律的な制限を受けることがなく、起業することについても問題ない、という結論でした。

それでは、自己破産の場合はどうなのでしょうか?

自己破産しても起業はできる?
ねえねえ、先生ー!
任意整理の場合は、起業に問題はないって話だったけど、自己破産の場合はどうなのかなー? やっぱり自己破産だと難しかったりするの・・・?!
2006年以前までは、旧商法の規定で「自己破産をした者は復権を得るまでの間は取締役に就くことができない」という決まりがあったんだ。でも結論からいうと、その後の会社法の設立で規定は撤廃されたんだ。
撤廃されたってことは、自己破産した後でも起業することはできるってことー?!
そうだね、現在は自己破産した後に起業をしても特に法律上の制限はないよ。ただし、宅地建物取扱主任者など、別途、職業上の欠格事由(制限)を受ける場合は例外だけどね。

 
2006年の会社法の設立以降、自己破産をした後でも取締役に就任することができるようになりました。

一度、自己破産してしまった人に再起のチャンスが与えられず、マーケットからの退場を余議なくされてしまうと、日本経済の活性化にとってもマイナス影響です。そのため、旧商法254条にあった取締役の欠格事由は、新会社法で取り除かれるかたちになったのです。

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自己破産すると一度、取締役は解任される?!

新会社法上は、自己破産しても取締役の欠格事由にはならないため、取締役に就任しても問題ありません。ただし、自己破産前の時点で既に取締役の立場にいる場合には1つだけ問題があります

それは、「取締役というのは、民法上、会社からの委任契約にあたる」ということ、そして「委任契約は相手方が破産した場合、原則として終了する」ということです。これは、どういうことでしょうか?

法律上の”取締役”の扱い

会社法330条では、株式会社と取締役(役員)の関係について、「委任契約」であるということを定めています。

委任契約
会社法330条(参考外部リンク:wikibooks)では、「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。」と記載されています。つまり、株式会社と取締役の関係は、民法上の「委任契約」である、ということを定めているのです。

 
法律上は、株式会社という法人格が、取締役を委任するというかたちを取っていることになるわけですが、これがなぜ問題なのでしょうか?

実は民法653条では、この「委任契約」というのが、以下に掲げる3つのどれかに該当するとき、事前い特別な取り決めがない限りは原則として、委任が「終了」すると定められているのです。

  • 委任者または受任者が死亡した場合
  • 委任者または受任者が破産手続き開始決定を受けた場合
  • 受任者が後見開始の審判を受けた場合

 
つまり、事前に特別な取り決め(特約)がない限り、民法上の委任契約は、自己破産の開始決定がされた時点で、原則として勝手に終了してしまうのです。

 

株主総会を開いて取締役を選任する手続きが必要

これを回避するためにはどうすればいいのかというと、直ちに株主総会を開いて、再度、自分を取締役に選任すればいい、ということになります。委任契約が終了するだけで、新たに委任契約を締結してはいけない、という法律上の決まりはありません。

前述のように新会社法上の欠格事由にも該当しませんので、一度、委任契約の終了とともに取締役を退任し、再度、株主総会を通じて委任契約を結べば問題ありません。

 

職業上の欠格事由に該当する場合は、起業できないケースも

自己破産後に起業して取締役になることは問題ありませんが、職業によっては別の「職業上の欠格事由」に該当する可能性があることも知っておきましょう。例えば、弁護士や司法書士、宅地建物取扱主任者などの一部の士業や資格業は、破産すると一時的に職に就くことができなくなります。

職業上の欠格事由
自己破産をすると、弁護士や司法書士、不動産鑑定士、税理士、公認会計士、宅地建物取扱主任者などの一部職業に就くことができなくなります。当然、それに付随する会社を起業しても、業務に従事することができません。(参考:「自己破産のデメリットについて」)

 
ただしこちらの職業制限についても、破産の免責が降りて復権されれば解消されますので、制限を受ける期間はそれほど長くはありません。詳しくは「自己破産の復権とは?復権の手続きについて」も参考にしてください。

 

自己破産をした場合、起業後の融資は期待できない

起業をした場合に、最初に銀行などの金融機関や、日本政策金融公庫などからの資金調達を考える方も多いと思います。しかし、自己破産をした場合は、その情報が信用情報機関に登録されるため、最低でも5年間、融資を受けることができなくなります。

これについては、「任意整理をした後に起業をすることはできるのか?」でも解説しています。

 

自己破産後に起業して成功した人も沢山いる

学校の授業では株式会社は有限責任だと学びますが、実際のところ、中小企業の場合は会社の借入に対して社長が個人保証をしているケースも多いため、会社が破綻すると同時に社長も自己破産してしまうことが少なくありません。

会社を潰して個人でも多額の借金を抱え、自己破産をしてしまうと、絶望的な気持ちになり、人間としても失格の烙印を押されたような気持ちになってしまうかもしれませんが、自己破産をしても人生が終わるわけではありません。

自己破産後に再度、起業して成功した方も沢山います。法律でも、会社法の設立で、自己破産した後に起業することを認めてくれているわけですから、諦めずに再起を目指しましょう。

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